軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

204 クマさん、エルフの女の子を拾う

駆け寄るとエルフの女の子だった。長い薄緑の髪から長い耳が見える。耳が長いのが特徴の種族だ。

年齢は見た目で言えばわたしと同い年ぐらいだ。とは言っても長寿のエルフが見た目と同じ年齢ではないのは常識である。

女の子は壁に寄りかかり座ったまま動かない。

人の家の前で死んでいないよね。

しゃがんで確認すると、息があるのが分かった。

良かった。生きているみたいだ。

帰ってきたら家の前に死体があるってことだけは避けられたみたいだ。

「大丈夫?」

肩に触れて軽く揺らす。

すると、女の子の目がゆっくりと開く。

「こんなところでどうしたの?」

エルフの女の子がわたしを虚ろな目で見つめる。

目が半分ほどしか開いていない。

「クマ?」

女の子はわたしを見て首を小さく傾げる。

「どうしてここで寝ているの?」

「夢を見ているのかな? クマの格好した女の子がいる。こんな変な格好した人なんていないよね」

「悪かったわね。変な格好で」

「もう一度寝ればきっと目が覚めるはず」

女の子は本当に目を閉じてしまった。

そして、寝息が聴こえてくる。

軽く揺すってみるが起きない。

ちょ、どうするのよ。

警備の人を呼ぶことも考えたけど。寝ている女の子を引き渡すのも気が引ける。

それに呼びに行っている間、このまま放置するわけにもいかない。

仕方なく、女の子をお姫様抱っこをしてクマハウスの中に入る。

クマさん装備のおかげで楽々と持ち運ぶことができる。

家の中に入り、そのまま二階に上がり、客室のベッドに寝かせてあげる。

う~ん、家にお持ち帰りしたけど、本当に良かったのかな?

ベッドに静かに寝ているエルフの女の子を見る。

あのままにしておくわけにはいかなかったから、仕方無いよね。

自分に言い聞かせて女の子の腰に付けているアイテム袋や武器は外してあげる。

寝るのに邪魔だからね。

取り外した武器やアイテム袋はテーブルの上に置いておく。

腰の周りの邪魔な物が無くなった女の子は寝返りをうって、気持ち良さそうに寝ている。

これで大丈夫かな?

部屋を出ていこうとするが思い出す。

あっ、そうだ。忘れるところだった。

わたしは小さいくまゆるをベッドの隅に召喚する。

「女の子が起きたら教えてね」

くまゆるの頭を優しく撫でて、お願いをしてから部屋から出ていく。

わたしは一階に降りると、ソファーに座り、ポテチとオレンの果汁を取り出す。

ポリポリ。

でも、本当にどうしたものか。

まさか、エルフの女の子を拾うとは思わなかった。

ポリポリ。

でも、あのエルフの女の子の顔、どこかで見覚えがあるんだよね。

考えるが思い出せない。どこかですれ違ったことでもあるのかな?

ポリポリ。

ポテチを食べて、のんびりとしていたら眠くなってきた。

わたしは小さなくまきゅうを召喚して抱き寄せる。

「くまきゅう、何かあったら起こして」

わたしはくまきゅうを抱いたままソファーに倒れる。

昼寝は人類の至高の贅沢だ。

くまきゅうを抱いていると気持ちよくなってくる。

目を閉じるとすぐに夢の世界に落ちていく。

ペチペチ。

どうやら、くまきゅうが起こしてくれているみたいだ。

くまきゅうを抱き抱えたまま起き上がる。

「くまきゅう、おはよう」

……どのくらい寝ていたのかな。

窓は少し暗くなりかけている。もう、夕方か。少し寝過ぎたかな。

ソファーから起き上がると、くまきゅうが小さく鳴いて上を見る。

「もしかして、エルフの女の子が起きたの?」

くまきゅうは首を横に振る。

あれ、違うの?

それじゃ、なんだろう?

でも、エルフの女の子が起きたらくまゆるに教えてもらうことになっているけど、よくよく考えると無理かも。

ドアは閉まっているし。(大きくなれば開くことはできるけど)

大きな声で鳴けば聴こえるかな?

くまきゅうが上を見るので、様子を見に行くことにする。

わたしは2階に上がり、エルフの女の子が寝ている部屋を開ける。

そこにはくまゆるを抱きしめている女の子の姿があった。

「う~ん、柔らかくて温かい」

くまゆるが逃げ出そうとするが女の子に抱きしめられて、逃げられずにいた。

本気を出せば逃げられるけど、どうしたらいいか、困っている姿だ。

起きている様子はない。寝ぼけて抱きしめているみたいだ。

くまゆるが助けを求めるようにわたしを見る。

どうやら、くまゆるはくまきゅうに助けを求めたらしい。

でも、寝ている女の子を起こすのも可哀想だ。

どうしようかと思っていると女の子の目がゆっくりと開く。

おお、今度こそ目が覚めたかな?

そして、自分が抱いているくまゆるを見て、

「クマ?」

そして、視線をわたしに動かして、

「クマ? …………夢か」

また、眠ろうとする。

わたしは寝ようとするエルフの女の子の頭を軽くポンと叩く。

「夢じゃないよ」

わたしに叩かれたことで目が開く。

そろそろ起きてもらわないと困る。

女の子は起き上がって、キョロキョロと部屋を見回す。

「ここはどこ?」

再度、わたしを見て、

「クマ?」

もう、それはいいよ。

「ここはわたしの家。あなたはわたしの家の前で倒れていたのよ。覚えていないの?」

エルフの女の子は悩むように考え始める。

「……人混みの中を何時間も歩いていたら、疲れてきて、どこかで休むにもお金がなくて、ふらふらと歩いていたらクマの家が見えて、そこから記憶がありません」

「…………はぁ」

ため息しかでない。

つまり、疲れて人の家の前で倒れていたと。

「あなた、家はどこ?」

「エルフの里です」

エルフの里ってどこよ。

そんな、近所みたいに答えられても困るよ。

「つまり、王都に家は無いのね。まさか、1人でエルフの里からここまで来たんじゃないよね?」

「1人です」

こんなに小さな女の子(わたしと同じぐらい)が1人で旅をするなんて信じられない。

お金も無く、よくそれで王都まで来たもんだ。呆れてものが言えない。親は何を考えているのかな。

それともエルフだから、この子ぐらいだと成人を迎えていて、1人旅ぐらいさせるのかな。

それでも危険なのは代わりない。

もし、他の人がわたしの言葉を聞いたらブーメランと言うかもしれないけど、気にしないでおく。

「それで、どうして王都に1人で……」

来たの? と尋ねようとしたら女の子のお腹が小さく鳴った。

「はぁ~、それじゃ、先に食事にしようか。食事の用意するから下にいいかな?」

どうやら、なにも食べていないようだし。

話は食事をしながら聞くことにする。

「いいんですか?」

「いいよ」

「その…………」

女の子がわたしの名前を呼ぼうとしたことに気付いた。

「ユナよ」

「ユナさん、ありがとうございます。わたしルイミンと言います」

「それじゃ、ルイミン。そろそろくまゆるを離してあげてくれないかな」

ルイミンの腕に抱かれたままでいるくまゆる。

「この子、くまゆるって言うんですか?」

くまゆるを持ち上げてみる。

「黒いクマがくまゆる。こっちの白いクマがくまきゅう」

わたしの腕の中にいるくまきゅうも紹介する。

「可愛いですね」

ルイミンはくまゆるを離してくれる。

そして、ルイミンを連れて一階に降りる。

「適当に座って」

ルイミンが椅子に座るとモリンさんが作ったパンと果汁を出してあげる。

「ありがとうございます」

ルイミンは頭を下げる。

それと同時にルイミンのお腹の音が鳴る。

わたしは食べるように 促(うなが) す。

今日はここで夕飯かな。自分の分も出して席に座る。

「美味しいです。こんなに美味しいパンを食べたのは初めてです」

ルイミンは美味しそうに食べる。

そう言ってもらえるとモリンさんも嬉しいだろうね。

「ユナさん。ご家族の方はいないんですか? 挨拶をしたいんですが」

「いないよ。わたし1人だよ」

「えっ、ユナさん1人?」

「そうだけど」

そう答えると、驚いた顔をされる。

「そんなに小さいのに1人で暮らしているの!?」

小さい言うな。

ルイミンだってそれほど大きくない。

わたしと変わらないほどの身長だ。

でも、長寿のエルフなら間違いなく、わたしよりも年上なんだよね。

何歳ぐらいなのかな? 見た目は15歳以上には見えないけど。

「それに1人じゃないよ。くまゆるとくまきゅうもいるから」

くまゆるとくまきゅうは大切な家族だ。

わたしの言葉にくまゆるとくまきゅうが近寄ってくる。

「聞いてばかりであれなんですが、ユナさんの格好って王都で流行っているんですか? わたしは今日王都に着いたばかりで分からないんですが」

先ほどから、気になっていたらしく、尋ねてくる。

まあ、普通は気になるよね。

「流行っていないよ」

流行ったら怖い。

「なんで、この格好をしているかはノーコメントで。それでルイミンはどうして王都に?」

初めて会った子に話すつもりは無いので、逆にルイミンのことを尋ねてみる。

「人を探しに来たんです。前に会ったときに王都で仕事をしているって聞いたんです」

この王都で人探しね。もしかして、人を捜すために無作為に何時間も歩いていたの?

違うよね。そう思いたい。

「その人はどこにいるの? 分かれば案内するよ」

一応尋ねてみる。

流石に居場所も分からずにこの王都で人を捜すのは不可能だろう。

場所が分かれば案内をしてあげることぐらいできる。

分からなかったら、エレローラさんに聞けばいいし。

「10年前に冒険者ギルドで働いているって言ってました」

「10年前!」

「はい、10年前ですが、それがどうかしたんですか?」

ルイミンは首を小さく傾げる。

それじゃ前に会ったのが10年前ってことになるの?

つまり、10年間会っていなかったと。さすが、長寿種族だ。10年ぐらい1年ぐらいの感覚なのかもしれない。

それに冒険者ギルドで働いているって、冒険者ってことかな?

でも、10年も会わないって、その人死んでいないよね。冒険者なら、亡くなっている可能性もある。

「その人は冒険者なの?」

「分からないです。王都の冒険者ギルドで働いているって聞いただけなので」

うーん、サーニャさんに聞けば分かるかな?

なんたってギルドマスターだし。

なによりもサーニャさんもエルフだし…………。

わたしはルイミンの顔を見る。

…………似ている?

「なんですか?」

見つめられて、ルイミンが恥ずかしそうにする。

「えっと、その人の名前は」

「サーニャです。わたしの姉です」

やっぱり。

そうだよ。誰かに似ていると思ったらサーニャさんだよ。

なんで、気付かなかったかな?

同じエルフだよ。すぐに気付きそうなのに。

「もしかして、知っているんですか?」

わたしの反応を見て、なにかを感じとったのだろう。

「知っているよ。サーニャさん、冒険者ギルドのギルドマスターをしているよ」

「ギルドマスターですか?」

「うん、わたしが知っているエルフでルイミンと同じ髪の色をしていて、名前がサーニャなら、間違いないと思うよ」

「ユナさん、案内してください。お願いします」

頭を下げるルイミン。

「いいけど、今日は遅いから明日だね」

そろそろ夕暮れだ。基本24時間営業している冒険者ギルドだけど、そろそろ仕事から戻ってくる冒険者で混みあう時間だ。なるべくなら、避けたい時間帯だ。

サーニャさんも仕事を終えて帰っているかもしれない。

ルイミンには明日、案内する約束をする。