軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

431 クマさん、新しい陸を発見する

フィナとシュリはティルミナさんのお手伝いをしているので、一人でタールグイの島に来ている。

クマの地図を出すと、ゆっくりだけど島は動いている。本当に今はどの辺りを移動しているのかな? 全体マップが表示されないから、ミリーラの町からどれほど移動しているかわからないし、方角も分からない。さらに地図は真っ黒の状態だから困る。

だから、今日はのんびりとタールグイマップでも作ろうかと思っている。

タールグイの島の全ては把握してない。把握しているのは過去の人が使ったと思われる道と外周ぐらいだ。

とりあえずは、どこにどの果物や野菜があるかぐらいは紙に書こうと思っている。紙に書いておけば、今度欲しいときに迷わずに行くことができる。地図も必要だけど、看板でも作ろうかな? その前に道を舗装したほうがいいかな? 道も長い間、使われていなかったので、でこぼこだ。それに新しく作るのもいいかもしれない。魔法でやればトンネルを作るより簡単だ。

わたしは紙に楕円形の地図を描くと、クマハウスの位置を記入する。そして、わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚して、タールグイマップの作成に付き合ってもらう。

まずはタールグイの頭と思われる位置から、時計回りに出発する。その進む 傍(かたわ) ら、道や果物や野菜がなっている場所を地図に記入する。

「この辺りはオレンの木がなっているね」

地図にオレンの絵を描くと、次の目的地に向かって歩き出す。

のんびりとタールグイを一周し、小道に入ったりする。全てを回ったわけじゃないけど、かなりの種類の食べ物があるね。

バナナ、リンゴ、オレン、モモと、いろいろな果実がなっている。メロンはないのかな?

魔物も動物もいないから、食べられることもない。

鳥はいるみたいだ。

タールグイマップを見ながらタールグイの先頭まで戻ってくると、横を歩くくまゆるとくまきゅうが止まり、首を上げる。

「どうしたの?」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうの見ているほうを見ると、2人は海を見ている。

もしかして、魔物!?

わたしはくまゆるとくまきゅうが見ているほうに視線を向けると、かなり遠くに船が見えた。その先には島? 大陸? 陸が見える。

もしかして、人がいる?

クマの地図をもう一度出して、タールグイの移動する方向を確認する。いきなり方向転換でもしない限り、このままの軌道だと、陸には近づかない。

う~ん、どうする?

選択肢には陸を目指す。このままスルーの二択がある。

動いているから、後で行くって選択肢は存在しない。

だから、わたしの選ぶ選択肢は決まっている。

たとえ、タールグイの島に戻ってこれなくても、クマの転移門を設置すれば、帰ることはできる。新マップが実装されたのに行かないのはゲーマーじゃない。

わたしは手に持っているタールグイマップをクマボックスに仕舞う。

「くまゆる、くまきゅう。行くよ」

「「くぅ~ん」」

わたしはくまゆるに乗って、タールグイの渦潮をかわし、波打つ海に飛び出す。その後ろをくまきゅうが追いかけてくる。

わたしたちは陸を目指して、海の上を駆けていく。後ろを向けばタールグイの島はどんどん離れていく。

これがどこにでも設置できるクマの転移門がなければ、怖くて飛び出せない。本当にクマの転移門には感謝だ。

わたしは周囲の船を確認しながら陸を目指す。遠くにいるから気づかないと思うけど、見つかると面倒なので船には近づかない。そして、徐々に陸がハッキリと見えてくる。港があるようで船が停まっているのが見える。その先には建物も見える。

おお、やっぱり人が住んでいるよ。

どこの国だろう。少し楽しみであり、クマの格好で歩くと注目を浴びるんだろうと思う。その辺りは新しい街に行くなら諦めている。

このままくまゆるに乗って、陸に近づくと気づかれるかもしれないので、わたしは海の上に降りると、ここまで乗せてくれたくまゆるとくまきゅうにお礼を言って送還する。

人が海の上を歩くのも変だけど、クマが海の上を走るのも変だからね。

わたしは一人になると、海の上を駆け出す。それにしても海の上を走れるようになるとは思わなかったね。

わたしは目視や探知スキルを使用して、人がいない場所を探し、気づかれないように陸にあがる。わたしが陸にあがった場所は港から少し離れた場所になるが、街の中になるみたいだ。

わたしは建物があるほうに向かって歩きだす。徐々に街並みが見えてくる。

これはもしかして?

わたしは少し早歩きで建物に向かう。

建物があるってことは人もいるってことだ。いつも通りにわたしが歩くと視線を集めるが、その視線よりも気になるものが、目の前に沢山ある。わたしは街並みの建物、歩く人を見る。瓦屋根がある建物が並び、歩く人は和装に近い服を着ている。

もしかして、和の国?

中にはフィナたちのような見慣れた服を着ている人もいるが、和装が多い。

う~ん、文化が混じっているのかな?

だけど、ここは和の国かそれに近い国なのは間違いない。

さて、どうしようか?

クマの転移門の設置する場所を探すべきか、宿屋を探すべきか。

商業ギルドってあるのかな? 冒険者ギルドが存在するかも気になる。魔物は同じなのかな。それとも違うのかな? いろいろと気になるところだ。

わたしは自分に向けられる視線は無視しながら歩いていると、立派な建物を発見する。木造の瓦屋根の建物だ。建物は塀で囲まれている。建物の入口に看板を見つけると、そこにはさくら旅館と書かれていた。

おお、宿屋発見!

旅館って書かれるだけで、和風の感じがする。

もう、これは泊まっていけと言っているよね。それで、数日泊まって、街を探索するのもいいかもしれない。それでクマの転移門を設置する場所を見つけて、設置しても遅くない。

わたしは泊まれるか、確認するため旅館の扉に向かって歩き出す。

扉をガラガラと横にスライドさせて、旅館の中に入る。

「いらっしゃいませ」

わたしが旅館の中に入ると、わたしぐらいの年齢の女の子がやってくる。服装は旅館に合う和装を着ている。髪はかんざしのような物で、髪が結ばれている。

女の子はわたしの格好を見ると、驚きの表情を浮かべる。

「クマさん!?」

女の子はわたしのことをジロジロと見ながら対処に困っている。

「あのう、泊まれるかな?」

「あっ、はい。大丈夫です」

わたしが話しかけると女の子は我に返る。

とりあえずは部屋は空いているみたいだ。それなら、数日泊まるのもいいかもしれない。

「その前に確認をよろしいでしょうか?」

「なに? この格好についての質問なら、答えないよ」

「いえ、それも気になりますが」

やっぱり、気になるんだ。

「この旅館はベッドはありませんが、大丈夫でしょうか? 異国の方で床で寝ることを嫌がる方がいらっしゃいます。その場合はお断りをさせていただき、他の宿屋を紹介させていただいております」

ベッドが無いってことは考えられることは1つ。

「もしかして、畳?」

旅館って言えば和室。つまり畳だ。

「はい、ご存じなんですね。この旅館は畳の上で寝ることになります。それを知らずにお泊まりになられる方がいますので、確認させていただいてます」

「うん、大丈夫だよ」

わたしのマンションにも和室はあった。あのときはなにも感じていなかったけど、畳と聞くと嬉しくなるのは日本人だからだろうか。

「それではお部屋に案内する前に、どの部屋がよろしいでしょうか?」

「種類があるの?」

「はい、部屋の大きさや、風呂付きなど」

「もしかして、お風呂は温泉!?」

「はい、大きな共同風呂もありますが、個人でゆっくりと入浴されたいお客様もいらっしゃいますので、部屋にお風呂を用意させて頂いています。でも、その代わりにその部屋は金額が高めになっています」

「そのお風呂付きの部屋をお願い」

温泉があるなら入りたい。でも、共同風呂は控えたい。だから、部屋に温泉付きの部屋があるなら、その部屋一択だ。

「その、部屋も広く、お値段がお高くなりますが」

女の子は言いにくそうに、わたしの表情を窺いながら口にする。

どうやら、わたしがお金を持っているか心配しているみたいだ。

まあ、こんなクマの格好している女の子が大金を持っているとは思わない。

「問題はないよ。あっ、そうだ。このお金は使えるの?」

ここは違う国だ。わたしが持っているお金が使えない場合もある。わたしはお金を見せる。

「大丈夫です」

お金は使えるみたいでよかった。

わたしは指定された金額の三日分の料金を払う。金額には朝食と夕食も含まれている。いらなければ、少し安くなるそうだけど、お願いした。

「わたしはこの旅館の娘のコノハと言います。なにかありましたら、申し付けてください」

「わたしはユナ。この格好についてはなにも答えないから、よろしくね」

「は、はい」

女の子はなにか言いたそうにしたが、口を閉じた。

もしかして、尋ねるつもりだったのかな?

わたしは女の子の案内で部屋に向かう。

「お客様はどこから来たのですか?」

「う~ん、ミリーラの町って知っている?」

わたしが和の国と繋がりがある町の名前を伝える。

「はい、知っています。しばらくの間、海に大きな魔物が現れたとかで、行くことができなかったって聞きました」

ああ、クラーケンね。

そんなこともあったね。

「話によると、冒険者が倒したそうですが、海にいる大きな魔物を倒すなんて、本当に凄い冒険者がいるんですね」

「本当だね」

「お客様は、どんな人が倒したか知っていますか?」

今、会話している 人物(クマ) がそうだよ。とは言えないし、言ったとしても信じないだろう。だから、わたしの答えは決まっている。

「ちょっと、知らないかな」

「そうなんですね。そんな強い冒険者がうちの旅館に泊まってくれれば、どのように倒したか話を聞くことができるんですが、残念です」

その人物がこれから泊まるんだよ。

女の子に嘘を吐いているようで、自分が悪いことをしているように感じてしまう。