軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

142 クマさん、鉱山に潜る、その3

岩石ゴーレムを倒したわたしたちは先に進むことにするが、わたしが岩石ゴーレムをワンパンチしてから、ジェイドさんたちの見る目が変わった。

「このチビッコの、どこにあんなパワーがあるんだ?」

背が高いトウヤさんがわたしの頭をポンポンと叩きながら呟く。

「同じ女とは思えない」

セニアさんがクマ越しに腕を触ってくる。

「うーん、柔らかい」

柔らかいって、どっちが? クマさんですか? わたしの二の腕ですか?

とりあえず、二人を振り払って先に進むことにする。

そして、先ほどのわたしの活躍によって、坑道を進む順番が変わった。

なぜか、か弱いわたしがジェイドさんと一緒に先頭を歩くことになった。

メルさんが、援護をしますから、安心して、と言って一歩下がる。

いきなり、パーティーの隊列を変えるのは不味くない? と心の中で思いつつも、先頭を歩く。

まあ、クマパンチ一発で倒せるなら、他のメンバーは必要ないからね。

現れる岩石ゴーレムはわたしが引き受けることにした。

その代わりにアイアンゴーレムはジェイドさんの戦いを見させてもらうことになった。

基本、クマパンチで終わるから、岩石ゴーレムの細かい検証はしていない。

本当は魔法も使ってみたいけど、坑道の強度が心配だ。下手に魔法を使って崩れたら、たまったもんじゃない。

「一応、坑道は魔法で強化されているから、少しぐらいなら崩れないよ」

と、ジェイドさんは教えてくれたけど。少しって、どのくらい? クマパンチ強中弱、どこまでが大丈夫? 魔法もどのくらいまで大丈夫なの? 少しと言われても分からない。

試しに使用して崩落をしようものなら、生き埋めになってしまう。

結局、坑道の強さも分からないので、岩石ゴーレムは壁に被害が出ないようにクマパンチで終わらせることにする。

「完全に立場が逆転したな」

ジェイドさんが岩石ゴーレムをクマパンチ一発で倒すわたしを見て言う。

「ユナちゃん、強すぎ」

「岩石ゴーレムをパンチ一発なんてありえない」

「あのとき、からかわないで良かったぜ」

「そんなことをしてたら、トウヤは岩石ゴーレムみたいになっていたわね」

「ちゃんと、墓標に『トウヤ、クマに殺され、ここに眠る』って書いておいてあげる」

「勝手に殺すな」

トウヤを除く、3人は笑いだす。

順調に坑道を進み、階層が変わる。

ここから先はアイアンゴーレムが出てくるらしい。

階層ごとに強さが違うゴーレムが出てくると、ダンジョンに潜っているみたいだね。ゲーム時代にはあったけど、この世界にもダンジョンってあるのかな?

あるなら、一度は潜ってみたい。

でも、ダンジョンの前に、この先にいる、アイアンゴーレムのことを考えないといけない。

炎のクマなら、鉄も溶かすこともできるけど、こんな坑道で使ったら、自殺行為でしかない。

水で頭を包んだら、窒息死してくれればいいけど、死なないよね。塩水をぶっかければ、錆び付いて動かなくなるとか。でも、錆び付いたら売り物にならないよね。

次は風魔法だけど、クマの風魔法なら切り落とせるかな。そのまま、坑道の壁まで壊しそうだけど。

土魔法はクマのゴーレムを作って、押さえ付ける方法がある。でも、ジェイドさんたちの前では使いたくない。

あとは、穴を掘って埋める方法もある。難点としては、適当に穴を開けて地盤沈下しても困る。さらに、せっかくの鉄の素材が手に入らなくなってしまう。

そうすると、ゴルドさんとガザルさんのお土産が無くなるし、オブジェを作るわたしの願望もできなくなってしまう。

とりあえずは適当に攻撃をして、ジェイドさんたちが倒すところを見て、研究させてもらう考えに落ち着く。

階層も変わったので探知魔法を使うとアイアンゴーレムの反応が数体ある。

一番奥にはアイアンゴーレム5体の反応もある。これが例の5体かな。

うん? 話によればこの奥に一番初めに発見されたゴーレムがいるはずだけど、探知魔法には反応がない。

いないのかな?

それとも、この5体のうち、1体がそうだったのかな。

とりあえず、考えても分からないので、この先にいるアイアンゴーレムを倒すことにする。

アイアンゴーレムの姿がみえると、全員戦闘準備に入る。

アイアンゴーレムは土ゴーレムの姿を鉄だけにしたものだ。

あの太い腕って、巨大なハンマーみたいだね。あんなので殴られたら、間違いなく死ぬね。もし、会話が通じたら、大工さんへ転職を薦めるのに。

「ちなみに、どうやってアイアンゴーレムを倒すの?」

「普通にダメージを与えて倒すしかないな」

「鉱山の中じゃなければ、強い魔法を使うんだけどね」

メルさんが溜め息を吐きながら呟く。

やっぱり、鉱山の中ってことで、みんなも苦労しているんだね。

魔法は制限が掛かるし、攻撃のバリエーションが少なくなる。

まあ、わたしがやることは変わらない。

アイアンゴーレムに近付いて、クマパンチを撃ち込むこと。

わたしはクマの靴の運動性を使って、アイアンゴーレムとの間合いをつめる。そんなわたしにアイアンゴーレムは腕を振り落としてくる。巨大なハンマーのような腕が脳天に落ちてくる。

わたしは白クマの手袋で受け止めようと一瞬考えたが、もしものことを考えて、避けることにする。

ハンマーのような腕は地面にドスンと音を立てる。

わたしはアイアンゴーレムの腕の隙間に入ると、アイアンゴーレムの胴体に黒クマパンチを撃ち込む。

本来なら、鉄を殴っているのだから痛いはずだけど、クマのお陰で痛くはない。

アイアンゴーレムは数メートル飛んだが、倒れなかった。

やっぱり、岩石ゴーレムとは違うね。

重いし、硬いし、頑丈だ。

うん、厄介だ。

あとはジェイドさんに任せることにする。とりあえず、岩石ゴーレムを倒したパンチの威力では駄目みたいだ。もう少し、力を込めないとダメージは与えられない。

それだけが分かったから、今回は良しとする。

わたしがクマパンチをしたあと、前もって準備していた、メルさんの土魔法がアイアンゴーレムに放たれる。土も圧縮すれば硬くなる。硬さは魔法使いの技量しだい。圧縮が大きいほど硬さも強くなる。

メルさんがアイアンゴーレムに土魔法をぶつけると、動きが一瞬だけ鈍くなる。ダメージはあるようには見えない。動きが鈍くなったところをトウヤさんが攻撃を仕掛けるが、アイアンゴーレムの鉄の腕に弾かれる。

鉄の柱を攻撃しているようなものだ。剣で鉄の柱が斬れるわけがない。

アイアンゴーレムがトウヤさんに向いているとき、背後から走りこむセニアさんの姿がある。

セニアさんはナイフを握りしめている。ナイフで斬りかかるの!?

セニアさんは一瞬で、ゴーレムの間合いに入り、足を斬った。斬ったと言っても切り落としたわけじゃない。でも、アイアンゴーレムの足には斬られた跡がある。間違いなく、ナイフで斬ったのだ。

「セニアが持っているナイフはミスリルナイフだよ」

驚いているわたしにメルさんが教えてくれる。

ミスリルナイフなんて持っていたんだね。でも、ランクを考えれば持っていてもおかしくはない。

セニアさんは何度も同じ場所を斬り、足を切断した。

凄い、ナイフ1本で、あの太い足を切り落としてしまった。

セニアさんは足を切り落とすと、満足げな顔をしている。

その間も一人でアイアンゴーレムを引き付けて戦っていたトウヤさんは息を切らしている。

「あと、ジェイドが持ってる剣もミスリルだよ」

足を切られてバランスを崩しているアイアンゴーレムから、トウヤさん、セニアさんは離れる。そこに、ジェイドさんが、アイアンゴーレムに剣を振り落ろす。

アイアンゴーレムは腕を上げて防ごうとするが、ジェイドさんの剣によって腕は切り落とされた。

おお、凄い、ミスリルの剣だと、鉄も切れるの?

「ミスリルの剣だから、できるわけじゃないよ。ジェイドの剣の技量があってこそ、できるのよ」

メルさんがわたしの心の中を読んだかのように説明をしてくれる。

確かに、ミスリルの剣を持ったからと言って、アイアンゴーレムが斬れるなら、ランクD、Eにでも、貸し与えればいいことだ。

ミスリルの剣と技量があってこそできる技、だからこそランクCなんだね。

それを考えるとナイフで斬ったセニアさんの技量もかなり凄いんだろう。

わたしの剣の技量ってどんなもんなんだろう。

ゲーム時代は剣は扱ってきたけど、この世界に来たわたしの剣の技量はわからない。

剣筋、剣術、剣の技量、わたしにミスリルの剣があったとしても鉄を切れるのかな。

その辺もクマチートがあればいいけど。

足と腕を切り落とされたアイアンゴーレムは、片足で立ち上がろうとするが、立ちあがれない。片腕でジェイドさんに向けて殴りつける。

ジェイドさんが腕をかわし、後方に数歩下がる。

あとは、片腕をかわしながら攻撃をするだけだ。

「ああ、俺にもミスリルの剣があれば、切り落とせるのに」

トウヤさんが悔しそうにジェイドさんを見ている。

「無理」

セニアさんが一言でトウヤさんの言葉を否定する。

そのセニアさんの言葉にトウヤさんが、なにかを言おうとした瞬間。

「こないだ、ジェイドの剣を借りたけど斬れなかった」

セニアさんが先に口を開いたことによって、トウヤさんは口をパクパクとしている。

「トウヤにミスリルの剣を渡しても、宝の持ち腐れ」

止めを刺すセニアさん。

その間もジェイドさんがアイアンゴーレムの攻撃をかわして、斬っている。

次第にアイアンゴーレムの動きは鈍くなり、崩れ落ちて、鉄の山が出来上がる。

斬られて無残な状態だ。

もう少し、綺麗に倒さないとオブジェにできないね。