軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

478 クマさん、クマハウスを出す

しばらくすると黄緑色のした小鳥が飛んでくる。シノブが手を出すと小鳥が止まる。

「よく、戻ってきてくれたっす」

シノブは指で小鳥の頭を優しく撫でる。

「可愛いです」

フィナがシノブの手に止まる小鳥を見ている。

「触るっすか?」

「いいんですか?」

「フィナにはお世話になったっすから、いいっすよ。手紙を書くっすから、少し預かっていてくださいっす」

シノブはフィナのほうに手を差しだすと、小鳥はフィナの手に飛び移る。フィナは小さな指先で小鳥の頭を撫でると、小鳥は気持ち良さそうに目を閉じる。フィナは嬉しそうにする。

そのとき、くまゆるとくまきゅうがフィナに近づいたのは気のせいじゃないはず。

小鳥と張り合わなくても、くまゆるとくまきゅうのほうが可愛いよ。

「それで、国王陛下をこの島に呼び寄せることでいいんっすか?」

シノブは小さな紙とペンを持って確認する。

「ああ、城に出向くと、騒ぎになるかもしれぬからな。島の船着き場に来てもらえばよかろう」

シノブは小さな紙にカガリさんが言った通りに書いていく。

「でも、国王が島に来てくれるの?」

一国の王だよ。

来いと言って、簡単に来られるもんじゃないと思うんだけど。

「もし、来なかったら、シノブに全てを任せて国を出ていくことにしよう」

カガリさんの言葉にシノブが書き終わった手を再度動かして、何かを付け足す。

そして、紙をクルクルっと丸めると、フィナの手の上にいる小鳥の首の筒の中に入れる。

「それじゃ、お願いするっす」

シノブがそう言うと、小鳥がフィナの手から飛んでいく。フィナはいつまでも小鳥を見ている。

「ちゃんと国王のところまで飛んでいくの?」

「国王がちゃんと魔石を持っていれば、ちゃんと飛んでいくっすよ」

「魔石?」

なんでも、小鳥についている筒には小さな魔石が付いており、その魔石の片割れを国王が持っているらしい。

小鳥はその同じ魔石の魔力を辿って飛んでいくらしい。

「だから、ピースケの首に付いている筒を変えると、違う場所に行かせることもできるっす」

「その1つは、わたしが持っています」

サクラは首からかかっている首飾りを服の下から出して、見せてくれる。首飾りの先には小さな魔石が付いている。

「凄いね」

「簡単なことじゃないっすよ。特訓が必要っすから。ヒナのときから、魔力に反応するヒナを見つけ、特訓しないといけないっすから」

「どのくらいの距離まで大丈夫なの?」

「あまり、遠くは無理っすよ。でも、ここからお城までなら大丈夫っす」

まあ、それはそうだ。ここから、クリモニアまでは流石に無理だと思う。そう考えるとサーニャさんの召喚鳥のほうが凄いってことかな。

そもそも、大きさが違う。サーニャさんは鷹のような鳥だ。それと比べたらシノブのピースケが可哀想だ。

「それじゃ、妾たちも船着き場に向かうぞ」

カガリさんはくまゆるに乗って、サクラはくまきゅうに乗って、他は歩いて移動する。

そして、わたしたちは船着き場に到着する。

「ここで話をするの?」

船着き場以外、なにもない。見晴らしがいい。

「妾の男性除けの結界が壊れたとしても数日は効果が残る。そのためスオウが妾の家に来ることはできぬから、ここ以外にスオウと話ができる場所はない。それにここなら、話は聞かれないだろう」

「聞かれないとおもうけど、船に乗っている人に見られるよ」

会話が聞こえなくても、わたしたちは丸見えだ。

「それはそうだが……」

それだと意味がないような気がする。

みんなが黙りこんでしまう。その中、一人が声を出す。

「それなら、ユナさんの家を出したらいいんじゃないですか? 家の中で話せば、誰とどんな会話をしているかは分からないと思います」

ルイミンが良いことを思いついたように口にする。

「ユナ様のお家ですか?」

サクラは小さく首を傾げる。

「クマさんの形をしている家なんですよ。とっても可愛いんです」

ルイミンの説明で、さらにサクラは首を傾げる。

「フィナも知っているのですか?」

「えっと、はい。とっても可愛いクマさんのお家です」

ルイミンと同じ答えだ。

それ以外に説明のしようがないのはたしかだけど。

「クマさんのお家……ユナ様、わたしも見てみたいです」

サクラは少し遠慮がちにお願いする。

できれば、国王との会談場所をクマハウスの中なんてやめてほしいんだけど。

「なんじゃ、お主、そんな家までもっているのか? それなら、他の人に見られずに済むな」

もしかして、クマハウスに国王を招き入れる流れになっていない?

だからと言って、なにも無い船着き場で国王と話すところを他の人に見られるのはそれはそれで困る。

考えた結果、クマハウスを出すことにする。

「笑ったら、怒るよ」

わたしはシノブを見る。

「なんで、わたしを見るっすか?」

「一番、笑いそうだから」

「笑わないっすよ。自分、そんなに信用がないっすか?」

「ないよ」

「酷いっす」

シノブと同様に笑いそうな狐もいるけど、諦めている。

わたしは船着き場の近くまで移動する。

「この辺りなら、大丈夫?」

「大丈夫じゃよ」

わたしはカガリさんに確認すると、クマハウスを出す。

そして、その反応はそれぞれ違う。

「可愛いです」

サクラは目を輝かせながら、クマハウスを見る。

「クマか。狐のほうが可愛いぞ」

「「くぅ~ん」」

わたしより先にくまゆるとくまきゅうが否定する。

「もちろん、お主たちクマも可愛い。じゃが、狐のほうが可愛い。クマは二番じゃ」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうがクマが一番だと言っているようだ。でも、カガリさんは譲らない。

そんな言い争いをしている三人はほっとくことにする。

「いやいや、家の形もそうっすが、ユナのアイテム袋を不思議に思わないっすか? こんな大きな家が出てきたっすよ」

「ユナ様です。今更、驚くことではないでしょう。シノブもユナ様の秘密を知ったでしょう。それが一つ増えただけです」

「そうっすが。自分がおかしいっすか?」

そのことを誰も否定も肯定もしなかった。

「ほれ、それじゃ中で、スオウが来るまで休ませてもらう」

笑うと思っていたカガリさんは、笑わずにクマハウスに向かう。

わたしは皆を連れてクマハウスの中に入る。

「少し狭いが、なかなかいい部屋じゃのう」

カガリさんがいた建物に比べたら、それは狭く感じるのは仕方ない。

「ユナ、ピースケが戻ってくるかもしれないっすから、窓を開けてもいいっすか?」

「いいよ」

「国王陛下、来るっすかね?」

「あやつなら、来るだろう」

「あと、ユナ。部屋を貸してくれないっすか?」

「部屋を?」

「着替えたいっす。この格好じゃ国王陛下の前には出れないっすから」

たしかにシノブの格好は服には血が付き、わたしが傷を治すためにナイフで服を切ったので、酷い状態だ。

「あやつが、そんなことを気にするわけがなかろう」

「まあ、そうなんっすが、戦いも終わったっすから、楽になりたいっす」

「いいよ。そっちの奥が風呂場になっているから、着替えだけなら、できるよ。フィナ、教えてあげて」

「助かるっす。少し、水も借りるっす」

シノブはそう言うと、風呂場に向かっていく。そのあとをフィナが付いていく。

「それじゃ、スオウが来るまで休ませてもらおう」

「そこに座っていて。お茶でも入れるから」

部屋にはテーブルがあり、四方に三人が座れるソファーがある。その一つに、カガリさんが跳び座り、その隣にサクラが座る。ムムルートさんとルイミンは一緒のソファーに座る。

わたしはキッチンに向かうと神聖樹のお茶を用意する。

フィナ以外の全員が疲労しているし、魔力も枯渇している。

それなら、神聖樹のお茶が一番だ。

熱いお茶より、冷たいお茶のほうが良いと思うので、氷を入れて、みんなに持っていく。

「これは神聖樹のお茶か?」

一口飲んで、すぐにムムルートさんが気付く。

「みんな、疲れているからね」

「そうだな。疲れているときにはこれが一番だ」

ムムルートさんは一気にお茶を飲み干す。

皆も喉が渇いていたのか一気に飲み干した。

わたしはお代わりを配る。

「さっきまで、大蛇と戦っていたとは思えないです」

「サクラ、大丈夫? 疲れているなら、ベッドで寝ていても」

「大丈夫です。たぶん、寝たら、起きられない気がします。伯父さまが来るまで待ちます」

「無理はしちゃダメだよ」

「はい」

それぞれ、緊張が解かれたのか、本当にみんなは疲れたようにしている。

カガリさんは小さな手でコップを持って、お茶を飲みながら、ソファーに埋もれている。その隣ではサクラがソファーの上で正座をしてお茶を飲んでいる。

「お腹が空いているなら、なにか出すけど」

「いや、妾は大丈夫じゃ。疲れているが、食欲より、睡眠じゃな」

どうやら、みんな同じ意見のようだ。

しばらくすると、着替えたシノブとフィナが戻ってくる。

同じ服を持っていたのか、シノブの格好は元の綺麗な服になっている。

「ユナに確認するっす」

「なに?」

「わたしになにかしたっすか? ワイバーンにやられた場所の傷が治っているっす」

「元から、大した傷じゃなかったんじゃない?」

と誤魔化しておく。

「つまり、話したくないってことっすか。それなら、それでいいっす。でも、お礼だけは言っておくっす。ありがとうっす」

「なにもしていないから、お礼を言われることはないよ」

わたしの言葉にシノブもこれ以上は追及はしてこなかった。

それから、しばらくしてシノブの小鳥が戻ってくる。手紙には「行く」と一言書かれていたらしい。

「それじゃ、自分が外で待っているっすね。みんなは休んでいてくださいっす」

シノブはそう言うと、自分も疲れているはずなのに申し出る。そんなシノブに、わたしは冷えたお茶を出す。

シノブはお茶を一気に飲み干すと外に出ていく。

そして、お茶を飲みながら国王を待っていると。

「船が来たっす」

シノブがドアの前にやってきて、教えてくれる。

「意外と早かったな。もしかすると、すでに近くにいたかもしれぬな」

窓の隙間から外を見ると、船が見えた。