軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

480 クマさん、国王と話をする その2

スオウ王はあらためて、部屋を見回し、わたしの傍にいるフィナに目を向ける。

「その娘は? エルフではないようだが」

「この子はフィナ。大蛇が復活するまえにワイバーンやヴォルガラスが襲ってきて。そのときの戦いでシノブが負傷して気を失っていたときに、シノブを看ててもらったの」

フィナについてはわたしが説明する。

「……フィナです」

フィナは小さく頭を下げる。

スオウ王はフィナを軽く見てから、シノブに視線を向ける。

「シノブ、怪我をしているのか?」

シノブは着替えたので、見た目だけでは怪我をしているようには見えない。肩の傷と顔の傷は治したけど、他の傷は治していない。

「ワイバーンと戦ったときに怪我をして、少し痛いっすが、大丈夫っす。あと、そのときの戦いで、服がボロボロになったけど、着替えたっす」

シノブは自分の服を掴む。

「そうか。大した怪我でなければいい。お前にはいつも迷惑をかける」

凄い怪我だったけどね。

「自分に力が無かっただけっす」

「だが、大蛇と戦う前にワイバーンと戦ったのか?」

「大蛇の復活に引き寄せられるようにヴォルガラスとワイバーンが集まってきた。手分けをして戦うことになったんじゃが、戦える者がいなかったから、シノブを1人で戦わせることになった」

人数が足りなくて、くまゆるとくまきゅうまで戦うことになった。

「ワイバーンとヴォルガラスが大蛇に呼び寄せられるように島に集まってきたか。やっぱり、それが原因か」

「なにかあったのか?」

スオウ王はどこからともなく現れた魔物が島に向かおうとしていたことを教えてくれる。

「そのせいもあって、初動が遅れ、魔法使いを集めることができなかった」

「そういえば、大蛇と戦う予定だった女どもはどうした? 島に来なかったぞ。あやつらが来ていれば、多少は楽な戦いになったやもしれぬ」

カガリさんの言葉で思い出す。確かに、大蛇と戦う女性を集めていたと言っていたっけ?

スオウ王は少し言いにくそうにしてから口を開く。

「……女たちは逃げた」

「……はぁ?」

「一度、島の近くまで行ったが、大蛇の姿を見て、戦意をなくして、島に降りることを拒んだ」

つまり、役に立たなかったってことらしい。

でも、わたしとしては居ないほうがよかった。下手に目の前で死なれでもしたら、トラウマになる。

「まあ、あの大蛇を見て、戦おうと思う奴は馬鹿ぐらいじゃからな」

それって、わたしのこと?

「それか、倒すことができると分かっている強者だ」

そう言って、カガリさんはわたしのことを見る。

馬鹿でなく強者のほうだったみたいだ。

「カガリにそこまで言わせるとは」

「この目で見た妾も信じられないぐらいじゃ。嬢ちゃんの戦いを見ていないお主には分からぬな」

「自分も見てみたかったっす」

シノブは気を失って、大蛇との戦いが終わるまで、わたしの家にいたから、戦いは見ていない。

「話を聞けば、聞くほど、信じられないな」

「妾もこの目で見ても信じられぬから仕方ない。それで、お主に頼みがあるのじゃが、今回の大蛇討伐に妾たちが関わったことは公表しないでほしい」

「どうしてだ? 大蛇を本当に倒したのなら、隠す必要はないだろう?」

「騒がれるのが面倒、目立ちたくない。言い方はいろいろあるが、そんな感じじゃ。妾たちはのんびりと過ごしたい。これはこの場にいる全員の気持ちじゃ」

「でも、ユナ様、カガリ様、ムムルート様のことを言わずに納得してもらうことなんて、そんなことができるのでしょうか?」

「もし、できぬのなら、シノブが倒したことにすればよい」

「だから、なんでそうなるんすか~。わたしは嫌っすよ」

カガリさんの言葉にシノブが叫ぶ。

「そんなことは簡単だぞ」

「「「…………!」」」

スオウ王の言葉にみんなが驚く。

「なんじゃと。誰が大蛇を倒したか、疑問視する者もいるじゃろう」

「そうです。それにわたしのせいで、ユナ様のことを知っている人もいます」

「ああ、確かにサクラの予知のことを知っている者もいる。それでユナのことも知られている」

「それなら」

「だからなんだ?」

「だから、ユナ様のことを黙っていることは」

「口止めをすればいいだけだ」

「口止めと簡単に言うが、誰が倒したことにする? お主の話を聞けば、大蛇の復活は知られているんじゃろう。その者たちにも契約魔法をさせるつもりか!?」

「そんな面倒なことをするわけがないだろう。大蛇を倒すために集めた女性たちが倒したことにすればいい」

「だが、その者たちは、戦わずに逃げたと、自分で言ったじゃろう」

「ああ、逃げた。だから、その女たちを集めた者には負い目がある。だから、取引をすればいい。『おまえたちが集めた女たちが倒したことにするから、本当のことは言うな』ってな。自分たちが集めた女たちが役に立たなかったなんて、広められても困るだろう。それに、その者たちがクマの格好をした年端もいかない嬢ちゃんが大蛇を倒したと他の者に言って、誰が信じる。そもそも、そんなことを言っても、その者たちにメリットはなにもない」

サクラの言うことを信じないで、集めたんだもんね。確かにわたしのことを言うことはできない。それは自分たちが役に立たなかったと言いふらすことになる。

「だが、その者たちの手柄にさせるつもりか?」

「そんな訳がないだろう。俺やサクラの言葉を信じた者が集めた女性を中心として、倒したことにする。実際に、サクラが希望の光と言うユナを支持していた。ユナは女だろう。嘘は言っていない。その者たちが集めた女性には脇役になってもらう」

つまり、事実上、大蛇を倒したのはスオウ王が集めた 女性(わたし) たちで、それをサポートしたのが、逃げ出した女性にするってことらしい。たしかに、逃げ出したって広まるよりは、サポート役でも大蛇と戦ったことにしたほうがいいかもしれない。

「ですが、女性たちが逃げたことを知っている者もいるんですよね?」

「そんなの、違う島から別の女性たちが向かったとでも、適当に言っておけばいい」

この島の回りには島が4つある。全てを把握する者はいないってことらしい。

「それに、この条件が飲めなくても、俺にはどっちでも構わん」

どっちでもはよくないんだけど。

「断っても、俺の集めた女性たちだけで、倒したことにすればいい。それでも、ユナとカガリのことは一部の者には話さないといけないがな。それぐらいは許してもらわないと無理だぞ」

そのぐらいは仕方ないかな。

「大騒ぎにならなければいいよ」

街の中で大蛇を倒したクマと見られなければいい。

ミリーラの街みたいに、一般の住民たちに知られるのが一番困る。

「妾もそのぐらいなら、構わん。どうせ、その者たちは妾のことも知っているじゃろうからな」

「だが、本当にお主たちはそれで良いのか? 国を救ったんだぞ。銅像を建てるほどのことをしたんだぞ」

いきなり、とんでもないことを言い出す。

「絶対にやめて」

「断る」

「そんなのお断りじゃ」

わたし、ムムルートさん、カガリさんがすぐに断る。

ルイミンも首と手を横に振って、「わたしは関係ないです」と言う。

「これは、やっぱり、シノブの銅像を……」

「やめてくださいっす。そんなものを作られたら、仕事ができなくなるっす!」

全員が否定するが、国を救ったなら、銅像ぐらい建つのかな?

「だが、礼をしなくてはならん。褒賞金を用意するが、時間をくれ。いろいろと手を回さないといけないから、時間がかかる」

まあ、わたしたちのことを黙るってことは、表立って渡すことはできないよね。

「妾は別に金はいらん。のんびりと暮らしたいだけじゃ。ああ、でも酒代ぐらいはもらっても良いぞ」

「その見た目で、酒とか言うな。それで、ムムルート。過去のことも含めて、礼がしたい。俺にできることがあったら、言ってほしい」

「わしは過去にやり残したことをしたまでだよ。それに倒したのはあくまで嬢ちゃんだ。だが、もし、礼と言うなら、この子がサクラの嬢ちゃんのところに遊びに行くようなことがあれば、会うことを許してやってほしい」

ムムルートさんは隣に座るルイミンの頭に手を置く。

「伯父様、わたしもルイミンさんにこれからも会いたいです」

「もちろん、会いに行くには嬢ちゃんの扉が必要になるから、簡単には会えないかも知れぬが」

「わたしに時間があるときなら、いいよ」

「ユナ様、ありがとうございます」

「ユナさん、ありがとう」

まあ、扉を開けるだけなら、数分で済むことだ。忙しくなければいい。

「分かった。許可を出しておく」

その言葉にルイミンとサクラは嬉しそうにする。

「それで、ユナ。おまえは昨日会ったときに、大蛇を倒してもお金も地位もいらないけど、大蛇を倒したときに俺にあらためてお願いをすると言っていたな」

覚えてくれていたんだ。

温泉が出る家でも頼もうかと思っていた。

「俺はどんな望みを叶えてやればいい。金も地位もいらないお前に、なにをしてやることができる?」

「えっと、家を建てる土地が欲しいかな?」

「土地だと?」

「さっきのムムルートさんの話じゃないけど、この扉を置く家を置きたい」

クマの転移門。これを置くのが一番の目的だ。

できれば温泉が出る場所がいいけど。

「家って、まさか、このクマの家か?」

「だから、目立たない場所がいいんだけど。もしくは、普通の家でもいいんだけど、そのときは温泉が出る家がいいかな」

「このクマの家を建てる土地か、もしくは温泉がある家だな。わかった。いい場所がないか調べておく」

もしかして、温泉付きの家をゲットできるかもしれない。

「他にはないのか?」

「契約魔法をしてくれただけで十分だよ。わたしがもし、扉を使って来ることがあったら、黙ってくれればいいよ」

「わかった。もし、その後に頼みたいことがあれば言ってくれ」

転移門のことさえ黙ってくれれば、十分だ。サクラにも会いに行ける。逆に、サクラをエルフの村に連れていってあげることもできる。