軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

256 クマさん、フィナとシュリの奪い合いをする

「本当に雲みたいです」

綿菓子を作ってあげると、ノアが機嫌をなおしてくれる。

「口の中で溶けていきます」

美味しそうに綿菓子を食べるノアを見て安心する。

「こんな不思議なお菓子のことを黙っているなんて、フィナもユナさんも酷いです」

「ごめんなさい」

「ごめんね。でも、孤児院の子供たちに一回だけ食べさせただけだから。みんなもそんなに食べていないよ」

フィナたちは二回だけど。黙っておく。

「わたしも誘ってくれればよかったのに……」

ノアが少しイジケルような仕草をする。

「でも、本当に不思議なお菓子です。柔らかくて、口に入れると溶けて、甘く美味しいです」

「まあ、原料は砂糖だからね」

ノアと会話をしているシュリが食べたそうにしていたので、フィナとシュリの分も作ってあげると、嬉しそうに食べ始める。

「お姉様は食べないんですか?」

「わたしはいいわ。実を言うと、見るだけで口の中が甘くなるの」

それは食べすぎだ。拒絶反応が出ているね。

綿菓子はたまに食べるから美味しいのであって、何個も食べるものじゃないからね。

「でも、これを学園祭に出すなら、人気になりますね」

「わたしもそう思うわ」

「でも、そうなると一緒に学園祭を見ることはできないんですか?」

「大丈夫よ。一応交代でわたしたちも楽しむつもりだから、そのときに一緒に見ましょう」

「はい!」

ノアの機嫌も直って、シアと学園祭の話で盛り上がる。スリリナさんから新しいお茶をもらってのんびりしていると、エレローラさんが部屋に入ってきた。

「お母様!」

「ノア、よく来たわね。ユナちゃんもありがとうね」

「いいえ。みんなで来るのも楽しかったですよ」

「エレローラ様、おじゃましています」

「おじゃましています」

フィナが頭を下げて挨拶をすると、シュリもマネをして頭を下げて挨拶をする。

「フィナちゃんにシュリちゃん、こないだは案内をありがとうね。楽しかったわ。今回はお礼をしたいから、楽しんでいってね」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとう」

二人はお礼を言う。

「そういえば、わたしたちはどこに泊まるのでしょうか? ユナお姉ちゃんのお家ですか?」

フィナが思い出したかのように、わたしに尋ねる。

今回はエレローラさんのお誘いだから、普通に考えればエレローラさんの家になる。

でも、フィナたちが貴族であるエレローラさんのお屋敷では落ち着かないと言えば、わたしの家でも構わない。

「二人の好きな方でいいよ。わたしの家でも大丈夫だよ」

「あら、ユナちゃん。わたしのお客様を奪うつもりなの?」

「別に奪うつもりはないですよ。わたしは好きな方で良いよって言っただけですよ」

「なら、わたしの家でも問題はないのよね」

「二人が良ければ」

なんか、知らないけど。フィナたちの取り合いになってきた。ただ、フィナたちが貴族の家では落ち着かないと思っただけだ。二人がエレローラさんのお屋敷で良いなら、わたしは問題はない。

「二人はお礼をするためにわたしが呼んだんだから、わたしの家に泊まるわよね?」

エレローラさんが笑顔で二人に迫る。

フィナは「えっと…」と言いながら、目を泳がせている。シュリは状況が分かっていない感じで首を傾げている。

「二人はどうする?」

「どうすると言われても」

フィナはエレローラさんとわたしを見て、少し考えてからシュリの方を見る。

「シュリ、このお屋敷に泊まるのと、ユナお姉ちゃんの家に泊まるのとどっちが良い?」

フィナはシュリに選択を 委(ゆだ) ねたみたいだ。

「ユナ姉ちゃんのお家あるの?」

「あるよ。クリモニアの家と変わらないクマの家だけど」

「見たい!」

おお、クマハウスが勝利した。

「シュリちゃん、このお屋敷に泊まるのも良いわよ。美味しい料理もあるわよ」

でも、負けずにエレローラさんはシュリを呼び込もうとする。

「うん、泊まりたい」

そのシュリの言葉に勝ち誇った表情をするエレローラさん。

「それじゃ、くまゆるとくまきゅうとはお別れだね」

「くまきゅうちゃん! くまゆるちゃん!」

シュリが大きく反応する。

「ユナちゃん。くまゆるちゃんたちを出すのは卑怯よ」

先に食べ物で釣ったのはエレローラさんだ。でも、このままクマハウスに泊まることになると、せっかく、フィナたちを呼んでくれたエレローラさんに悪い。

「冗談ですよ。しばらく、エレローラさんのところでお世話になって、途中からわたしの家ってことで、いいと思いますよ」

長い間だと、フィナの心が持たないかも知れないし。

わたしの提案にエレローラさんは考え込む。

「仕方ないわね。それで手を打ちましょう」

わたしとエレローラさんは握手をする。

今更だけど、なんの勝負をしていたんだろう。

ただ、フィナがホッとした表情をしていたから、これで良かったのかな?

「それで、お母様。お願いがあるんですが」

「なにかしら?」

「フィナたちをお城に案内してあげたいんだけど、できるでしょうか?」

「お城?」

「シュリがお城を見たいと言って、できれば見せてあげたいんですけど」

ノアが少し遠慮がちにお願いをする。

「別にいいわよ」

「本当ですか!?」

「ええ、それにユナちゃんがいれば大丈夫でしょう」

「ユナさん?」

エレローラさんの言葉に全員がわたしの方を見る。

「あら、知らない? ユナちゃんはお城の入城許可を持っているから、いつでも入れるわよ」

「あれって、自分だけじゃないの?」

見知らぬ人を連れて入ったら大変だと思うんだけど。

「常識内なら大丈夫よ。怪しい剣士や魔法使いを連れて入ろうとしなければね。こんな、可愛らしい女の子なら大丈夫よ。もちろん、なにかあればユナちゃんが責任をとることになるけど」

確かに、怪しい魔法使いや剣士を連れていくのと、小さな女の子を連れていくのでは違い過ぎる。そして、なにかあれば責任はわたし持ち。これも、常識内だ。わたしが連れて入るんだから、わたしの責任になるのは当たり前だ。

「それじゃ、明日。みんなで行こうか? わたしでも大丈夫みたいだし」

「いいのですか?」

「三人とも迷惑をかけたりはしないでしょう?」

わたしが言うと、フィナが妹のシュリを不安そうに見る。確かに、自ら迷惑をかけたりはしないと思うけど。なにかをやらかす可能性はある。

「大丈夫だよ」

声をかけてフィナを安心させてあげる。

「心配なら、わたしも付いていくけど」

「仕事はいいんですか?」

「少しぐらい大丈夫よ。優秀な国王陛下もいるしね」

それでいいのかなと思いつつ、貴族がちょっかいを出してきたら面倒なので、エレローラさんの同行をお願いする。

「それじゃ、今晩は歓迎会をしましょう」

そして、夕食を頂き、そのままエレローラさんの家に泊まることになった。

翌日の朝、食事を食べ終わって外にいる。

「わたしも一緒に行きたかったです」

制服姿のシアは、これからお城に行くことになっているわたしたちを、羨ましそうに見る。

「あなたは学園があるでしょう。しっかり勉強をしてきなさい。それに学園祭の準備もあるでしょう」

「うん。それじゃ、ノア。みんなをしっかり案内するんだよ」

「わかっています」

シアはノアの頭を撫でると学園に向かう。

「それじゃ、わたしたちも行きましょう」

「は~い」

シュリが元気よく返事をする。

お城に到着すると、シュリは満面の笑みでお城を見上げている。

「大きいです」

「中で騒いだりしちゃダメだからね」

「うん」

フィナはシュリが勝手な行動を取らないようにしっかりとシュリの手を握る。

「それじゃ、みんな、中に入るわよ」

エレローラさんを先頭にみんながついていく。

今日はエレローラさんが引率の先生だね。

お城の門に近付くと兵士がわたしたちを見る。

「エレローラ様、それにクマ殿も」

クマ殿?

そういえば、許可証はもらったけど、見せていないから、わたしの名前を知らないんだよね。

でも、クマ殿って……。

「この子たちはわたしの知り合いだから、中に入るわよ」

「はい。どうぞ。お入りください」

兵士は背筋を伸ばして道を空けてくれる。

さすがエレローラさんだ。

「エレローラ様、凄い!」

「そう?」

エレローラさんはシュリに褒められて、嬉しそうにする。

「それから、彼女が来たことは国王陛下には伝えないでいいから」

エレローラさんがわたしの方を見ながら、兵士に指示を出す。

「ですが……」

兵士がわたしの方を見る。

たぶん、わたしが来たら報告するように言われているんだろう。なのに、エレローラさんに止められて困っている。

状況的に二人の上司に別々の指示を受けて困っている平社員って感じだね。

「いいのよ。今回はお城の見学が目的だからね。もし、なにかあればわたしが責任を取るわ」

「わかりました」

兵士がエレローラさんの指示に従うことにしたみたいだ。

今回ばかりはエレローラさんの指示が正しい。わたしが来たことを国王に報告しても、フローラ様の部屋に行く予定はないはずだから、国王がフローラ様の部屋に行っても、わたしはいない。それだと、国王を待たせることになる。

それに国王がフローラ様にわたしのことを「来ているそうだ」とでも伝えて、フローラ様が待つようなことがあったら可哀想だ。それなら、始めから知らない方がいい。