軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191 クマさん、くまのぬいぐるみをプレゼントをする

ケーキも食べ終わり、あとはぬいぐるみを渡すだけになった。

でも、ケーキと違ってぬいぐるみのプレゼントは好き嫌いがある。

実際に好きでも、大人ぶって『ぬいぐるみですか、わたし、そんな子供じゃありません』とか言われたりしないかな。

今さらだけど10歳って年齢は微妙なお年頃だ。

大人になってもぬいぐるみが好きな人もいるけど。小さくても興味が無い子もいる。

「ミサ、1つ聞くけど。ぬいぐるみは好き?」

「ぬいぐるみですか? ……好きですよ。お母様に買ってもらった犬のぬいぐるみを大事にしてます」

一瞬、間があったけど、好きと言う言葉にわたしとフィナは安堵する。

「それじゃ、もう1つのプレゼントも受け取ってもらえるかな?」

「もう1つあるんですか!?」

わたしはクマボックスからくまゆるのぬいぐるみを出すとフィナに渡し、くまきゅうのぬいぐるみはわたしが持つ。こうすれば二人からのプレゼントっぽく見える。

ぬいぐるみを取り出した瞬間、騒ぐ人物がいた。

「な、な、なんですか! それは!」

ミサよりも先にノアが反応する。

「くまゆると、くまきゅうのぬいぐるみだよ」

ノアが席を立つと駆け寄ってきて、わたしが抱いているくまきゅうのぬいぐるみを凝視する。

「可愛いです。そっくりです。ユナさん、わたしに下さい」

「ダメに決まっているでしょう。ミサへのプレゼントなんだから」

「そんな~、せめて片方だけでも」

ノアがくまきゅうとくまゆるのぬいぐるみを交互に見る。

「ダメだよ。両方揃っていないとクマたちが可哀想でしょう。だから、両方ともミサへの誕生日プレゼントだよ」

ぬいぐるみでもくまゆるとくまきゅうが離ればなれになったら可哀想だ。

「どうして、今日がわたしの誕生日じゃないんですか!?」

そんなことをわたしに言われても困る。文句ならクリフとエレローラさんに言ってほしい。

ノアは床に膝を突いて落ち込む。

「うう、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみ、わたしも欲しいです」

ノアは悲しそうな顔をしている。

「えっと、そんなに欲しいの?」

「はい、凄く欲しいです……」

顔を上げて、訴えるようにわたしを見る。

「それじゃ、今度作ってあげるから」

「ほ、本当ですか!」

ノアはわたしの言葉に元気を取り戻す。

「うん、だから、今日は我慢してね」

まあ、作るのはわたしじゃない。シェリーだ。それに、ノアも欲しがると思って作らせてある。

クリモニアに帰る頃にはぬいぐるみは何個か出来上がっているはず。

でも、欲しがると思ったけど。まさか、ここまで反応するとは思わなかった。

「わかりました。我が儘を言ってごめんなさい。でも、約束ですよ」

ノアは素直に謝り、約束を強調する。

わたしとフィナはクマのぬいぐるみを持って、ミサのところに向かう。後ろではノアが羨ましそうに見ている姿がある。クリモニアに帰ったら、プレゼントするからそんな目で見ないで。

ノアの視線を気にしながらミサのところに来る。

「先にいいよ」

フィナに先にプレゼントする順番を譲る。

「ミサ様、誕生日おめでとうございます。わたしも少しだけだけど、作るの手伝いました」

フィナがくまゆるのぬいぐるみを差し出すと、ミサは嬉しそうに手を伸ばして受け取る。

「ありがとうございます。可愛いです。本当に貰っていいんですか?」

「ミサへの誕生日プレゼントだからね。ぬいぐるみが好きで良かったよ」

「恥ずかしがらずに、好きって言って良かったです。聞かれたとき、一瞬、小さいときは好きだったけど。今は興味が無いって答えようかと思ったんです」

「そうしたら、プレゼントはしなかったね」

「そうしたら、わたしが貰っていたのに……」

ノアが残念そうにしている。

「それじゃ、くまきゅうも大事にしてね。片方だけじゃ、可哀想だから、一緒に可愛がってくれると嬉しいかな」

わたしはくまきゅうのぬいぐるみをプレゼントする。

実際のくまゆるとくまきゅうも片方だけ構うといじけるからね。

ミサは小さな体でぬいぐるみを大事に抱きしめる。そんな、ミサの姿をノアが羨ましそうに見ている。

今日は我慢してね。

「2つとも大事にします。ありがとうございます」

ミサが今日一番の笑顔を見せてくれる。

「ミサ、可愛いぬいぐるみを貰えて良かったわね」

「はい」

ミサの母親が娘の笑みを見て喜んでいる。

「でも、クマさんのぬいぐるみを貰ったら、ユナさんにお願い事ができません」

ミサがぬいぐるみを抱きしめながら、そんなことを言う。

「なにか、お願い事があったの?」

「はい、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに、もう一度会いたかったんです。だからお願いをしようと思っていたんです」

「そんなことを頼もうとしていたの?」

「はい……」

「言ってくれれば良かったのに」

わたしは小熊化した、くまゆるとくまきゅうを召喚する。

「な、なんですか!? くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが、ぬいぐるみみたいに小さいです」

「この状態の大きさを見本にして、ぬいぐるみを作ったからね」

くまゆるとくまきゅうはミサのところに向かう。

ミサはくまゆるとくまきゅう、さらにぬいぐるみのくまゆるとくまきゅうの4体のクマに囲まれる。

「ミサ、ズルいです」

我慢ができなくなったノアがくまゆるたちと纏めてミサに抱きつく。

クマたちがミサとノアに挟まれる。

それから、ノアとミサはくまゆるたちと遊び始めた。

その様子を微笑ましそうに見ていたミサの母親が、わたしの方を見る。

「ユナさん、フィナさん、今回はありがとうございますね。こんなに喜んでいる娘を見るのは久しぶりです。ミサはユナさんとフィナさんに招待状を送ってから、ずっと楽しみにしていましたから」

そう言われると来て良かったと思う。

ドレスを着る羽目になったのは予想外だったけど。

「これからも娘と仲良くしてくださいね」

「はい」

と、わたしとフィナは返事をする。

「ユナちゃん、娘のぬいぐるみも嬉しいけど。フローラ様のぬいぐるみは無いの?」

クマたちと遊ぶノアを見てエレローラさんが尋ねてくる。

「今はありませんけど、用意はしますよ」

「ふふ、良かったわ。そんな物を見せられて、フローラ様の分がなかったらどうしようかと思ったわ」

そもそも、ぬいぐるみを作ろうと思った切っ掛けはフローラ様のためだ。無いわけがない。

渡す順番がいろいろとおかしくなってきているけど。

「それにしても、ミサは良い物をもらったな。わしもユナにパーティーの招待状を送っておけば良い物が貰えたのかのう」

「グランさんもぬいぐるみが欲しかったの?」

「違うわ! おまえさんはプレゼントにしても、料理にしても驚かせてくれるからな。もし、わしにプレゼントしてくれたら、なにをくれたかと思ってな」

グランさんへのプレゼント?

考えてみるが年寄りが喜びそうな物が思い付かない。

肩たたき券? いやいや、孫じゃないんだから。

骨董品とか、国王同様、珍しい武器とか?

あと、貴族として思いつくのは、宝石とかだけど。生憎、そんな物は持っていない。

貴族のグランさんが喜びそうなプレゼントは思い付かない。

……うん? ああ、良い物が1つあった。

「グランさん、飾る系でも良い?」

「飾る?」

「玄関や目立つ場所に飾るとカッコいい物があるんだけど」

「ほほう。それをわしにプレゼントしてくれるのか?」

「うん、いいけど。いらなかったら、持ち帰るから言ってね」

わたしは人がいない場所に移動して、クマボックスからアイアンゴーレムを取り出す。

うん、ゴツイね。

「きゃーーーー」

「なんだ!」

「ゴーレムだ!」

「ユナ、なにをするんだ!」

ゴーレムを出したら皆が騒ぎ出す。

椅子を倒して逃げ出す者。叫ぶ者。腰を落とす者。

みんな、なにをそんなに騒いでいるの?

「グランさん、これを飾ったら格好良くない?」

わたしはアイアンゴーレムをコンコンと叩く。クマさんパペットを付けているから、そんな音は鳴らないけど。

「ユナ、危険は無いのか?」

グランさんが恐る恐る尋ねてくる。

「なにが?」

「それ、アイアンゴーレムじゃろう?」

「うん、そうだけど」

見れば分かると思うけど。初めて見るのかな? わたしも初めてだったし。

でも、何か会話が噛み合っていないような気がする。

わたしが首を少し傾げていると、フィナがみんなが驚いている理由を教えてくれる。

「ユナお姉ちゃん。みんな、ゴーレムが動くと思っているんだよ」

ああ、なるほど。それでみんな、騒いでいたのか。

フィナが説明してくれて、やっと理解した。

「このゴーレムは動かないから大丈夫だよ」

「本当か?」

疑い深い。

それを証明するために、何度も触れてみせる。

「ユナちゃん、もしかして、そのゴーレムって、こないだの?」

「お母様、こないだってなんですか?」

エレローラさんが鉱山に現れたゴーレムをわたしが討伐したことを話す。

「おまえさん、アイアンゴーレムを討伐したのか。でも、こんなに状態の良い物、初めて見たぞ」

グランさんが近寄ってアイアンゴーレムを見る。

ガザルさんたちにも言われたっけ。討伐するときにどうしてもダメージを与えるから、原形を 留(とど) めない場合が多いって。わたしの場合、電撃魔法で魔石の破壊で倒したから原形は 留(とど) めている。

「玄関にどう? 目立って格好良くない?」

すでにプレゼントした二人は飾ってくれている。

「確かに目立つが、客が来たら、みんな驚くぞ」

「それじゃ、いらない?」

良いプレゼントだと思ったのに。

「くれるなら貰うが、本当に良いのか? こんな良い状態のアイアンゴーレムはかなりの高値で取引されるぞ。金属の量だけでも、かなりの金額になるからのう」

「まだ、たくさんあるから良いよ」

クマボックスには、まだ数体のアイアンゴーレムが入っている。現状では使い道が無い。

わたしがそんなことを言うとクリフは頭を抱え、グランさんやエレローラさんは笑みを浮かべながら呆れている。

ミサとノアは初めて見るゴーレムに興味を持ったのか近くで見ている。

二人の腕の中にはくまゆるとくまきゅうがしっかりと抱かれている。

他の人はゼレフさんやボッツさんと一緒に離れた場所からこちらを見ている。

一般人にはアイアンゴーレムはかなり驚かせたみたいだ。

鍛冶屋の二人はそんなに叫ぶほど驚いていなかったから、気にもしなかった。今度、出すときは気を付けよう。

「おまえさんが非常識と思ったが、ここまで非常識の塊とは思わなかったわい」

「俺は知っていたぞ」

「わたしも」

グランさんがわたしのことを非常識と認定した。しかも、クリフやエレローラさんも同意する。さらに、よく見るとゼレフさんも頷いている。

あれ、おかしいな?

クマの着ぐるみ以外はわたしは普通だよね。って気持ちを乗せて三人娘を見る。

でも、否定する言葉は出てこなかった。

納得がいかない。