軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

404 クマさん、試練を見にいく

それから、一度商業ギルドに戻り、お金の支払い、購入の手続きをおこなう。

お金を支払ったときギルド嬢は驚いていたが、ギルドマスターからの指示通り、何も言わずに手続きは終了した。

そして、無事に家を購入したわたしは家の掃除をしているフィナとルイミンのところに戻ってくる。クマ装備がなければ、移動するだけで疲れてしまうほど距離があるが、住むわけじゃないから、問題はない。

家の中に入るとフィナとルイミンが雑巾や箒を持って掃除している姿がある。

「ユナお姉ちゃん、お帰りなさい」

「ユナさん、思っていたよりも、広いから大変ですよ~」

「住むわけじゃないから、真面目にやらなくてもいいよ」

「でも、ホコリとか気になるので」

ルイミンはホコリが積もっていそうな隅を箒を持って掃く。2人だけにやらせるわけにもいかないので、わたしも一緒に掃除をする。

「二階はやった?」

「まだです」

「一階だけでも大変です」

「それじゃ、二階はわたしたちがやってくるね」

「わたしたち?」

フィナとルイミンが顔を見合わす。

「くまゆるとくまきゅうのことだよ」

わたしは子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚して、掃除を手伝ってもらう。くまゆるとくまきゅうには前回同様に床掃除をお願いする。まあ、小さいから床掃除ぐらいしかできないんだけどね。

窓を開けて、掃除を始める。

そして、5人で手分けをして夕暮れになる頃に掃除を終える。積もった埃の掃除や空気の入れ換えはできた。流石に半日で全ては終わらないが、住むわけではないので十分だ。

わたしは一階にある倉庫にやってくる。まだ、なにも置かれていない。前に住んでいた人が使っていた空の棚があるぐらいだ。

わたしは一番奥の壁際にクマの転移門を設置する。

「これで、いつでもこの街に来ることができるんですね。でも、ユナさんしか使えないのが残念です。わたしが使えれば、この街に来ることも、フィナちゃんやお姉ちゃんにいつでも会いにいけるのに」

たまに誰でも使えたらと思うときもあるけど、誰でも使えたら、それはそれで面倒になりそうだからこれでいい。

「ユナお姉ちゃん、帰りはこの扉を使うの?」

「う~ん、ジェイドさんたち次第かな。帰るのが別々になれば使うつもりだけど、一緒に帰ることになれば使うことはできないからね」

「楽に帰れるのはいいけど、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って帰れないのも残念です」

まあ、最悪エルフの村にルイミンを送り返すってことにして、別々に移動する方法もある。まあ、ジェイドさんたち次第だ。

「それじゃ、お風呂に入って、掃除で汚れた体を綺麗にしてから帰ろうか」

暑いなか掃除をしたから、2人とも汗を掻いている。それにエプロンなど汚れても良い格好はしても、髪とかに埃が被っている。

わたしは目の前にあるクマの転移門の扉を開けてエルフの里のクマハウスに移動する。そして、くまゆるとくまきゅうを含めた5人でお風呂に入って、汗を洗い流し、体を綺麗にしてから宿に戻った。

翌日。今日から試しの門の試練が始まる。今日はジェイドさんは参加の予定はないけど、どんな感じで行われるか見学しにいくことにする。

「でも、どうして、こんなに朝早く行くんですか?」

朝日が昇ったばかりだ。フィナとルイミンは眠そうにしている。

「それは混む前に試しの門に行きたいからだよ」

あくまでわたしの格好のせいだ。

どのような状況になるか分からないけど、お祭りみたいに人が集まったら、大変なことになる。階段にいるわたしに人が集まってきたら危険だ。

それにロージナさんの話では早朝は人が少ないらしい。わたしは一番乗りをする者が多くいると思ったが、そうでもないらしい。武器職人は起きてすぐに行動するのは何も問題はない。でも、武器を扱う冒険者としては朝食を食べて、少ししてからのほうが万全の体調になる。誰だって、寝起きに武器を扱っても、脳だって起きていないだろうし、体だって準備はできていない。良い結果を出すのは難しい。

だから、わたしは人が集まる前に、試しの門の入口まで行こうと思っている。

そして、数人の鍛治職人の様子を見たら、帰るつもりでいる。

「でも、眠いです」

「寝ててもいいんだよ」

「行きます」

起こしてくれたくまゆるとくまきゅうは送還して、わたしたちは試しの門に向けて出発する。

わたしの予想通り、まだ人通りは少ない。階段の前にやってきても人の姿はない。

「フィナ、疲れたら遠慮なく言うんだよ。誰も見ていないなら、恥ずかしくないでしょう」

「はい。でも、頑張ります」

「ユナさん。どうして、わたしには言ってくれないんですか?」

「あれだけ簡単に登っていったルイミンには必要はないでしょう。でも、降りるときは手伝ってあげようか?」

「遠慮します!」

ルイミンは逃げるように階段を登っていく。降りるときと言っているのに上に逃げるなんて、自分から一緒に飛び降りてくださいと言っているようなものだ。

わたしとフィナもそんなルイミンのあとを追いかけるように階段を登っていく。フィナは息を切らせながらも一段一段、自分の足で登っていく。そして、額に汗を掻きながら、試しの門がある場所まで登りきる。

「お疲れさま」

わたしはフィナとルイミンに冷たい水を出してあげる。

まだ、早いこともあって、誰の姿もない。早すぎたかな?

「誰もいないです」

「ユナお姉ちゃん、ルイミンさん。あそこに誰かいます」

フィナが指差すほうに視線を向けると一人いた。じっと試しの門がある建物を見ている人がいる。その人物には見覚えがある。

「ロージナさんです」

ルイミンの言うとおりにロージナさんが建物の前に立っている。

「ロージナさんも参加するんでしょうか?」

「う~ん。でも、ロージナさん、武器は作っていなかったし」

わたしたちが街に来てからも武器は作っていないはず。わたしたちが頼んだ鍋やフライパンなどを作っている。それまでもリッカさんからは武器を作っていた話は聞いていない。ロージナさんは何か思いつめるような表情をしている。わたしが声をかけるタイミングを逃すと、ロージナさんがわたしたちのほうを見る。

「嬢ちゃんたちか。こんなに早くどうした。もうしばらくしないと人は集まらないぞ」

「うん、わたしの格好がこれだから、早めに来ただけ。ロージナさんもどうしたの? もしかして、参加するの?」

「まさか、この数年武器は作っていない」

「それじゃ、どうしてここに?」

「……未練かもしれない」

「未練?」

「武器を作りたい未練だ」

「作ればいいんじゃ」

「そんなに簡単なことじゃないんじゃよ。武器を作りたいと思う気持ちはある。だが、ガザルとゴルドの2人が出ていって、心の中が満たされない。俺はあの2人が成長する姿を傍で見ることを楽しみにしていた。そして、俺も一緒に成長していた。でも、2人がいなくなったことで、武器が作れなくなった。作っても楽しくなくなった」

娘がお嫁にいったり、恋人が亡くなったりしたわけじゃないんだからと思うのは、わたしの心が汚れているからかな。それに弟子なんてお店を持ったりして、いつかはいなくなるものだ。そのたびに寂しくなっていたら、きりがない。弟子が一人前になって出ていったら、新しい弟子でも作ればいいのに。

「だから、見習い鍛冶職人の姿を見れば、昔のように武器を作る情熱が出るんじゃないかと思ってな」

それでこんなに早く来ているわけか。

「それで嬢ちゃんたちも見に来たのか?」

「まあ、一応」

「鍛冶職人や商人でもないのによく来るな」

「街の大イベントじゃないの?」

「鍛治職人にとっては大イベントだ。でも、一般の人からしたら、試練を見ることはできない。さらにこの長い階段を登らないといけないからな」

それはわたしも思う。試練が見られないのが一番盛り上がらない。せめて、カメラとかあって、中の様子が映像が映し出されれば、楽しめるのに。

それに長い階段の問題がある。

「どうして、こんな上に試しの門があるの? もう少し下のほうに作ればいいのに。そもそも試しの門って誰かが作ったの? それとも昔からあったの?」

「昔に魔法使いが作ったと言い伝えられている。なんでも、この場所が魔力が集まりやすく、作りやすかったらしい」

魔力が集まりやすいって、霊脈とか龍脈みたいなものかな。ゲームや漫画でも力が集まりやすい場所の話が出てくることがある。

でも、試しの門は魔法使いが作ったって。ピラミッドみたいに、知らないうちにあったわけじゃないみたいだ。

「もしかして、試しの門が開く日にちが分からなかった理由は、その魔力で作られているからなの?」

「そうだ。試しの門は魔力で閉じている。そして、魔力が溜まると門が開く」

だから、試しの門の開く正確な日にちが分からなかったんだね。

「そろそろ、開くようだな」

ロージナさんの視線と同じほうを見ると、建物の扉が開く。そして、中からドワーフが出てくる。年齢は分からないけど、ロージナさんと年齢は変わらないように見える。

「あの人は?」

「鍛冶ギルドのギルマスだ。毎年、時期が近づくと職員が建物の中で泊り込み、開くとギルマスに報告される。報告を受けたギルマスは準備のために泊まっていたんだろう」

鍛冶ギルドのギルマスは扉から出てくると、小さくアクビをするとわたしたちに気付く。

「クマ!? それにロージナ?」

鍛冶ギルドのギルマスはわたしとロージナさんのことを交互に見る。

「俺の知り合いだ。あまり、気にしないでやってほしい」

ロージナさんがフォローを入れてくれる。

「……まあ、おまえさんが言うなら気にしないが、可愛らしい格好をした女の子の知り合いがいるんだな」

「遠くに行った弟子の知り合いだ。この街に来たから、少し世話をしているぐらいだ」

「それで、おまえさんは今年も見に来たのか? それとも参加しに来たのか?」

「いや、見に来ただけだ」

「もう、武器は作らんのか?」

「どうだろうな。作るかもしれんし、作らないかもしれん」

「結局、どっちなんだ?」

「俺自身も、分からないってことだ」

「それで、今年も見に来たわけか。中で茶でも出すから飲んでいけ」

「いいのか?」

「人が来るまでだ。そっちのクマの嬢ちゃんたちも階段を登ってきて、疲れているだろう。茶で良ければだすぞ」

わたしたちはその言葉に甘えさせてもらう。建物の中も見たいしね。