軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

379 クマさん、王都に向かう

ミサは帰っていき、その数日後にシアも王都に帰ることになり、その護衛はわたしがすることになった。

わたしがフローラ様に押し花をプレゼントすることを知ったシアから「それじゃ、一緒に王都に行きませんか」と言われた。断っても良かったんだけど。シアが王都に戻ってから、すぐに王都に行けば、シアと一緒に行くのが嫌だから断ったように見える。だから、少し面倒だけど、シアと一緒に王都に行くことにした。

護衛料に関しては断ったんだけど、冒険者ギルドを通して受けることになった。

わたしは街の外にやってくると、くまゆるとくまきゅうを召喚する。

「くまゆるとくまきゅうに乗って、王都に帰れば、カトレアに自慢ができます」

カトレアも随分とくまゆるとくまきゅうのことを気にいっていた。カトレアとも学園祭以来、会っていない。会えるタイミングがないから仕方ない。

「それで、どっちに乗っていいの?」

くまゆるを撫でているシアが尋ねてくる。シアにはくまゆるに乗ってもらい、わたしはくまきゅうに乗る。

「くまゆるちゃん、お願いね」

「くぅ~ん」

「うぅ、やっぱり、可愛い。海のときも思ったけど、乗り心地も良いし、欲しい。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんがいれば、クリモニアにもすぐに来られるのに」

シアが王都から乗ってきた馬はクリフのお屋敷で預かることになった。王都にいた馬も、クリモニアのお屋敷の馬も、クリフの馬だから、どっちにいても変わらないそうだ。今度王都に行くときでも、連れていけばいいらしい。まあ、貴族なら馬の1頭ぐらい、増えてもなんともないよね。

「急いで行くから、落ちないでね。くまゆる、くまきゅう。お願いね」

「「くぅ~ん」」

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは走りだす。今さら、シアに隠すことじゃないので、速度を上げる。ノアを護衛して王都に向かったときよりも速い。

「ユ、ユナさん、速くない?」

「これでも、抑えて走っているよ」

「こ、これで! くまゆるちゃん、大丈夫なの?」

「休憩をいれるから大丈夫だよ。くまゆる、くまきゅう、疲れたら言うんだよ」

「「くぅ~ん」」

と鳴くと、なぜか速度をあげるくまゆるとくまきゅう。

くまゆるとくまきゅうは、王都までの時間短縮をするため、道を外れて道無き道を走る。

「ユナさん、道から離れていますよ」

「大丈夫、こっちのほうが近道だから」

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは草原を走り抜け、森の中を駆け抜け、橋を使わず、川の上を走る。シアは水の上を走れることを知っているので、何も問題はない。時間短縮だ。

そして、夜になるとクマハウスを出して一泊する。

クマハウスに入るとシアはキョロキョロと部屋を見渡す。シアはクマハウスに入るのは今回で二度目になる。一度目はタールグイのときだ。あのときは慌ただしく、クマハウスの中を見れていないはず。だから、クマハウスを見るのは今日が初めてと変わらない。

「ノアから聞いていたけど、本当にお風呂があるんですね。しかもクマがいる」

シアは部屋の中を動き回り、風呂を見つけて騒ぐ。

「お風呂と食事の準備をするから、ちょっと待っててね」

「わたしも手伝います」

「お風呂はお湯を入れるだけだし、食事はアイテム袋から出すだけだから大丈夫だよ」

わたしは風呂の準備をして、クマボックスからパンなどを出して、簡単な夕食を食べる。

「部屋はあとで案内するから、お風呂に入ったら寝るんだよ」

「普通、こんな野営はないです。移動もくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは凄く速いし。こんな家が入るアイテム袋を持っているし。ユナさん、便利過ぎです」

シアは子熊化したくまゆるを抱きながら、そんなことを言う。

「普通は夜空の下で毛布を巻いて寝るんですよ。もちろん、お風呂なんてないです。ユナさんに護衛をしてもらったら、他の人に頼めなくなりますよ」

クマハウスもそうだけど、これだけの大きさのクマハウスが入るクマボックスが一番凄いんだと思う。大きな魔物も入るし、本当に便利なクマさんパペットだ。

そして、シアは食事を済ませるとわたしに声をかける。

「ユナさん、一緒にお風呂に入りませんか。お風呂も広いから一緒に入れますよね」

「片付けもあるから、わたしは後でいいよ」

わたしはシアの誘いを丁重にお断りする。

同じ年齢のシアとお風呂に入るのは精神的ダメージを喰らう。わたしはチラッとシアの胸を見る。間違いなく、わたしより大きい。もし、比べでもされたら、枕を涙で濡らすかもしれない。

半年か一年後には追い越しているはずだから、それまでは我慢だ。

「くまゆるも疲れていると思うから、くまゆると一緒に入ってあげて」

わたしはくまゆるを犠牲にして逃げる。

「それじゃ、くまゆるちゃんと入ってきますね」

シアはわたしの思惑を知らずにくまゆるを連れて風呂に向かう。そして、片付けを終えたわたしはシアがお風呂から上がると寝室に案内する。

「明日は早く出発するからね。くまゆる、シアが寝坊したら、起こしてあげてね」

「くまゆるちゃん、お願いね」

「くぅ~ん」

わたしはくまきゅうとお風呂に入り、くまきゅうと一緒に眠りにつく。

ぺちぺち、ぺちぺち。

翌日、くまきゅうが起こしてくれる。わたしはお礼を言って起き上がり、朝食の準備をしに行く。

「ユナさん、くまゆるちゃんの起こし方が酷いです」

お腹を擦りながら、シアがやってくる。話を聞くと、ジャンピングボディを喰らったらしい。

「それはシアがちゃんと起きないからだよ」

話を聞くとくまゆると遅くまでおしゃべりをしていたらしい。おしゃべりって、くまゆるは話せないでしょう。ペットに話しかけるみたいなものかな。まあ、わたしもくまゆるとくまきゅうには話しかけるから人のことは言えないんだけど。

「でも、起きるのが早くないですか?」

「クマハウスを見られたくないから、早く出るよ」

一応、街道から離れているとはいえ、もしもの場合がある。

わたしたちは朝食を食べると王都に向けて出発する。道は近道を通り、昼を過ぎた頃に王都に到着する。

「信じられないです。こんなに早く着くなんて」

「ほら、行くよ」

くまゆるとくまきゅうを送還したわたしは王都に入り、シアを家に送り届ける。

「それじゃ、またね」

「ユナさん、お母様に会って行かないんですか?」

「う~ん、これからお城に行くから、そこで会えると思うから」

城に入ればかなりの高い確率でエレローラさんがやってくる。

「それじゃ、もしお母様に会えたら、わたしが帰ってきたことを伝えておいてもらえますか」

「了解」

わたしはシアと別れるとお城に向かう。

いつも通りに城の門を通る。門兵には「すぐに帰るから、国王には伝えないで良いよ」と言ったが「そうもいきません」と言って駆け出す。

フローラ様の部屋に到着して、ドアをノックをする。(もちろん、クマさん手袋は外している)

部屋の中からアンジュさんが顔を出す。

「これはユナさん、いらっしゃいませ」

笑顔で部屋に招き入れてくれる。

部屋に入ると、フローラ様がペンを持って紙に何か書いている姿がある。

「フローラ様、ユナさんが来てくださいましたよ」

「くまさん!」

わたしを見るとパッと笑顔になる。この笑顔を見ると、フローラ様に会いに来たくなる。

「フローラ様は何をしていたんですか?」

「くまさんをかいていたよ」

フローラ様は紙を持ち上げてわたしに見せてくれる。

そこには黒い動物らしき絵が描かれていた。どうやら、黒い動物はくまさんらしい。子供らしい可愛い絵だ。

流石に将来は画家にはならないと思うけど、幼いときから絵心があるのは良いことだ。感受性を育てるからね。

「今回もユナさんの絵が上手に描けていますね」

「うん!」

「えっ」

ちょっと待って、今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど。もしかして、その黒い動物って、わたしなの? たしかに「くまさん」って言っていたけど。どっから見ても黒い動物だ。百歩譲ってクマなのはいい。でも、それがわたしなの?

「この黒いクマさんはわたしなのかな?」

「うん!」

フローラ様が純粋な目で肯定する。

小さい女の子が描いた絵なら、こんなものだと思う。でも、せめて人って分かるぐらいにはしてほしい。

それから、フローラ様に押し花をプレゼントする。

「くまさん、ありがとう」

「それではお部屋に飾っておきますね」

アンジュさんは額に入った押し花を受け取ると、壁に飾ってくれる。

「くまさん、これあげる」

フローラ様は先ほどの描いていた黒い 動物(わたし) の絵を笑顔で差し出す。もちろん、わたしの返答は決まっている。

「ありがとう。大切にするね」

わたしが受け取ると、フローラ様は嬉しそうにする。フローラ様が描いてくれた絵だ。大事に取っておいて、数年後にフローラ様に見せてあげるのも良いかもしれない。

それから、フローラ様と一緒にお絵かきをしていると、いつもより遅いお着きでエレローラさんがやってくる。でも、部屋に入ってきたのはエレローラさん1人だ。国王の姿がない。

「ユナちゃん、来ていたのね。もしかして、シアも帰ってきている?」

「一緒に来ましたから、帰ってきていますよ」

「護衛をしてくれたのね。ありがとうね。あの子も楽しんだかしら」

「楽しんでいましたよ。まさか、シアが来るとは思っていませんでしたよ」

シアがルリーナさんと現れたときは驚いた。

「海の話を聞いたシアが行きたがったからね。それで、何をしていたの?」

エレローラさんがテーブルを見る。テーブルの上には紙とペンがあり、紙にはクマの絵が描かれている。

「相変わらず、ユナちゃんは絵が上手ね」

わたしが描いたクマの絵を見てそんな感想を漏らす。少しでもフローラ様の絵の技術が上がればと思って、教えていた。

「わたしは?」

「フローラ様も上手ですよ。これはユナちゃんですね」

わたしの横にある絵を見て答える。それは先ほど、わたしがフローラ様から貰った絵だ。なんで、その黒い動物の絵がわたしだって分かるの?

もしかして、わたしって、他人から見るとこんな風に見えるの?