軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

363 クマさん、謎の島に上陸する (4日目)

フィナたちは叫ぶが、くまゆるとくまきゅうは海には飛び込まず、波が寄せる中、海の上を駆けていく。水溜まりの上を跳ねるようにではなく、本当に地面のように水面を走っていく。

「く、くまきゅうちゃんが、海の上を走ってるよ!」

シュリが初めてくまゆるとくまきゅうに乗ったときのように大喜びする。フィナとシアは驚いて声も出ないでいる。海には遮るものは何もない。船もいない。くまゆるとくまきゅうは青い空の下、青い海の上を駆けていく。

わたしはどこで人が見ているか分からないので、くまゆるとくまきゅうには陸から離れるように指示を出す。

「ユナお姉ちゃん! くまゆるちゃんが海の上を走っています。どうなっているんですか!」

我に返ったフィナが尋ねてくる。

「くまゆるとくまきゅうの能力だよ。このことは秘密でお願いね」

「誰にも言いません。でも、信じられないです。海の上を走るなんて。小さくなったときも驚きましたが、本当にくまゆるちゃんたちは凄いです」

「しかも、近くに魔物がいれば教えてくれるし、戦ってもくれるしね」

フィナとシアがくまゆるとくまきゅうの凄さを並べていく。

「あと、ふかふかだよ」

シュリがくまきゅうを抱きしめる。

「う~、ノアじゃないけど。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは欲しくなるね」

「わたしも欲しい~」

シアがそんなことを口にするから、シュリまでそんなことを言い出した。

「くまゆるとくまきゅうはわたしの家族だからね。あげられないよ」

「それなら、ユナさんと結婚すれば、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒にいられるってことですね」

シアが冗談気味に言う。

「ユナ姉ちゃんと結婚すれば、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒にいられるの?」

「結婚すればそうだけど。女の子同士は無理かな」

そもそも、わたしに結婚願望は無いんだけど。そもそも、男の人と一緒になるってイメージが湧かない。そう考えると、一生結婚できないかもしれない。まあ、それはそれで問題はないからいいけど。

「でも、水の上を走る経験ができるとは思わなかったですね。お母様に良いお土産話ができました」

「だから、誰にも話さないでね」

「お母様にもダメですか?」

……わたしは想像してみる。

エレローラさんに知られる。まずクリフと国王に知られるよね。そして、クリフからノアへと伝わる。

国王ルートを考えてみる。フローラ姫とティリアと王妃様の3人には話しそうだね。息子の王子に話すかはわからないけど。

とりあえず、広まるのはよくない。

「エレローラさんに知られたら、クリフや国王に話すと思うから、内緒でお願い」

「たしかにお母様なら話しそうですね。ユナさんに嫌われても困るので、黙っておきます」

「フィナもシュリも誰にも言っちゃダメだからね」

「はい」

「うん」

2人も約束をしてくれる。2人はクラーケンの件もティルミナさんにくすぐられても黙ってくれていた。シュリは我儘を言うけど、基本は約束を守ってくれるいい子だ。それに多少の我儘は子供なんだから仕方ないことだ。ノアやシアだって我が儘は言う。そもそもフィナが聞き分けが良すぎる。

だから今回、フィナが付いてきたいと言ったのは珍しかった。

くまゆるとくまきゅうは陸からかなり離れる。わたしはクマの地図で謎の島の位置を確認する。地図が一定の距離しか把握できないのは不便だが、およその方角は分かる。えっと、港があっちだから、島はこっちの方向だね。

わたしはクマの地図を見ながら、クロのお爺ちゃんに教わった謎の島にくまゆるとくまきゅうを向かわせる。

「あっ、ユナ姉ちゃんが作った、くまさんが見えるよ」

シュリが遠くの海岸の方を指さす。そこにはクマのウォータースライダーがある。大きなクマのため、離れた位置からもよく見える。でも、クマのウォータースライダーで遊ぶ子供たちの姿は肉眼では確認はできない。微かに小さな人らしきものが動いているように見える程度だ。

こっちから、その程度なら、向こうからもその程度のはずだ。

「ここから、ノアたちの姿が見えたりはしないよね」

「ノア姉ちゃん? 見えないよ」

「はい、小さくて見えません」

「さすがに、この距離だと見えないね」

どこかの国みたいに視力が5.0とかで見えたりはしないようでよかった。視力が5.0って想像もできないけど、どのくらいの距離まで把握できるもんだろうね。

こっちの世界なら、狩人とかなら、そのぐらいの視力があったりするのかな? でも、この距離じゃ、人の判別はできないよね。

地図を確認しながら進んでいく。しばらく走り続けると目的の島が見えてくる。クロのお爺ちゃんが教えてくれた方向と、地図の確認をする。間違いなくあの島だ。

クロのお爺ちゃんの話じゃ、いきなり現れて、知らないうちに消えているらしいから、一晩で消えていた可能性もあった。まだ、消えていなくて良かった。

「あの島がそうなの?」

「教えてもらった島が間違いないならね」

クロのお爺ちゃんは歳はいっているけど、ボケていない。他の漁師より、しっかりしているぐらいだ。見間違えることは無いはずだ。

わたしは島に近づくと、くまゆるとくまきゅうの速度を落とす。

「それじゃ、島に行く前に注意事項ね。危険があったら戻る。勝手に行動しない。そうだね。シアはともかく、フィナとシュリはくまゆるとくまきゅうから降りちゃダメだからね」

「はい」

「うん」

ちゃんと返事をしてくれる2人。

もし、危険なことがあれば、くまゆるとくまきゅうの上に乗っていれば逃がすこともできるし、守ることもできる。

島の近くまでやってくる。クロのお爺ちゃんの言うとおりに島の周囲には大きな渦潮がうねりながら回っている。島の周りを不自然に波立っていたりする。

これじゃ、船で島に行くことは無理だね。巻き込まれれば、脱出は難しいかもしれない。よく、この渦潮を見て、船で行こうと思った漁師がいたものだ。素人でも危険と解りそうなんだけど。余程、自分の操船技術に自信があったのか、馬鹿なのかのどちらかだろう。

「本当に渦潮が島の周りを回っているね」

「ユナ姉ちゃん。怖い」

前に座るシュリがくまきゅうをぎゅっと掴む。

確かに、近くで見ると怖いかもしれない。見ているだけで、渦潮に吸い込まれていく気分になる。

「くまきゅうに乗っていれば大丈夫だよ」

「でも、これじゃ島に近づけないですね」

「このぐらい、くまゆるとくまきゅうなら大丈夫だよ。問題は島に上陸する場所だね」

船じゃ無理だけど。わたしたちが乗っているのは船じゃない。くまゆるとくまきゅうだ。過去に、激流の川を渡った経験もある。渦潮ぐらい、どうってことはない。わたしは島を右周りに回って、上陸しやすい場所を探す。一部、崖が低い場所を見つけた。ここから島に上陸することにする。

「渦潮の上を通るから、ちょっと揺れるかもしれないから、しっかり掴まっていてね」

まあ、落ちたりはしないけど、注意だけはしておく。基本、くまゆるに乗ると吸い付くようにフィットして、落ちたりはしない。でも、自分から降りる気持ちがあれば落ちる可能性もある。

だから、落ちないって心構えは必要だ。3人はくまゆるとくまきゅうをそれぞれ落ちないように抱きつく。

それを確認したくまゆるとくまきゅうは駆け出し、跳ねるように渦潮を飛び越えていく。数回のジャンプで、島に上陸する。

「本当に渦潮を越えちゃった」

「くまきゅうちゃん、凄いです」

わたしは探知スキルを使って周囲を確認する。範囲内には魔物の反応はない。くまゆるとくまきゅうも危険を知らせる反応は示さない。でも、魔物の危険が無くても普通の獣がいる可能性もある。

わたしはくまきゅうから降りる。

「2人は降りちゃだめだからね」

「はい」

「うん」

2人は返事をする。

「こういう場所に来ると、ワクワクしてきますね」

シアはくまゆるから降りるとアイテム袋から剣を取り出して、腰にぶら下げる。

たしかにワクワクする。新しい場所に行くのは楽しい。でも、それは1人より、フィナたちがいるからかもしれない。ゲームもソロより、複数でやった方が楽しいからね。

ソロ経験が多いわたしが言うのだから、間違いない。

「ユナ姉ちゃん。お宝あるかな?」

シュリが目を輝かせながら尋ねてくる。もしかして、お宝が欲しかったから、行きたいって言い出したの?

「さあ、どうかな? シュリはお宝が欲しいの?」

「見つけたら、お母さんとお父さんにあげるの」

ティルミナさんに? 予想外の言葉が出てきた。

わたしはフィナの方を見る。

「えっと、フィナ。そんなにお金に困っているの? 家計苦しいの?」

10歳の女の子相手によそ様の家計の心配をするのもあれだけど、気になったので尋ねてみる。一応、雇っている身だ。苦労をかけているようだったら考えないといけない。

でも、ティルミナさんのお給金はそれなりにあげているはず。それに冒険者ギルドでゲンツさんも働いている。お金に困ったりはしないと思うんだけど。

もしかして、ゲンツさんが酒に溺れているとか?

「えっと、ユナお姉ちゃんのおかげで、お金に困ったりはしてないです。シュリ、どうしてお宝をお母さんとお父さんにあげるの?」

「家族が増えたら、お金がかかるって言っていたよ」

「家族!?」

もしかして、ティルミナさんのお腹に赤ちゃんが?

「フィナ、そうなの?」

「わ、わかりません」

どうやら、フィナは分からないみたいだ。もし、本当にティルミナさんのお腹の中に赤ちゃんがいるなら、お祝いをしないといけないね。

でも、シュリ、そんなことを考えていたんだね。

「お宝はないかもしれないけど、なにか、お土産を見つけられるといいね」

「うん!」

まずは島の地形の確認をするために、海沿いを回ることにする。先頭はわたしとシア、後ろをくまゆるに乗るフィナ、くまきゅうに乗るシュリと続く。

邪魔な草は風魔法で刈っていく。長い間、人が通った形跡はないね。これは島の中心に行くのは大変かな?

草は切ることはできるけど、木を切るわけにはいかないからね。どこかに楽に通れる場所があるといいんだけど。トコトコと歩いていると、後ろにいるフィナが声をあげる。

「ユナお姉ちゃん。オレンがあります」

目の前に一本の大きな木にオレンの実が沢山なっている。まあ、オレンジだ。よく、クリモニアでも見かけて買って食べている。

わたしは軽く、ジャンプして美味しそうなオレンを取る。そして、皆に配る。

「美味しそうです」

「ユナさん、簡単に凄いことをしますよね」

皮を剥いて、オレンの実を食べる。いつも食べているオレンより美味しい気がする。

「くまきゅうちゃん、あ~ん」

シュリが手を伸ばしてくまきゅうの口の前に差し出すと、くまきゅうは首を曲げて上手に食べる。それを見たフィナが真似をして、くまゆるに食べさせる。

でも、こんな木がなっているんだね。さらに歩くとリンゴがなっている木がある。

シュリが食べたそうにしていたので、オレンと同様に取ってあげる。

もしかして、この島は果物の宝物庫?