軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-7.研究所設立

5日後。

クロウと共にキュアノエイデスについた。当初は一人で行くつもりだったけど、遠距離の単独行動は出来る限り控えるように言われてしまった。

1週間後が師匠の49日であることもあり、マーレスタットの方では、ちらほら見かけない冒険者とか、商人とか増えていることもあり警戒するという理由もある。

ラーナちゃんが納骨作業の参加者リストの数が100超えて、日に日に増えていると報告してきたので、ちょっと困っている。

本来、こちらの世界では火葬や納骨の度に集まることはなく、近親者のみで済ませる形らしいのだけど。貴族やらがこちらの接触の機会を窺っている感じだ。

冒険者の人達は近くに寄ったからと来ることがあり、立ち会えるならと言ってくる。

これはもう、長年マーレで救ってきた人達だし、希望があるなら構わないのだけど。

関係ない貴族達まで顔をだすのはやめてほしい。

離宮の応接室に案内され、クロウと一緒にお茶を飲みながら待っていると、ラズ様が顔をだした。

「おまたせ」

「やつれました?」

なんだか、げっそりしたラズ様が登場した。

目の下の隈もだけど、肌艶とか、髪の毛のへたり具合とか、全身が疲れを出している。

「慌ただしいからね。婆様の件で君たちのとこに行く日程も考慮すると、寝る時間削ってでも、進めないといけないからね」

移動中も馬車で作業をしていたとフォルさんから追加補足が入った。

これは、私の件で時間を作るのは難しそう。

「で、君の相談事だけど、どっちから聞きたい?」

「面倒事が少ない方で」

「そう。まず、シンザ大司教の件は許可が出た。父上から許可が出たよ。直接、君が薬を納品していいことになった。金額は指定するけどね」

「えっと?」

「時価で取引は駄目ってこと。値下げも値上げも許さない。それと、クレイン。作るにしても、受け取りは王宮でやるから。僕に納品するだけね」

「ああ、はい」

そこら辺の面倒なやり取りはやってもらえるならすごく助かる。

ラズ様の薬師として納品した形になるらしい。

「1週間後の挨拶は認めるけど、基本はその時のみね? どうしても君と会いたいという場合、王宮にて場を用意するから」

「……嫌です」

そんなやり取りはしたくない。勘弁してほしい。

他国のお偉いさんとの接触する機会は設けないでほしい。

「きみの判断通り、今の教皇には、生きていてもらわないと困るからね」

「次期教皇って……」

「そう。叔父上と仲が良かったファブロス枢機卿が一番有力。彼を追い落とすまでは、現教皇は生かす方針。そのために、直接、君が薬を作ることが良いと判断した」

「え?」

「同じ薬は作れても、君が関わることで事態が好転する可能性があるという判断だよ」

なにそれ?

別に、薬は誰が作っても同じだと思う。関わったから、何か変わるものでもないだろう。

「賢明だなぁ。俺らで見落とすことも、気付く可能性があるしなぁ」

「だよね。まあ、ここら辺は父上と兄上達からの指示で、僕は関与してないから」

それ、直感でどうにかなると思ってる?

そんなに便利な能力ではないんだけどな。

どちらにしろ、ラズ様の命令ではないので、拒否権も無い感じか。

「次ね。レシピと素材の件だけど、これ以上介入しないでいいよ。レカルストの方にも釘を刺しておく」

「いいんですか?」

「せっかく、不正をしていた証拠が出たから、薬師ギルドの力を削ぐって。各地域で足りなくなる薬については、全て王家の名で用意するから」

ああ。つまり、冒険者ギルドが不足している場合には王家に申請するようにという形を取って、不足はさせない。

でも、薬師ギルドのせいという印象にして、大人しくさせるのかな。

「それは私やクロウが作るんです?」

「そんなことしたら、君達が薬師ギルドから恨まれるでしょ」

介入しないというのは、本当に、一切関わらない。

調合をしなくていいらしい。

足りない分は王家が負担するということで、出番なし。

「その上で、王家が新しい薬師の組織を設立する」

「え?」

「薬師は素材が変われば、作り方も変わる。危険な薬を売り出せないように薬師ギルド主導でレシピ制度があったのに、薬師ギルド内部、支部とはいえギルド長の身内で不正が起きたからね。そもそも、薬師たちもレシピについて不勉強。まあ、貴族付きの薬師、ギルドの薬師、商人お抱え薬師、それぞれレシピを秘匿している部分もあるからね」

「まあ、そうですね」

「そうだなぁ」

わりと、ギルドと商人のとこの薬師は同じ物ばっかり作るだけで、幅広い薬の知識持ってない場合があるって、今回の件で知ったしね。

満遍なく、薬の知識を持っているという人は案外少ないらしい。

私やクロウもレシピがあれば作れるけど、知識が足りていないとは思っている。

「だから、研究機関作ることにした。王家が管理するけど、クレイン。君が許すなら、『メディシーア研究所』とするって」

「……それは、どうして?」

「研究資料として、パメラ婆様のレシピを基礎にする。王家には婆様のレシピが保管されてるからね。これだけで、婆様の研究結果により、すぐにでも成果が出る。くわえて、婆様の偉業がはっきりと国に記録されるでしょ?」

私の許可というのは、師匠のレシピを正式に国に寄贈する形になる。ここで金銭を発生させてしまうと、薬師ギルドから越権行為だと批判を受ける可能性があるため、無料という形にするらしい。

ただし、研究機関からレシピを持ち出す場合やそこから派生したレシピが出来た場合には、金銭が発生し、その何割かは私とクロウに戻すらしい。

レシピの権限は私とクロウに引き継がれているための処理らしい。

「発案はグラノスか?」

「まあ、そういうことだね。婆様の名を遺したいなら、この方が効果的。薬師ギルドが困ってるから、ほいほいとレシピを譲ろうとするべきじゃないって判断だね。運営については、表の代表は適当に立てるけど、裏でツルギがしっかりと見張るから、心配ないよ。クロウ、名前は気を付けるようにね」

「ああ、すまん。しかし、忙しいだろうに、よく思いついたな」

カイア様の方に報告した際にその場にいて、そこで提案をしたらしい。薬師ギルドを助けるくらいなら、別機関を用意するあたりが、彼らしいかもしれない。

「僕も賛成だよ。レカルストは家のお抱え薬師で、どうしても必要があったから薬師ギルド長にさせたけど、薬師ギルドとは別物だからね。王家の名も上がるし、名前が残る。二人とも、構わない?」

「はい。研究機関の方で、レシピを管理すると私達が使うのはどうなりますか?」

「レシピを寄贈しても、君達が使う分には自由。ただ、出来れば二人は、研究所の研究員としては名前を連ねてほしい。また、半年に1度の総会の参加と、研究成果があった場合にはお披露目するようにね」

それはちょっと面倒くさいような……。

「研究員はどれくらいの予定だぁ?」

「権威だけあって、薬を作らなくなってきた王宮薬師とか、研究好きな薬師で構成させるから、多くはならないと思うよ。上級を作れないなら話にならないからね」

「それはそうだなぁ」

「レシピを寄贈する部分でお金を発生させない分、研究結果で得た収入の一部についてはメディシーアに戻すことになる。損にはならないようにすると思うよ、ツルギが」

「あ、はい……」

そこは疑ってない。しかも、これで王家を盾にして師匠の偉業は後世まで伝わる。

「育成はしないのかぁ? この国の薬師の腕は、少々まずいと思うが」

「いずれは育成機関も考えてるよ。ツルギが1年で薬師になれるだけのカリキュラム用意するって。婆様のやり方を踏襲し、やる気のある奴ならいけるって言ってたけど。ただ、これについては数年は様子を見た上で、結果が出るようなら正式に採用する方向だね」

「なんか、この忙しい時期に、よくそんな話が詰められましたね」

「君がお人好しなことをすれば、利用しようとする輩が寄ってくるからね。事前排除するなら、権力側にいた方が色々とできる。それ目的で、兄上についたわけだしね」

「側にいなくてもできる守り方ってやつだなぁ」

二人からの視線がチクチクとささる。

目立たないように上手くやれと、言葉にしなくても伝わってきた。

「そういうことで、いい?」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、兄上から伝言ね。別件で頼みたいことがあるって」

ああ。

フォルさんからも話がいったのかな。

「ラズ様は気にしないです?」

「うん。兄上がツルギとネビアを連れて、納骨に参加するって話だから。その時に話をしたいらしい。君じゃないとって話だし、聖教国関連らしいから」

「は?」

ラズ様の元婚約者の件でなく?

だいたい、そんな余裕ある?

ラズ様も忙しいのに、カイア様までこっちに来て、聖教国関連っていうのが怖い。

薬を作るだけじゃないのか。

首を傾げるとラズ様からの苦笑が返ってきた。

「貴族関連なら、僕より兄上に任せた方がいいしね。聖教国の方も関わってくるなら猶更ね。君の相談をフォルから聞いた後、急遽決まったみたいだね。別口で話しておきたいこともあるらしいし」

「厄介事ですか?」

「多分ね」

ラズ様の後ろに控えているフォルさんに視線を送ると、こくりと頷かれた。

どうやら、別件もちゃんと動きがあるらしい。

「ちなみに、スタンピードについては、どうします?」

「そっちはまだ保留にしておいて。スタンピードよりも、帝国側の国境付近での流行り病の件にまわすかもしれない」

「あ、発生しちゃったんですか?」

「帝国でね。今は、国境付近にいた難民を労力が足りない地域や移住希望の地域に移して、新しく入ってきた人と区別して王国内で広がらないように警戒中」

やはり、死体放置による疫病発生は防げなかったらしい。

警告だけではどうしようもなかったようだ。

「共和国側からも、予防用に薬を求められているから、薬師ギルドが手に負えないと判断した場合は、君達に頼むことになる。冒険者として動くにしても、王都近辺か、国境に近い都市に送って、前線維持になる可能性が高いかな……冒険者ギルドとの交渉次第だけど」

「冒険者ギルドが派遣したい側って獣王国側のスタンピードですよね? あっちの方が魔物が厄介だとか」

「そう。最悪は、ナーガ達はそっちに送って、クレインは別行動だね。まだ、ぎりぎりまで様子をみるけど」

「わかりました」

戦力が欲しい地域と、病が発生する可能性がある地域が別なら、まあ、仕方ないのかな。クロウもやれやれという表情だけど、私側で動くつもりのようだ。

「それから、難民の一部、キュアノエイデスとマーレスタットの中間あたりで、新しい町を作るから」

「はぁ……えっと、関係あります?」

「うん。一応ね。君とグラノスが助けた帝国の民だから、メディシーアに恩義を感じて、こっちに移住してくる。別に関わる必要はないけど、記憶しておいて」

「……わかりました」

帝都にいた人達と、兄さんがスタンピードで救った人達の集団。知っておくだけで、特に手を出す必要はないらしい。

「とりあえず、兄上達に合わせて、開拓地の方には顔出すから。その前に貴族が顔を出すようなら、マーレにいるダミュロンが対応できるから。言質取られないように」

「わかりました」

ラズ様からの報告を受けたあと、帰路についた。

バタバタしていて、やることが多くなったけど、頑張ろう。