軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

445 クマさん、シノブの話を聞く。 その1

わたしのクマさんパンチが男の体に命中して、顔を苦痛に歪ませる。わたしはそのまま腕を振り抜くと男は後ろにあるクマの石像の壁まで吹っ飛び、ぶつかって倒れる。

男は立ち上がろうとする。

まだ、動くの?

わたしは終わらせることにする。

動きが鈍くなった男に向かってチビクマを向かわせる。男は立ち上がるのが限界のようで、チビクマに掴まれると、重さに耐えきれずに膝を折り、顔から地面に倒れる。

わたしは倒れた男にゆっくりと近づく。

「わたしの勝ちだよね。それじゃ、全てを話してもらえる?」

「……」

「話さないなら、シノブにでも聞くけど」

わたしは男からシノブに視線を向ける。

シノブの表情は男を心配する表情だ。決して、捕まえることができた喜びの表情ではない。

わたしがくまゆるを再度見たとき、くまゆるの上に乗っていたシノブの表情は男を心配する顔だった。

「シノブ。この男とどんな関係? 知り合いだよね」

「すまないっす。全てユナを確かめるための芝居だったっす」

シノブはわたしの前に来ると正座をして、手を地面に付け、頭を下げる。

「芝居? わたしを確かめたってどういうこと?」

シノブは顔を上げ、わたしの目を見る。

「ユナ、怖いっす」

「そりゃ、怒っているからね」

「ごめんなさいっす」

睨み付けるとシノブは体を縮めこませる。

「この人はわたしの師匠です」

「師匠? それで、その師匠と弟子のシノブが、どうしてわたしのことを確かめるの?」

「それはユナに、この国を救う力があるか確かめるためっす」

「…………」

シノブのいきなりの言葉に言葉がでてこない。いきなり、国を救う力があるか、確かめたなんて言われたら、思考が止まる。

「わたしには国を救えるほどの力はないよ」

「そんなことはないっす。サクラ様がこの国を救う光だって言っていたっす」

「サクラ様?」

新しい人物の名前がでてきた。

「シノブ、信じてもらうには隠さずに全てを話したほうがいい」

チビクマに拘束されている男がシノブに向かって言う。

「お師匠……。ユナ、初めから説明するから聞いてほしいっす」

ここまで来たら、わたしも理由が知りたいので、話を聞くことにする。

「ありがとうっす」

シノブは目の前にあった小枝を拾うと、地面に絵を描き始める。

上、下、左、右に丸のような、四角のような絵を描く。

「これがわたしたちが住む和の国っす」

和の国のって、4つの大きな島? 大陸? でできていたんだね。

そして、シノブは4つの島の中心に小さな丸を描く。

「その和の国の中心に島があり、聖なる地とされ、結界が張られて人が入れない島があるっす。そして、その島には魔物が封印されているっす」

「もしかして、封印が解けたから、魔物を倒してほしいってこと?」

ゲームの定番過ぎるんだけど。

「えっと、まだ封印は解かれていないっす」

「それじゃ、封印が解かれそうってこと?」

「近いうちに封印が解かれ、魔物が復活するとサクラ様が予知をしたっす」

「予知?」

「これは一部の者しか知らないことなんで、内緒にしてほしいっすが、サクラ様は未来を夢で見ることができるっす」

それって予知夢ってこと?

「サクラ様が 一月(ひとつき) ほど前に魔物の封印が解かれ、魔物が暴れ、多くの人が死んでいくのを見たっす。それで、誰しもが初めは半信半疑だったっすが、それからも立て続けに夢をみたっす。それで、島を調べた結果、一部の封印が弱まっていると確認が取れたっす」

「それじゃ、封印の強化なり、新しく封印すればいいんじゃない?」

二重結界にすればいいことだ。

でも、シノブは首を横に振る。

「それはできないっす。今、封印をしている者がいるっすが。新しく作るのは、封印されている魔物の力を一度弱めないといけないそうなんす」

つまり、その魔物の力を弱まらせることが、わたしに頼みたいってこと?

「でも、どうして、わたしなの? 和の国にだって強い人はいるでしょう。シノブの師匠だって、強いでしょう」

わたしはチビクマに体を固定されている男に視線を向ける。

「いるっすが、無理なんっす。魔物は負の感情を糧に成長するって言われているっす。それで結界の中に負の感情を入れさせないため、人の出入りを禁止にし、結界の中には限られた人しか入れなくなったっす」

「その限られた人って、わたしも入れないんじゃないの?」

「それは大丈夫っす。清らかな乙女は入れるっす」

「……はぁ?」

清らかな乙女って、つまり、あれってこと?

顔が赤くなった気がした。

でも、わたしはすぐに平静を保って、シノブと男に気付かれないようにする。

「だから、師匠や実力がある者は島には結界のせいで入ることはできないっす。魔物と戦えるほどの実力があり、清らかな乙女、そんな人物は簡単にはみつからないっす」

それでわたしってことになるのか。

うん? ここで疑問になることがでてくる。

どうして、わたしのことを知っていたのか。

どうして、わたしがここに来たことを知っていたのか。

どうして、わたしの実力のことを知っていたのか。

どうして、わたしが清らかな乙女って知っているのか?

いろいろと新しい謎が出てくる。シノブの話だと、わたしのことを初めから知っていて、近づいたってことになる。

「どうして、わたしなの? わたしのことを知っていたの?」

もしかして、クラーケンのことかと思ったが、シノブの口から出てきた言葉は違った。

「サクラ様が夢で見たっす。その夢の中に小さいけど、もの凄く明るく、綺麗な、暖かい光が出てきたそうなんっす。サクラ様は希望の光って言っていたっす」

「つまり、その光がわたしってこと?」

それだけではわたしとは限らない。

そもそもクマの着ぐるみを着た女の子が希望の光とは思わないはずだ。

「その光は獣のようなものに乗り、南の海より現れたそうなんす」

海から獣に乗った。

それって、くまゆるとくまきゅうに乗ったわたし?

シノブは先程、地面に描いた和の国の地図の一ヶ所を小枝で指す。

「それを聞いた王は兵を港に集結させ、出迎えることにしたっす」

「兵って」

「封印された魔物に対応でき、獣に乗った者が現れると聞いての対処っす。どんな怖いものがやってくるかわからなかったっすから」

わたしは化け物か!

「でも、それを実行した翌日、サクラ様の夢から光が遠ざかって消えてしまったっす」

もし、その光がわたしだとしたら、港に兵がいっぱいいたら、面倒になると思って引き返したかもしれない。

「それから、いろいろな案が出たっすが、決め手がなかったっす。 ただ、使者が一人で会うことになると光は近づいてきたっす。でも、誰が会うかによって、光は消えたりしたっす。それでわたしがその獣に乗った光に会うことになると、光は消えずにすんだっす」

それでシノブがわたしに近づいてきたわけか。

「それで数日前から、港が見える高台から海を望遠鏡で見ていたら、海の上をクマが走ってくるのを見つけたっす。そのときは驚いたっす。本当に海から獣に乗った人物が現れたっすから。しかも、そのクマの上に乗っているのは可愛いクマの格好をした女の子っす。もう、混乱したっす。わたしは、物凄く強い女性を想像していたっすから」

「悪かったね」

「だから、本当にサクラ様が言う、希望の光がユナのことなのか、判断がつかなかったっす。それでも、どうにか確認をしないといけないと思って、ユナを観察したっす。そしたら、ユナは食べ物を買い食いするわ、畳を大量購入するわ。とても、希望の光には見えなかったっす」

わたしの行動を見ていたんだね。

「それじゃ、冒険者ギルドのときも?」

「そうっす。ユナが依頼を受けたので、ユナの実力を知るチャンスと思ったっす。でも、依頼者が断りそうだったので、わたしが参加するってことにしたっす。わたしは冒険者としてはそれなりに名は知られているっすから、わたしがいれば断らないと思ったっす」

「だから、わたしがシノブに譲ろうとしたとき、わたしが居ないと意味がないって」

あのときの会話が思い出される。

「そうっす。ユナの実力を知りたかったっす」

「話はなんとなくわかったけど。どうして、こんな芝居なんてしたの? 普通に頼めばいいでしょう」

「もちろん、初めはそのつもりだったっす。でも、一部の反論する者がいたっす。その見知らぬ人物に本当に実力があるのか。よそ者を信じられるのか。聖なる地に入れて良いのか。いろいろな意見がでたっす。そんなことを言っている場合でないと思ったっすが、その者がどんな者か分からないのでは話が進まなかったっす。それで、実力を知るため、御前試合をすることになったっすが、サクラ様の夢から光は消えたっす」

ああ、そんな人を試すような試合をしろと言われたら、断った自分が想像できる。

「それで、いろいろと考えた結果。国で実力がある師匠が戦って、実力を試すことになったっす。でも、その者の力を知るためには本気になってもらわないといけない。それでどうやって、確かめるか話した結果。一芝居をすることになったっす」

「それじゃ、シノブの父親が殺されたって言うのは」

「すまないっす。嘘っす。でも、昔に戦って負けたのは本当っす。そこから話を作ったっす」

「でも、それなら、どうして敵討ちじゃなかったの? 捕まえるだったの?」

「それは殺すという文面が入ると光は消えたっす。だから、捕らえるだったっす」

確かに見知らぬ他人の敵討ちに手を貸したくない。まして、殺す手伝いなんてしない。

断った可能性が高い。いや、間違いなく断ったと思う。

「でも、シノブとその師匠は本気で戦っていなかった?」

2人の戦いは芝居とは思えなかった。

本当に傷つき、シノブは本当に殺されかけていた。

「本気っす。命をかけた戦いだったっす。それが光を消さない方法だったっす。その戦いの結果。わたしか、師匠が死んでいたかもしれない。でも、サクラ様が言うには光が近付いていて、他の案を模索する時間がなくて、この案しかなかったんす」

「だからって、師匠が弟子を殺そうとするなんて」

わたしは男に視線を向ける。

「師匠を怒らないでほしいっす。わたしも師匠を殺すつもりで戦ったっす。それに師匠もユナに殺される覚悟でユナの実力を引き出したっす。わたしも師匠も死ぬ覚悟はしていたっす。それで、この国が助かれば、安いものっす」

「はぁ」

ため息しかでない。

「わたしがシノブが死んだあとにこの話を聞いて、手を貸すと思ったの?」

きっと、気分が悪くなって、クリモニアに帰ったと思う。

「わからないっす。ただ、わたしも師匠も生きているっす。そして、ユナは話を聞いてくれているっす。ユナにはサクラ様と国王様に会って、話を聞いてほしいっす」

シノブは地に手を突き、頭を下げる。

隣にいる男性も一緒に頭を下げる。

「でも、わたしに本気を出させるために、くまゆるに攻撃をしたことは許されないよ」

「あれは、わたしが防ぐつもりだったっす。でも、くまゆるは簡単に避けたっすよ」

「くぅ~ん」

わたしの横にいるくまゆるが、「簡単だったよ」と自慢気な顔をしている。

わたしはあんたを心配して、怒っているんだよ。その緩んだ顔はなに?