軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

444 クマさん、戦う

わたしと男は対峙する。

わたしたちが戦う場所は、道幅が馬車二台が通れるほどしかなく、大きな動きはとりづらい。

さらに、シノブと同様に大きな魔法は使えない。風魔法を使えば建物を壊し、炎を使えば燃やすことになる。水魔法や土魔法でも建物の被害がでる。まして、クマの魔法を使えば災害レベルになる。

そうなると、弱めた魔法と武器での攻撃が中心の戦いとなる。

できれば、もっと広い場所で自由に戦いたいものだ。

男が動く、間合いを詰めると男が刀を振る。わたしはナイフで弾く。

見える。

クマの装備のおかげで、男の動きがよく見える。右、左、切り返し、刀を突きあげる。さらに刀を引いて、突きがくる。

わたしは全ての攻撃を防ぎ、最後の突きを回転するようにかわす。そして、そのまま体を回転させて、回し蹴りをする。

当たれば、吹っ飛ぶ。

でも、男は少し後ろに下がり、わたしの蹴りをかわす。

女の子の蹴りだから、受け止めるぐらいしてくれてもいいのに。そうしたら、そのガードごと吹っ飛ばしたのに。

「それにしても、そんな動きにくい格好しているのに、速いですね」

「自分の動きが遅いのを、相手のせいにするのはよくないよ」

「言ってくれますね。それなら、これは避けられますか?」

男は腰を下げて、突きの構えをする。

三段突きだ。

わたしは構える。

男は足を踏み込む。男が動いた瞬間、わたしは男とわたしの前に土の壁を作る。

でも、男は壁を突き壊し、わたしに迫ってくる。

予想はしていたが、とっさに作った壁じゃダメか。わたしは先程と同じようにくまゆるナイフで男の刀を大きく弾く。大きく弾くことで、バランスを崩し、三撃目を打たせないようにさせる。

でも、男は無理矢理刀を引き戻し、力強い踏み込みで、再度突きを繰り出してくる。

わたしは左手の白クマさんパペットで刀の横をパンチする。

流石に予想外だったのか、男の手から刀が弾け飛ぶ。そこにチャンスが生まれる。わたしは無防備になった男の体に黒クマさんパンチを打ち込む。

よし、入った。

そう思ったが、防がれている。

男は両腕を前にして、わたしのクマさんパンチを防いだ。

男は後方に数mほど飛ばされるが、地面に立っている。

あのタイミングで防御できるなんて、反射速度が速い。

「まさか、クマの格好をした女の子に手加減をされるとは思いませんでした」

「手加減?」

手加減をしたつもりはない。

「今、ナイフを持っているのにもかかわらず、黒い手袋で殴ったでしょう。それを手加減と言うでしょう」

たしかに黒クマさんパペットの口にはくまゆるナイフが握られている。でも、殴ったのはクマさんパペットの部分だ。ナイフで攻撃をしようと思えばできたけど、それだと致命傷を与えることになる。

「シノブに殺さないで倒すって、約束したからね」

倒すのが目的であって、殺すのが目的ではない。

「だから、手加減じゃないよ」

「ふふ」

男は笑みをこぼす。

「それを手加減って言うのですよ。もっとも、ナイフで攻撃されたとしても、そちらのお嬢さんと同じようにミスリルの籠手で防がせてもらいました」

ミスリルの籠手?

シノブにしろ、ミスリルの防具って金持ちだね。トウヤに聞かせてやりたいね。

「だから、手加減は必要はありません」

だけど、ミスリルのナイフとミスリルの籠手。

最強の矛と最強の盾じゃないけど、どっちが強いのかな?

やっぱり、最後は使い手の技術ってことかな。

「それと、手加減をできないようにしてさしあげます」

男は少し離れた位置に転がっていた刀を拾い、脇差にも手をかける。

二刀流?

三段突きといい、どこの侍よ。

「手加減すれば、簡単に死にますよ」

「そう、それはわたしに攻撃を当ててから、言うことね」

わたしはくまきゅうナイフを出して、二本ナイフを構える。相手が二刀流なら、こっちも二刀流で相手をする。

相手の得意分野で叩きのめす。

わたしが両手にナイフを構えると、男が笑みを浮かべる。男とわたしは駆け出す。

四本の武器が交差する。

男の刀の速度が上がり、二つの刀で攻撃を仕掛けてくる。

刀一本より、二本のほうが手数が多くなる。

しかも速い。右、左、右、左とさらに突きに、右、右、左と変則的に攻撃を仕掛けてくる。わたしはくまゆるナイフとくまきゅうナイフで防ぐ。

男の攻撃は続く。

リーチの差もあるから、わたしの攻撃は届かない。

だけど、わたしのほうが消耗は少ない。

クマさんパペットのおかげで、打ち合っても手に痺れもこないし、力もわたしのほうが上だ。動きまわる足にも疲れがこない。それに引き換え、男はシノブと戦っている。持久戦ともなればわたしのほうが有利だ。

男はさらに速度をあげるが、わたしは全ての攻撃を受け止めた。

男は信じられないようにわたしを見ている。

「その程度? 魔法を使ってもいいよ。なんなら魔法が使いやすい場所に移動する?」

もっとも、移動したら、わたしのほうが有利になるけど。

わたしの口車に乗ってくれないかな。

「そうですね。場所を変えますか?」

本当?

男はそう言うと腕を振り下ろす。それと同時に地面から煙がでる。

煙玉?

どこの忍者よ!

攻撃を仕掛けてくるかと思ったら、煙の向こう側にいる男が反対側に駆け出す。

もしかして、逃げるつもり?

「ユナ!」

後ろでシノブの声がする。

わたしはくまゆるを召喚する。

「くまゆる、シノブをお願い」

くまゆるにシノブのことを頼み、探知スキルを使うと同時に駆け出す。追っている人の反応から目を逸らさない。

速い。

もの凄い速さで離れていく。

逃がさない。

わたしは逃げる男に一直線に向かって、屋根の上を走って追いかける。

見えた。

そして、男の動きが止まり、振り返る。

「追いかけてきますか」

「あの程度で、わたしから逃げられると思わないほうがいいよ」

「全力で走ったのですが」

「走り込みが足りないんじゃない?」

わたしに言われたくないだろうけど、嫌みっぽく言ってみる。

クマの着ぐるみがなければ、わたしなんて100mを全力で走れるかも疑問だ。

フィナに負ける自信だってある。

「それではここで再戦といきますか」

男は刀を構える。

わたしたちがいる場所は街外れ、家も建物もない。

周囲を気にしないで魔法が使える。わたしが有利だ。

男を見ると、刀に風の魔法が宿っている。

「もしかして、広い場所にくれば、魔法が使える自分が有利とか思っていないよね」

「さあ、それはどうでしょう」

男は離れた位置から、刀を横一文字に振るうと、風の刃がわたしに向かって飛んでくる。

それを同じ風の魔法で相殺する。

さらに男は刀を振り、風の刃を飛ばしてくる。わたしは、それを風の刃で全て撃ち消す。わたしたちの間にものすごい風が巻き起こり、砂や葉が舞う。その中、男が動き、わたしと男の魔法を使った攻防が始まる。

何度か魔法と武器による攻防が起き、お互いに距離をとる。

「ふぅ」

男はゆっくりと息を吸い、吐くと、刀を構え、振り下ろす。それと同時に風の刃が飛んでくる。

さっきよりも、速い。

さらに男が同時に動く。

わたしは風の刃をかわし、男を迎え撃つ。

刀とナイフがぶつかる。その瞬間、刀から風の刃が放たれた。

超至近距離からの魔法攻撃だ。

わたしは体を回転させて風の刃をかわす。だが、すぐに男の刀が襲いかかってくる。わたしは空気弾を作りあげ、男に向かって放つ。

空気弾が男のお腹に命中して、後方にふっ飛ぶ。

でも、致命傷になっていない。

わたしは男を追いつめるため、追撃をかける。

かまいたちを捕らえたときの方法で、土魔法で数十体のチビクマを作り出し、男に向けて放つ。

チビクマは男に向かう。だけど、男に抱きつく前にチビクマが斬られていく。

土でできてるとはいえ、クマが斬られるのは気分がいいものじゃない。

わたしはチビクマを元に戻し、風魔法を男の下から巻き起こす。

飛び上がらせて、終わりだ。

男の下に風が集まって、男の服が風に煽られる。男を空に飛び上がらせようとしたとき、男は刀を下に向け、円を描くように刀を振るう。

すると、男の足元で、風が起こり、わたしの風魔法が消える。

相殺した?

どうやら、楽には倒させてくれないらしい。

「もしかして、これで終わりですか?」

「今ので、やられていれば良かったと、後悔することになるよ」

「それでは、もっと楽しませてくれるのですか?」

「楽しむのが、あなたとは限らないけどね」

子熊を斬られ、驚かせるつもりで使った風魔法が防がれ、少々怒っている。

「初めに言っておくよ。わたしはシノブの約束を守るために、手加減しているよ」

「殺すつもりでこないとわたしを倒すことはできませんよ」

「それなら、一撃でもいいから、わたしに当てることだね」

わたしが男と話していると、くまゆるに乗ったシノブがやってくる。

「そうですね。それではこうしたらどうしますか?」

男がチラッとくまゆるとシノブのほうを見る。その瞬間、風の刃をくまゆるに向かって放つ。

「くまゆる!」

わたしが男から目を逸らした瞬間、男が攻撃を仕掛けてくる。

油断を誘った?

男が一瞬で間合いに入り、刀が迫ってくる。

わたしは握っていたくまきゅうナイフをクマボックスに仕舞い。男の刀を白クマさんパペットの口で受けとめる。男は驚くが、わたしはそのまま蹴りを入れる。

男は刀を離して後方に離れる。

わたしはくまゆるのほうを見る。なんともないようだ。良かった。

「今、なにをしたか、分かっている?」

「……」

「今、しちゃ、いけないことをしたよ」

「……」

「人が手加減していれば、いい気になって」

「……」

「シノブ。もう、手加減しないから」

「……ユナ」

「くまゆるに攻撃をしたんだから、そのぐらいの覚悟はあるよね」

「ユナ、ダメっす」

わたしはシノブの声で、少しだけ怒りを収める。

「半殺しなら、いいんだよね」

もう、終わらせる。

二度とくまゆるに攻撃をさせない。

わたしは白クマパペットがくわえている刀を捨てる。

今さら謝っても許さない。

わたしは男を逃がさないように、大きなクマの石像を作り上げる。

クラーケンを討伐するときに作ったクマの囲いだ。あのときほど大きくないけど、男を逃がさないようにするには十分だ。

数体のクマの石像が壁となって、男はクマの石像に囲まれる。出口はわたしの後ろだけだ。男は風の刃をクマの石像に放つが斬れない。

「逃がさないって言ったよね」

「ユナ、待ってほしいっす!」

シノブがなにか言っているが、聞こえない。

わたしは駆ける。男は刀を構える。男は残った一本の刀を振って、風の刃を飛ばしてくる。わたしは白クマさんパペットで風の刃を粉砕する。そのまま真っ直ぐに男に向かう。

男の正面にくる。男がタイミングを合わせて、わたしに向かって刀を振り落とす。くまゆるナイフで弾き、男の体が無防備になる。

そこに、わたしの左手の白クマパペットを振り抜く。

最速のパンチ。怒りを込めたパンチが男に命中する。