軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

217 クマさん、再度、エルフの里に向けて出発をする

家の権利書を渡すと、レトベールさんは去っていく。

わたしは一緒に渡された鍵を使って家の中に入ると、少し埃臭かったので、窓を開けて換気をする。

結構長い間使ってなかったのかな?

一ヶ月に一度は掃除していると聞いたからマシな方なんだと思う。これが、数年単位だったら、もっと酷いことになっていたはず。

わたしは風魔法を使って床などの埃を外に出す作業を、一通りの全ての部屋で行う。備え付けの大きな家具以外は無いからできる方法だ。これが、細かい物があれば一緒に吹き飛んでしまうからできない。

家の中を見回ったが、ベッドや家具などの必要最低限は設置はされていた。

一階はキッチンに居間にトイレに風呂がある。

二階に上がれば部屋は2つある。

新婚夫婦の家って感じだ。

まあ、わたしとしては移動するときの拠点にするだけだし、なにも問題はない。

ここに転移門を設置すれば隣の国に行くのが楽になる。贅沢を言えば川を渡った先の街が良かった。

贅沢を言ったらきりがない。

一通り確認したわたしは、クマの転移門を二階の寝室の部屋に設置することにする。

この家で寝泊まりする予定は無いが、自分の部屋として使う場所に設置した方が良いかと思ったためだ。

部屋の隅にクマの転移門を設置する。これで、いつでもこの街に来ることができる。

掃除は軽くだけど終え、戸締まりをするとサーニャさんがいる宿屋に戻る。あまり遅くなると心配をさせることになる。

「ユナちゃん、遅かったけど大丈夫だった?」

どうやら、帰りが遅かったらしい。サーニャさんが心配して待っていた。

もう少し、早く戻ってくるべきだったかな。もう少し、遅かったら、レトベールさんの家まで来ていたかもしれない。

「大丈夫だよ。お孫さんに会って、絵本を読んであげたり、お茶をごちそうになっただけだよ」

遅くなった理由を説明するが、家を貰ったことは内緒にしておく。

「なら、良いんだけど。なにかされたんなら言ってね」

サーニャさんの気持ちに感謝しているとルイミンが話しかけてくる。

「ユナさん、ありがとうございました」

ルイミンが頭を深々と下げる。

そして、ルイミンの腕に目を向けると、ちゃんとサーニャさんと同じ腕輪をしていた。

「腕輪が戻ってきて良かったよ」

「これもユナさんのおかげです」

「お金を払ったのはサーニャさんだよ」

あの宝石にどれ程の価値があるか分からないけど、お金を払ったのはサーニャさんだ。

わたしがしたことはくまきゅうに乗って川を渡っただけだ。

それが一番大変だと言われればそうなんだけど、神様から貰ったスキルだ。それを恩着せがましくするつもりはない。

「お姉ちゃんにいろいろと聞きました。ユナさんが居なかったら取り戻せなかったことを」

「そんなことないよ。サーニャさんも頑張っていたよ」

「でも、くまゆるちゃんたち凄いです。川の上を渡ったんですよね」

どうやら、水上歩行のことは聞いているみたいだ。

サーニャさんに召喚獣と水上歩行のことを誰にも言わないようにお願いをした。そのときにルイミンにも? って尋ねられたので、ルイミンに話すのは了承した。

召喚獣を知っているルイミンならそれほど問題にならないし、今後の移動でも使うかもしれない。

「お礼なら、くまゆるたちにしてあげてね。あの子たちが雨の中、頑張ったんだから」

「はい、もちろん、くまゆるちゃんたちにも感謝です」

部屋で話をしているとミランダさんたちがやってきた。

どうやら、腕輪のことが気になっていたらしい。

本当は午前中に来るはずだったけど、予定ができて来られなかったと言う。

「本当に良かったよ」

「みんなには迷惑をかけてゴメンね」

ルイミンがミランダさんたちに謝る。

「それにしても、あの濁流の川をどうやって渡ったかも気になるけど、腕輪を買い戻すサーニャさんはさすがギルドマスターですね」

「わたしたち、貧乏冒険者には無理です」

自分たちで言って、自分たちで苦笑いを浮かべるミランダさんたち。

「でも、ユナちゃん、どうやって、川を渡ったの?」

エリエールさんが擦り寄りながら尋ねてくる。

わたしは離れながら、答える。

「もちろん、秘密です」

「教えてくれてもいいのに」

口を尖らせながら言う。

ミランダさんたちなら、別に教えても良いかなと思うけど、今は黙っておくことにする。

「サーニャさん、どうやって渡ったんですか?」

わたしから聞きだせないと思ったミランダさんがサーニャさんに尋ねる。

「ギルドマスターは冒険者の情報を漏らしたりしないわ」

「うぅ、残念」

それから腕輪の話も終わり、今後の話になる。

「船って動きそうなの?」

「う~ん、あと3日はかかるかな? そのぐらいで動き出すと思う」

「でも、この数日船が出ませんでしたから、船は混むと思いますよ」

この街で冒険者をしているミランダさんたちがそう言うなら、船が動き出すのは三日後になるのかな。

そんな混んでいる船には乗りたくない。

乗るときは、もっとゆったりと、のんびりと周りの景色を見ながら乗りたい。混み合っていたら景色を見ることもできない。

「サーニャさんたちはソルゾナーク国に行くんですか?」

「ええ、ちょっと里帰りにね」

「もしかして、なにかあったんですか? それでルイミンがお姉さんのサーニャを呼びに行ったとか?」

鋭い。内容まではさすがに分からないけどほぼ正解だ。

「たいしたことじゃないけど、 長(おさ) に呼び出されてね」

「そうなんですか」

「わたしも詳しくは聞かされていないのよ」

サーニャさんはそう言うと視線は呼びに行ったルイミンに集まる。

「わたしも 長(おさ) にお姉ちゃんを呼んでくるように言われただけなので」

姉妹揃って結界のことは話そうとしない。

エルフにとって、大事だから、内緒なのかな?

わたしは聞いちゃったけど。

「もしかすると、わたしたちは明日には出発しているかもしれないから、本当に今回はルイミンのためにありがとうね。もし、王都に来るようなことがあったら、冒険者ギルドに寄ってね。お礼はするから」

「はい、王都に行ったら、お礼とは関係なく絶対に寄らせてもらいます」

まあ、ミランダさんたちは冒険者なんだから、王都に行けば冒険者ギルドには必ず寄るだろう。

そのときに、わたしも王都にいればいいけど、さすがにそれは難しいかな?

「ユナちゃんも王都に住んでいるの?」

エリエールさんが尋ねてくる。この人にはあまり教えたくないんだけど。クリモニアは遠いから、大丈夫だよね。

「クリモニアって街です」

「クリモニアか、ちょっと遠いね」

だから、来れないですよ。

「今度行ったら、家に泊まらせてね」

全力でお断りします。

わたしはその申し出に笑ってごまかした。

「皆さん、本当にありがとうございました。皆さんに会えて、本当に良かったです」

「役に立てなかったけどな」

「たしかにそうね」

「そんなことありません。皆さんの優しさ、嬉しかったです」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。ルイミンもサーニャさんたちも、また、この街に来るようなことがあったら、顔は出してください」

「はい」

それから、夕飯まで会話は続き、食事はサーニャさんにごちそうになった。

ミランダさんたちとは別れ、宿屋の部屋に戻ってくる。

「それで、ユナちゃん。船はしばらく出そうもないから、くまゆるちゃんたちにお願いしたいんだけど、大丈夫かしら」

サーニャさんとしてはなるべく早くエルフの里に戻りたいそうだ。

わたしとしてはクマの転移門を設置したし、この街に残る必要はないから問題はない。

心残りがあるとすれば船に乗れなかったことぐらいだ。

まあ、それは些細なことなので了承する。

翌日、街に入ってきた門から出て、上流の方に向けて出発する。

さすがに天気が良い日に船場から、くまゆるたちを召喚して、水上歩行するような真似はしない。

「この辺りでいいかな」

街から離れた上流にやってきた。

もちろん、人の姿は見えない。

「やっと、川を渡るんですね」

くまゆるに乗っているルイミンが嬉しそうにする。

くまゆるたちで川を渡ると聞いたルイミンは喜んでいた。

先ほどから、「まだですか」「そろそろ、良いじゃないですか」とか、言っていた。

「川の上で騒いだりしないでね。落ちても、責任持たないからね」

天気は良いが川はまだ荒れている。

大丈夫だと思うけど、一応、忠告だけはしておく。

くまゆるとくまきゅうは川に飛び出し、川の上を走り抜けていく。

「凄いです! 本当に、川の上を走っています!」

ルイミンは暴れていないけど、騒いでいた。

「ルイミン、静かにしなさい」

「でも、お姉ちゃん、川の上を走っているんだよ」

「分かっているわよ」

サーニャさんは妹が騒ぐのを止めようとするが、止まらない。

まあ、それも少しの間だけだ。

くまゆるたちは川を渡りきってしまう。

「くまゆるちゃん、凄かったです」

ルイミンはくまゆるに抱きついたり、撫でたりしている。

渡りきったのに、興奮は収まらないらしい。

そんな、ルイミンの対応はサーニャさんに任せ、改めてエルフの里に向かって出発する。