軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

367 クマさん、3人を安全なところに移動させる (4日目)

探知スキルを発動させると同時にくまゆるとくまきゅうが大きな声で鳴く。

「くまきゅうちゃん?」

「ユナお姉ちゃん!」

「ユナさん、もしかして魔物ですか!」

シュリはくまきゅうを見る。

フィナは声を上げ、護衛のときに魔物が現れたときにくまゆるとくまきゅうが鳴いたことを覚えているシアが尋ねる。探知スキルにはヴォルガラスの反応がある。ヴォルガラスは探知スキル内に入ってくると、真っ直ぐにこっちに向かってくる。空を見上げると黒い鳥が現れて、上空を旋回している。

「あれは……」

「鳥さん?」

「もしかして、ヴォルガラス?」

みんなもわたしと同じように上空を見上げている。

シアの言うとおり、あれはヴォルガラスだ。鷲より一回り大きく、嘴が赤くなっているのが特徴の魔物。探知スキルには数十羽のヴォルガラスの反応があり、探知スキルを見ている間も、次から次へと探知スキル内に入ってくる。ヴォルガラスの数がどんどん増えていく。

過去の経験からヴォルガラスは一羽一羽はそれほど強くはない。問題なく対処はできる。ただ、数が多い。さらにここにはフィナたちがいて、エルフの里で戦ったときとは状況が違う。

だからと言ってフィナたちを連れて、ミリーラの町に逃げることはできない。下手にミリーラの町に逃げれば町にヴォルガラスを呼び寄せてしまう可能性もある。クリュナ=ハルクの本によれば、魔物はあの桜の木に惹き付けられていると言うが、追いかけてこない保証はどこにもない。万が一にもミリーラの町にヴォルガラスを呼び寄せてしまい、海で遊ぶ子供たちに襲いかかりでもしたら、自分を許せなくなる。それだけは絶対に防がないといけない。

数羽のヴォルガラスが桜の木に降りてくる。花を突っつき始める。食べている?

「ユナお姉ちゃん!」

フィナが指差す先を見ると、桜の花から七色の輝くシャボン玉が出現する。それはどんどん広がって、いろいろな箇所から小さいシャボン玉から、大きなシャボン玉が出てくる。

「綺麗」

フィナたちは幻想的な光景に見とれているが、ヤバイ気がする。この現象についても本を見て確認したいが、今はこの場を早く離れたい。

わたしの予感はすぐに現実となる。木に止まっていたヴォルガラスがシャボン玉に包まれる。ヴォルガラスは一瞬暴れるが、力を吸い取られたように大人しくなる。魔力を吸収した? それとも体力? あのシャボン玉はなに?

シャボン玉は次から次へとヴォルガラスを捕らえていく。そして、小山から、ゴ~~~~~~~と音がしたと思ったら、ヴォルガラスが入ったシャボン玉が中腹辺りにあった大きな穴に吸い込まれていった。

あんなところに穴?

探知スキルを見ると穴に入ったヴォルガラスの反応が消える。

もしかして、あの穴はタールグイの体の一部でヴォルガラスを食べている?

「ユナお姉ちゃん!?」

「ユナ姉ちゃん」

くまきゅうに乗っていたシュリは不安そうにする。

「とにかく、離れるよ」

確認したいことはたくさんあるが、今は3人を安全なところに連れていかないといけない。3人をくまゆるとくまきゅうに乗せたわたしは碑石があったところまで戻ってくる。

探知スキルで確認すると、未だにヴォルガラスは集まってきている。そして、桜の木がある辺りで消えていく。たぶん、先ほど見たシャボン玉に取り込まれて、穴に吸い込まれているんだと思う。

もしかして、タールグイの捕食方法なのかもしれない。

わたしはクマボックスから、クマハウスを出す。

「みんな、クマハウスの中なら魔物でも簡単に攻撃はできないから中に入って!」

クマハウスの中ならヴォルガラスに襲われることはない。この島で一番安全な場所だ。

「島から逃げないんですか?」

「魔物がミリーラの町まで付いてこられでもしたら、町を危険にさらすことになるから、しばらくは様子を見るよ。大丈夫。3人はわたしが守るから安心して」

「「くうぅ~ん」」

わたしの言葉を否定するようにくまゆるとくまきゅうが鳴く。

「そうだったね。わたしたちが3人を守るよ」

わたしが訂正するとくまゆるとくまきゅうは嬉しそうにする。

「ユナさん、わたしも」

「ダメ。シアもわたしの指示に従ってもらうよ。もし、わたしが離れてしまったときは2人をお願い。一番年上でしょう」

シアはフィナとシュリを見ると小さく頷く。

「わかりました」

わたしはクマハウスのドアを開けると、3人を乗せたくまゆるとくまきゅうがクマハウスの中に入る。これで、ひとまずは安心だ。いきなり襲われることはなくなる。

「あのシャボン玉なんですか? あのシャボン玉を吸い込んだ穴も」

シアが尋ねてくるが、その答えを持っている者はここにはいない。でも、その答えが書いてある本ならある。

「くまゆる、くまきゅう、魔物が近寄ってきたら教えて」

わたしはくまゆるとくまきゅうにお願いすると、クリュナ=ハルクの本をテーブルの上に広げる。

本に書かれていることは、あくまでクリュナ=ハルクの考察になる。

あのシャボン玉は魔力で作られたものであり、タールグイの餌と推測される。中腹辺りに吸い込む穴がある。この穴には近寄らない方がいいと書かれている。

そういうことは初めの方に書こうよ。知らないで穴に入ったらどうするのよ。

花から出たシャボン玉は浮遊すると、周囲にいる魔物を取り込むという。『仮説』と前置きがあり、魔物の体内にある魔石に反応していると推測されると書かれていた。

その理由として、クリュナ=ハルクが近くにいてもシャボン玉は近寄ってこなかったそうだ。触れても、取り込まれることは無かったと言う。

魔物が集まってくる中、この人何をしているの!?

でも、身を挺して試してくれたのは助かる。あんなのを見たら、怖くてシャボン玉に触れようとは思わない。

つまりクリュナ=ハルクの本によれば、桜の木で魔物を呼び寄せて、シャボン玉で捕獲して食べるってことらしい。今回の現象はタールグイの食事の時間ってことみたいだ。なんとも、大掛かりな食事だ。ヴォルガラスぐらいならいいけど。大きな魔物が来たらどうなるの?

もし、わたしが倒したクラーケンがいるときに、今回の状況になったら、どうなっていたんだろう。

タールグイvsクラーケンのバトルが見れたのだろうか。想像しただけで、怖いんだけど。それ以前にタールグイはクラーケンと戦えるの?

クリュナ=ハルクの本によれば、食事は一定の時間、行われるそうだ。

周囲に魔物がいなくなるか、桜の木の魔力が無くなるまでと言う。最終的に桜の光が止まると、魔物は逃げるように去っていくらしい。

それって、タールグイが怖いってこと?

本を読んで大体のことは分かった。この本が無かったら、混乱していたかもしれない。クリュナ=ハルクには感謝しないといけない。

あとの問題はタールグイの食事の時間だけだ。そのことは本にも書かれていなかった。何日も続くようだったら困る。

いざとなれば、クマの転移門を使って逃げ出すことも考えないといけない。こればかりは命に代えられない。

「ユナさん、なにか分かりましたか?」

わたしが本から目を逸らすと、シアが尋ねてくる。周りをみればフィナがシュリを抱き寄せている姿がある。

わたしは3人の不安が取れるように、説明する。

「だから、わたしたちが襲われることはないから大丈夫だよ。いざとなれば脱出するから」

クマの転移門で。

わたしの説明で3人は安堵の表情を浮かべる。

ただ、呼び寄せられてくるのが、ヴォルガラスなどの弱い魔物ぐらいならだ。本当にクラーケンがいなくて良かった。

わたしは他にも重要なことが書かれていないか、クリュナ=ハルクの本の続きを読もうとしたとき、くまゆるとくまきゅうが警告するように鳴く。

わたしは探知スキルで確認する。

探知スキルに予想外の魔物の反応があった。クラーケン? ワイバーン?

冗談じゃないよ。いくらクマハウスが頑丈とはいえ、クラーケンやワイバーンの攻撃に耐えられるか分からない。そんな実験はしたこともない。

「ユナさん、くまゆるちゃんたちは?」

「ちょっと、近くを魔物が通っただけだよ。でも、ちょっと危ないかもしれないから、安全な場所に移動するよ」

わたしは不安にさせないように嘘を吐く。それから、全員を連れて、転移門が置いてある部屋に向かう。

「ユナお姉ちゃん。もしかして」

「口裏を合わせてね」

フィナに小さな声でお願いをする。

「ユナさん、ここは?」

部屋は4畳ほどの広さがあり、壁際にクマの転移門が設置されている。まるで隣の部屋に繋がっている感じに置かれている。

「この奥の部屋にどんな魔物が来ても安全な部屋があるから。しばらく、その部屋に隠れていて」

わたしはクマの転移門の扉を開く。扉の中に入ると6畳ほどの部屋に出る。

ここはクリモニアのクマハウスの地下室になる。クマの転移門のことを話せないときや、緊急でクマの転移門のことを説明をすることが出来ない場合に使用するために作った部屋だ。

今回もクマの転移門を説明することも、時間もないので、ここはクマハウスの中の部屋ということにする。

この部屋はクリモニアの地下なので、ドアも窓もない。だから場所を確認することもできない。ちなみにフィナは、この部屋のことを知っている。

この部屋を作ったとき、クマの転移門のことを知っているフィナだけには教えておいたけど、使うときが来るとは思いもしなかった。

「ここの部屋は安全だから安心していいよ」

部屋にはあまり、荷物は置いていない。中央にテーブルがあり、椅子が並んでいるぐらいだ。

「本当に安全なんですか?」

「それは保証するよ。フィナもここが安全って知っているよね」

「はい。この部屋は安全です。どんな魔物も近寄ることもできないです」

この部屋のことを知っているフィナは安全を保証する。

「フィナちゃんがそう言うなら、大丈夫なのかな?」

シュリも姉のフィナの言葉と態度から分かるのか、不安そうな表情が消えた。

「ユナお姉ちゃん。しばらくはここにいるんですか?」

「外の魔物次第だけど。しばらくはここにいるつもりだよ」

わたしは冷蔵庫を出す。この部屋は緊急用の部屋であり、普段は使用しないからトイレなどはあるが食材などは置いていない。置いておけば傷むだけだ。

「それじゃ、わたしは外の様子を見てくるから、みんなはここでのんびりしていてね」

「ユナさん、外に行くんですか?」

「誰かが、外の様子を見ていないと、帰れないでしょう。くまきゅう、みんなの傍にいてあげて。もし、危険だったら、みんなに教えてあげるんだよ」

「くぅ~ん」

危険なことは絶対に起きないけど、そう言っておく。くまきゅうが鳴かなければ、みんなも安心してくれるはずだ。

そもそも、護衛は必要はない。でも、島にいると思っている2人は、くまきゅうが一緒に居れば気持ち的にも安心してくれるはずだ。それに、くまきゅうの顔を見れば、気持ちを和らげてくれる。