軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

398 クマさん、買い物をする

リッカは周囲の視線を諦め、歩き出す。

わたしにクマの着ぐるみを脱ぐという選択肢はない。リッカには諦めてもらう。

「でも、本当にドワーフが多いね」

クリモニアでも王都でも見かけることはあるけど。こんなに多く見掛けることはない。右を見ても左を見ても、前から歩いてくるのもドワーフだ。

「ここには鉱山に森林などの資源がたくさんあるから、わたしたちドワーフが住むには適しているからね」

資源についてはどこの国でも大切なのは変わらない。ただ、ドワーフって種族は物を作ることに特化している種族だ。

それにしてもドワーフは身長が低い。成長した男性でも、それほど背は高くない。わたしと同じか、すこし高いぐらいだ。女性ドワーフはわたしと同じか、少し低い。ちなみにリッカはわたしより少し低い。

そんなリッカがわたしたちに尋ねる。

「それで、みんなは行きたいところや、見たいものってある?」

街の特産品を売っているところなどを見てみたいかな。ドワーフの街なんだから、珍しいものがあるかもしれない。

あと、ノアにはなにも言わずに来ているので、「どうして、わたしも連れていってくれなかったんですか!」と文句を言われても困るので、お土産を用意しておきたい。

「なにか珍しいものがあれば、お土産に欲しいんだけど」

「もしかして、彼氏さんですか? 同じようにクマの格好をしているんですか?」

リッカが目を輝かせながら尋ねてくる。

「いると思っているの?」

わたしが少し強い口調で尋ね返す。

わたしに彼氏がいるように見えるなら、眼医者に連れていかないといけない。かなりの重症だ。末期かもしれない。

それに彼氏がクマの格好をしてるなんて、絶対に付き合いたくない。もっとも、男のほうもクマの格好したわたしと付き合いたいと思う人物はいないだろう。まあ、男女のお付き合いをする予定はないので、考えるだけ無駄だ。

わたしの言葉にリッカはわたしのことをジッと見ている。そして、視線をゆっくりと逸らす。

なに、人のことを見てから、悲しそうな目になって、視線を逸らすのはやめてほしいんだけど。

リッカは気まずそうにすると、視線をフィナとルイミンのほうに変える。

「フィナちゃんやルイミンちゃんは、なにか見たいものや欲しい物はある?」

「えっと、わたしも家でお留守番をしている妹になにか買ってあげたいです」

「それじゃ、わたしも弟に買っていこうかな」

フィナの言葉にルイミンもそんなことを言い出す。

そんなわけで、わたしたちはお土産になりそうなものを探しつつ、街を探索することになった。

「ここなんてどうですか? 鉄細工された可愛い小物やアクセサリーを売っていますよ」

小さな雑貨店。リッカはわたしたちの確認も取らずに雑貨店の中に入っていく。中に入ると、いろいろな細工されたアクセサリーなどが並んでいる。

「綺麗です」

指輪やネックレス、髪飾り、ブローチ、女性向けのアクセサリーが並んでいる。どれも鉄で作られている手作りだ。

わたしは花柄のブローチを手に取る。ノアに似合うかな? こっちはフィナとシュリに似合いそうだ。

「フィナちゃんに、これなんてどうですか?」

リッカが青色に彩色された綺麗な花飾りを手に取り、フィナに見せる。

「可愛い花です。色も綺麗です」

「ルイミンちゃんの薄緑色の髪には赤色かな。花が咲いているようで似合うよ」

リッカが髪飾りをそれぞれの髪にあてて、確認する。

「本当ですか?」

「ほら、鏡があるから、見てみて」

髪飾りを付けたフィナが鏡の前で恥ずかしそうに確認している。

「綺麗だけど、わたしに似合いますか?」

「とっても可愛いよ」

「それじゃ、次はわたしが」

ルイミンがフィナに代わり、鏡の前で髪飾りを確認する。女の子同士の楽しい会話に花が咲いている。でも、フィナが値札を見て悩んでいる姿がある。

「ちょっと高いかも」

「村だと、あまりお金を使わないので、わたしも自分のお金はあまり持っていないです」

フィナとルイミンが値段と品物を見比べて、ゆっくりと品物を棚に戻す。

「2人とも気に入ったのがあったら、わたしが買ってあげるよ」

「でも……」

「気にしないでいいよ。フィナにはいつもお世話になっているし、ルイミンも村のみんなからキノコとか山菜をたくさん貰ったから、そのお礼と思ってくれればいいよ。その代わりにシュリとルッカのお土産は自分たちで買ってあげればいいよ」

わたしの言葉にフィナとルイミンは嬉しそうにお礼を言い、嬉しそうに、いろいろな髪飾りやネックレス、ブローチなどを付けて鏡の前で確認したりし始める。

2人とも女の子だね。わたしには持ち合わせていない感覚だ。他の女の子に選んであげるのはいいけど。自分のとなると、選ぶ考えも浮かばない。

「ユナお姉ちゃんは買わないの?」

「2人と違って、わたしは似合わないからね」

クマさんフードに髪飾りを付けても、クマの首にネックレスをしても、胸にブローチをつけても、手首にブレスレットをしても、クマの着ぐるみには似合わない。

鉱山のときに会ったバカレンジャーがいたら「ペットに首輪は必要だろう」とか言い出しそうだけど、首輪は置いていない。もっともそんなことを言ったらクマさんパンチが飛ぶ。

「ユナお姉ちゃんは綺麗な髪をしているから、似合うと思うのに」

「ユナさんの髪は長くて綺麗ですよね。わたしが男だったら、絶対にほっとかないですよ」

「二人とも、ありがとう」

二人のお世辞を鵜呑みにするわたしじゃない。まして、わたしを慕ってくれる二人だ。本当のことは言えないかもしれない。だから、二人の話は、話半分に聞いておく。

フィナが自分とシュリの髪飾りを決めると、今度はわたしと一緒にノアの金色の髪に似合う物を探すことにする。ノアの金色の髪なら、赤色、青色、緑色、銀色、どれも似合うような気がする。

それから、それぞれの髪飾りを購入する。

髪飾りの代金はわたしがお金を払う。でも、シュリの髪飾りの代金だけはフィナが自分で払う。あと、フローラ様の分も考えたけど、王族が付けていいものか分からなかったのでやめておいた。

フィナとルイミンはさっそく、購入した髪飾りを付ける。フィナには青い花を細工された髪飾りを、ルイミンには赤い花の髪飾りが付けられている。

「2人とも似合っているよ」

「ありがとうございます」

可愛い子は何を付けても似合う。わたしが付けても、メスクマに見えるだけだ。

「でも、ルッカにはなにを買っていこうかな。さすがに髪飾りやアクセサリーを買っても喜ばないし」

「男の子なら、ナイフとかいいんじゃない?」

すぐにナイフが出てくるとは、さすが鍛治職人の娘だ。

「う~ん、勝手にナイフをプレゼントしたら、お父さんに怒られるかも」

「弟さんは、なにか好きなものはないんですか?」

「村じゃ、森の中を駆け回っているし」

わたしたちはルッカのお土産になりそうな物を探しつつ、街を探索する。

「あっ、ここがいいかも」

ルイミンが小窓からお店の中を覗く。

「ここは置物ですね」

お店の中に入ると、缶ジュースからペットボトルほどの高さの、鉄で作られた置物が並んでいる。

甲冑騎士や冒険者などを鉄で作ったフィギュアがある。いろいろなポーズなどがある。普通に立っているバージョンから、剣を構えているバージョン。

こっちとこっちを並べると、戦っているように見える。そうなると魔物がいてもいいかもしれない。

それにしても鉄でよく作れるものだ。

「格好いい。これなら、ルッカも喜ぶかも」

「中々人気があって、いろいろな街から商人が買い付けに来たりするんですよ。だから、王都や他の街で買うより安く買えますよ」

「こっちの棚は動物が並んでいますよ」

馬や牛、豚、鳥、わたしが見たことのない動物もいる。全部買えば、動物園が作れそうだ。他の棚には爬虫類もいる。ヘビやカエルなんて誰が欲しがるんだろうね。

そんな中、フィナとルイミンが動物が並んでいる棚を一生懸命に何かを探すように見ている。

「クマがいないね」

「はい、いないです」

どうやら、2人はクマを探していたらしい。でも、確かにいないね。もしかして、人気がないから作らないのかな? それはそれで寂しい。

そんな残念そうにしているフィナとルイミンに女性の店員さんが声をかけてくる。

「ごめんね。クマの置物は、最近エルファニカ王国の商人が買っていって売り切れているの。なんでも、クマを買い求めるお客様が増えているって聞いたよ。だから、クマ好きの嬢ちゃんには悪いけど、ゴメンね」

お店の店員さんがわたしの格好を見ながら、教えてくれる。

決して、わたしはクマ好きだからと言って、この格好をしているわけじゃない。でも、店員さんは微笑ましそうにわたしのことを見ている。

そんな目で見ないで。

「でも、クマがなんで売れているんだろうね」

「うぅ、クマさんが欲しかったです」

鉄のクマの置物がなかったので諦めてお店をでる。

別に騎士でも良かったんじゃないかな。騎士とか格好良かったよ。

でも、ルイミンは諦めない。

次に木工職人の木彫りのお店も行くが、クマの木彫りは無かった。やっぱり、エルファニカ王国の商人が買っていったらしい。

「そんなにクマにこだわらなくてもいいと思うけど」

「いえ、ルッカもクマが好きだから、クマが喜ぶはずです」

そんな言い切らなくても。でも、なんでこんなにクマが売れているのかな。不思議でならない。

それから、別のお店を回り、クマの置物を手に入れたルイミンは嬉しそうにしていた。

そして、どうしてかフィナも買っていた。土や石像で作った物で良ければわたしが魔法で作ってあげたのに。でも、それだとお土産にならないかな?

そして、わたしも良い物を見つけ、みんなに気付かれないように買い、フィナたち3人にプレゼントする。

「ユナお姉ちゃん、これは?」

「綺麗に細工された小箱が売っていたから、買ったんだよ。さっき買った髪飾りや学園で買った髪飾りを仕舞うといいよ」

「ユナお姉ちゃん、ありがとう」

「ユナさん、わたしも?」

ルイミンはわたしと小箱を見比べる。

「フィナだけに買うのもあれだからね」

「一生大切にしますね」

エルフのルイミンが言うと何百年となりそうで怖いんだけど。

「でも、どうしてわたしまで」

小箱を持ったリッカが不思議そうにする。

「街を案内してくれたお礼だよ」

「でも、年下の女の子に貰うのは」

「わたし15歳だよ」

「わたしは18歳だよ」

わたしとリッカの首が同時に傾く。

「え~~~~ユナちゃん、15歳なの。もう少し下かと思っていた」

「わたしは同い年ぐらいと思っていました」

だから、ドワーフもエルフも年齢が分からないよ。

そのうちに年齢詐欺で訴えられても知らないよ。