軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-27.幻の素材

「ありがとうございました。とても有意義で助かりました」

「いや、君なら良いところまでいけるはずだ。応援している」

シュトルツ様は、私に二日ほど稽古をつけてくれた後、クヴェレ領へと帰っていった。ついでに、ツルギさんも連れていった。

二人ともキュアノエイデスに戻るのだろう。

多分、あの二人が優勝候補だろうな。

互いに、そこを意識しているのは感じた。

私はあと一歩どころか、数歩足りない。

牽制程度の魔法は二人には通じないし、大きく魔力を溜めるような隙は見逃してくれないだろう。勝ち目がない。

ただ、目標は1回戦突破なので、後は籤運次第といったところかな。

特訓が終わったので、王都へ行く前の準備に取り掛かる。

宰相から頼まれた、奇病の対策。

患者を直接確認してないから、想定でするしかないのだけどね。

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

「クロウ。前にカイア様に渡してた呪いの鑑定結果、詳細に覚えている?」

「覚えてる訳ないだろう。一瞬で読み取った内容はすべて鑑定書に表示されたのをそのまま渡した。関わってる人間が多く、こっちの身が持たないと判断したから、俺自身も内容を確認せずに関わらせるなと釘を刺したんだけどなぁ」

「だよね……こんなことになると思わなかった」

カイア様や王弟殿下が抑えてくれていたのに、私が自分で関わることにした。

そうなると呪いの詳細が知りたいと思ったが、覚えてないか。結構前だしね。

カイア様にあの内容を見せてほしいと言ったところで、処分しているだろう。あれをそのまま残していたら大問題になる。

「親のせいだろうと良い思いをしてきたんだ。報いを受けて当然だろう。あんたは相手の手口にすぐに引っかかるな」

「……ぐさぐさ刺さる」

「それで、魔法で治すのか?」

「それを求めてるとは思うけど……聖教国の司教が治せないって結果でてるから、身の破滅に繋がりそうで無理。薬師として依頼を受けたんだから、薬師として解決しないと……なので、薬の開発を手伝って」

カイア様の呪いは魔法で解いた。それはそれ。

宰相からの奇病という病の対策で、薬師に協力を求めている。

カイア様の呪いを解呪した魔法を期待されているのは理解しているけど、そこまでは約束してない。

「簡単に言うが、見通しがあるのか?」

「あるような、ないような? その確認がしたかったから、呪いの内容を聞いたんだけど」

「細かいことは全くだが、何が聞きたい?」

「呪いのレベルかな。ずっとバレないくらいだし、レベルが低いと感知できないようなのだったのかとか?」

呪いがアビリティなのかは不明だけど、そこら辺が気になっている。どうやら、聖魔法のレベルは司教でもそんなに高くはないようだしね。

「呪いにレベル? そんな表記はなかったと思うが。どうしてそう思ったんだ?」

「聖魔法7じゃないと解けない呪いだったと聞いた。そうすると、私か教皇様しかいないんだって、そのレベル」

「おい、最悪じゃないか。どうするんだ?」

アビリティや魔法も含め、1~3が初級、4~6が中級、7~9が上級。

上級でないと対処できない呪いの可能性がある。

ある程度、情報通だと私が解いたのはほぼバレているらしい。

魔法で治療なんてしたらさらに面倒事に発展する。

では、薬の場合はどうなるか。私と師匠の評価が上がる。

そもそも、属性付き素材って、上級薬師でないと扱いが難しい。

師匠の教えにより、私もクロウも……兄さんも上級にはなっている。

その上の超級にはまだ手が届かない。超級の薬を調合することはできるのだけど、調合レベルはまた別だからね。

「色々とあるけど、薬で何とかするしかないわけで……そのために協力をお願いしたい」

「はぁ……まあ、手伝うのは構わないが」

クロウなら鑑定、解析の精度が高い。正直、これを頼りに開発するしかない。

「聖魔法と同等の呪いを打ち消せる薬って作れると思ってるのか?」

「多分……ちょっと時間があったし、属性素材の研究はしていたんだけど、聖属性を自力で作成するのはまだ厳しい」

クロウの前に3つの瓶を置く。

火属性がついている水。錬金で作った属性は3段階。

「ふむ。属性の強さも素材によって違うが、それを付与の技術で生み出すのか……」

クロウが手に取って、光に透かして、小瓶を振ってみたりしている。

おそらく、鑑定もしているのだろう。

私は色の濃さでしか判断は出来ないが、クロウの検定結果によると、属性レベルが、2・5・7だという。

私が魔石に付与する強弱を制御して、属性レベルをコントロールできるようになれば、また研究が進むかもしれない。火魔法は7だからそれ以上強くはならないけどね。

私が鑑定しても、その結果が表示できないのでクロウ頼りになるけど。自分で確認できるようになれば進めやすいのだけど。

「これを聖属性でも作れるのか?」

「無理。これはあくまで、属性の強弱を魔物素材に依存しなくても付けられるようにして、緊急時の代替素材としての研究。元々呪いを解くとは関係ないけど、考えていただけ。上位属性については、まだ形になってない」

素材が無いから薬が作れない。結果、命を落とす。

それを防ぐための準備であって、聖属性でいきなり使うとか考えてなかったからね。

聖水もどきを作ろうとはしたけど、出来ていない。

「目的はわかった。こっちも研究が必要だが、先に、呪い対策だろう?」

「そう。呪い、属性は邪でいいんだよね? 打ち消すのは相克である聖」

「そこは間違いはない。……だが、呪いだろう? 薬でなんとかなるか? 俺はイメージがわかない」

「う~ん。症状を聞いた感じだと、症状は火傷みたいなんだよね。皮膚が爛れて、痛みを伴う。熱を持つようなこともあるみたいだけどね」

一応、宰相閣下から奇病の症状についてまとめた書類は預かっている。

持ち帰っていいと許可もあるので、そのままクロウに渡す。症状は一人分ではなく、30人以上の症例として書かれているから、それなりに信用できる。

関わった人数、多すぎるとは思うけどね。

「こっちの世界だと、火傷治しには水属性を含んだ薬もある。相性を考慮すると……可能性はある」

カイア様の呪いを聖魔法で治療しているから、聖属性は効果があるのは間違いがない。呪いと同じレベルの聖属性の素材を使って、薬を作るだけだ。

「あんたができると思ってるなら、できるんだろうけどな。聖属性の素材あったか?」

「ある。……貴重すぎるから、試薬は作れても、奇病にかかってる全員分なんて作成できないけどね。なんなら、値段も大変なことになる」

「貴重なら当然だろう。しかし……思いつかないな」

「一つだけ、条件に合致する素材……幻獣ユニコーンの角」

聖属性の代表格でありながら、貴重すぎて、素材に使うなんて考えないレベルの代物だったりする。

「あれか……婆様が厳重に管理していた。持っていることが知られると面倒って言ってなかったか?」

「そう。全ての状態異常や病に効果がある、幻の素材。貴重だし、レオニスさんでも30年冒険者やってたけど、ユニコーンには出会ったことがないって。聖属性を代表するどころか、ほんのちょっとの角の欠片ですら、豪邸が建つ高級素材」

師匠も使ったことが無い素材。これを欠片でも使うと数百万Gが飛んでいく。

住処がわかっているドラゴンの血よりもどこにいるか不明なユニコーンの角のほうが貴重だったりする。

まあ、レオニスさんが出会えなかった理由は男だからという可能性もあるけれど。それでもこれまで冒険者としてギルドに通っていても、目撃情報とか全くない。

本当に貴重な素材であり、薬師泣かせの素材とも聞いている。

「素材代が時価。試作品以外は、自前で素材を用意が前提だな」

「うん、師匠の遺産をこんなことに全部使いたくないからね」

全部使いきっても足りない。何かあった時の保険としても、使い切ることはしない。

だから、試薬品以外は材料持ち込みが条件。ここはしっかりとラズ様に伝え、事前通達しておいてもらうしかない。

「まず、ユニコーンの角、性能は間違いないけど、今回は呪いを緩和するという目的なら不要な効果もあるんだよね。このままだと、力が分散されて効果が発揮されにくい。病や状態異常の効果は抑え込みたい」

「なるほど。俺の役割は、解呪の効果を残したまま、薬を調合するための解析か」

「そうなるかな。……使い方すら不明だけど」

「角を削って、そのまま粉末で使えないのか?」

「……それも含めて全く、素材が未知過ぎるんだよね。師匠ももってるだけで取扱いしたことないって話だった」

「はぁ……やるか」

「とりあえず、素材の解析お願い。他にも、師匠が保管していた貴重素材、全部。」

「全部かぁ!?」

「私は師匠が遺した文献を漁る。急がないと、王都までの移動を考えると1か月くらいしかない」

ついでに私が聖属性を付与した真珠をいくつか渡しておく。液体には出来なかったけど、宝石に付与はできるからね。

真珠なら魔石よりは、人体に影響はないはず。これを属性素材として扱うかはまだ検討中。

真珠って、アコヤ貝だし、多分食べられるよねと考えるなら、人体にそこまでの影響はないはず。

薬の素材として、ユニコーンの角を使う前のお試しとしては使うことはできる。

渡されたクロウは呆れている。

「はぁ……どっちにしろ、こき使われるなら、工場勤務みたいに延々と流れ作業していた方が楽だなぁ」

「ツルギさんとこで、そんなに使われたの?」

「あっちも人使い荒いからなぁ……あんたのが面倒な作業が多いが」

面倒って、仕方ないと思うんだけどな。

私だって、好きで巻き込まれているわけじゃない。

「高価で手が出せないくらいの嫌がらせは構わんだろうしなぁ」

「ん? 何か言った?」

「いや。こういう作業があるなら、ツルギを帰すなとぼやいただけだ」

「あっちはあっちで忙しいんじゃない?」

無理にこっちに顔を出してるだけで、忙しいはずだ。

ナーガ君達がいない間、クロウの身辺警護をするくらいには気にしてるけど。

鑑定するための目が必要なだけで、作業は私がする。負担になるほどこき使う気はないはずなんだけどな。