軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

103 クマさん、クリモニアに帰る

アンズの件はトンネルが完成するまで保留となった。

デーガさんの話では好感触だったので楽しみにしておく。

アンズとデーガさんには別れの挨拶をして宿の外に出る。そこには見送りにアトラさんとお爺ちゃんズとジェレーモさんの五人がいた。

「アトラさん、今回はいろいろとありがとうね」

「なにを言っているのよ。わたしが感謝の気持ちでいっぱいよ。もっと、居てくれてもいいのに。でも、そうもいかないわよね。ユナだったらいつでも歓迎するから来てね」

「家も建てたし、来るよ。あとブリッツたちにもよろしく言っておいてね」

戻ってくると思ったが、まだ戻ってきていない。

まあ、別れの挨拶は出発するときにしてある。

「ええ、言っておくわ。帰ってきたら驚くでしょうね」

まあ、信じるかどうかは分からないけど。

次にジェレーモさんを捜す。ジェレーモさんはミレーヌさんと話していた。わたしの視線に気づいたのかジェレーモさんがやってくる。

「ジェレーモさん。例の件、お願いしますね」

「ああ、嬢ちゃんの頼みだ。できるだけ仕入れておくよ」

ジェレーモさんには和の国から、船がやってきたら、お米、醤油などの仕入れをお願いした。さらにこの国じゃ珍しい物や手に入らない物があったら買ってほしいとお願いをした。もしかすると掘り出し物が手に入るかもしれない。

もちろん、お金は渡してある。

一度は和の国に行ってみたいものだ。

「でも、いらない物を仕入れても怒るなよ」

「怒んないよ。でも、お金とは相談して買ってね」

「俺は一応、ギルド職員だぞ」

「しかも、ギルドマスターだね」

「それは言うな。俺がギルドマスターなんて、本人が一番違和感を覚えているんだから」

「でも、しっかりしてもらわないと困るわよ」

横で話を聞いていたミレーヌさんが弱気のジェレーモさんに喝を入れる。

「はい、がんばります」

頭を下げるジェレーモさん。

ジェレーモさんはミレーヌさんに好感度が高いみたいだけど。相手がミレーヌさんだとね。まあ、色恋沙汰に詳しくないわたしが口を挟むことじゃないけど。

「あと、和の国の場所も教えてもらえるようだったら聞いておいてね」

そう、この町の住人は誰も和の国の正確な位置を知らなかった。

流石にこの町に羅針盤や海図なども存在するわけでもなく。ただ、たまにやってくる和の国と交易をしていたと言う。

いつやってくるか分かればわたしが交渉するんだけど。不定期だから仕方ない。まして、クラーケンの件もある。二度と来ない可能性もあるとジェレーモさんは言う。

そしたら、探すしかないかな。

国王に聞けば分かるかな?

もしかすると、前ギルドマスターが知っているかもしれないが、死に行く者に会いたくはない。

その件は保留にしてお爺ちゃんズに挨拶をして出発をする。

町を出るとくまゆるとくまきゅうを召喚してトンネルに向ける。

トンネルに向かう途中に塀が見えてくる。塀の中には旅館風クマハウスがある。

「昨日、トンネルを見に来たら、こんな大きな物ができていたから驚いたぞ」

昨日、トンネルを公表して、町の住人と一緒にトンネルに向かうときに見つけたそうだ。

そのときに、町の住人が驚き、クリフも驚いたそうだ。

「建てるって言ったでしょう」

「こんな大きいとは思っていなかったぞ」

「孤児院の子供たちも連れてきたいと思ったら、大きくなったのよ」

「ユナちゃん、わたしが今度来るときは泊まらせてね」

一緒にくまゆるに乗っているミレーヌさんが言ってくる。もちろん、許可は出しておく。

クマたちに乗った一行はトンネルに到着する。入り口には、くまゆるたちの石像がある。今さらだけど、知らない人が見れば、ただのクマだよね。誰も、このクマの石像=わたしとは思わないよね。そう願いつつ、クマのライトを唱えトンネルの中に入る。

クマのライトがトンネルの中を照らし、くまゆるたちは出口に向けて走り出す。

その途中でゴブリンと出くわしたが、サクッと倒して反対側に出る。

「早めにしないと魔物が住み着くな」

「こんな穴があったら魔物にとってはちょうどいい巣になるわね」

「先に冒険者を派遣して、周辺の魔物討伐だな。そうしないと、職人が危険だ」

「でも、派遣をする前に、どんな魔物がいるか調査も必要かもね」

「その辺は冒険者ギルドに聞けば分かるだろう」

確かに近辺の魔物情報だったら、冒険者ギルドで集めているはず。

わたしは他の魔物が近寄ってこないようにゴブリンの死体を燃やして処理をする。そして、クリモニアに向けて出発しようとした瞬間、クリフに止められる。

「待て。ユナ、忘れていないよな」

嫌な笑みを浮かべている。

覚えているからこそ、早く移動しようと思ったのに。

「クリモニアに戻る前にクマの石像を作ってくれ」

「今度でいいんじゃない?」

「今度っていつだ? お前作らないつもりだろ」

「そんなことは……」

忘れていると思ったのに、忘れてなかったとは。

「目が泳いでいるぞ。正式にベアートンネルになるんだから、クマの石像が必要だろ。なんなら、クマにしないでお前さんの石像でも、こっちで作るぞ」

「ユナちゃん、諦めたほうがいいわよ。こうなったクリフはしつこいわよ。でも、ユナちゃんの石像も見てみたいわね」

「ミレーヌさん……」

二人から言われたら逃げることはできない。

仕方なく、くまゆるから降りて、トンネルの入り口の左右にくまゆるとくまきゅうの石像を作る。せめての救いはわたしの石像でないことだ。もし、クリフがわたしの石像を作りでもしたら、二度とトンネルは使えないし、ミリーラの町にも行けなくなる。

わたしがクマの石像を作るとくまゆるとくまきゅうは嬉しそうにしている。そんなに自分の石像が嬉しいかな。

石像をさっさと作り終えたわたしは、改めてクリモニアに向けて出発する。

街に着くと、二人はそれぞれの仕事場に向かっていく。

クリフは自分の領主の館へ。ミレーヌさんは商業ギルドへ。

わたしはモリンさんのところへ食事に行く。

わたしだけ仕事はないので、のんびりすることができる。まあ、やることはあるんだけど、急ぎではないから明日からすることにしている。

どこかのやる気が無い人間の言葉を吐く。

明日からやる。明日から本気を出す。

いい言葉だ。

明日で大丈夫なら明日で良いと思う。

無理に今日することも無い。

そんな言い訳を自分の中でしながら、モリンさんのところに向かう。

翌日、商業ギルドに向かう。

ミレーヌさんを捜すが見つからない。

「あのう、クマさん」

「クマさん?」

変な呼び方をされて後ろを振り向くと、若い女性ギルド職員がいた。

「いえ、ユナさん。ミレーヌさん、ギルマスをお捜しですか?」

今、間違いなくクマさんって呼んだよね。それに反応して振り向いたわたしが言うセリフじゃないけど。

「そうだけど、いるかな?」

「いますけど、機嫌は悪いです。昨日から寝ずに部屋に篭ってます」

つまり、帰ってきてから、今まで仕事をしてるんだ。

大変だね。わたしはぐっすり眠って体調はいい。

「土地の件で相談したかったんだけど」

「土地の件ですか? わたしでよければ話を伺いますが」

うーん、どうしたものか。

他の職員でもいいんだけど。

「ユナちゃん。どうしたの?」

「ギルマス!?」

こちらに歩いてくるミレーヌさんの姿がある。

「ミレーヌさんにちょっとお願いがあって」

「わたしに?」

「今、わたし、お店を出しているでしょう」

「ええ、くまさんの憩いね」

「あの周辺の土地の購入をお願いしようと思って」

「ああ、魚屋さんね」

「ちょっと違うけど……」

「確かに、空き地や空き家はあるけど。本当に作るの?」

「アンズが来なくても、デーガさんが他の人を紹介してくれるって約束してくれたからね」

「うーん、別に購入するのはいいけど。でも、ユナちゃん。本当に変わっているね。いくら、自分に能力があるからって、無報酬でやる人はいないよ」

別に無報酬でやっているわけじゃないんだけど。

トンネルは魚介類をクリモニアに運ぶためだし、店はいつでも魚介類を食べられるようにだし。どれも自分のためだ。

「リアナ、ユナちゃんに『くまさんの憩いの店』の周辺の土地を販売してあげて、それも半額で」

ミレーヌさんの口から予想外の言葉が出た。

「ギルマス! よろしいのですか?」

「いいの?」

わたしと職員の二人から問い掛けられる。

「今後のユナちゃんがクリモニアにもたらしてくれる利益を考えれば微々たるものよ。ユナちゃんは魚介類だけに目がいっているけど、わたしとクリフはね。塩が一番、大きいと思っているの」

「塩?」

「今まで岩塩を仕入れていたけど、近くに海に行けることになるなら、塩を安く大量に手に入れることができる。さらに、それを他の街や村に売ることもできる。あのトンネルはね。ユナちゃんが考えているよりも、凄いことなのよ。だから、土地ぐらい気にしないでいいよ。でも、体裁があるからタダであげることはできないけどね」

ミレーヌさんは疲れているのに笑顔を向けてくれる。

確かにどの世界でも塩は大事だ。それは砂糖よりも価値がある。

普通に塩は購入していたから、そこまで気付かなかった。さすが、商業ギルドのギルマスと領主様だ。わたしとは考える観点が違う。

わたしは好きなままに考えて行動し。二人は街の利益のことを考えて行動をする。

「それじゃ、リアナ。あとはお願いね」

「ギルマスは?」

「お腹が空いたから、くまさんの憩いで食事をしてくるわ」

力無い手を振ってギルドを出ていってしまう。

「それじゃ、ユナさん。こちらへどうぞ」

リアナと呼ばれた職員に『くまさんの憩いの店』の周辺の土地を提示されるので、全部購入しておく。こんなに安くていいのかな?

駄目だったら返すけど。

「全部ですか!?」

「うん、一々購入するのも面倒だし、他の人に購入されてもね。それと、今わたしの住んでいる土地を売却してもらえる?」

「引っ越すのですか?」

「どうせなら、店の近くに建てるつもり。その方が店に通うのも楽だしね」

「わかりました。では、ユナさんの家がある土地を売却させてもらいます。一応、今月末までに退去の方をお願いします」

「了解」

土地の購入も終わったのでギルドを後にする。

くまさんの憩いの店の周辺。

少し離れた位置に少し大きめの空き家が建っている。大きさにして貴族のお屋敷のパン屋よりも一回り小さいぐらい。

これを改築すればいいかな。

一階の部屋の壁を取り除き、ワンフロアーにする。キッチンが小さいので少し、広めにする。キッチンの隣には食料庫がある。大きさは十分かな? もし、小さかったらあとで拡張すればいいし。

テーブルとか内装関係はアンズが来てから決めよう。その頃にはミレーヌさんも落ち着いているだろうから、相談に乗ってもらうのもいいかもしれない。

二階はそのままにしておく。

アンズが住むにしても、休憩部屋として使えばいい 。

外に出る。

人が住んでいなかったから草木が凄いことになっている。

前回同様、魔法で処理をして、ひび割れた塀は一から作り直して綺麗にする。お店は見た目が大事だからね。

これで終了かな。

でも、物寂しい気がするのは気のせいだろうか。

少し離れたくまさんの憩いの店を見る。あちらこちらにクマがある。

前を見る。クマはない。

アンズがクマ嫌いかもしれない。

本人の希望を尊重しないといけないから作らないことにする。