軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

153 クマさん、ケーキの試食会をする その1

翌日、お店が定休日なので、昨日作ったケーキを『くまさんの憩いの店』に持っていく。

お店にはモリンさんとカリンさんがいる。

お店にいない子供たちはフィナが孤児院に呼びに行っている。

流石に孤児院の子供たちを全員は呼ぶことはできないので、呼ぶのはモリンさんのお店で働いている子供たちだけとなっている。

お店に到着すると、孤児院から歩いて来ているフィナと子供たちの姿がある。

そして、呼んでいないはずの人もいる。

「どうして、ミレーヌさんとエレナさんがいるんですか?」

なんか、子供たちに大人が2人混ざっているんだけど。

「どうしてって、フィナちゃんが子供たちを連れて歩いているのを見かけて、話しかけたら、ユナちゃんの新作の料理が食べられるって聞いて」

それでついてきたと。

フィナの方を見ると心配そうにしている。

「ダメだった?」

「そんなことないよ。毒味係は必要だから」

フィナはなにも悪くない。

「ユナちゃん。毒味係って酷いよ~」

ミレーヌさんがなにか言っているけど聞き流す。

「でも、どうして、そんなところを歩いていたんですか? 孤児院とお店の間はなにもありませんよね」

「乙女の勘よ」

「はぁ、それでエレナさんは?」

聞いても無駄な人には聞くのは止めよう。

「わたしは宿屋で使う卵を貰いに行ったら。フィナちゃんたちに会いました。もし、迷惑でしたら、帰りますけど」

「エレナさんは迷惑じゃありませんよ」

「その言い方だと、わたしは迷惑って聞こえるんだけど」

被害妄想も困ったものだ。

「フィナ。ティルミナさんは駄目だった?」

目の前にはティルミナさんがいない。

できればティルミナさんには参加してほしかったんだけど。一緒にいない。

もし、店で出すようになったら、仕入価格のことや販売価格のことで、いろいろと相談したいことがあったんだけど。

面倒なことは全てティルミナさんにお願いしようと思っていたのに。

まあ、今居なくても、後で全部お願いするから変わらないけど。

「ちょっと、遅くなるけど来るって言ってましたよ」

「本当!」

「なんか、わたしとの対応が違うんだけど」

「そんなことはないよ。ミレーヌさんが来てくれて嬉しいですよ。それで、仕事の方は大丈夫なんですか?」

「ユナちゃんのイジワル」

ミレーヌさんは基本的にいい人だと思う。

仕事もできる人だ。どちらかと言えば好感が持てる方だ。

でも、同時に厄介ごとを持ってくるタイプだ。

面白いことには首を突っ込み、楽しむ人間だ。

外から見るには楽しいけど。巻き込まれることだけは勘弁してほしい。

店の前で合流したわたしたちは店の中に入り、モリンさんとカリンさんを呼ぶ。

「みんなでどうしたんだい?」

「新しいケーキを作ったから、みんなに味見をしてもらおうと思って。だから、モリンさんたちも食べてもらえますか?」

「ユナちゃんの新しい食べ物かい。もちろん、頂かせてもらうよ。ユナちゃんの発想は凄いからためになるからね」

普段はお客様が座っている椅子に、今日はみんながお客として座る。

モリンさんとカリンさんはお店からお皿とフォーク、それと飲み物を運んできてくれる。

子供たちも椅子に座り、嬉しそうに待っている。

ミレーヌさん、エレナさんもフィナと同じ席に座る。

わたしはクマボックスから出したホールケーキを切り分けていく。それをモリンさんカリンさんが運んでくれる。

何種類かあるので、均等に分ける。

「何種類か、用意したから、感想を聞かせてもらえると嬉しいかな」

と言っても、今回は果物を変えただけだけど。

でも、果物を変えただけでも、味は変わるからね。

全員のテーブルにケーキが並ぶ。

「ユナちゃん。この白いのはなに?」

「それが今回のメインの生クリームだよ。その生クリームとイチゴや果物がスポンジケーキと絡みあって美味しいよ。とりあえず、食べてみて」

わたしの言葉で、全員がフォークを持ち、ケーキを刺し、口に入れる。

「うっ なんだい。この柔らかさは」

「美味しい」

「イチゴも美味しいけど、このクリームも美味しい」

そんな言葉がまわりのテーブルから飛んでくる。

不味そうな顔をする者は誰もいない。

「ユナちゃん。これをお店で出すのかい?」

モリンさんがケーキを食べながら尋ねてくる。

「そう考えているけど。売れそう?」

「味だけ言えば間違いなく売れるね。問題は価格と材料だね」

「そんなに高くならないはずだよ。材料も簡単に手に入るはずだし」

「それと、プリンもそうだったけど。こんな美味しい物のレシピを教えてもらっていいのかい?」

「特に隠すようなことじゃないし。もし、お店で出さないつもりだったら、試食会なんてしないよ」

お店で作ってくれないとわたしが食べたいと思ったときに食べられないし。いちいち自分で作らないといけないから面倒だ。まあ、沢山作ってクマボックスに入れておけば良いんだけど。それも面倒だし。

「わかったよ。あとで、レシピと作り方を教えておくれ。時間に余裕があるか考えてみるから」

モリンさんはすぐに料理人モードに入って、頭の中で計算をしているみたいだ。

「ユナちゃん。な、なんなの。この食べ物」

ミレーヌさんのフォークを持つ手が震えている。

でも、食べることは止めない。

「だから、ショートケーキだけど。中の果物を入れ替えれば、季節ごとのケーキが食べられるよ。わたしはイチゴが好きだけど」

今度、いつでも食べられるようにイチゴは買占めしておこう。

ありがとう、クマボックス様。

「プリンのときもそうだったけど。ユナちゃんってなんなの?」

「なんなのと言われても困るけど」

異世界から来ました~

なんて言えるわけない。

「一応、冒険者だよ」

「そんな格好をした冒険者はいないよ」

ミレーヌさんがわたしの着ぐるみのお腹を突っつく。

お腹を突っつくのは止めてくれないかな。

まるで、太っているお腹をつつかれている気分になるから。

着ぐるみを脱いだわたしのお腹は着ぐるみみたいに膨らんでいないよ。

ほんとだよ。

「しかもユナちゃんは、強いし、可愛いし、変だし、プリンやこんな美味しい食べ物を作れる冒険者はいないよ」

まあ、クマ(チート)だし。

「そうだね。わたしもユナちゃんのおかげで、パンの種類が増えたからね。ユナちゃんの発想は凄いね」

モリンさんまで褒め始める。

「それで、いつから、販売するの?」

「それは、モリンさんとティルミナさん次第かな? 価格の面もあるし、モリンさんが作る時間もあるか分からないし」

「そうだね。今でも、ギリギリだからね」

パンの種類も当初よりも増えている。

まあ、その理由はわたしが、「あんなパンが食べたい、こんなパンが食べたい」と、いろいろとモリンさんに頼んでしまい。それが商品化してしまって、パンの種類が増えたのが現状だ。

「どのケーキが美味しかったかを聞いて、どれを作るかも決めないといけない」

「全部、作らないの?」

わたしはモリンさんを見ると首を横に振る。

モリンさんがパンを作るのにギリギリな状況だ。それにケーキまで作ると考えると、時間が足りない。

時間が足りないのにケーキを全種類作るのは不可能だ。

人員を増やせば大丈夫かもしれないけど。そこの辺もティルミナさんと院長先生と相談だね。

「あ、あのう。ユ、ユナさん! わたしをここで働かせてもらえませんか!」

「エレナさん?」

「わたし、頑張ります。レシピも誰にも言ったりしませんから、お願いします」

いきなり頭を下げるエレナさん。

「どうしたのエレナさん?」

「わたし、前から思っていたんです。生き甲斐がある仕事がしたいって」

「わたしとしては助かるけど、宿屋はどうするの? お父さんとお母さんだけじゃ大変でしょう」

「それは大丈夫です」

「大丈夫って、エレナさんがいなくなったら困るでしょう?」

「それが、今、伯父が来て、わたしの仕事がないんです」

エレナさんの説明だと。

他の街にいた、お父さんの兄夫婦の仕事が悪化して、エレナのお父さんを頼ってクリモニアに来たそうだ。

ミリーラの町から人が来るようになったので、お客様も増え、一緒に仕事をすることになったらしい。

「お客さんが増えているなら、エレナさんの仕事もあるんじゃ」

「伯父夫婦は働き者で、しかも、働かせてもらっている負い目もあるから、わたしの仕事も取っちゃうんです」

「カウンターで 寛(くつろ) ぐ仕事は?」

「ユナさん……」

ジト目で見られる。

「冗談よ」

「その仕事はお婆ちゃんに取られました」

否定しないんだ。しかも、お婆ちゃんって。

「伯父夫婦と一緒に住んでいたんです。それで、今回一緒にこっちに来て、お客様の案内や受付はお婆ちゃんがすることになって」

エレナさんなら即戦力になるから、わたしとしても助かるけどいいのかな。

「だから、なにかをしたいんです」

「忙しいよ」

「自分の居場所がないよりはいいよ。家にいても、仕事がなくて、今日みたいに、買出しをするぐらいしかない。それも、基本、伯父夫婦がやってしまうんです」

少し寂しそうにするエレナさん。

「とりあえず、わたしとしてはいいよ。でも、ちゃんと親御さんの許可をもらってからね」

「ユナさん。ありがとう」

再度、頭を下げるエレナさん。

「ちなみに料理の方は?」

一応、聞いてみる。

「家で手伝いをしてましたからできます」

「接客もできるし、問題はないね」

「それじゃ、わたし、今から許可を貰ってきます」

「親御さんとケンカ別れをしたら、雇わないからね」

「はい!」

エレナさんは立ち上がると、お店から出ていった。

そんなに慌てなくてもいいのに。

あんな良い親御さんだ。違う仕事がしたいからと言って、ケンカ別れだけはしてほしくない。

わたしとは違うのだから。

エレナさんが出ていったドアから、入れ違いにティルミナさんがシュリを連れて店に入ってきた。

「エレナちゃんが慌てて出ていったけど。なにかあったの?」