軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

202 クマさん、餅つきイベントを行う

餡子を作った2日後、今度は餅を作るために森に来ている。目的は 臼(うす) と 杵(きね) を作るための木材探しだ。

さて、どの木が良いかな。

くまゆるに乗りながら、木々の間を抜けて臼になりそうな木を探す。

臼に使う木ってあったっけ。あったとしても、この世界にあるとも限らないし、探すのも面倒だ。だから、臼に使えそうな太くて大きな木を探すことにする。

くまゆるに乗って探していると、臼に使えそうな木を見つける。

う~ん、これでいいかな。

わたしはくまゆるから降りる。目の前に立派な木が立つ。太い枝も伸び、葉が悠々としげっている。

そして、わたしは何も考えずに風魔法で太い枝を切り落とすと、上から切った枝が降り注いでくる。慌てて避ける。ちゃんと考えて切らないと駄目だね。

次に木を切り倒し、臼の大きさに輪切りを作る。このぐらいの大きさだったかな?

自分の腰より下ぐらいまでの輪切りの木が作られる。

今度は輪切りになった木に穴を作らないといけない。杵を叩く場所だ。

さて、どうやって臼の形にする?

切るのは簡単だけど、木に穴を削るのは難しいな。竜巻みたいな魔法で削れるかな?

試しに小さな竜巻をイメージして、輪切りにした木に乗せてみる。

おお、穴が掘れていく。そして、止めどころをミスって貫通してしまった。

失敗、失敗。

今度は上手く調整しながら円形の溝ができるように削っていく。

おお、今度は上手にできた。本物は見たことはないけど。テレビで見たときはこんな感じだったはず。

まあ、杵で叩いて壊れなければいい。

最後に外観の周りをカンナで削ったように綺麗にしていく。これで見た目も悪くない。

残りの輪切りにした木も予備として臼を作っておく。

無駄に捨てることはない。結局、余った木から、5つの臼ができてしまった。クマボックスもあるし、持ち運びは問題はない。

次に作らないといけないのはお餅をつく杵だ。大きなとんかちってイメージでいいのかな?

実際、叩くことができればなんでもいいはず。それとも、木工職人にでも頼んだ方がいいかな?

作れなかったらティルミナさんか、ミレーヌさんに相談しよう。

とりあえず、余った木材で杵モドキを作り上げる。

持ってみる。振り回してみる。軽く叩いてみる。大丈夫みたいだ。

ただ、折れないように作ったら、少し大きくなってしまった。

試しにクマさんパペットを外して持ち上げようとしてみたが、持ち上がらなかったのはお約束だ。

杵を臼に向けて振り下ろしたとき、あることに気付く。

誰が餅を引っくり返すの?

餅つきは1人ではできない。

杵は重くてわたしじゃないと持てない。とてもじゃないが、子供たちは持てない。まして、何度も振り下ろすことなんてできるわけがない。

わたしは座って休んでいるくまゆるを見る。

さすがにくまゆるじゃ、餅を引っくり返すことはできないよね。お餅にさわったら餅が毛だらけになるイメージしか湧かない。

でも、召喚獣だから、毛は簡単に抜けたりしないのかな?

それに汚いとは思わないけど、衛生的にどうなんだろう。

ここはやっぱり、フィナたちにやり方を教えて、やってもらうのが無難かな?

テレビでも子供がやっている姿は見た。プロがやるような、あんなスピードでやらなければ大丈夫なはず。

わたしがそんなことを考えていると、くまゆるが近寄ってきて、杵を持ち上げようとする。

「くまゆる?」

くまゆるは二足で立ち、両手で杵を持ち上げてみせた。

どうやら、ひっくり返す役目ではなく、叩く方をやってくれるみたいだ。

「できるの?」

くまゆるの顔は「任せて」って言っているようだ。

くまゆるは杵を振り下ろしてみる。かなりの勢いがある。

「危ないから、もう少し力を抑えてね」

これでわたしがお餅をひっくり返せばいいのかな。

ちょっと怖いけど、大丈夫かな?

答えが出たような、出ていないような気がするが、やってみるしかない。

そして、杵も臼と同等の数を作っておく。先ほどのくまゆるの様子を見ると壊す可能性もある。予備はあっても困ることはない。

臼と杵を手に入れたわたしはクリモニアに戻ると孤児院に向かう。

餅つきの場所を院長先生から許可をもらうためだ。

くまゆるを召喚するなら、クマハウスの庭でやるよりは人通りがない孤児院の方が適している。

「構いませんけど、なにをするのですか?」

幼年組の世話をしている院長先生が尋ねてくる。

「ちょっと、食べ物を作ろうと思って」

「外で作るのですか?」

「広い場所じゃないと、ちょっとできないからね」

「クマのお姉ちゃん、食べ物作るの?」

「美味しいの?」

5歳ぐらいの女の子と男の子がやってくる。その腕の中にはくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみが抱きしめられている。

他の子も抱いている。

布団で寝ている子はくまゆるのぬいぐるみの耳をしゃぶっている姿がある。

どうやら、ぬいぐるみは人気があるみたいだ。

「うーん、どうだろう。わたしは美味しいと思うけど。作ったら食べてくれる?」

味見係は必要だからね。

「いいの?」

「うん、食べてくれると嬉しいかな」

頭を撫でてあげると嬉しそうにする。

他の子供にも作ったら、食べてもらう約束をする。

そして、院長先生と餅つきを行う日取りを決めて孤児院を後にする。

餅つきは次のお店の定休日になった。院長先生から、「食べ物を作るのでしたら、お店で働いている子たちが休みのときにお願いをできませんか?」と言われた。

それはそうだよね。

仕事から帰ってきたら、楽しいイベントが終わっていて、周りの子たちが楽しそうにしていたら可哀想だ。

せっかくなので、アンズやモリンさん、ティルミナさんたちも誘うことにする。

そう考えると、多くの下準備が必要になる。

翌日、わたしはフィナとシュリを呼んで、下準備を手伝ってもらうことにする。

一晩、水に浸した餅米を蒸したり、先日作った餡子を大量に作る作業を行う。

「ユナお姉ちゃん。できました」

「ありがとうね」

あんこは冷蔵庫で冷やす。蒸した餅米は冷めないうちにクマボックスにしまう。

個人的にはあんこは冷やして甘さを抑えた方が美味しい。

そして、50人以上が参加するイベントの下準備を完遂した。

餅つきイベント当日、わたしは孤児院に向かう。

到着すると幼年組と院長先生が出迎えてくれる。

「他のみんなは?」

誰もいない。ティルミナさんもフィナもアンズの姿も見えない。早く来すぎたかな?

「みんな、鳥のお世話に行ったよ」

「みんなでやればすぐに終わるって」

お店は休みにできても鳥の世話は必要だ。

わたしは皆が集まってくるまでに餅つきの準備をする。

子供たちには危ないから少し離れるように言うと、子供たちは素直に従ってくれる。

子供たちが離れたのを確認するとクマボックスから森の中で作った臼モドキと杵モドキを取り出す。

ぬるま湯が入った桶も忘れない。餅つきには必要だからね。

そして、最後にくまゆるとくまきゅうを召喚させる。くまゆるたちを召喚させると、幼年組の子供たちは嬉しそうに近寄ってくる。

でも、側に近寄られると危ないので、くまきゅうに子供たちの世話をお願いする。

一通りの準備が終わる。

年長組の子供たちやティルミナさんはまだ戻ってこない。

う~ん、餅をついていれば来るよね。

練習も兼ねて先に始めることにする。

クマボックスから蒸したてのもち米を取り出し、臼の中に入れる。臼の中のもち米から湯気があがる。

わたしは杵で米をグリグリと潰したり軽く叩いたりする。

さすがにくまゆるに細かい作業は無理だと思う。このぐらいでいいかな。少しだけ、もち米が潰れたところで、杵をくまゆるに返す。

「それじゃ、わたしが餅をひっくり返したら、叩いてみて、初めは軽くね」

「クーン」

わたしはクマさんパペットを外して、餅に手を入れる。

「あつつつ」

「クマのお姉ちゃん!」

「大丈夫だよ」

子供たちが心配そうにわたしを見る。

安心させるために手を振ってみせる。

でも、危なかった。熱かったよ。火傷をするかと思った。いくら、引きこもりをしてたからと言って、どんだけわたしの手は貧弱なのよ。

今度は気を付けてやることにする。

確か、テレビでは水を付けて、餅に軽く触る程度にやっていたような。

もう一度、挑戦するが熱いのは変わりない。

わたしは地面に置いてあるクマさんパペットをみる。

どんなことがあっても汚れないクマさんパペット。洗濯不要なクマさんパペット。

わたしはクマさんパペットを着けて、餅に軽く触ってみる。

おお、くっつかない。ありえない現象が起きている。

試しにクマさんパペットで餅をひっくり返してみる。

おお、やっぱり、くまさんパペットに餅がくっつくことはない。

万能クマさんパペットに感動する。

「くまゆる、もう一度行くよ」

「クーン」

「はい」、ペッタン、「はい」、ペッタン、「はい」、ペッタン、「はい」、ペッタン。

いい感じで餅つきができる。

適度に餅を濡らしてついていく。

わたしとくまゆるが餅をついていると、鳥のお世話を終えた子供たちが戻ってきた。その中にはティルミナさんとフィナたちの姿もある。

「ユナちゃん、もう、始めているの?」

「うん、とりあえず、やってみようと思って」

と説明をしている間ももちつきは続く。

「はい」、ペッタン、「はい」、ペッタン。

「これが新しい食べ物?」

ティルミナさんは臼の中を見る。

「もち米を潰して作る料理です」

「お店に出すの?」

ティルミナさんが「またなの?」って感じにわたしを見る。

「これは個人的なもので、お店には出しませんよ」

さすがに餅は作るのが大変だ。自動餅つき機があればいいけど、そんな便利な物はない。だから、作るにはかなりの労力が必要になる。

主に子供や女性が多いわたしの店では作るのが大変だ。それでなくても、1日の仕事量は多い。そんなところに餅料理は無理だ。

こんな力仕事を女性や子供にやらせるわけにはいかないからね。

それにお餅はたまに食べるからいいのであって、毎日食べるものじゃない。

わたしの言葉にティルミナさんは安堵の表情を浮かべる。

「はい」、ペッタン、「はい」、ペッタン。

順調に米の粒が消えて餅になってくる。

あと、もう少しかな?

餅をついていると、モリンさんやアンズたちが寮の方からやってくるのが見えた。

「ユナさん、遅くなりました。もち米の料理とお聞きしましたので、おかずを作ってきました」

どうやら、アンズとモリンさんたちはちょっとした料理を作ってくれたみたいだ。

お餅と餡子だけじゃ寂しいからね。ありがたい。

でも、人の数が多い。このままじゃ、作るのが間に合わない。

餅をつくのがわたしとくまゆるだけでは時間が掛かる。

これはティルミナさんたちにも手伝ってもらわないと駄目かな?

わたしがどうしようか悩んでいると援軍がやってきた。

「ユナちゃん、新しい料理を作るって話を聞いたから来たんだけど、わたしたちも参加していいかな?」

「手伝えることはあるか?」

ルリーナさんとギルがどこから嗅ぎ付けたのかやってきた。

さらに後ろには男が見たら怒り出しそうな、美人や可愛い女の子を連れているハーレム冒険者のブリッツもいる。

「俺も手伝うぞ」

男手が増えた。

わたしは餅つきのやり方をみんなに教える。

ルリーナさんとギルがペアとなり、ブリッツとパーティーメンバーが代わりながら行うことになり。

そして、アンズ料理チームも女性たちだけでやってみるそうだ。

さらにゲンツさんもやってきて、ティルミナさんとペアを組み、フィナとシュリが応援する姿があった。

作った臼と杵が無駄にならないでよかった。

ただ、杵はアンズたち用に一回り小さくしてあげた。

餅つきをする者が増え、どんどん餅が出来上がっていく。

お餅が出来上がる度に子供たちに配っていく。

小皿と醤油、海苔、餡子を用意する。

アンズたちが作ってくれた料理も広げられ、総勢50人以上の子供、大人たちが食べ始める。

わたしも海苔と醤油で食べる。

美味しい。

食べている間も交代で餅つきは行われる。余ったらクマボックスに仕舞えばいいだけだから、問題はない。

そして、数時間に渡る餅つきイベントは、好評で終わった。

後日、そんなイベントをやったことがノアに知られ、怒られることになった。

「今度は絶対に誘ってくださいよ!」

わたしは約束をして 宥(なだ) めた。