軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

433 クマさん、畳を買う

翌朝、わたしは畳の上に敷かれた布団の上で目が覚める。

もう、朝?

昨日は食事を終えたあと。もう一度、温泉に入って、体がぽかぽかしているうちに眠りについた。

わたしが起き上がると、左右で丸くなって寝ていたくまゆるとくまきゅうも起き上がる。

「2人ともおはよう」

「「くぅ~ん」」

布団を片付けて、黒クマに着替えると、今日の予定を考える。

畳が購入できたら購入して、冒険者ギルドを見学もしたい。他にもフィナたちにお土産になるような物があれば買っていきたい。珍しい物を発見したいね。

今日の予定を考えていると、ドアがノックされる。

わたしはくまゆるとくまきゅうに隠れるように指示を出す。くまゆるとくまきゅうはトコトコと隣の部屋に隠れる。

ドアを開けると、コノハの姿があった。

「おはようございます。朝食をお持ちしました」

「ありがとう」

「よく、眠れましたか?」

「うん、温泉も気持ちよかったよ」

「それはよかったです」

朝食は焼き魚、みそ汁、海苔、漬物と簡素なものだった。

そういえば昼食は外で食べることになるけど、美味しいものでもあるかな。

朝食を終えたわたしはくまゆるとくまきゅうを送還すると部屋を出る。そして、旅館の玄関の近くにコノハの姿がある。

「おでかけですか?」

「うん、それで聞きたいことがあるんだけど、畳を売っている場所はある?」

「畳ですか?」

「うん、気に入ったから、買って帰ろうと思うんだけど」

「気にいってくれたのは嬉しいです。畳は旅館を出て右に行った道をしばらく歩くと、お店があります。でも、持ち帰ることはできるのですか?」

「アイテム袋があるから、大丈夫だよ」

それから商業ギルド、冒険者ギルド、街のみどころの場所も聞いて紙にメモっておく。

「ありがとうね」

わたしはお礼を言って旅館を出る。

まずは畳屋に向かう。

わたしが街並みを見ながら歩いていると、わたしを見る人が驚きの声をあげる。

「くま?」「なんだ?」「クマ?」「どこの国の服だ」

どこに行ってもクマの着ぐるみ姿は目立つ。

わたしはクマさんフードを深く被り顔を隠す。

数人の子供たちが近くまでやってきて「くまだ~」「変な格好~」とわたしの周りを回り始めたときは蹴り飛ばしたくなったが、我慢する。

わたしが大きな声で「わっ」と声をあげると、去っていく。

教育がなっていないね。孤児院の子供やフィナたちを見習ってほしいものだ。

それにしても、和風の家が並ぶ。屋根が瓦ってだけで変わるもんだ。多分、瓦がなかったら、普通の木造建築だったかもしれない。

この国にお城ってあるのかな?

やっぱり、日本にあるみたいなお城なのかな?

あるなら、見てみたいね。旅館に帰ったら、コノハに聞いてみようかな。

わたしは「クマ」と何度も指を差されながら、畳屋の近くまでやってくる。

「たしか、この辺りだと思うんだけど」

紙に書いた地図を見ながら、辺りを見渡していると、畳の絵が描かれた看板があった。

ここだ。

「ごめんくださ~い」

お店の中に入ると声をかける。

「は~い」

前掛けをした女性が小走りでやってくる。

「お待たせしました……くま?」

女性はわたしを見ると固まる。

まあ、いつものことなので、クマって単語はスルーして話しかける。

「畳が欲しいんだけど」

「えっと、畳?」

畳屋さんで、畳以外になにが売っているのかな?

「ここで買えるって聞いたんだけど」

「あっ、はい。畳ですね。買えますよ」

女性はわたしの格好が気になるようだけど、畳の話をする。

「それでお嬢ちゃん。畳は何枚必要? 家はどこ? 交換作業はどうする? 急ぎ?」

女性はいろいろと尋ねてくる。

まあ、普通は畳の交換と思うかもしれない。

畳を持って帰る人はいないイメージがある。

「家はこの街じゃないから、畳だけ欲しいんだけど」

「そうなの? お嬢ちゃん、1人で来たの?」

「1人だけど」

子供扱いはしないでほしいんだけど、やっぱり、この格好が子供っぽく見えるのかな? でも、初めて見る格好だよね。いつも思うけど、初めて見る格好でも、この格好は子供っぽく見えるのかな?

そう考えると奇妙な格好が一番、しっくりくるかもしれない。

「えっと、お嬢ちゃん。見てもらえれば分かると思うけど。畳は大きいし、重いのよ。お嬢ちゃん1人じゃ、持って帰ることは……」

女性はお店の中にある畳に視線を向ける。

畳の一枚は大きく、重そうだ。クマ装備がないわたしだったら、持ち上げることもできない。

「それとも、馬車で来たのかしら?」

女性はチラッと外のほうを見る。

「アイテム袋があるから大丈夫です」

「アイテム袋? それなら大丈夫かしら? それで何枚欲しいの?」

女性は納得してくれたようで、話を進ませてくれる。

あらためて枚数を聞かれたけど、何枚買う?

四畳半? 六畳? 八畳?

六畳でいいかな?

王都のクマハウスやミリーラの町のクマビルの二階の部屋、旅用のクマハウスを一部屋変えるのもいい。

それと孤児院の子供たちは床でゴロゴロしているのを見かける。絨毯より、畳のほうがいいかもしれない。

わたしは単純な計算をすると、女性に答える。

「60枚ぐらいかな?」

お店の部屋を見ると、畳が積み上がっている。そのぐらいはあるよね?

「……えっと、お嬢ちゃん。畳は安くはないの。それに量が多くない? ちゃんと、親御さんから確認を取ったほうがいいわよ」

女性は優しく、確認するように言う。

まあ、わたしみたいな女の子が畳を60枚も欲しいって言えば、こんな反応になるかな?

「お金の心配は大丈夫だよ」

「それにいくらアイテム袋があるからと言って、そんなに多くは入らないでしょう?」

女性は自分のためか、わたしのためか、いろいろと心配する。

まあ、両方なんだろう。

わたしは畳の値段を確認して、60枚分のお金を出す。

女性はお金を見ると驚くが、納得してくれる。

「それで、どんな畳が欲しいのかしら?」

残念ながら、わたしの頭の中には畳の良し悪しの知識は入っていない。

なので、質が良い畳をわたしの部屋用に買い、残りは普通の畳を購入する。

値段は少しだけ、まけてくれた。

そして、わたしが購入した畳をクマボックスに仕舞うと、女性は驚いた顔をした。

「あ、ありがとうございました」

女性はお店をあとにするわたしに頭を下げる。

本当にお金が使えて良かった。国によってお金が使えないってことはあるからね。

でも、これで家に帰ったら和室が作れる。

無事に畳を購入することができたわたしは、和風タンスや家具などを見つけると購入する。

使うかどうかは別にして、欲しいと思ったら買ってしまうのは、わたしの悪い癖だ。

もし、フィナに知られたら、きっと怒られるね。

フィナのご機嫌を取るために、簪や手鏡などを購入する。逆効果かなと思いつつ、他にご機嫌をとる方法が思い付かないから仕方ない。

食べ物のほうが良かったかな?

わたしはお昼代わりに、団子を食べながら、そんなことを思った。

そして、ふらふらとあちこちで買い物をしながら、冒険者ギルドにやってきた。

ギルドも瓦屋根だ。

中に入ると、普通の冒険者から、侍っぽい冒険者もいる。

わたしが入ると、いつもながら注目を浴びる。

「くま?」「クマ?」「熊?」「ブラッディベアー!」

最後のなに?

聞き間違い?

部屋を見渡すと、わたしを見て、怯えている冒険者が一人いる。

もしかして、わたしのことを知っている?

でも、なんで、怯えているかな?

とりあえず、話しかけたりしてこないので、スルーする。

部屋には数人の冒険者がいて、わたしのことを見ているが、声をかけてくる者は誰もいない。絡まれることはないみたいだ。

わたしは部屋を見回して、受付のほうを見る。

受付には和装の格好で20歳前後の女性が座っている。女性の髪は 簪(かんざし) でまとめられている。和風だね。

受付嬢はじっとわたしのほうを見ている。

「あのう、聞きたいことがあるんだけど」

「は、はい、なんでしょうか?」

ギルド嬢はわたしのことを観察するように見る。

気になるのは分かるが、わたしはギルドについて尋ねることにする。

「冒険者ギルドって、他の国のギルドカードも使えるの?」

「はい、使えますよ」

受付嬢の話では、冒険者ギルドは異国から来た物が広がっていったそうだ。だから、どこの冒険者カードでも使えるってことらしい。

イメージ的にA国で始まったギルドが隣のB国、その隣のC国、その隣のD国とE国、G国と広がって、和の国まで広がっていったようだ。

だから、システム的には同じなので、ギルドカードの内容も読み取れる。

「えっと、あなたは冒険者なの?」

「そうだけど」

わたしが冒険者だと言うと、部屋がざわめき立つ。

わたしが冒険者たちのほうを見ると、受付嬢が立ち上がって、ざわめく冒険者たちに向かって口を開く。

「みなさん、仕事をしないなら、帰ってください。ここは暇を潰すところじゃないですよ」

「俺たちは情報交換しているだけだよ」

「ああ、そうだよ」

「情報交換は大事だからな」

「そんなことを毎日言っているでしょう。少しは仕事をしてください」

受付嬢は呆れる。

冒険者は来るのが遅かったのか、少ない。先ほどのブラッディベアーと言った冒険者の他には、数人程度しかいない。

受付嬢から話を聞いたわたしは、依頼ボードでも確認しようと受付嬢から離れようとしたとき、和装の服を着た男性が中に入ってきて、受付嬢のところに向かう。

「昨日、依頼をした者だが、誰か引き受けてくれた者はいるか?」

「イツキさんでしたね。まだ依頼は引き受けられていません」

「それじゃ、困る。牛や鳥の家畜がやられているんだ。討伐してくれないと、死活問題だ」

「冒険者が依頼を受けるか、受けないかは個人の自由になります。一応、冒険者に直にお願いできますが、かまいたちになると、それなりの冒険者でないと、倒すことはできませんので。すぐには」

受付嬢はチラッと、残っている冒険者を見る。

冒険者は顔を逸らす。

「それなりの冒険者でないと無理ですから」

受付嬢は二度言って、男性のほうをみる。

どうやら、ここに残っている冒険者はランクが低いらしい。

「そこをなんとか頼む。村の危機なんだ」

男性は頭を下げて、受付の台の上に付ける。

「頭を上げてください」

たしか、かまいたちって、風の刃で切る妖怪だよね。

ここだと魔物になるのかな?

「頼む」

男性は頭を上げない。

「わたしが引き受けようか?」

かまいたちが気になったので、わたしは男性に声をかけた。