軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

467 クマさん、大蛇との戦いが始まる

「妾たちは頭を他の封印に近づけさせないようにして、大蛇の頭を倒すことじゃ。攻撃は胴体でなく、頭を狙え」

「胴体はダメなの?」

もちろん、頭が弱点なのは分かる。でも、胴体が地面から出てこられないはずだから、攻撃がし放題だと思う。

穴から体が出れなくなった大きな蛇と思えばいい。

「無理じゃ。大蛇の皮膚は堅い。それに加えて魔力で硬化されている。多少ならダメージを与えられるが、皮が厚く、膨大な魔力で修復される」

「ミスリルの武器でも無理なの?」

「貫くことは出来ても、皮が厚いため、奥まで突き刺すのに苦労する。それに失敗すればその場で皮膚が修復され、武器が抜けなくなる」

なにそれ?

チートだよ。いつも思うけど、回復って最大のチートだよね。特にゲームでは、味方にいれば頼もしいけど、敵が使うと最悪だ。もう少しで倒せるってところで回復でもされたら、たまったものではない。あれほど、ストレスが溜まる瞬間はない。敵は回復を使っちゃダメだと思う。

「それじゃ、前はどうやって倒したの?」

過去の戦いを参考にするのは悪いことではない。

「数で押しきった。多くの者が一丸となってダメージを与え、修復されても攻撃をする。それの繰り返しじゃ。大蛇だって魔力の限界はある。戦い続けると大蛇の修復速度が落ちてきた。そして、弱まったところをムムルートたち冒険者が頭の一つを封印することに成功した。同様な方法で二つ、三つ、四つと最終的に体を封印して終わった。ただ、そのときの犠牲者は数えきれないほどだった。ムムルートたちがいなかったら、どうなっていたかわからない」

ムムルートさんたち凄かったんだね。

砂漠のピラミッドも攻略している。今はそんな凄い人には見えないけど。

「本当にムムルートには感謝しきれない」

「でも、そこまで追い詰めたなら、倒せばよかったんじゃない?」

そうすればこんなことにはならなかった。

「妾たちも限界だったんじゃよ。多くの者が死に、戦える者はほとんど残っていなかった。封印するのがやっとだったんじゃよ」

紙一重の戦いだったってことだろう。

命を賭けて戦った者を責めることはできない。そのときに経験した者しか分からないことだ。

「それじゃ、頭に攻撃を仕掛けて、大蛇の魔力を減らせばいいってことだね」

「簡単に言うが、一番危険な場所だぞ。喰われればおしまいだし、口から攻撃を仕掛けてくる。その攻撃はどれも強力だ。一撃でも喰らったら、おしまいと思え」

喰らう気はないけど、クマ装備なら大丈夫かなと思うのは、気の緩みになるので気を引き締める。

「ちなみに、あの頭はどんな攻撃をしてくるの? 火、水、風、土?」

話によれば、大蛇は炎を吐き、水を吐き、風を飛ばし、土の塊を飛ばしたと聞いている。封印したカガリさんなら、どの場所の首がどの属性か分かっているはずだ。

「すまない。なにぶん、数百年前のことで、覚えていない」

カガリさんは申し訳なさそうに言う。

伝承として残していなかったのかな?

カガリさんと話をしながら、大蛇の頭の近くまでやってくる。

大蛇はとぐろを巻いて、頭を伸ばして、動かない。

大蛇は大きく、前に倒したブラックバイパーより大きい蛇だった。これが4つの頭を持った魔物。

ブラックバイパーが四体と考えると厄介な魔物だ。

だけど、ムムルートさんたちが他の頭の復活を抑えてくれれば、倒せない相手ではないはずだ。

それにブラックバイパーや大きな魔物を倒す方法は心得ている。

大きな魔物は体内を焼けばいい。どんな魔物だって、体の中を焼かれれば、生きることはできない。

だから、頭を一つずつ倒して行けば、大蛇は倒せない相手とは思っていない。

「動いていないけど、このまま動くまで待つ?」

本当なら、先手必勝で攻撃がしたい。

でも、今はムムルートさんたちが封印の強化の準備をしているはずだ。

もし、攻撃をして暴れでもして、他の封印が解かれでもしたら、ムムルートさんたちのやっていることが無駄になる。

「そうじゃな、今は目覚めたばかりで、動きも鈍いようじゃ。ムムルートたちが封印を強化する時間も必要じゃろう」

わたしとカガリさんの意見が合う。

でも、すぐに状況が変わり、考えも変わる。

「いや、そんな時間はないみたいじゃ」

大蛇の頭が倒れる。そして、這いずるようにゆっくりと動く。

木々が倒れる。

「あっちの方角は? 嬢ちゃん、マズイぞ。封印されているところに向かっている。悪いが、先に行かせてもらうぞ」

カガリさんはそう言うと駆け出す。

速い。

わたしも追いかけて、カガリさんの隣を走る。それを見たカガリさんは驚きの表情を浮かべる。

追いつかれるとは思っていなかったみたいだ。

大蛇の頭がゆっくりとカガリさんが守った封印の建物に頭を伸ばす。

長い。首と言うか胴体が長い。

「攻撃を仕掛けて、注意を引く」

カガリさんはそう言うと大蛇の頭に向かって炎の球を飛ばす。

炎は大蛇の口辺りに命中する。

威力は弱いが大蛇の動きが止まる。

「こっちを向け!」

カガリさんは連続で炎の球を飛ばす。そんな炎の球を大蛇は口を開いて、飲み込む。

「食べた?」

大蛇の黒い体が、赤くなり、口から炎が吹き出す。

「火の大蛇か。一番嫌いな奴が先に復活しおったか」

カガリさんは嫌そうな表情をする。

火、水、風、土の4つなら、確かに炎は厄介だ。

あの必殺技が使えないかもしれない。

「近づくと、あやつの熱で焼かれるぞ。気をつけろ」

カガリさんは炎から水に攻撃方法を変える。

火の弱点は水。水の弱点は土。土の弱点は風。風の弱点は火と言う。

まあ、それが全てに当てはまるとは思わないけど、火の弱点は水で間違いない。

「嬢ちゃん、お主の魔法は!?」

「なんでも使えるよ」

火でも水でも風、土。それから電撃魔法も使える。

「それは心強い。襲ってくるぞ」

大蛇が頭を上げ、カガリさんとわたしの方を見る。

あの目は封印されていたときに動いていた目だ。

大蛇は頭を叩きつけるようにわたしたちに向けて落とす。

わたしとカガリさんは動く。

わたしたちがいた場所に大蛇の頭がズドンと大きな音を立てる。

カガリさんは水の球を飛ばし、わたしは氷の矢を飛ばす。

それぞれの攻撃は命中するが、ダメージを与えた気がしない。

わたしは大蛇の前を走る。大蛇が口を開いて、わたしを食べようとする。

そのタイミングに合わせ、炎のクマを作りだす。

外がダメなら中からだ。

「いけ!」

炎のクマは火の大蛇の口の中に入る。大蛇は口を閉じる。口の中を焼き尽くすかと思ったが、大蛇は再度口を開き、襲い掛かってくる。

炎のクマが喰われた。

これは運が悪いとしか言いようがない。

これが火の大蛇でなければ、体内破壊ができたかもしれない。

よりによって、復活した大蛇が火の大蛇で、炎のクマを食べるなんて。

―――― サクラ視点 ――――

わたしはくまきゅう様に乗って封印がある場所に向かいます。

途中でルイミンさんと別れます。

関係ないルイミンさんまで巻き込んでしまい。心苦しいです。

ユナ様、ムムルート様、ルイミンさん。そして、くまゆる様にくまきゅう様。この国とは関係ない人たち。

そんな人たちが命を懸けて、大蛇を倒す手助けをしてくれています。

あとは国王陛下が大蛇のことに気付いて、魔法使いを島に連れてきてくれれば、勝てる可能性が出てきます。シノブがいれば、国王陛下に連絡することができたのですが、あの状況ではできません。シノブが傷ついて、倒れていました。

後ろを振り向けば、大きな大蛇の姿があります。

海から見た者が気付いて報告してくれるはずです。

でも、それから、準備をして島に来る時間を考えると、間に合わないかもしれません。

いえ、それまで間に合わせるのです。わたしの魔力を使ってでも。一生魔法が使えなくなったとしても。

くまきゅう様のおかげであっという間に封印がある建物に到着します。

建物が少し壊れています。

いろいろな場所に戦いのあとが残っています。

ここを守るために皆さんは戦ったんですね。

建物の上を見ると黒い鳥、ヴォルガラスが飛んでいます。わたしはくまきゅう様から降りると、扉を開けて、逃げるように駆け込みます。

でも、くまきゅう様は入ってきません。

「くまきゅう様、早く」

「くぅ~ん」

くまきゅう様は鳴くと扉とは別の方向に駆け出します。

どこに行くんですか!?

わたしはくまきゅう様を追いかけて外に出ると、ヴォルガラスに向かう姿がありました。

わたしはすぐに理解しました。

くまきゅう様はヴォルガラスを倒しに行ったんです。

「くまきゅう様……」

くまきゅう様はユナ様の言い付けを守っているのですね。

わたしも自分がするべきことをしないといけません。

「くまきゅう様、よろしくお願いします」

魔物のことはくまきゅう様に任せて、わたしは魔法陣がある地下に急ぎます。

地下に降りると大きな魔法陣があります。

過去に何度か見たことがあります。

わたしは魔法陣の前に立ちます。

何かが動きます。

「なんですか!?」

わたしは身構えます。

よく見ると、魔法陣の中にギョロっとした目のようなものがあります。

もしかして、大蛇の目……。

怖い。

だから、カガリ様はわたしを怖がらせないために、中には入れてくれなかったのですね。

もし、大蛇がここで復活したら、食べられます。

足が震えます。

でも、ユナ様もカガリ様も大蛇と戦っています。シノブは怪我をしてまで封印を守ろうとしてくれました。

ここでわたしが怖くて、逃げるわけにはいきません。自分で言い出したことです。わたしは魔法陣の中心に向かいます。中心には魔石が埋め込められています。そこに覆いかぶせるようにムムルート様に預かった絨毯を置きます。

この絨毯のこの場所に、この魔石を合わせて。

わたしはムムルート様に教わったことを思い出しながら、準備をします。

その間も目がジッと見ています。

恐い。

でも、わたしにしかできないこと。

わたしは頬を両手でパンパンと叩いて、気合いを入れます。

戦っているユナ様とカガリ様のためにも、この封印だけは守ります。

わたしはムムルート様に預かった魔石を絨毯の上に置きます。

「ここと、ここと、ここ」

これで大丈夫なはずです。

魔石が絨毯の上に並べられます。

「すぅ……はぁ…」

わたしは深呼吸して、絨毯に描かれている魔法陣に手を置きます。

お願い。上手くいって。

わたしは魔力を流します。

体から魔法陣に魔力が流れているのが分かります。

絨毯に描かれた魔法陣と魔石が光りだします。

わたしは魔力を少しずつ流します。

ムムルート様の話では魔力を流し続けるのが必要であって、一気に魔力を流しても意味がないそうです。ただ、封印が解かれそうになったときは、魔力を強く込めないといけないと言われました。

魔法陣にあった目だと思われるものは消えました。

どうやら、魔法陣は上手くいったみたいです。

あとはユナ様たちが大蛇を倒すまで、魔力が持つことを願うだけです。