軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131 クマさん、アンズとお店に向かう

孤児院で食事をしたあと、アンズたちが働くお店に向かう。

その中には食事を一緒にした、フィナとシュリの2人もいる。

2人はティルミナさんに仕事のことを褒められて、ニコニコと嬉しそうにしている。

「院長先生もリズさんも優しい人だったね」

「子供たちも素直で可愛かった」

「我が儘そうな子もいたけど。院長先生には素直に従っていたね」

「でも、確かにあの人数を2人じゃ大変だね」

全員が先程までいた孤児院の感想を言っている。

これなら、お店との掛け持ちも大丈夫かな。

そう、思っていると、ニーフさんがわたしの方を見ている。

なんだろうと思っていると、ニーフさんが口を開く。

「ユナちゃん、相談なんだけど。わたしが孤児院のお世話の専属じゃ、ダメかな?」

ニーフさんが立ち止まって、真剣な目で尋ねてくる。ニーフさんのいきなりの発言に全員が 歩(あゆみ) を止める。

そのあと、ニーフさんは自分の言葉の内容に気付いたかのようにアンズの方を見る。

「別にアンズちゃんとお店の仕事がしたくないわけじゃなくて…その…子供たちと…」

一生懸命に説明をするニーフさん。伝えたいことは分かる。子供たちの世話がしたいのだろう。アンズにもその気持ちが伝わったのか、微笑む。

「ユナさんが良ければ、わたしは構いませんよ」

アンズがわたしに可否を委ねてくる。

わたし個人の意見なら、どちらでもいい。

6人全員から文句が出なければなにも問題はない。

「わたしは別にいいけど。みんなと相談してからかな?」

わたしが周りを見ながら言うと、すぐ返事が返ってくる。

「わたしはいいよ」

「ニーフさんが一番子供に好かれていたもんね」

「うん、いいよ」

「問題ないよ」

全員から賛同を得られる。

「みんな、ありがとう」

ニーフさんは嬉しそうにみんなに礼を言う。

「ユナちゃん。孤児院のお手伝いは何人なのかな?」

もう一人の年長者のアルンさんが尋ねてくる。

「院長先生とリズさんの補佐をしてもらう予定だから二人かな」

「その、わたしも立候補していいかな?」

アルンさんが2人目の立候補として名乗り出す。

「みんなが孤児院の仕事をしたいなら、交代制でもいいけど……」

みんなの顔色を見ながら控えめに言う。

「わたしも子供たちの世話がしたいけど、アルンさんに譲るよ」

他の4人も頷いている。

「あまり、全員が孤児院の仕事が良いって言うとアンズがいじけちゃうから、わたしはお店を手伝うけどね」

一番若いエーリスが場を和ますように言う。

「いじけたりしません。悲しむだけです」

「同じことだから」

周りから笑いがこぼれる。

ニーフさんとアルンさんの2人はみんなから許可をもらうと、お店には向かわず、孤児院に引き返すことになった。

「みんな、ありがとうね。お店が忙しくなったら、お手伝いにいくから」

2人は孤児院に向かって歩き出す。

2人と分かれたわたしたちはお店に向かって歩きだす。

ここで6人のうち2人が孤児院の仕事に就いてくれた。あとは4人がお店の手伝いをしてくれれば、なにも問題はない。

お店に近付くと、少し先に『くまさんの憩いの店』が見えてくる。

「人多いね」

遠くからでも、出入りしているお客様の様子が見える。

時間的に昼食を食べ終わったお客様が出ていく方が多い。

「昨日のクマの格好をした女の子が働いているんだよね」

昨日出会った、子供たちのことを思い浮かべているらしい。アンズたちはジッと『くまさんの憩いの店』の方を見ている。アンズたちは『くまさんの憩いの店』が気になるらしい。

「今日のところは我慢してね。今度、案内するから」

「うん」

返事をするが、視線は『くまさんの憩いの店』に向いている。

ここで立ち止まっていても仕方ないので歩き出すと、アンズたちも動き出す。

とりあえず、アンズたちが働くお店に到着する。

到着すると今度は目の前にある、元お屋敷にアンズたちの目が固定される。

「ここってお屋敷だよね?」

「だったところを改築してお店にしたの」

屋敷と言っても小さいお屋敷だ。クリフが住む屋敷の半分の広さもない。

ただ、見た目がお屋敷になっているだけだ。

店の中に入ると何も無い広い空間がある。ここにテーブルなどを置く予定になっているが、配置は決めていない。

「なにも無いね」

「でも、広い…」

あるのは壁を取り除いた一階フロア。

奥はキッチンと倉庫がある。

「みんなが話し合って、好きなように内装は決めていいよ」

「わたしたちが決めるんですか?」

「アンズのお店だからね。好きなようにしていいよ。決めてティルミナさんに言ってくれれば、ティルミナさんが業者に発注してくれるから」

家具屋か大工屋かは知らないけど。

「やっぱり、わたしがするのね」

ため息を吐くティルミナさん。

笑って誤魔化すわたし。

申し訳なさそうにするアンズ。

三人とも違った顔をする。

「キッチンも欲しい道具とかあったら言ってね」

「一応、家から使い慣れている道具は持ってきたけど。さすがに、みんなの分はないので、助かります」

「さすがにわたしは料理道具は詳しくないから、あとで一緒に買いに行きましょう」

ティルミナさんが申し出てくれる。

あとは細かいお店の話をして、今後のアンズを含めた五人の役割分担を決める。

まずは今日の予定を決める。

アンズはティルミナさんと買い出しに行く。

4人はフィナとシュリに街の案内をしてもらうことになった。街のことを知らないといろいろと困るからだ。

明日からは店の内装、レシピの作成と本格的に動くことになった。

「それじゃ、以上かな?」

「そうね。あと、決めることはないわね」

周りのみんなに確認を取る。

ティルミナさんにも確認はとったし、忘れたことはないはずだ。

「それじゃ、さっそく、二手に分かれてお出かけしようか」

全員が動き出そうとした瞬間。

ドアが大きく開いた。

「ちょっと、待った!」

「ミレーヌさん!?」

「アンズちゃん、久しぶり」

ミレーヌさんは店の中に入ってくるとアンズに挨拶をして、わたしたちのところにやってくる。

「ユナちゃん、ティルミナさん、なにか忘れていない?」

いやいやいや、それ以前にどうして、ミレーヌさんがここにいるんですか?

それ以前に会話聞いていたの?

どこにいたの?

どこから、突っ込みを入れていいのか、混乱する。

「どうして、ミレーヌさんがここにいるんですか? それに、会話を聞いていたんですか?」

とりあえず、知りたいことを聞いてみる。

アンズの方を見ると、女性たちがアンズに誰? と尋ねている。

「どうして、ここにいるのかは、頑張って、仕事を終わらせて駆けつけたからよ。会話は、ドアの隙間から聞いていたからよ」

突っ込む箇所が増えた気がしたけど、スルーしよう。

「それで、どうしてミレーヌさんが駆けつけるんですか?」

「アンズちゃんが到着したことを小耳に挟んでね。つまり、ユナちゃんのお店で働くことになる」

「はぁ、そうなりますね」

「つまり、必要な物も出てくるでしょう」

「それは今相談して、決めましたよ」

「ユナちゃん。大事なことを忘れているよ」

「大事なこと?」

「制服よ。せ・い・ふ・く。やっぱり、クマの服?」

なにを言い出すかと思えばそんなくだらないことを。

「決めてないけど。それに、あれはミレーヌさんが勝手に決めたことだし」

世間では『くまさんの憩いの店』のクマの制服はわたしの考えとして街に広まっている。

まあ、あの話し合いのことを知らなければ、わたしのお店だから、必然的にわたしの考案と思うのは仕方ない。

「別に制服は普通でいいんじゃない?」

「駄目よ! それじゃ、ユナちゃんの店じゃなくなるわ」

助けを求めるために周りを見る。

ティルミナさんは笑っている。

アンズは商業ギルドのギルドマスターと知っているので、あたふたしている。

そのことをアンズから聞いた女性たちも、どうしたらいいのか、困っている。

「つまり、彼女たちもクマの服ですか?」

わたしがクマの服を口にするとアンズたちが驚いた顔になる。

「それは、ちょっとね。年齢が……」

ミレーヌさんがアンズたちを見て、小さく呟く。

それは失礼だと思うけど、同意見だ。

「だから、クマの刺繍のエプロンにクマの帽子はどう? 帽子はメイドさんのカチューシャの代わりだけど?」

わたしにはコック帽の代わりにしか思えない。

イメージしただけで、違和感が出てくる。

「えーと、アンズに任せます」

「ユナさん!」

わたしは逃げることにした。

いきなり振られたアンズは、どうしたらいいのか、左右を見る。

左右にいる女性たちも困った顔をしている。

目の前にいる女性はミリーラの町の商業ギルドを立て直してくれた人だ。

商業ギルドのためにいろいろしてくれたことは、全員知っているはずだ。

食料の手配もしてくれた。トンネルや周辺の開拓もクリモニアの商業ギルドが中心になって行なってくれたことを知っている。

そんな人を目の前にして、断ることができるのかな?

わたしはできない。

だから、『くまさんの憩いの店』の制服はクマの制服になってしまったのだ。

あとは流れに任せるしかない。

その流れは食い止めることも、流れを変えることもできず、エプロンはクマの刺繍入り。頭にはクマの帽子をかぶることになった。