軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

113 クマさん、タケノコを掘りに行く

ドアが申し訳なさそうに小さくノックされる。

目を開いて起き上がる。窓を見るが日はまだ登っていない。

昨日、早く寝たおかげで眠気はない。

ドアがゆっくりと開き、誰かが入ってくる。

「ユナお姉ちゃん、起きてますか?」

小さな声でフィナが話しかけてくる。

「フィナ、おはよう」

「おはようございます」

「シュリは?」

「昨日、早く寝たおかげで起きてます」

それはそうか。いつも、ティルミナさんと一緒に早く起きて、孤児院で仕事のお手伝いをしているんだから、起きられないとしたらわたしの方だろう。

フィナには先に行ってもらい、わたしは黒クマに着替えてから向かう。

「お待たせ」

二人はすでに出かける用意はできている。

クマハウスを出ると外はまだ暗い。

「二人とも寒くない?」

「大丈夫です」

「うん、大丈夫だよ」

上着を羽織っているから大丈夫かな。

クマの服を着ていると、温度が分からないんだよね。

「寒かったら言ってね」

二人は頷き、町の入り口に向かうとデーガさんがすでに立っていた。

手には大きな鍬が握られている。

「デーガさん、おはよう」

わたしが挨拶するとフィナたちもデーガさんに挨拶をする。

「おう、それじゃ、さっそく行くか」

デーガさんは鍬を肩に担ぎ、歩き始める。

竹林がある場所に向かう四人。

「宿屋の方は大丈夫なの?」

「ああ、昨日の夜から準備したからな。あとは調理するだけだから、アンズだけでも大丈夫だ。もし、できないようだったら、嬢ちゃんのところに行かせないで、修業のやり直しだな」

アンズが一人でできることを祈ろう。

それでやってきた竹林。立派な竹が沢山ある。

「本当にこんな物が食えるのか?」

デーガさんは固い竹をコンコンと叩く。

「食べられるのは土から出てきていない竹だけどね」

わたしは試しに辺りを見渡して、土が膨れ上がっている場所を探す。ここかな? 土魔法で掘り返す。当たりを引いたらしく、大きなタケノコが埋まっていた。それを上手に掘りおこす。

「それがタケノコか」

デーガさんがタケノコを受け取り眺めている。

「それを皮を剥いてアクを取れば食べられるよ」

「よし、分かった。それを掘ればいいんだな」

デーガさんは鍬を持って竹林の奥に歩いて行ってしまう。

堀り方分かるのかな?

「ユナお姉ちゃん。これ、掘るの?」

フィナがタケノコを見て聞いてくる。

「そうだよ。みんなでタケノコ掘りでもしようと思ってね」

「わかりました。わたし頑張ります。でも、わたし掘る道具持ってきてないです」

「大丈夫。二人にはくまゆるたちとペアになってもらうよ」

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「二人(匹)とも二人に付いて、タケノコを掘ってもらえる? 分かる?」

わたしがくまゆるたちに尋ねると二匹とも頷く。

さすが動物?

「この子たちがタケノコを掘るから二人は運んできて」

くまゆるはフィナと、くまきゅうはシュリとペアを組むことになった。

「くまゆる、よろしくね」

フィナはくまゆるの首筋を撫でる。

「くまきゅう。お姉ちゃんに負けないように頑張ろうね」

「わたしだって負けないよ」

二人は別方向にくまたちを連れていってしまう。

それじゃ、わたしはこの辺りを掘ろうかな。

わたしは周辺を歩きながら、土が僅かに盛り上がっているところを掘っていく。

ハズレもあるが、適度に当たりを引く。

その間もフィナとシュリが小さな体でタケノコを運んでくる。

大きなタケノコや小さなタケノコ、いろんな大きさがある。

二人が何度も運んでくるがデーガさんは一度も戻ってこない。

掘り当ててればいいけど、話も途中で行っちゃって、タケノコを見つけるコツを説明できなかったから心配だ。

デーガさんのことを気にしながら掘り進めていく。

あまり、採り過ぎるのもあれだから適度に採ると止める。

次にフィナとシュリが来たら終わりを告げる。

「お姉ちゃんに負けました」

シュリが残念そうにする。

「シュリはちょっと、離れ過ぎたのが敗因だね」

「奥に行けば、沢山採れると思ったのに」

「今度やるときは運ぶ距離を考えないと駄目だよ」

「うぅ」

シュリは頬を膨らませて、パートナーのくまきゅうに抱きつく。

「くまきゅう、ごめんね。わたしのせいで負けちゃって」

くまきゅうは気にするなって言っているのか、シュリの頭に手を軽く乗せる。

それにしてもデーガさん遅いな。どこまで採りに行っているんだろう。

探知魔法を使ってデーガさんの位置を確認する。そんなに遠くに行っていない。

「ちょっと、デーガさんのところに行ってくるから、二人は待ってて」

フィナたちに留守番を任せてデーガさんのところに向かう。

デーガさんのところに行くと無数の掘った穴がある。さらに今も穴を増やしているデーガさんの姿がある。

「デーガさん、なにをしているの?」

「なにって、タケノコを掘っているんだが、なかなか見つからない」

やっぱり、適当に掘っていたよ。

「デーガさん、タケノコを見付けるにはコツがあるんですよ」

「そうなのか! なら早く教えてくれよ」

「教える前にデーガさんが、一人で行っちゃったんでしょう」

「そうだったか?」

「そうですよ。タケノコの見つけ方は地面をよく見て、土が僅かに盛り上がっているところを探すんです」

わたしは辺りを見渡して、僅かに土が盛り上がっているところを見つける。

「デーガさん。ここ、土が盛り上がっているでしょう」

「ああ、確かに」

「掘ってみてください」

デーガさんはわたしに言われるまま、掘っていく。

「おお、本当にあるぞ」

「これから土から出てこようとしているんです。それが育つと竹になります」

「なるほど」

デーガさんはタケノコが折れないように鍬を振る。

掘り進めると、次第にタケノコの全体が見えてくる。埋まっていたのは意外と大きなタケノコだった。

「大きいな」

デーガさんが筋肉に物を言わせて、タケノコを掘り起こすことに成功する。

日も昇ってきているので、デーガさんに帰ることを伝えると、

「まだ、一つしか採っていないぞ」

「時間的に終了です。これ以上採っても、味が落ちるから採っても美味しくないよ」

味の説明をするとデーガさんは残念そうにするが、素直に帰ることに従ってくれる。

料理人として、味が落ちる物はお客様に提供できないと思ったのだろう。

タケノコは全てクマボックスに仕舞い、宿に戻る。

宿屋に到着すると、アンズが疲れた様子で、テーブルにうつ伏せに倒れていた。

「アンズ?」

「ああ、ユナさん。お帰りなさい」

起き上がるアンズ。

「おお、一人で乗り切ったみたいだな」

「どうにかね。でも、もうしたくないよ」

「そうだろう、そうだろう。でも、これができないと一人前になれんぞ」

「頑張るよ」

椅子から立ち上がるアンズ。

「それで、タケノコは採れたんですか?」

クマボックスからタケノコを一本取り出す。

「これがタケノコですか?」

「それじゃ、お昼に食べるように処理しちゃおうか」

デーガさんとアンズにアク抜きを教えて、お米を用意する。

「アンズから聞いたけど、和の国からはまだ来てないってね」

「ああ、だから、米やいろんな物が入ってこなくて困っている。でも、クリモニアの領主様のおかげで、小麦粉だけは運んでもらっているから、パンがメインになっているな」

魚にパンか、日本で育ったわたしにはあり得ない組み合わせだ。

魚にはお米が一番合う。

でも、フィッシュバーガーもあるし、今度作ってみようかな。

「でも、トンネル完成してないよね。それで運んでいるの?」

トンネルの中は暗かった。魔石の取り付けが終わっていない。

「嬢ちゃんが盗賊とクラーケンを倒してくれても、食糧に困っているのは変わらないからな。前までは小麦粉は船で運んでいたんだが、クリモニアの方が早いし、食料だけは優先的に運んでもらっている」

それはそうか、海があると言っても魚介類だけじゃね。

その辺はわたしが口を出すことじゃないので黙っておく。

わたしは目の前にある食材をいかに美味しく食べるかの方が最優先事項だ。

まずはメインのタケノコご飯を作ったり、炒めものを作ったり、味を付けて茹でたもの。タケノコ尽くしの料理を作っていく。

「ユナ姉ちゃん、お腹空いた」

そういえば朝食も食べずに働いたんだ。お腹も空くよね。

「もうできるよ」

二人に出来上がった料理を並べてあげる。

「美味しそうです」

「今日は白くないの?」

「シュリが採ってくれたタケノコが入っているからね」

お米を見て、シュリが聞いてくる。

「美味しいから食べてみて」

シュリは頷いて、タケノコご飯を口に運ぶ。

「おいしい」

「はい、美味しいです」

シュリとフィナが美味しそうに食べてくれる。

美味しく食べてくれると嬉しいね。

「俺たちも頂いていいか?」

「ちゃんと、人数分用意してあるよ」

人数分の料理をテーブルに並べる。

「うまいな。それに柔らかい。あの竹がこんなに柔らかいのか」

「育っちゃうと固くて食べられないけどね」

「ユナお姉ちゃん、美味しいです」

「…………」

シュリは黙々と食べている。

「なんか、わたしよりもユナさんの方が料理人みたいです」

「わたし、魚は捌けないから、アンズの方が料理人だよ」

「そうなんですか?」

やったことがないからね。

知識では知っているけど、魚を捌いたことはない。

「ユナさんを見ていると、なんでもできるように見えます」

「わたしが知っているのは調理方法だけだよ。だから、アンズには頼りにしているから」

「ユナさん」

アンズが嬉しそうにする。

「お米が入ってくればタケノコご飯を店でも出すんだけどな」

デーガさんが料理を食べながら、そんなことを言い出す。

「お米が無くても、タケノコは美味しいよ」

「そうだな。他の料理も十分に美味しい。でも、本当にいいのか? あんなにタケノコを貰って、貰えるには助かるが」

デーガさんは一本しか採れていない。

わたしは魔法で採り、フィナ、シュリはくまゆるたちのおかげで沢山採っている。

「いいよ。この子たちのおかげで沢山採れたから、欲しかったら、また採りに来るよ。それに掘るの大変でしょう?」

「確かに掘るにはコツがいるな。でも、今度は大丈夫だ。嬢ちゃんにいろいろ教わったからな」

わたしたちが食事を終えてしばらくすると、昼食を食べに来る人たちが集まってくる。

デーガさんたちはこれから忙しくなるので、邪魔にならないようにわたしたちは宿屋を後にした。