軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-32.仲間

例のクランとの対立の事情聴取……。結局、過剰防衛ではなく、お咎めなし。

理由として一番大きいのは、身分だった。一応、子爵令嬢……貴族としての身分を有しているということで、平民である彼らが私をリンチにしたことも、攫う算段だったことも、全て自供させられたらしい。捕まった5人以外もクランの者が全て、手配されるらしい。

そして、その後はレオニスさんに送ってもらう……ことはなく、ナーガ君が戻ってきたので、ナーガ君と一緒に帰ることになった。

「さっきはごめんね? 改めて、初めまして、アルスです」

「クレインです。グラノスの妹です……えっと、さっきと同じ人だよね」

「同じだ」

さっき、すごくおどおどしていたのに、別人のように振舞っている。いや……なんだろう、この違和感。さっきは、フードを被っていたせいもあって、きちんと容姿を見ていなかったけど、今はフードを外して、こちらを見ている彼は格好良かった。残念な人っぽかったのに、どうどうと振る舞うとイケメンに見えるから美形はお得だ。

アルス君の髪の色は、黒に近い灰色。癖の強そうな、でも寝ぐせではない感じの短髪。右目の辺りに大きな傷があるせいなのか、右と左で目の色が違う。右目は白っぽい水色、左目は青。冒険者では、傷跡を持つ人もそれなりにいるので珍しいわけではないけれど……傷が消せなかったのか、残しているのかは分からないけど……右目の視力がないかもしれない。

「クレインさん。僕のせいで、ご迷惑をお掛けして、すみませんでした」

「えっと……ちょっと、ナーガ君。本当に?」

「グラノスがいると変なんだ……」

話を聞くと兄さんがいる前では様子がおかしいと気づいたのは最近らしい。

ただし、その前から変だったという。相手は兄さんではなく、兄さんが激おこしている例の少女のいう事を鵜呑みにする、依存し過ぎているという印象だったらしい。

……しばらくすると、何故僕はあんなことをしたんだろう……と言い出すこともあったとか。

少女と敵対して、こちらにつくという事で一緒に連れてきたが、ここ数日で、どうやら兄さんに対しての言動が少しずつおかしいと感じるようになったらしい。

とりあえず、〈観察〉〈鑑定〉を駆使して調べてみるが、私にはわからない……。

「マリィさん。さっきの兄さんの話ですけど、彼がなんらかの暗示がかけられている場合ってどうなります?」

「暗示、かかってるんです?」

「いや、ちょっと自信ないので、教会に連れて行って、診てもらいます」

「では、鑑定書をお渡ししますので、こちらに証明をもらってください」

「わかりました」

近くにいたマリィさんに一応確認を取る。ただ、先ほどの態度とは違うとマリィさんも感じたので、そういう事情があれば考慮される可能性はあると言ってくれた。

とりあえず、ナーガ君とアルス君を連れて、教会に行くことにしたわけだが……なんだか、私とナーガ君への接し方がだいぶ違う。

少女と一緒に行動してたのであれば、女嫌いではないよね? なんかトゲトゲしている気がする。

「……確かに、変な暗示がかけられてるな。かけてからだいぶ経っているのと、かけた本人が側にいないから、弱まっているが……鑑定書な。料金は……」

「とりあえず、私が」

「わかった。じゃあ、今用意するから待っててくれ」

「……俺は少し祈ってくる」

神父様が鑑定書を用意し、ナーガ君も席を外した。ナーガ君は像の前で祈っているので、邪魔しない様に教会の後ろの方で座って待つことにした。

ただ、彼がゆっくりはさせてくれないらしい。

「えっと、クレインさん。聞いても良いかな?」

「答えられることなら?」

「僕は操られていたの?」

「そこまでじゃないけど、何かの暗示はかかってたんじゃないかな……内容は神父様に聞いた方がいいよ」

ショックを受けた様子だけど……どこか、自分の行動がおかしい自覚もあったらしい。少しぐちぐちと話が始まる。

兄さん達に助けられたこと。なのに、少女は助けられて当然で、我儘を言う。おかしいと思っているのに、少女に相槌を打ってしまったり、与えられて当然だと考えていたこと。

この町に向かう時、ナーガ君に「手伝え」と言われ、ようやく、食事の用意を自分でも手伝うようになったらしい。この子も、ナーガ君と同じで、精神年齢が低いのか? 自分の事を自分で判断していなかったようだ。

「僕はどうしたらいいかな……」

「少し自分で考えてみたら? かけられていた暗示は消えかけてるでしょ? それに……流されるだけだと、同じことを繰り返すことになるよ……ね、ナーガ君?」

「ああ……家まで送る。あんたはついてくるな」

近づいてきたナーガ君に確認を取ると、大きく頷いた。「一晩、ここで考えるといい」というナーガ君の言葉に、悲しそうにしながらも頷いた。

彼にも考える時間が必要だろう。神父様をちらりと見ると頷いていたので、迷える子羊は預かってくれそうだ。

「……ごめんね。ナーガ君」

「あんたが謝ることじゃない……あいつも、少し考えた方がいいだろ」

ナーガ君としては、彼を追いかけるくらいだから、兄さんがいないところで、私を味方にして、彼を認めてもらおうと考えていたかもしれない。ただ、私とは相性悪いかもしれない。どこか、私の話には納得できないって顔していた。

神父様に暗示がどのような類かを聞いてみたが、相手の意識を拘束する類ではあるが、そこまで強いものではなく、自分の意見に賛同させるくらいの拘束力だろうと言っていた。ただ、暗示にはかかり易い可能性はあるらしい。

う~ん。でも、逆に私に対しては警戒心強い気がするんだけど……何が違うのだろう?

そして、ナーガ君と家に帰ると、兄さんが食事の準備をしていて、3人はそれぞれ自由にしていたらしい。

「兄さん。……一応、アルス君と話してみたけど、神父様に診てもらって、暗示をかけられていたので、落ち着くまで待った方がいいと思う。そのまま、神父様に預けてきたから」

「わかった。……で、暗示は解けるのか?」

「解けると思う。むしろ、ほぼ解けてる。面倒なので、神父様にお願いしたほうがいい、かな……とりあえず、鑑定書で暗示かかってることを証明してもらった」

「わかった。とりあえず、後回しだな。それと、彼らとは話をして、メディシーア家の奴隷にすることになった」

「え? そうなの?」

「ああ。メディシーア家の物ということになるが、命令などをする気はない。ナーガもいいな? それと、一緒のパーティーを組むことになるから、クレインは薬の納品とか、個人受注するようにな」

ちらりとティガさんを見るが、にこりと微笑まれた。納得している、のかな? レウスは少し、むくれているが否やはない。クロウについては、何故か流し目後にウィンクされた。伝えたいことがわからない。

そして、薬の納品などはパーティーで受注出来なくなった。そうすると、稼ぎが結構差が生じてくると思うのだけど……何かと入用だし、いいのかな。

「まさか、兄さんがパーティーメンバーや奴隷にするって話を進めると思わなかった。相談はしようとは思ってたけど……」

「俺の方でも一応、話は聞いてたんでな。協力できる関係なら、仲間にした方がいいだろう。君が奴隷にするのを戸惑ってると聞いたのもあるがな。君の判断に従った方がいいだろ?」

「あ、いや……それは、覚悟が足りなかった部分もあって……」

実際に、ラズ様に言われた後に、クロウに言われてようやく腹くくったというか……。でも、協力できるなら仲間にと考えると思わなかった。私よりも異邦人嫌いだと思っていたのに、あっさりと受け入れている。

それこそ、どうしたの? と聞きたいんだけど。

「君が自分の奴隷にするのを戸惑ったというなら、表面上に理由が無くても、何か気づいてないだけで理由がありそうだからな。一応、お師匠さんがどうしてたかも調べた上で、君に奴隷を持たせることは危険だと俺は判断した。後、君が受け入れたなら、異邦人だろうと受け入れるぞ?」

「いや、そこがわからないんだけどね? だいたい、そんな時間よくあったね?」

「まあ、こっちも情報はかき集めてるんでな。……話を戻すが、君が大丈夫と判断した奴を疑っても仕方ない。君の場合、危険を判断できる能力があるんだ。君が大丈夫だと言えば、俺とナーガは受け入れるぞ? ……それに、数は力だ。俺らだけで出来る事には限界があるしな」

兄さんの判断基準が重かった。私の判断に結構重きを置いてるというのは、ちょっと驚きだった。いや、多少はわかっていたけどね。……もっと自重するべきだったかもしれない。

「集まってた方が危険じゃない?」

「そこら辺は気を付ける。だがな、君は奴隷にしたくないと感じたのなら、それを尊重しておけ。君の選択肢は後から意味があったとなることがあるからな」

「そう、かな」

いや、そんなことあったっけ?

特に覚えもないけれど……ナーガ君がこくりと頷いたので、反対はしないらしい。

助けたいけど、奴隷にしたくないとは考えていたけど……だから、家の奴隷にするっていうのが解決策でいいのだろうか。

「えっと……上手くいかないかもしれないよ?」

「別にそれはそれで構わない。仲良しこよしで生き残れるほど甘くないんだ。やれることはやっておくべきだろう」

兄さんとしては、普段から仲良くする必要はないが、必要な時には団結できればいいという。

同じ世界出身という寄合は、危険もあるが、連帯感は増すかもしれない。一長一短がある気がする。

「だがなぁ……実際、どうなんだ? あんた達が連れてきた彼も引き入れるのか?」

「それを言われるとな……悪い奴ではない。あと、あいつのユニークスキルは戦闘系の3段目なんでな。使えるという打算もある」

「能力目当てかい? それこそ、戦力を集めるのは危険だとも思うがねぇ」

クロウの意見も一理あるけど、兄さんとナーガ君に続く、3段目持ちか。では、彼の戦闘能力は高くなる可能性は高い。

それに見合わない精神面の幼さがちょっと怖いけど。暗示にかかりやすい特性とか、なんかありそうで怖いよね。

「う~ん」

「彼はもう少し見極めの時間を取ってはどうかな。わたし達と違って、急ぐ必要もないのだろう?」

ティガさんの意見は、確かにその通りなんだよね。

クロウ達については、ラズ様に期限設けられてるし、帝国との関係もあるから早い方がいい。兄さんに視線を送り、頷く仕草をすると「わかった」と返事が返ってきた。

「明日、この条件で商業ギルドに依頼して、契約書を作成する。で、彼らと奴隷契約を結ぶが……俺に任せてもらっていいか?」

「兄さんがやってくれるなら助かるけど……」

「それと……俺は午後から出掛ける。5日間くらい戻らないかもしれないが、その間は無茶をしないようにな」

「どこ行くの?」

「お師匠さんと一緒に、領都キュアノエイデスに行く」

うん? 何かと思ったら、面倒事を起こしたので、キュアノエイデスまで出頭するという……師匠と一緒に。

「師匠に迷惑をかけたの!?」

兄さんに詰め寄ろうとすると、ナーガ君が兄さんの腕を掴んで逃亡を防いだ。ありがとう、助かる!

いや、それより師匠を連れていくというのであれば、そこははっきりさせなくてはいけない。

「違う、いや、違くはないが。落ち着け……爵位の件もある。俺とお師匠さんが二人で行った方が早いらしいからな」

「……クレイン。こいつ、隣領で問題起こしてる。その件で、話し合いの場に師匠も行く必要ができた」

「ナーガ! ばらすなっ!」

ナーガ君の補足に、観念した兄さんが事情説明をする。

数日前に私がパーティーを外されたときに、そこの冒険者ギルド長と言い争いになったらしい。相手は先々代領主の3男で元貴族。

結構な大事になっているので、後始末もしないといけないらしく、王弟殿下に報告に行くらしい。

それで師匠も同行することになったとか。兄さんが首からかけている大きなごつい指輪は当主の指輪。師匠から預かったそれを使って、相手をやり込めたので、師匠にも責任が生じているらしい。

全部を話していない感じがするけど、ティガさん達がいるので詳しく説明したくない、とかかもしれないから追及しないでおく。

「私も行く?」

「そのうち連れていくが、今回じゃない。俺の不始末は俺が対処する。君は君がするべきことをしてくれ……あと、ナーガはクレインの側に。あちらと和解するまでは、クレインの身柄が最優先だ」

「……ああ」

伯爵家に関わると思われる人と対峙したことを兄さんに言わなければ良かったのかもしれない。ただ、クリスティーナもあのクランの連中ももう一人いたことは認めてる。憶測になるから、ギルドへの報告はどこの人かを言ってないのだけど……。

私の方にも接触があったので、兄さんは私に伯爵家の情報を伝えないようにした気がする。まあ、兄さんが対立構造作ったのであれば、私まで対立してしまえば、全ての関係性が断たれてしまう……隣の領地だから、完全に切ってしまうのも問題があるとか?

他に何か考えがあるのかもしれないけど……聞き出すのも難しいかな。

「ふむ……俺もいいかい?」

「クロウ?」

「なんだ、俺についてくるのか? 構わないぞ、どうせあっちも連れているだろうしな」

クロウは兄さんのお供に立候補した。何か考えがあるのだろうけど……レウスが頬を膨らませている。事前に話し合いはしてないな、これは……。

だけど、クロウが肩をぽんぽんと叩くと「わかってるよ」とレウスが言っているので、多少は事前相談しているのか?

「では、クロウは借りていく。お師匠さんに何かないように君も護衛する側になるぞ」

「わかっている、まあ、実力はないがな……ということで、ティガ。レウスの事は頼んだ」

「任せてくれ。レウスもいいね?」

「はいはい。勝手にすれば」

う~ん。師匠に迷惑を掛けるような事がないといいけど……大丈夫かな。

もっと険悪になるかと思ったのに、奴隷になることも含め、なんかパーティーになることについては、誰も拒否してないので、良かったのか?

一応、パーティーと言いながらも、私は基本的には不参加ということで決まったらしい。むしろ、私が行くとき以外は個々に自由裁量……金を稼ぐのも、のんびりするのも自由という方針になった。

そして、その後は、帝国での情報も含め、互いの状況について話し合いを行った。

彼らから得られた情報は、帝国での反乱の全貌。

集められた異邦人の多くが亡くなったこともだが、突然起きたという半狂乱状態というのも気になる……。クロウは事が起きてから原因を調べようとしたが、クロウの〈鑑定〉は狂乱状態の人にはあっさり跳ね除けられたらしい。

その異常が起きる前には、暴動の一因と思われる青年を含め、粗方の情報を見ることが出来ていたが、その時だけは見えなかったのが謎。

ただ、帝国側にとっても予定外であることは間違いないらしい。

そして、その後の兄さんの王弟殿下との会話内容はさらに驚くことだった。

「兄さん……本気で言ってる? 集団転移が前にもあって……全滅してるの?」

「本気だ。そもそも、各国の対応が早いことからも、今回のような召喚があったと考えるのはおかしい事じゃない……帝国は、召喚場所で待ち受けていたんだろ?」

「そうだね。わたしも聞いただけだが、異邦人の召喚は百年に一度くらい、数十人規模であるらしいね。単体の場合はもう少し期間は短い……帝国で、王位継承権を持つ者なら知っているらしい」

「ティガさん……それを誰が口にしていたんですか?」

「……第3皇子が、部下ととある異邦人相手に、話をしていたのを盗み聞いているよ。混乱や破壊の象徴であるとともに、使いこなせる者が王となることが出来る……そんな事を言っていたね」

兄さんの予想では、この世界を滅ぼすための存在として異邦人が送られた。そうでなくても『異邦人』という言葉が存在しているので、なんらかの前例があるという。……その事をティガさんは少なくとも皇子の発言として聞いている。与太話で済む話ではないのか。

「やれやれ……俺らは、世界が敵になるってことかい。厳しいねぇ」

「兄さん。それをどこまで話したの?」

「帝国の話の全容は俺も今、知った。だがな、俺の推論については全部だ。その上で、交渉してるな……まあ、話が分からない人ではないだろう。少なくとも、現状の後ろ盾としては良い。どうも、獣王国などの亜人の国も異邦人を受け入れない方針らしいからな……」

兄さんは推論を話した上で、褒美として土地を願い、王弟も今ある都市ではなく、新しく作るのであれば、異邦人の逃げ場として、町を作ることを認める。……一応、構想が一致しているらしい。……良い事なのか、まだ判断は難しそう。

現状、王都に集められた異邦人には手出しをするつもりはなく、他国……獣王国等からの亡命してくる異邦人を兄さんに預ける可能性がある。

あとは、更地開拓についても今後準備をしないといけないってことかな。

この辺の話について、ナーガ君は目を白黒させてるから、あまり聞いていなかったらしい。レウスも似た反応している。

私は、異邦人がこの世界に害ある存在だというのは、意見一致していたので、驚きは少ない。兄さんの考察は一理あるのかなとも納得している。

「兄さん、異邦人嫌いなのによく引き受けたね」

「個人の感情は二の次にするべきだろう? 君に無理を強いているのに、俺は受け入れないなんて、恰好悪いことは出来ん」

「ん? 無理強いてるっけ?」

「あ、それ! 俺、納得していないんだけど、クレインはいいの!? なんか、勝手に王弟の第三子と婚約させてるって聞いたんだけど」

「ああ、そうなの?」

「ああ……それなんだが……」

兄さんは歯切れが悪そうにしている。

うん……それはまずいのかな。私も自分でラズ様に売り込んでしまったのだけど。

「私、ラズ様の妾になるって、交渉してるんだけど?」

「……一応、ラズの婚約者とすることになってるからな? 妾を自称はやめろ。王弟の第三子の名前は、ラズライト。君らの前ではラズを名乗っているかもしれんが、まあ、この地の領主代行をしている男だ。本人、一応隠しているらしいが」

つまり、ラズ様と婚約させるという事。まあ、予想通りだった。そもそも、私の方でもそれを進めていたので、その点については、問題なし。

レウスは「あいつか!」と怒っているが、まあ、たまにイラっとするよね。そういえば、クロウとレウスは奴隷云々を含めて話をしているんだった?

「君は嫌ではないのだね?」

「……まあ、実際にあの人の庇護があって、現状なんとか生き延びてる部分はあるんですよね。今更、他の貴族につくことは出来ないのは間違いないので。この地から離れて生きるなら別だけど……それは出来ない」

ティガさんの問いには、現状を伝える。

一瞬考えた逃亡という選択肢に、かすかに発生した直感。……裏切れば死に直結するという予想は間違っていないらしい。

それにラズ様に対し、恋愛関係では無くとも、良い関係を作ることはできると私は考えている。それこそ、この世界で恋愛を楽しむ余裕があるとは考えにくい。むしろ、安全確保を考えるなら、パートナーとしては悪くはないのでないかとすら思う。

だって、あの人、私の事を異性として対象外としてるのわかるからね。

そう言う点でいうと、自分の身体を捧げて……みたいな事をしなくて良いんだよね。

「そういう事だな。君を売ることになる訳だが」

「……生き延びるためには必要な事でしょ? 私が貴族の後ろ盾が一番必要なポジションでもあるしね」

「でも、勝手に決められてるんでしょ! 怒りなよ!」

「レウス……普通なら怒ることなのはわかるけどさ……この世界って、貴族の力大きいからね? 兄さんだって、上から言われて嫌と言える状況じゃなかっただろうし、そもそも当主が婚姻を決めるのが普通の世界だよ。平民でもね」

価値感が違うからね……。多分、兄さんの許可だけ取ればいいという進め方をしたんじゃないのかな。ラズ様に私が提案した時、ラズ様も戸惑ってて、フォルさんが進めていたから……王弟殿下からラズ様にも、その話言ってないと思われる。当主同士の話し合いのみで決定してそう。兄さんはまだ当主じゃないけど、権限は師匠から渡されてるし。

兄さんが王弟殿下と交渉した時期考えると、ラズ様は知ってないとおかしい時期だしね……。

「レウスが心配するのはわかるが、何だかんだとクレインを保護する気はあるみたいだ。一応、ラズとそのうち話し合っておく」

レウスは納得していない。というか、ナーガ君も少し不満そうな顔している。

だけど……他に相手になれる人いないしね。女の子、いないかな……出来れば、普通の子で。

「やれやれ……生き延びる事を目的でいいのかねぇ」

「他に目的があるなら聞こうか……ま、今のとこ実現できない可能性のが高いけどな」

まあ、クロウの言いたいことも何となくわかるし、兄さんのいう事も事実なんだけどね。この世界で勇者になりたいとか、そんな事を考えるなら追い出すけど。そんな目立つ事は、出来ないからね。

「今のとこ、替えのきかない存在になるのが、一番立場を安定させられるとは思うんだけどね」

「そこは、君に任せるしかないな。俺やナーガは替えがきく戦闘員にしかなれん」

「そういう点では、わたし達が動いた方がいいのかな?」

「ティガさんの好きにしていいと思いますよ。自分で選んだ力をどう使うかなんて自分で決めるべきだと思います。……クロウについては、主に解析担当で使い倒すけど」

「ぷっ……」

ん? なんか笑う要素あったかな?

兄さんもレウスも笑ってるんだけど? ティガさんも少しひくひくしてるので、笑いたいみたいだけど。

「君、クロウはお気に入りなんだな」

「言動は腹立つこともあるんだけど……役に立つのは事実なんだよね。…………むしろ、クロウを医者にすれば、ある意味一番替えのきかない存在になるかも?」

実際に、人の体の内部……患部まで見れるとか、かなり大きいと思うんだよね。本人にやる気なくても、それなりに何とかなる気がする。医者としてでなくても、薬の成分とかも含めて、薬を見せた時に素材が分かると言うので、めっちゃ重宝する可能性が高い。

「俺に期待してくれるなら嬉しいねぇ~」

「実際、ティガさん助かったのって、クロウの目のおかげだと思うからね……あれって、実はかなりすごい事だと思う」

「おや……では、わたしも感謝するべきなのかな?」

「……あんたよりかわいい子の感謝が欲しいんだが」

「ふむ……俺が誉めてやろうか?」

「美人なのは認めるが、女がいい」

クロウはティガさんが頭を撫でようとするのを避け、兄さんが近づくのも阻止している。中身はいい年したおっさんだしね……からかってる二人もわかってるだろうけど。

兄さんは美人というのは事実だけど……女の子大好きだよね、クロウ。その点では気に入られているのも理解している。

ずっと黙っているナーガ君に視線を送ると頷かれた。ちゃんと聞いているという事だろうけど、話す気はないらしい。

「それで、今後ってどうするの? 俺らは冒険者になるんだよね」

「そうなるな。具体的には、戻ってきてからになるが……」

「スタンピードが近いから、しばらくはこの町にいた方がいいとは思うよ。村とかに派遣されるケースもあるらしいし、冒険者として協力が必要になる。それまでに、もう少しレベルを上げた方がいいとは思うけど」

「だそうだ。クレインに任せる。ナーガはクレインが無理し過ぎないように見ててくれ」

「……ああ」

いや、別に無理をしたりはしない。ただ、仲間になるのであれば、忙しくなる前にある程度レベルを上げておくのは必要だと思っただけで……。

でも……意外と反発なく、手を取り合えるのであれば……これから先、心強い。何だかんだ、事情を知っている人で固めた方が、気を使う必要はないしね。結果として、兄さんがまとめてくれて、仲間になるのであれば良かった。

3人が宿に帰るのを見送り、2階に戻り、ナーガ君と二人で食器洗いなどの後始末をする。その間に兄さんはお風呂へ向かった。

「……ただいま」

「うん、おかえりなさい」

ようやく一息吐けたところで、ナーガ君から言われた。そう言えば、ばたばたして、ちゃんと伝えていなかった。

これから先は見通せないけれど……少しずつでも、進んでいける。なんだかんだ、仲間が増えているけれど……協力して、生き延びていけるなら、それがいい。

だけど、まあ……目の前にあることを、自分に出来ることから、一つずつやっていこう!