軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十三話

討伐証明のための部位を収集し終えると、俺たちはクエストの依頼元であるミト村へと戻った。

その頃にはもうすっかり日が暮れていて、その日は村で滞在することとなった。

ゴブリンロードとゴブリンメイジがいる危険な群れであったことを話して証明を見せると、村で読み書きを教えていた賢人が驚き、その脅威をとくとくと村人たちへと向けて語ってくれた。

その結果、追加報酬を出すのは厳しいが、せめてもの気持ちとして、その夜は宴を開いて彼らのおごりで料理と酒をふるまってくれるという話になった。

また、入浴と寝床も、村長の家で都合してくれることとなった。

収入の少ない駆け出し冒険者の俺たちにとっては、非常にありがたいサービスであると言えよう。

「いやぁ、さっぱりした! ゴブリンの血でべっとりのままってのは、やっぱ嫌だからな。風呂貸してもらえたのは助かったぜ」

「まったくね。だからと言って、三人一緒に入る必要は、どこにもなかったと思うけれど」

「本当です。サツキはミィをオモチャにしたかったとしか思えないです」

風呂上がりの上気した身で、サツキ、シリル、ミィの三人が宴の場に現れた。

無論、衣服を身につけた状態である。

だが宴の場にいた村人たちからは、おおおっと歓声がわく。

三人とも、タイプこそ違えど、美少女と言ってまったく差し支えない、整った容姿をしている。

湯上がりの姿は殊に艶やかで、俺も内心では、感嘆の声を上げていた。

中でも、特に目のやり場に困るのが一人いて、誰かと言えばサツキである。

着物を着崩し、胸元を大きくはだけ、さらしを巻いた白い肌をかなり惜しげもなく露出させていた。

大胆というのか、無防備というのか……おそらくは後者だろうとは思うが。

ちなみに勘違いされがちなのだが、俺も別段、異性に興味がないわけではない。

魅力的な女性を見れば心を惹かれるし、ときにはそれ以上の情動も起こる。

ただ物事には優先順位というものがあり、俺の場合、異性への興味はあまり優先度が高くない。

ゆえにあまり、その様子が表に出ることがないようである。

「おっ、ウィリアムがあたしたちに見惚れてんぞ。──どう、綺麗? なんちて」

「彼はそういうタイプじゃないでしょ。また呆れられるわよ」

……と、こういった具合である。

そして俺も、彼女たちと男と女の関係になるのは避けたいと考えているので、それ以上は踏み込まないようにする。

男女関係の問題を起点にして冒険者パーティが崩壊するケースは、実際の冒険者の記録物を紐解いただけでも、枚挙に暇がない。

それは通常、複数の男と一人の女という前提状況で起こるものだが、別段その逆があってもおかしくはないだろう。

また冒険者の男と女が懇意になり、男女の営みが行われれば、女が 身籠(みごも) るということも当然の帰結として起こりうる。

そうなれば、女は冒険者として活動できなくなり、男も妻子とともに暮らすためには冒険者稼業から離れる必要が出てくる。

俺は、少なくとも今のところは、そういった未来は望んでいない。

ゆえにパーティメンバーの彼女らがいかに魅力的であろうとも、彼女らと男女の関係になりたいとは思わない。

思わないのだが──それでもと言うべきか、それだからこそと言うべきか。

いずれにせよ、あまり目の毒になるような格好は避けてもらいたい。

言って聞くとも思えないが、一応警告はしておこう。

俺は酒宴が始まった席、夜空の下の焚き火の前にて、隣で陽気に飲んでいたサツキに向けて、その言葉をぶつけた。

「サツキ、一つキミに言っておきたいことがある」

「え……な、何?」

「キミは少し、自分が年頃の女子──それも容姿端麗な部類に入るということを自覚すべきだ。いまのキミの姿は、俺を含めた男全般に対し、邪な情動を抱かせる可能性が高い。何か間違いがあってからでは遅い」

「えっとー……」

サツキは、俺が言ったことを理解しようとしたのか、少しだけ考え込んだ。

それから、

「それって……ウィルはあたしのこと、魅力的だって思ってるってこと……かな」

乙女のように体をもじもじとさせて、頬を染め、上目遣いで俺を見てきた。

俺は頭が痛くなってきた。

「間違いだとは言わん。だがそこだけ切り取るな」

「へぇー、間違いじゃないんだ。へぇー、そっかそっか。へぇー」

サツキはそんなことを言って、にこにこしながら俺のほうにすり寄ってくる。

そして俺の腕に抱き着くように身を寄せ、耳元で囁いてきた。

「じゃあ……こんなことされたら、あたしのこと好きになっちゃう?」

そう言って、真っ赤になった顔で、にひひっと子供のような笑顔で笑いかけてくる。

どうやらこの娘、早々に酔っぱらっているようだった。

「ならん。そしてやめろ」

「えーっ! 何でだよー! あたしがここまでしてんのにー!」

さらには駄々っ子だった。

俺は助け船を求めるように、正面で飲んでいるシリルとミィのほうを見る。

そこにいた二人は、完全に呆れ顔だった。

「まさかサツキがここまで色惚けするとはね……」

「ミィも完全に予想外です。あれじゃどう見てもただのビッチです」

「酔って気が大きくなっているだけだと思うけれどね。朝になったら悶死するんじゃないかしら」

「ミィもそれに一票です。明日が楽しみです」

二人は完全に観客であった。

どうもこの窮地から救ってくれそうにはない。

「ねぇウィリアム。あたしあんたのこと、ウィルって呼んでもいい?」

「それは構わんが、抱きつくほうをやめろ。そっちは許可をした覚えはない」

「えっへへー、ヤダもんねー。ウィルがあたしのことを好きって言ってくれるまで離さねぇよーだ♪」

そんな様子でエスカレートしてくるサツキを、俺は最終的に 眠り(スリープ) の呪文を使って眠らせて、毛布とロープでぐるぐる巻きにして寝床に放り込んだのだった。

なお、後のミィたちの話によると、翌朝のサツキの様子は相当な見物だったとのことである。