軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十四話

ホウホウと梟の鳴き声が聞こえる静かな森の中。

俺はサツキと二人で、集落の外れを歩いていた。

暗闇の中、俺が持つ魔術師の杖の先が 光(ライト) の呪文の効果を受けて青白い明かりを灯している。

その明かりで照らされた一つの木の幹に、立ち止まったサツキが寄りかかるようにして背中を預けた。

「……で、話って何?」

敢えて素っ気ない声を出したという様子のサツキ。

その瞳が真っすぐ俺を見ることはなく、彼女の視線は横へと逸らされていた。

光(ライト) の灯りに照らされたその顔は、頬がほんのり赤く染まっているようにも見える。

「サツキ、酔っているか?」

「……まぁな。でも前後不覚とかじゃねぇよ。ウィルは?」

「俺もほどほどだ。少なくとも、発言に責任を持てないような状態ではない」

「そっか」

そこで一度、会話が止まる。

しかし話をすると言って呼びつけたのは俺のほうなので、俺が話を主導しなければならない。

俺はサツキと互いに手を伸ばし合っても届かないほどの位置に立ち、彼女に向けて本題を切り出す。

「俺の自惚れや勘違いの類もありうると思ってこれまで流してきたが、とある一件から、それも不誠実なように思ったので真剣に話をしようと思った。──サツキ、単刀直入に聞く。キミは俺に対して、恋愛的な意味で好意を持っているか?」

努めて普段通りの調子で話したつもりだった。

しかし内心では、さすがに平静ではいられなかった。

決定的なことを聞いている。

俺の勘違いだったら恥ずかしいというのもあるが、それよりも、これによって両者の関係がいままで通りにいかなくなるかもしれないという恐怖がある。

そしてサツキは、その俺の質問に対し、肯定の返事をした。

「ああ。……っつぅか何だよその聞き方。ウィルらしいっちゃらしいけどさ。っていうかあんだけアプローチかけてて、そうじゃねぇわけねぇだろ」

「すまん。だが女子は、意中の相手でなくとも保険としてほどほどのアプローチをかけておくものだと聞いたこともある。勘違いをしたまま話を進めたくはなかったから、あらかじめ確認をしておきたかった」

「ああ……まあ、そういうヤツもいるみたいだな。でもあたしがそんな器用なタマに見えんのかよ。……いや、まあいいや、それはいい。……にしても色っぽくねぇ会話だな、折角こんな話をしてるってのに」

サツキは苦笑する。

これまでにあまり見たことのないサツキの表情だった。

「──で、そんで? あたしはウィルのこと好きだ。大好きだ。いまこうして話してるだけでも胸がはちきれそうになるぐらい好きだ。だから──だから、何だよ」

そう言ってサツキはついに、俺のほうをまっすぐに、つぶらな瞳で見上げてくる。

サツキの頬は、もはや 光(ライト) 程度の明かりでも十分に認識できるほどに、はっきりと真っ赤になっていた。

俺はそのサツキの目を見て、ドキリと胸に去来する何かを感じた。

サツキのことを魅力的な女性だと思ったことは幾度もあっても、こんな風に見えたことはこれまでになかった。

俺は心を落ち着けるために一つ呼吸をする。

それから努めて冷静に、サツキに語り掛ける。

「俺の考えを、サツキに話しておきたい」

「……『気持ち』じゃなくて『考え』ね……。いいよ、聞く──」

と、そこまで言いかけたところで、サツキがその手の平を俺に向かって出してきた。

「──いや、待った。その前に、あたしの話していいか?」

「…………」

予想外の返答が来た。

頭の中で話の進め方の軌道修正を考える。

しかし話の流れがどう転がるか読めず、今後の話の展開の予想がつかなかった。

だが俺が一方的に話をするというのも良くないように思う。

サツキにも何か俺に伝えておきたいことがあるなら、それは聞いておくべきだろう。

「……ああ、分かった」

「よし。……さぁて、何から話そうか……」

サツキが憂うような表情を見せつつ俯く。

それから少し間を開けて、サツキは話し始めた。

「正直に言って、ほとんど一目惚れに近いんだよな。自分でも何だかよく分かんねぇ。でもきっかけはやっぱあんとき、ゴブリン退治のときの最初。あたしが無抵抗の敵は殺せねぇってわがまま言ったとき、それでもあたしを受け容れてくれただろ? あたしあれすっげぇ嬉しくてさ。あとウィルのこと、こいつかっけぇなーって思って。そっからもう何か坂道転げ落ちるみたいにさ、あっという間に落っこちてた」

「…………」

「それからウィルと一緒の時間を過ごすたびに、どんどん好きになってってさ。……ほら、あたしバカじゃん? バカなことばっか言うじゃん? でもウィルはそんなあたしも受け容れてくれて、あたしをあたしとして受け容れてくれて、話せば話すほど嬉しくなってって……やべぇな、何話してんだか分かんなくなってきた。えっと、だからさ──」

そこでサツキは再び、意を決したように俺の目を見てきた。

そして──

「あたし、ウィルのことが大好きだ! だから──あたしと付き合ってください!」

そう言ってサツキは、最敬礼の姿勢をとり、その右手を俺に向かって差し出してきた。