軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-24.契約打診

前日に不法侵入があったことから、朝起きてから、色々と対策をしておく。

外出時に毎回、魔法で結界を張るのはどうかとも思うけど……二階に上がる階段と地下室の入口については、聖魔法による結界を張っておく。一階に入ることはできるようにして……防犯カメラとか欲しい。そもそも、何を目的に不法侵入したのかわからないしな。

とりあえず、店に入ったらあるカウンター部分に張り紙をして、教会に向かった。

レウスやクロウが家に来るかなと思うけど、家で待つのは良くないという判断。逃げ場としては、冒険者ギルドか教会くらいしかない……。

「朝早くから、どうした?」

「昨日、モモが言うには不法侵入があったみたいで」

「この子猫はそんなこともわかるのか、偉いな」

「なぁ~」

うん。まあ、偉いんだけどね。神父様が良い子だと言って、抱き上げ、撫でられている。モモは喜んでいるけど……。

「とりあえず、掃除してます。ここを待ち合わせ場所にしてるんで」

「手伝いが必要だから、今日は泊っても構わないからな。必要なら声かけろ」

「ありがとうございます」

うん。避難してきたのをわかってくれるのはありがたい。今日の寝床ゲット。

明日は師匠が来るので、家にいる必要はあるけど……対策を考えないとだ。

「おっ、すまんなぁ。遅くなった」

「いや。こっちも時間あったから……改めまして、クレイン・メディシーアと言います。ティガさんの治療を担当しました。体調が戻ったようで、安心しました」

「貴方のおかげで、助かったと聞いています。本当に感謝しております。ありがとうございました。レウスとクロウからも話を聞いていますので、これからは遠慮なくこき使ってください」

「えっ……」

にこりと微笑み、礼儀正しくお辞儀をされた。うん、紳士的な人だなと思うが、こき使ってくださいって何だ?

クロウとレウスを見ると二人とも目を逸らした。……この人に何言ったのかな?

「口調は崩していただいて大丈夫です。クロウとレウスから聞いたということは、奴隷となるということでいいんですか?」

「ああ、もちろん。他に選択肢が無いということもあるが、それ以上に、人に仕えるなら可愛いらしいお嬢さんの方が嬉しいしね」

「……わかりました。では、治療費がいくらだったか、お伝えします。その額について、問題が無いなら、契約書を作りに商業ギルドに行き、作成後に、奴隷売買を行っている商会に行きます」

いや、なんか気になる言い方だけど、まあいいや。頑張って考えた値段を伝える。

レウス

MPハイポーション代 3分の1 70,000G

奴隷契約手続き費用 7,000G

計77,000G

分割支払いの場合、毎月1,000G以上を返済する。

クロウ

MPハイポーション代 3分の1 70,000G

麻痺治し薬(アレンジ) 22,000G

錬金試薬 800G

(使用した素材を納品する場合には、素材代は相殺する。素材については別途記載)

魔法治療 500,000G

奴隷契約手続き費用 59,280G

計652,080G

分割支払いの場合、毎月1,000G以上を返済する。また、週に1回は、助手として調合の補助などの就労をする。

ティガ

MPハイポーション代 3分の1 70,000G

専用血清 100,000G

錬金試薬 800G

(使用した素材を納品する場合には、素材代は相殺する。素材については別途記載)

魔法治療 500,000G

奴隷契約手続き費用 67,080G

計737,080G

分割支払いの場合、毎月1,000G以上を返済する。

「一応、洞窟内で使用したHPポーション代とか、ここまでの馬車代の請求も出来なくはないけど、私が作った物だし、魔法治療がだいぶ高いから、そっちはつけてない。借り物だったハイポーション代、町に帰ってきてから作った薬、あとは魔法治療で計算してる。奴隷契約の手続き費用は、借金額の10分の1なので、それも盛ってるけど」

「この月1,000Gは実際に返済可能なのかな?」

「真面目に冒険者をするのであれば、可能な金額。もちろん、他の職業に就くにも自由だとは思うけど、この町の一般人の平均収入が2,000~4,000Gなので、多少、厳しい可能性はある。あと、Fランクの間は収入厳しい可能性もあるので、昇級までは返済は待ってもいい」

まあ、実力さえあればD級まではギルド判断で上げてもらえるはず。取り立てについては、来月からにすれば、その間で昇級可能のはず。

どんな仕事につくかによって、収入は違うからな……冒険者にならない選択をするなら、額を減らすことも検討しないとかな。

「ねぇ、何でクロウだけ、就労義務があるの?」

「今回のティガさんの治療でその能力が役に立ったから。また、お願いすることがあるかもしれないし、ちゃんと働いた時給分はお金払うよ?」

「俺は~?」

「いや。普通に働いて返してくれればいいから。3人の自由を拘束するつもりはない……けど、レウスがいいなら、こちらの事情で1、2週間だけパーティーを組ませてもらいたいかな」

「いいよ。でも、何で?」

「所属しているパーティーから脱退させられたみたいで……事情がわかるまで、仮のパーティーを作って、加入しておく必要がある」

「その事情は教えてもらえないのかな?」

ティガさんから突っ込みが入った。う~ん。巻き込むのは申し訳ないが、私の奴隷になる時点で巻き込んでいるとも言えるんだけど。

クロウにバレているから、二人も知ってるかもしれないけど、私が異邦人であることを含め、こちらの情報を渡すと……割と面倒なんだよね。

今のとこ、敵が誰か分かってないから、何が起きてるかも把握できていないし……。

「なんだ、複雑な背景でもあるのかい?」

「パーティーを組んでいたのが兄達でね。私を脱退させるはずがないので、なにか面倒事が起きている」

「嘘ではないが、隠してる部分がある、と言ったところかい?」

にっと笑うクロウにイラっとする。

事実だけどね……。

「それはそう。ただ、あくまでも患者と薬師の立場だからね。全部を説明しないし、仮パーティーも難しいなら断っていい」

「つれないな~あんたに身も心も捧げるつもりなんだが」

クロウが近寄ってきて、手を取り膝をついて、指先にキスをされた。

美形だから絵になるから、ついつい頬が赤くなってしまう。手のひらではないのが、また、恥ずかしくなる……指先って、感謝とかそういう意味だっけ? くそう、反応楽しまれているのが悔しい。

「いらないからっ」

ぱっと手を振り払って、後ろに後ずさると、薄く笑みを浮かべている。からかってるよね、絶対。

微笑ましそうに見ているティガさんも、わりと腹黒人物かもしれない。レウスは目を開いて驚いてるよ。少し耳の上が赤いし、可愛い反応だ。

「私の方針としては、奴隷となっても、時間をかけても構わないから費用を返してくれれば、3人に何かを強制することはしない。それで、受け入れるかどうか、答えを聞かせて欲しい」

「質問なのだが、私とクロウでは症状が違ったはずだ。それでも、魔法での治療は同額なのかな?」

「それについては、こちらでも悩んだ部分だけど、教会の基準でいうと、症状が重かろうと軽かろうと、使った魔法が基準となるので、それを使ってる。二人とも、同じ魔法をかけたことにしておいた方がいいと考えてる。時間やMP消費には違いがあるけど、そこを考慮して請求した時、今回の毒についても憶測で広がってしまう可能性がある。あ、3人が襲われた蛇についての詳細は話さないで欲しい。希少な毒だから、バレた時に厄介なことになる」

「あの蛇、なんかあるの?」

「治療が難しく、貴族が使用する毒らしい。これについては、深掘りは勧めない。ただ、今回、毒がなんだか知っている人達は、ティガさんが助からない可能性も高いと踏んでいた。実際、クロウの目が無かったら、私も見落としていたから助からなかったと思う。……そういう毒」

まあ、上手くいって良かったねという、かなり危ない状態だったと今更に感じてる。

正直な話をすると、かなり運が良かったので助かったのだと思う。

「もし、私達3人が遠出した場合で、クロウが就労できなかった場合はどうなるかな?」

「あ~気になるのであれば、月4回にするとか、その条件を消しても構わない。手伝いが欲しい時はあると思うけど、絶対ではない。それこそ、年単位で顔見せないことがあってもいいよ。他の町からでも、割増になるだけで送金とかできるみたいだから」

「冷たいなぁ」

「クロウ、茶々入れないで。ティガさんは、治療費とか何も聞かされずに勝手に治療を受けた身だから、不満があるなら全部クロウに押し付けるのでもいいと思います」

「いや、すまない。そんなつもりではないんだ。ただ、随分と甘い条件だとは思うけれど、どう考えてるのかな?」

「治療費の額としては、一般人ならかなり厳しい額です。貴方たちのポテンシャルを冒険者で活かすなら返済は可能です。ただ、返したくないというクロウのような考えもあると思うので、そこら辺は各自の判断に任せます。毎月の返済がない場合で、奴隷を売るという事は出来るので、そこまで甘くもない……はず」

ちょっと自信ないけど。

でも、そういう事だって出来るんだから、甘々ではない……多分。

踏み倒されるなら、売っちゃうよ……という事にしているが、売れないだろうとも考えてる。まだまだ覚悟が足りない。

「この条件への回答はいつまでにすればいいのかな?」

「可能なら今日のうちに手続きまでしておきたいところですけど、答えが出ないなら待ちます。ただ、3人とも称号が〈密入国者〉となっている事、3人の引き渡しを求められた場合に国は、貴方たちを捕えると思うので、その時点でこの話はなかったことにします」

「うん? あんたは密入国者だと知らずに治療したってことになるのか」

「流石に、それは無理だと思うけど……見殺しに出来なかったことと、治療費全額を返してもらうまでは私のモノってことを主張する」

「密入国ってわかるの?」

「〈鑑定〉すればね。そこら辺は詳しくないけど、とりあえず、私と繋がりのある貴族にはバレてるよ。異邦人であることもね」

クロウからの視線を感じるがスルー。嘘だと見破ってるのだろう、うっすら笑っている。でも、私は異邦人ではない。異邦人とされる人は全て招集されたんだよ。真実ではなく、事実だけど。

まあ、急がなくてもいいけど……こっちも色々と立て込みそうだから、さっさとすませておきたいというのは本音である。

とりあえず、経緯を説明しておこう。

「まず、クロウがちゃんと話していないみたいだから、説明しておくけど……奴隷にするという話が何ででたか、これは〈密入国者〉っていう称号が3人には付いてる。密入国の罪に対しては、罰金刑らしいので、お金を払えば罪は消える。ただ、三人の所属は帝国出身になってる。王国にいても、所有は帝国扱いっぽい。ここは、私も詳しい事は知らないので、答えられない。そして、〈奴隷〉という称号は、〈密入国者〉よりも優先される称号だから、〈奴隷〉になったら帝国出身が消えて、所有者に帰属する。この場合は、私の所属の王国になる。そして、借金奴隷は借金を返せば、〈奴隷〉という称号は無くなって、出身についてもその時点で真っ新になる。ここまではわかる?」

「ああ、問題ない」

「わかる、わかる」

二人が頷いてくれたのにほっとしつつ、クロウをじろっと見る。

肩を上げて、胡麻化すな。ちゃんと話しておいてくれれば、手間かからないのに。

「それで、密入国者っていうのは、冒険者ギルドを経由して、すでにバレていて、今のところは、帝国から引き渡し要求がない。追加情報として、帝国の政情が不安定で、異邦人は帝国に戻れば命の危険がある。ここまでいい?」

「オッケーオッケー」

「その上で、クロウは割と面倒なユニークスキルを持っているから、貴族に目を付けられた。クロウは縛られるなら、私のモノになることを希望した。貴族は他の貴族や帝国の手に渡らないなら、私の奴隷であることに目を瞑る。ただし、奴隷にしないなら、命は保証しないって……。それで、私にもクロウの能力は利益になるので了承した。二人はどうする? というのが、現段階かな。むしろ、ここらへんはクロウから説明受けてると思ってた」

「聞けば答えてはくれるけど、なんかイラっとするからちゃんと聞かなかった」

おい!

いや、わかるよ。私もたまにイラっとする言動だからね。イケメンだからこそ、たまにむかつくよね、クロウって。

でも、これって割と自分にとって大事な決断になると思うけど、仲間同士で意見交換とかしないのか? なんで?

ティガさんに視線を向けると、「詳しい経緯は今聞いたね」と返ってくる。

レウスは自由にしたいとか、ティガさんは一緒に保護して欲しいとか、ただの希望か! せめて説明しておいて。私が説明するの? いや、責任持つならそれが正しいかもしれないけど……。

「とりあえず、3人で話し合うなり、クロウをボコるなりしてください。どうするか決まったら、知らせてください」

「すまないね。もう少し考えさせて欲しい」

「いえ。さっきの料金表については、変更可能なので。クロウの意見で、3人に借金を付けただけで、レウスに借金を付けないことも、ティガさんの分をクロウに付け加えるのも希望に応じます。それと、明日と明明後日は、予定が入っているので応じられません。それと……今日から5日後を回答期限にします」

「その期限ってどこからきたの?」

「……私も色々制限はあるんだよ。そこが貴族から指定された期限。そこまでに決めろって」

これ以上を説明するつもりはないけど、クロウがどうするかは知らない。勝手に調べた私の情報を口にするもしないもクロウに任せる。

ただし、私の奴隷になるなら、個人情報をばらさないという条件を加えておこう。

先ほど渡した料金表の下に、奴隷になった後は、クレインの個人情報を口外しない、という記載を追加しておく。

「この条件は結んでからでいいのかな?」

「任せますよ。ただ、こちらのリスクもあるので、その条件は付けくわえておきます。では、私は掃除に戻るので、ご検討ください」

クロウとレウスとティガさんについては、返事を待つことになった。

本人達にとって、大きな決断でもあるだろうから、個々の決断に任せる。

そして、今後については、治療の時点で、金額の提示ふくめ、手順を決めておかないと……後出しで、高額請求は良くない。

未熟で考えなしでは、患者も困るだろう。覚悟を決めて……。

……彼らにこれ以上の手を差し伸べることはできない。今後、増えていく可能性がある患者と同じように接しないと。

特別扱いは……できない。

私の両手はすでにナーガ君と兄さんで一杯なのだから。全てを助けることが出来るほど……私には力がない。