軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-37、武闘大会 三日目(1)

自分は敗退した武闘大会ではあるけど、まだ折り返し地点。

今日は4回戦・5回戦が行われる。明日は、準決勝と決勝。

「誰を応援するのだ?」

「ツルギさんですよ?」

「だよね~」

カイア様の問いに答えると楽しそうに笑うスペル様。

表向きには知り合ったのはシュトルツ様の方が早いことになってる。

そもそもツルギさんとの接点なんかないので、不自然なのかもしれないけど。

大声で名前を呼んで応援する訳でもない。

それなら、本人からも応援してほしいと言われたのだし、構わないはず。

「優勝せずともか?」

「まあ、勝つのはシュトルツ様でしょうから」

カイア様がうんうんと頷いて納得しているけど、何を確認されたんだろう。

席順がおかしいのも気になる。

ラズ様も同伴しているけど、私の席の後ろにクロウと並んで座っている。

どうしてこの二人に私が挟まれた状態で、座らないといけないのか。

抗議したいけれど、ラズ様に首を横に振られた。

諦めろということらしい。

「一試合目からツルギが出てくるからね。ちょうどいいでしょ?」

「こっち睨んでるじゃないですか」

ツルギさんが登場して、にこやかに手を振っているスペル様だけど、あれは絶対に怒ってる。

それを承知でわざわざ私と肩を組んで見せるのだから、スペル様は良い性格をしている。

「この程度で心乱されたりしないですよ?」

「知ってる。でも、楽しいからね~。それと可愛い弟の優勝のためには、少しでもツルギを疲れさせておきたいでしょ?」

「ああ……今日当たれば、シュトルツ様が間違いなく勝ったでしょうね」

「だなぁ。一晩では回復しなかったな」

昨日は戦っていて気付かなかったけど。

今日は明らかに、疲れが残っている顔をしている。

二人が当たるのは決勝戦で、明日の午後だから、それまでに快復するかどうか。

「ふむ、一撃か」

「斬撃は便利だからね~。流石に対策を考えないのもどうかと思うけど」

開始早々にツルギさんが勝った。

確かに、あれなら私の方が善戦している。

「実際、昨日までで勝ち上がった人達ってどうですか?」

「変則的な大会ではあるけど、総合力が高いのが勝ち上がってきている印象だね~。ただ、全体的には小粒だと思うよ。ちなみに一回戦で異邦人は全員負けたね」

「私が戦った人以外、目ぼしい方いたんですか?」

「うん? いないかな。まあ、実戦が不足し過ぎ。本当の実力がわからない連中が多いよ~。成長したところであれなら脅威にはならないから、持て余すことも無いんじゃないかな。そのまま飼えるだろうけど……どうするんだろうね?」

「さて、各家で方針が違うだろうが……多く引き取った家は注目を避けられないからな」

なるほど。

実際、個々の能力差が大きいから、数がいればいいってわけじゃない。

それでも異邦人が集団だと注目されるのか。

「そうなると、一番多いのラズのとこだよね~」

「僕というよりも、クレインの仲間が、だけどね」

「え?」

「知らなかったのかい?」

「えっと、他もそれなりに固まっているイメージがあったので」

スペル様の言葉に驚く。

そんなに減っているのかな。

「王国では多くても一つの家、機関で5人までだな。それ以上は前王が許可していない。だが、主家と分家で合わせれば……という家もあるから、最大で30人くらいになる可能性はあるか」

「せいぜい20くらいじゃない? 派閥の余波は結構あるね。前王に仕えていた家自体が信用失ってるしね~」

5人か……そうなると多いかも。

ツルギさんを除いたとしても、8人。

ユニークスキルが特殊な人達が集まってるから、危険度も高い。

結構注目されてるのか。

「心配しなくても、君のとこの人員は父上達からちゃんと許可は得てるよ。君が協力的であれば問題はないってことになってる」

俯いて、考えていたせいか、ラズ様からフォローが入った。

「ん~。ラズは気にしてないけど、実際どうなの?」

「今後も絶えず増やすのであれば問題ではあるが、それ以上に功績もあるからな」

功績の一部として目を瞑ってもらってるなら助かる。

カイア様の試すような瞳に、コクコクと頷きを返す。

功績を考え、好きにさせている状態……一線を越えないようにしよう。

これ以上、増やさないのが大事。

「あの子達は元気?」

「ルナさんとリュンヌさんなら元気ですよ。私の外出が多いので、中で畑の世話とか任せてます」

「落ち着いたんだ?」

「助かってますよ。毎日の天気を当ててくれるので、農作業がはかどります」

「あはは~。うんうん、君に渡して正解だったね」

天気予報くらいしか使わないことにして、だいぶ安定した。能力を下げたのもあるけれど。

異邦人であっても、表舞台に立たないなら問題はないと思う。

「戦力があることで均衡を保つこともあるから、難しいものだな」

「ラズ様が注目されてるんです? 私が注目されてるんです?」

「どっちもかな~。ラズの立場が微妙なことが大きいのと……あと、この三兄弟の妻の座? 長兄も離婚話がでてるし、カイアは病で相手いなかったでしょ? 唯一相手がいるっていっても、平民で異邦人の噂もある相手だから」

「え? 離婚するんです?」

「王妃の器ではなく、後ろ盾の家自体も危うい。だが、今更でもあるからな。すでに後継ぎがいるので、そちらに期待するという点では、甥の婚約者候補の方が熾烈ではある」

セレスタイト様のお子さんは二人。

後継者問題にはならないものの、王妃として力不足。

問題も結構多いらしい。

「カイア様は、結婚は?」

「予定はない。相手もいないのでな」

「あはは~。僕にもカイアにも娘を売り込んできた家、二人で潰しちゃったからね」

「流石に、双方に粉をかけるのは倫理感がなさすぎるのでな」

両天秤しようとした結果、潰されたんだ。

色々と裏事情もあったみたいだけど、関わらないでおこう。

この二人、気が合うけど過激派だよね。

「僕はそのうち婚姻はしないとだけどね。カイアはこのまま逃げきれるんじゃない? カイアの苛烈な性格はバレてるから、温厚なラズの方がいいって動きはあるよ~。きみやセルフィス女伯爵の存在がネックで、表立って動いてないけど」

「父上も兄上も今のところは、ラズに相手を紹介するなどは考えていないがな」

うん。いないならいいけど。

新しく婚約して、私が問題になるなら逃げるから教えてほしい。

「相手が出来た時、私が別れれば問題ない感じです? 命狙われます?」

「今のところ、結んでおきたい有力な家もない。父上も別れさせるメリットは感じておらぬ」

「きみを取り込みたい家は沢山あるだろうけどね」

貴族の勢力図は複雑。

そもそも、スペル様って派閥としてはどうなるんだろう。

「派閥が壊れる時期ってそんなもんだよ。婚約関係だと改めて結び直しも始まってる。まだ、はっきりとした派閥は出来ていなくても、メリットがない同派閥というだけの組み合わせとかね。あと、婚姻してて、上手くいってない家もかな」

「え? 大丈夫なんです? そういうとこまで影響するって」

「だから、そんなもんなんだよ。貴族同士ってね。でも、セルフィス女伯爵こそ問題視されてるけど、妹達が離縁するって話も無いから関係は良かったんだろうね」

うん。

割とどうでもいいことではあるのだけど、ラズ様が心なしか嬉しそうにしている。

「シュトルツ様の出番まで、まだかかりそうですね」

「そうだね。今大会は目ぼしい騎士が少ないよね」

「控え室で見る限り、強い人いなかったですから」

「そう言えるほど強くなったってことだけどね~」

いい子いい子と頭を撫でられた。

うん。最低でもレベル50以上の戦いと聞いて今更驚く。

「まあ、君達と同じ70くらいが多いよ。レベルだけならね」

ステータスの差か。

いや、実際に扱う技術というか戦闘能力って、ステータスの数値やアビリティだけでは決まらないけど。

新人が多い大会とはいえ、実力者が揃っているらしい。

三回戦負けでも十分。ラズ様の武名を穢すことはないということで安心した。

「ようやく、シュトルツの出番か」

「騎馬同士、ですね」

「そうだね~。弟は相手に合わせたかな」

それにしても、シュトルツ様も人気だ。

入場の時、黄色い声が聞こえる。若干だけど野太い声も混じっているので、男性からも人気あり。

「すごい人気ですね」

「今だけだよ。僕らが冒険者をしていたとき、助けようとする家なんてなかったんだからね」

「俺は支援していたぞ」

「カイアとラズだけ。友情に感謝かな~。おかげで僕も復権できたわけだしね~」

う~ん。

貴族だからという訳じゃないけど。変わり身の早さはどこにでもあるのだろう。

「それにしても、シュトルツ様、強いですね」

「うん? わかる?」

試合が始まり、すでに二度、シュトルツ様と相手が交錯している。

しっかりとした一撃はどちらにも入っていないのに、力量差があることが覗える。

最初の突撃は相手の方が槍を突き出しやすい形であったのに、あっさりといなして、攻撃を受けることもなく、素早く馬を反転させていた。

そのまま追撃も出来そうだったけど、様子見。

次の相手の動きを待っていた。

二度目は、相手の攻撃が入る前に柄を引っ掛けるように、相手のバランスを崩させる動き。

これは相手が何とか耐えて、馬がいななき、少しバタバタするような状態にはなったけど落馬することはなかった。

「うむ。そんなに実力差があるのか?」

「多分ですけど。最初にいなされた時点で、相手も実力差はわかったはずですよ? でも、次も同じように工夫がない突撃だったので、当たる前に仕掛けられた。で、次はシュトルツ様が良い位置とりそうなので」

互いに馬をゆったりと走らせつつ、隙を窺っているけれど。

心理的にも、体力的にもシュトルツ様が優位。

さらに言えば、馬の方もだろう。

相手の馬は鼻息が荒くなっている上に、耳がすこし垂れてきている。

あとはカーブの曲がり方もどことなく足がもつれそうに見える。疲れが出始めているのに、シュトルツ様の方は元気そう。

「多分、次はシュトルツ様が決めると思います」

「そうだね。3回目で決めた方が、盛り上がるからね~」

その言葉通りにシュトルツ様は一撃で相手を落として決めていた。

しかも、危険が無いように気を使ったのか、落ち方も頭からとかではない。

衝突の威力もそこまでではなさそうだった。

「相手に合わせるなら、ツルギさんの時は歩兵でいくんですかね」

「そうなるんじゃない? まあ、二人の戦いは白熱してほしいけど。どうだろうね?」

「え? 何かあるんです?」

う~ん。

今日からは他国の使節団も見学しているから、何かあるのかもしれない。

いや、実際は前から他国の人もいたんだろうけど、今日からは公式で席が用意されてる。

そして、割とピリついてるように見えるんだよね。