軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

172 クマさん、街の探索に行く

ドアが開き、部屋を覗き込むように入ってきたのはミサだった。

「ノアールお姉さま!」

「ミサ!」

2人は抱き締めあって再会を喜ぶ。

そして、わたしたちの方を嬉しそうに見る。

「それにユナさんにフィナちゃんも来てくれたんですね」

「まあ、招待状をもらったからね」

この笑顔を見ると本当は断りたかったとは言えない。

「ミサ様、この度は……」

「そんな挨拶はいいですよ」

フィナが一生懸命に挨拶しようとしたがミサは 遮(さえぎ) る。

「だって、みんなお爺様のパーティーに来たのに、わたしのところにまで挨拶に来るんだよ。もう、疲れました」

貴族の身分も大変みたいだね。

しがない冒険者で良かったよ。

でも、同じ貴族のノアを見ているけど、そんな大変そうには見えない。パーティーがあるから、今だけなのかな。

「もしかして、それで逃げてきたの?」

「はい。メーシュンからノアールお姉さまたちが来たって聞いたから、部屋を脱け出してきました」

笑顔で言うミサ。

いいのかな?

「そうだ。ミサ、聞きたいんだけど。街の中を散歩したいんだけど大丈夫かな?」

「う~ん、たぶん大丈夫だと思うよ。他の人たちも出掛けているし」

そうだよね。さすがにパーティーまで部屋に閉じこませるわけにもいかないだろうし。それぐらいの自由はあるだろう。

「それじゃ、フィナ。わたしたちは街でも散歩しようか」

「はい」

「わたしも行きます」

ノアが手を挙げて参加表明をする。

「ノアはダメじゃない?」

「どうしてですか!?」

「さすがにクリフの許可が必要でしょう」

ノアは貴族様なんだから。

「なら、許可をもらってきます!」

ノアは駆け出すと部屋から出ていく。

そして、すぐに戻ってくる。しかも、クリフと一緒に。

「許可をもらいました!」

はやっ、しかもクリフいたんだね。メーシュンさんの話によればグランさんに会いに行ったと聞いたけど、戻ってきていたんだね。

「ユナ。パーティーまでの間、ノアを頼めるか?」

クリフはわたしのところまでやってくると、そんなことを言い出す。

「別にいいけど。クリフは?」

「俺は仕事だ。いろいろと会わないといけない者がいるからな。今後のことでグラン爺さんとも話もある。だから、ノアと一緒にいられる時間がないんだ。さすがにパーティーがある日まで部屋に居させるわけにもいかないからな。それに何かあってもお前さんと一緒なら大丈夫だろう」

信用してくれるのは嬉しいね。

「ノア、外出は許可するがユナから離れるなよ。もし守れなかったら、今後は外には行かせないからな」

「お父様、ありがとうございます。もちろん、ユナさんから離れたりしません。抱きついてでも離れません」

そう言って抱き付いてくる。

そんなノアを引き離して、ミサの方を見る。

「それじゃ、わたしたちは街を散歩してくるから、グランさんによろしく言っておいてね」

ミサに伝言を頼み、出掛けようとする。

「わ、わたしも行きたいです」

ミサが口を開く。

確かにミサを1人残して遊びに行くのは可哀想だ。でも、行きたいと言われてもノア同様、勝手に連れ出すわけにはいかない。

連れていくにしても、グランさんや親御さんの許可が必要だろう。

親御さん? 亡くなっていないよね。

え~と、確か、ミサの親御さんは生きているはず。初めて会ったときに両親は先に王都に行ってると聞いた記憶がある。

「ミサも両親から許可がもらえればいいよ」

もし、勝手に連れ出して誘拐したと思われても困るし。

「本当ですか!?」

一人増えようが二人増えようが変わらない。

二人とも勝手に動き回るタイプじゃないし。

フィナのことは一番信用しているから不安なことはない。

「うん、許可がもらえればね」

「わかりました。お父様とお母様に聞いてきます」

先ほどのノア同様に部屋を飛び出そうとするミサ。でも、ドアを開けた瞬間、足が止まる。

「お爺ちゃん」

「なんだ。ミサ、おまえはこんなところにいたのか?」

ドアを開けて、グランさんが入ってくる。

「しかも、クリフまでおるのか」

「先程は」

クリフは頭を下げる。

「ここじゃ、そんな堅苦しい挨拶はいらんぞ」

「それでグラン爺さんは、どうしてここに?」

「前にお世話になったユナが来たと聞いたからな。挨拶をしておこうと思ってな」

どちらかと言うとわたしの方がお世話になった気がするんだけど。

土地を購入するときも、盗賊団の処理のときもお世話になった。

「久しぶりじゃのう。クマの嬢ちゃんとフィナだったな」

「あ、はい。フィナです」

いきなり、グランさんに名前を呼ばれて挙動不審になるフィナ。

それにわたしの名前、クマの嬢ちゃんじゃないよ。

「今回は孫娘のためにありがとうな」

「わたしもミサに会いたかったから」

「そう言ってもらえると助かる」

それから、前回オークから助けたことの礼を言われた。

「お爺ちゃん。ユナさんたちと街にお出掛けをしてもいいですか? みんなわたしを置いて、行くって言うんです」

「街か?」

グランさんがわたしを見る。

「クマの嬢ちゃんがいるなら、大丈夫だろう」

また、わたし任せ?

別にいいんだけど。

ミサはグランさんの言葉に喜んでいる。

わたしたちは挨拶も程々にして街の探索に出掛けることになった。

「ユナさん、どこに行きますか?」

「って言われても、この街になにがあるか分からないから、適当に歩くつもりだけど。みんなはどこか行きたい場所ってある?」

一応、引率する役目をおっているのでみんなに聞いてみる。

「わたしはどこでもいいですよ」

「ユナお姉ちゃんが行くならどこでも」

「お外に出れるならどこでも」

ノア、フィナ、ミサと口にするが誰も行きたい場所を進言しない。

「それじゃ、適当にふらつこうか。でも、わたしから離れちゃダメだよ」

みんなは素直に返事をする。

街を歩いていると人に見られる。

クマの格好をした普通の女の子と美少女三人。

目立つメンバーだね。

でも、聞こえてくる言葉は『クマ』の単語だけだ。

この子たちが注目を浴びるのは数年後かな。そんなことを考えながら三人の娘を見る。

「みんな、なにか食べる?」

少し前に昼食を食べたけど、時間は経っている。少しぐらいならお腹に入るだろう。

「はい。食べます」

「はい」

「食べます」

全員から賛同を得たのでミサに聞いて、屋台がある場所を目指す。

話によるとクリモニア同様、広場に屋台が並んでいるらしい。

その街の特産を見るなら屋台を見た方が早いからね。本当は八百屋とかお店を見てみたいけど、子供たちにはつまらないだろうから屋台にする。

広場に向かって歩いていると、前の方から綺麗な服を着た数人の男女のグループがいた。年齢はわたしとフィナの間ぐらいだ。13歳前後ってところかな。そのグループの少し離れたところには黒いマントに包まれた護衛らしき人物もいる。人のことは言えないけど怪しい格好だ。

見た感じ、貴族なのかな?

そのグループがわたしたちに気付くと、嫌な笑みを浮かべてわたしを見ている。正確にはわたしって言うよりもミサを見ている。

ミサもそのことに気付いたのかわたしの後ろに隠れる。

うん、なにかあるのかな? 見る限りうちの子たちと違って性格が悪そうなんだけど。護衛も目付きが悪いし。

グループが笑いながらわたしたちの方に歩いてくる。