軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

277 クマさん、騎士と試合をする

試合の合図が出る。それと同時に騎士は走り出し、間合いを詰めてくる。様子を見るつもりはなかったけど、相手の方が行動が早かった。

騎士はわたしとの距離を詰めると、剣を振りかざしてくる。身長差があるため、上から剣が落ちてくるような感覚になる。騎士は上から剣を、わたしは下から剣を出して防ぐ。

広場に剣と剣がぶつかり合う大きな音が響く。その音の大きさが手加減されていないことを証明する。

うん、受け止められる。大丈夫だ。

わたしは初めから一撃目は受けることにしていた。これが、受け止められるか、受け止められないかで、戦い方が変わってくる。

「嬢ちゃん、嘘だろう……」

力を込めた一撃を受け止められて、騎士は驚愕の表情を浮かべている。どうやら、本当にこの一撃で終わらせるつもりだったみたいだ。

騎士はさらに力を込めて押し込もうとするが、それ以上は押し込まれることはない。逆にわたしが剣に力を込め、少し押し返すと、後方に軽くジャンプして間合いから逃げる。

その瞬間、周りから歓声があがる。

たった一撃を受け止めただけだよ。そんなに騒ぐことじゃないと思うけど。

でも、これで相手の攻撃を受けとめられることは分かった。あとは騎士の攻撃を 捌(さば) き、わたしの攻撃が通じるかだ。

騎士はゆっくりと、わたしとの間合いを詰めてくる。

それじゃ、今度はわたしから攻撃を仕掛けてみる。下から突き上げるように剣を出す。だが、それは簡単に捌かれ、騎士はすかさず、剣を振り落としてくる。わたしは体を捻って躱し、その捻った力を利用して、剣を横になぎ払う。騎士は後方に下がり、剣が空を斬る。

一瞬の攻防だけど。やっぱり、強いかも。

「ふふ、あははは」

騎士が笑い出す。

「さすが、エレローラ殿がわたしの相手に出してくるだけのことはある。お嬢ちゃんはいったい何者なんだい? 学生でわたしの一撃を受け止めて、攻撃も躱すって」

「自分だって、わたしの攻撃を躱したでしょう」

普通なら当たっていたはずだ。それを躱した。ゲームでも上位プレイヤーの剣技はあるかもしれない。

「鎧と盾があったら、避けられなかったよ」

「その場合は盾で防いだんでしょう」

この騎士なら、間違いなく盾で防いだはずだ。

「フィーゴ! そんな小娘になにをてこずっている。早く倒せ!」

「あの男は、ああ言っているけど、簡単に倒されるつもりはないよ」

わたしは改めて剣を構える。

「なら、この攻撃を受け止めることができますか?」

わたしは対処するために距離を取ろうと後ろに下がるが、騎士は間合いを詰めてくる。わたしは右回りに駆け出すが騎士は付いてくる。

う~ん、鎧を脱いだせいで、身軽になったのかな?

クマ靴で本気で走れば、距離を開くことは簡単にできるけど、逃げていても決着は付かない。わたしは足を止めて、迎え撃つことにする。

騎士が剣を突き出してくるが躱す。今度は連続で攻撃を仕掛けてくる。剣で防ぎ、隙があればわたしが攻撃を仕掛ける。お互いに剣の攻防が続く。

最後にお互いの剣が重なり合い、力比べになる。

クマのパペットの力が剣に加わる。このまま、弾き飛ばすことは可能だけど。魔法を使ったと疑われて、反則として負けては意味がない。

それに周囲には剣技で勝ったところを証明したい。それで無いと意味が無い。

剣を横に流し、力の重心がずれたと同時に、右足で騎士の足に向けて蹴りを入れる。でも、騎士は体重移動を流れるままに身を任せて、体を一回転して、蹴りを躱す。

「冗談でしょう。剣を受け止められるほど、わたしの剣は軽くないはずですが。あなたの足腰はどうなっているのですか。しかも、わたしの剣の重心をずらすって」

それができるのもクマの足とクマの手袋のおかげだ。

でも、あの状況で躱せるものなの?

絶対に蹴り上げたと思ったんだけど。

「もう少しで、その可愛らしい靴で蹴られるところでしたよ」

「蹴られて倒れてくれたら、終わったんだけど」

「気のせいか お嬢ちゃんの蹴りに恐怖を感じたから、避けられましたよ」

もしかして、金的を狙ったのが気付かれた?

男の弱点を突いたんだけど。駄目だったみたいだ。

今度はわたしの方から仕掛けることにする。

騎士に向かって駆け出し、下から剣を上に向けて振り上げる。それを騎士は上から叩き付けるように防ぐ。でも、わたしは次から次へと攻撃を仕掛ける。でも、攻撃の全ては受け止められる。

騎士はわたしの攻撃を防ぐと、力を込めた一撃を打ち込んでくる。これを防げば、騎士に大きな隙ができる。わたしは剣を斜めにして、騎士の攻撃を受け流す。

騎士の剣は弾かれずに、剣が下に流れる。わたしは受け流した剣を振りかざして、がら空きになっている体に向けて剣を振り落とす。

そのとき、騎士の左手に違和感を感じた。

左手に炎が纏っている。

間に合うか!

騎士の炎を纏った左腕がわたしに迫ってくる。

わたしは体を後方に逃がし、騎士の炎が纏った左手を躱す。

そして、わたしは後方に距離を取る。

「本当に、今のを躱すのか?」

騎士は信じられないようにわたしを見ている。信じられないのはこっちだよ。

「ちょ、ちょ、魔法なんて反則じゃ」

わたしは騎士とルトゥムに向かって訴える。

騎士が魔法を使うなんて反則だ。わたしの反則勝ちだ。

なによりも剣と剣の試合に魔法なんて不粋だ。

「なにを言っている。優秀な騎士は魔法も使える。騎士とはそういうものだ」

「そうなの?」

ルトゥムの発言にわたしはエレローラさんに確認する。

「ええ、そうだけど。わたしはどうして、ゆ、ユーナちゃんが魔法を使わないか不思議だったんだけど」

エレローラさんからも魔法を使っても問題がない発言が出る。

「ちょ、魔法を使っていいとは思わなかったからですよ。だって、騎士の試合でしょう。魔法の試合じゃないでしょう?」

「えっ、騎士だって、魔法が使えれば使うでしょう?」

そんな、この世界の常識を言われても知らないよ。騎士って剣を振るだけの存在でしょう。そして、魔法使いは魔法を使う存在でしょう。

わたし、おかしなことを言っている?

おかしくないよね。

真面目に戦っていたわたしって、もしかして、バカじゃない?

「嬢ちゃんの剣の技術は称賛に値する。でも、魔法も騎士の攻撃方法の一つだ。だから、悪いとは思わないぞ」

「別に、謝らなくてもいいんだけど。魔法有りだと、わたしが勝つんだけど」

はっきり言って、剣はわたしがゲーム時代に得た技術だけど。魔法はチートだ。魔力も威力も反則って言っていいほど強い。

「つまり、嬢ちゃんは魔法が使えると」

「使えるよ。だから、魔法有りなら負けないけど。魔法有りでいいの?」

個人的には剣のみで戦ってみたい。紙一重の攻防がゲーム時代を思い出して面白かった。

「フィーゴ、騙されるな! そんな小娘が魔法が使えても、たかが知れている。遊んでいないで、早く倒せ」

「って、ことです。勝てる試合を、負ける試合にするつもりはないので、魔法を使わせてもらいます」

「了解。もう少し剣の試合をしたかったんだけど。終わらせるね」

「ゆ、ユーナちゃん。一応、本気でやってね」

仕切り直しで、エレローラさんの再開の合図を待つ。

騎士は左右に炎を飛ばしてくる。わたしの行動範囲を縮めるのが目的だと判断する。

わたしは水魔法で炎を消し、右回りに駆け抜ける。

「水魔法か!」

残念だけど、間違っても負けることはできないから、わたしは騎士に向かって走り出す。

「それだけじゃ、俺に勝てないぞ」

騎士は火の玉を放ちながら、わたしの行動を狭めさせる。

でも、わたしは騎士によって誘導された道を進み、騎士に向かって剣を突き出す。

「防いで、これで終わりだ」

騎士が剣を右手に持って、振り落とす。左手には魔法が用意されている。

わたしはそのまま剣を振り落とす。

「なんだと!?」

騎士の剣が地面から現れた土の山に突き刺さって、わたしの剣を防ぐことはできない。

わたしの剣は騎士の胸元で止まる。

その瞬間、周りから歓声が上がる。

やっぱり、魔法有りだと、元魔法剣士のわたしが有利だ。

剣のみでは互角だった。もし、わたしの剣の技術で倒せなかったら、クマさんパペットの力を最大限まで使うつもりでいたから、どっちにしろ、負けるつもりはなかった。

「わたしの勝ちでいいかな?」

「わたしの負けだ。まさか、ここで土魔法で攻撃を防ぐとは思わなかった。しかも、なんだ。この硬さは」

騎士の剣は土に突き刺さったままだ。

一応、土が斬られた場合の保険として、左手の白クマさんパペットで受け止めることになっていた。

クマの着ぐるみが無いから念のためだ。

「硬くしたからね。簡単には切れないよ」

まして、練習用の剣だ。刃も無い。これが本物の剣やミスリルの剣なら、土は斬られたかもしれない。本当の戦いだったら、使えないかもしれない。

「フィーゴ! 貴様、なに、こんな小娘に負けているんだ。騎士の恥だぞ!」

ルトゥムは騎士のところにやってくると、怒鳴り付ける。

「見て分かりませんでしたか。彼女はわたしより強かったです。それが分からないルトゥム卿ではないでしょう」

「俺は、なにがなんでも勝てと言ったはずだ」

「自分の実力は全て出し切りました。それでも、彼女の方が強かったです。このわたしの攻撃を受け止め、剣を躱し、魔法も躱しました。それに彼女の攻撃は鋭く、魔法の発動も早い。どれも、一流って言っていいほどの実力を持っています」

「ふざけるな!」

ルトゥムが拳を握り締めて、騎士を殴ろうとしたので、わたしはルトゥムの後ろから、尻を軽く蹴る。ルトゥムはバランスを崩して、前屈みで倒れる。

「なんだ」

「約束を覚えているよね」

「くそ……小娘が……」

悔しそうにわたしを睨みつける。

「そんな怖い顔で睨んでも駄目よ。約束は約束でしょう」

エレローラさんがわたしを庇うようにルトゥムとわたしの間に入る。

「…………、こんな騎士団の隊長なんて辞めてやる。それでいいんだな!」

ルトゥムは悔しそうにエレローラさんに向かって叫ぶ。でも、これだけじゃないんだよね。

「それじゃ、続きをしましょう」

「…………」

わたしの言葉が本当に分からないようで、ルトゥムは首を傾げる。

「わたしはあなたの騎士全員と戦うって言ったでしょう。それで、女性騎士は認めてもらうよ」

「…………」

「その中にはルトゥム様も入ってますから、彼を怒るなら、ご自分がわたしに勝ってからにしたらどうですか?」

わたしの言葉に顔を赤くして怒り出す。

「小娘が、いい気になりおって。使えない騎士が相手になるまでもない。わたしが相手になってやろう」

雑魚を倒す前にラスボスが出てきた。