軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

265 クマさん、ファッションセンスが無いことに気付く

フィナの解体授業も終え、わたしたちは学園祭の見学を再開する。歩いていると誰かがわたしのクマ服を引っ張る。

「ユナ姉ちゃん。お腹空いた」

犯人はシュリだった。シュリは自分の小さなお腹を触って、お腹が空いていることをアピールする。

「確かにそうね」

ティリアもシュリの言葉に賛同すると、ノアもフィナも頷く。

「それじゃ、どこかで食事にしようか?」

「は~い」「はい」

わたしの言葉にみんなは良い返事をする。

「それじゃ、シア様のところに戻るんですか?」

「う~ん、ここからだと、少し離れているわね。確か、あちらの方でも食べ物を出しているお店はあったはずよ。そっちに行きましょう」

フィナの言葉にティリアが少し考えて、一番近い食べ物屋に向かうことになった。案内人がいると便利だね。お姫様にさせるのはどうかと思うけど。

ティリアの案内で食べ物を売っているお店に来たけど、どこも人で溢れている。

「みんな考えることは同じみたいだね」

時間がお昼時だから、どこのお店も混んでいる。

どうしようかって、ティリアがわたしたちの方を見る。

時間をずらせば大丈夫だと思うけど。歩き回ったり、解体をしたシュリは疲れているようだ。どうにか、昼食を食べながら休みたいところだ。

でも、見渡してもすぐに食べ物は得られそうはないが、食事をするテーブルなら、空いている場所がある。でも、時間が経てば食事をするテーブルも無くなってしまう。

「みんな、なんでもいい? 屋台で買わなくていいなら、わたしのアイテム袋に食べ物は入っているけど」

無理に屋台で買わなくてもクマボックスには大量の食べ物が常時完備されている。数百人単位でも大丈夫だ。

「わたし、ピザが食べたい!」

「あっ、それ、わたしも賛成です」

わたしの考えにシュリとノアが手を挙げる。

「屋台の食べ物じゃなくてもいいの?」

「うん、ユナ姉ちゃんのピザ大好き」

「ありがとう」

シュリの頭を撫でてあげる。

「フィナとティリアもそれでいい?」

「はい。もちろんです」

「わたしも、いいですよ」

わたしたちは空いているテーブルに移動して、場所を確保する。そして、テーブルの上にはピザからモリンさんが作ったパンに、アンズが作ってくれた温かいスープに、冷たい果汁を用意する。

「なんか、豪勢ですね」

「そう?」

確かに周りのテーブルと比べると豪勢かもしれない。

「それじゃ、みんな好きなだけ食べていいよ。お代わりもあるから言ってね」

「「「「はい、いただきます」」」」

みんながそれぞれ好きな物に手を伸ばす。

「ティリアはピザは初めて?」

「ゼレフに一度作ってもらったことがあります」

ゼレフさんには前にチーズの塊を数個あげたことがある。たぶん、それで作ったのかな?

「でも、ユナのピザの方が美味しいですよ」

美味しそうに食べてくれる。

「嬉しいけど、ゼレフさんには言わないでくださいね」

出したピザはすぐに無くなり、モリンさんのパンもアンズのスープも綺麗に無くなる。

「苦しいです」

「わたしもです」

ノアもティリアも食べ過ぎだ。そんなに急いで食べなくても良いのに。食べ過ぎは体に悪いよ。

フィナは遠慮しながら食べ、シュリはゆっくりと食べたい物を食べていた。

「少し休めば大丈夫です」

「ユナさん、果汁をください」

「はい。飲みすぎも苦しくなるから、ほどほどにね」

ノアに果汁を注いであげる。でも、みんなはわたしが出した料理を残さずに綺麗に全部食べてくれたから嬉しい。

わたしも果汁を飲みながら、二人が復活するのを待つ。

個人的には早く移動をしたかったけど我慢する。

だって、食事をしている間も「クマ?」「あっ、さっきのクマだ」「ティリア様がクマと一緒にいるぞ」とか囁かれているからだ。

さらに、「ティリア様がお食べになっているものはなにかしら」「どこに売っているんだ」「美味しそう」「探しに行こうぜ」とかの声が聞こえて、屋台を探しに行った生徒たちもいた。さすがにわたしが周りに向かって「これはわたしが持ってきた食べ物です!」ってわざわざ言うわけにいかないから、スルーするしかなかった。

だから、探しに行って見つからなくても、わたしのせいではないよ。勝手に勘違いした人が悪いんだよ。

そして、しばらく食後の休憩をしていると二人が復活する。動けるようになったので、わたしは逃げるようにこの場から移動して、学園祭の続きをする。

シュリはわたしとティリアと手を繋ぎ、フィナとノアは楽しくお話をしている。

「あっ、フィナ。ここ汚れているよ」

ノアがフィナの服の一部を指す。確かにノアが指すところが汚れていた。

「もしかして、解体作業をしているときに付いたかもしれません」

「着替える?」

「いえ、このぐらい大丈夫です」

う~ん、魔物の解体で汚れた服を着ているなんて嫌だと思うんだけど。たぶん、みんなに気を使っているんだと思う。フィナは他人に迷惑をかけるのを嫌う子だから。

でも、わたしとしては、どうにかしてあげたい。

「ああ、そうだ。いい考えがあるわ。あそこに行きましょう」

ティリアがフィナの服を見て、何かを思い出したようだ。ティリアは何も言わずにフィナの手を掴んで歩き出す。

「ティリア様!」

「こっちだよ。みんなも行くわよ」

「ティリア様、付いていきますから、引っ張らないでください」

口をパクパクさせながら連れていかれるフィナ。ティリアはフィナを逃がさないように手を掴んで離さない。フィナが緊張して今にも爆発しそうだ。

「ティリア、それでどこに行くの?」

「ないしょ。まあ、行けばすぐにわかりますよ」

どうやら、目的地は教えてくれないみたいだ。ティリアは真っ直ぐに学園の建物の中に入っていく。学園の中の教室でも出し物が催されている。何をやっているか見てみたかったけど、ティリアが全ての教室をスルーして、目的の場所に真っ直ぐに向かうので、立ち止まって見ることもできない。

わたしたちはティリアに黙って付いていく。

「もう少し先の教室よ」

ティリアの言うとおり、少し行った教室の前で止まる。中を覗くといろんな服が並んでいた。どうやら、服を売っているようだ。

「わぁ、可愛い服がたくさんあります」

確かにいろんな服があり、たくさんのお客様がいる。

「学生が作った服だけど、可愛らしい服があるって、噂になっていたの。生地も良いものを使っているし、値段も手ごろなのよ」

王族のティリアの手ごろの値段って言うところが気になるところだ。

でも、良い生地を使っているなら、多少は値段が高くても仕方ないかな。フィナとシュリに数着買ってあげるのもいいかもしれない。

「フィナちゃんには素晴らしい解体技術を見せてもらったお礼に服をプレゼントさせてね」

わたしが買ってあげようと思ったけど、ティリアもそのつもりだったみたいだ。

でも、フィナはティリアの言葉に驚きの表情を浮かべる。まあ、お姫様に服を買ってあげると言われればね。フィナみたいな気を使う子は驚くよね。

「ふ、服は洗えば大丈夫なので、買ってもらわなくても」

フィナはどうにか断ろうとするが、ティリアが逃がさない。

「ふふ、そんな遠慮なんてしないでいいわよ。素晴らしい解体を見せてもらったお礼なんだから、好きな服を選んでいいよ。ううん、わたしがフィナちゃんに似合う服を選んであげるわ」

ティリアはフィナの腕を引っ張って、教室の中に入ろうとする。フィナが助けを求めるようにわたしの方を見る。フィナの気持ちも分かるけど、服が汚れたまま学園祭を回らせたくない。だから、服を購入するのは賛成だ。

「それじゃ、わたしが買ってあげようか?」

「ユナお姉ちゃん!?」

ティリアに買ってもらうのに抵抗があるなら、わたしが買ってあげればいい。

「駄目です! フィナちゃんへのプレゼントはわたしがするんですよ」

ティリアはわたしに取られないようにフィナを抱きしめる。

抱きしめられているフィナは困ったようにわたしとティリアを交互に見る。

「ズルイ。お姉ちゃんだけ。わたしも服欲しい」

「ふふ、安心して、シュリちゃんにもプレゼントしてあげるから」

ティリアの言葉にシュリは喜ぶ。

「お姫様、ありがとう」

「それじゃ、わたしも買おうかな」

ノアも並ぶ服を見てそんなことを言い出す。

「それじゃ、中に入りましょう。こんなところに立っていると、他の人の邪魔になるからね」

ティリアはフィナとシュリの手を掴んで教室の中に入る。そのあとをノアとわたしが続く。

教室の中に入ると女学生たちがティリアに気付き、わたしたちのところに駆け寄ってくる。

「ティリア様、このようなお店に」

「少し、邪魔をさせてもらうね」

「いえ、邪魔なんてことはありません」

「ありがとう。それじゃ、みんなにはこの子たちの可愛い服を選んでもらえるかしら」

ティリアはフィナたちを前に押し出す。

「はい。わかりました。素晴らしい服をお選びいたします」

「お願いね」

2人の女生徒は返事をしたあと、わたしの方を見る。

「それで、ティリア様。その、そちらのクマの格好をした方もでしょうか?」

うん? わたし?

ティリアがわたしの方を見る。

「ユナも買いますか?」

「わたしはいいよ。三人に買ってあげて」

服を買っても着る機会がないからね。無駄になる可能性がある。それなら、買う意味はない。

それに遊んでいるけど護衛をしているつもりでもある。

「そんなことを言わずに着てみませんか? きっと似合いますよ」

「ユナお姉ちゃん」

「ユナさん」

「ユナ姉ちゃん」

ちびっ子三人がわたしのことを見る。

「ほら、わたしのことはいいから、三人は服を選んできて」

三人の背中を押して、女生徒に任せる。

このままだと、わたしまで買わされることになる。それだけは避けないといけない。

「ユナの普通の格好も見てみたかったんですけどね」

ティリアは残念そうにするが、今日は諦めてもらう。

女生徒たちはフィナたち三人を服のサイズが合うところに連れていき「これが似合うわ」「こっちもいいわ」「これも可愛いですよ」「この子にはこっちよ」と女の子たちの話が聞こえてくる。とてもじゃないが、引きこもりだったわたしには入り込めない空間だ。

でも、フィナはわたしよりだったのか、どうしたら良いか困った顔をしている。でも、同じ姉妹なのにシュリは嬉しそうにしている。ノアは楽しそうに自由気ままに一人で服を選んでいる。

そんな女子空間の中にティリアも入っていく。女子度の空気が数段上昇した。

わたしには絶対に入れない領域だ。この空間にはクマ装備を付けていても中に入ることはできない。この女子空間の中ではチートのクマの装備でも無力に等しい。わたしにできることと言えば、巻き込まれないように三人を見守ることだけだ。

三人を見ていると、フィナが救いを求める目でわたしを見る。わたしができることは応援することだけだ。だから、小さな声で「がんばって」って声をかけてあげる。

今のティリアをわたしには止めることができないし、助け出すこともできない。魔物に囲まれているなら、突入でもするが、笑顔の女の子の中から助け出す力はわたしは持ち合わせていない。

無力なわたしを許してね。心の中で謝っておく。

それから、時間をかけて服選びが終わり、数着の服が選ばれる。今度は実際に着替えてみるそうだ。三人は服を持って着替え室に移動する。そして、ここから三人のファッションショーが始まる。

着替えを終えた三人が着替え室から出てくると、ティリアたちが評価し始める。それが何度も行われる。「可愛い」「え、さっきの方が良かったよ」「こっちの子はこれが一番ね」「この髪飾りはこっちの服がいいよ」「このアクセサリーには似合わないかも」

…………わからない。

わたしにはどれも似合っているように見える。どこが駄目なのか、さっぱりわからない。知っていたけど、やっぱり、女子力低いのかな。料理や家事全般はできるけど、ファッションについては全然わからない。あらためて、わたしにはファッションセンスが皆無ってことが分かった。

途中からわたしの意見も聞かれるが、わたしにはどれも可愛い服に見えて、どれも三人に似合っている。わたしのコメントは「三人とも可愛いよ」ぐらいだ。それ以外にコメントができない。

たぶん、わたしが服を買ってあげようとしたら、適当に全部とか言ってしまいそうだ。

ティリアたち女の子が凄いところは学園祭で手に入れたアクセサリーとかをちゃんと考えて、合うとか合わないとか、こっちがいいとか、考えてコーディネートしているところだ。絶対にわたしには無理だ。

わたしからすれば、えっと、どこが違うの? そんなに駄目? 似合っていると思うんだけど? と何度も首を傾げた。

そして、何度か着替えたあと、ティリアはフィナとシュリの服を決めた。ノアは自分の意見とティリアの意見を聞きながら、自分の服を選んだ。

「三人とも可愛いよ」

何度、この言葉を心の中と、口に出して言ったか分からない。褒め言葉や謝罪は何度もすると薄っぺらいものになると言うが、そんな気分になる。女性の服の感想を言う男性の気持ちになった気分だ。

そして、最後には「ちゃんと見て!」とか「それしか感想がないの!」とか言われる男性を想像してしまった。

でも、フィナたちはそんなことを言ってわたしを困らせたりしない、良い子たちでよかった。

「うぅ、本当にこんな可愛い服を買ってもらっていいのでしょうか?」

「もちろん、解体を見させてもらったお礼だからね」

「ティリア様、わたしも買ってもらっていいのですか?」

「二人だけに買って、ノアに買わないのは可哀相だからね。それにシアにはお世話になっているからね」

三人はティリアにお礼を言って、お店から出る。

どうにか、ファッションショーを無事に終えることができたみたいで良かった。