軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-1.素材不足

王都から帰ってきて3日目。

冒険者ギルドに顔を出した。

「マリィさん、こんにちは」

「クレインさん。何だか、お久しぶりですね」

「うっ、お世話になっているのになかなか顔を出せずにすみません」

「いえいえ、お忙しかったのも知っていますので……大変でしたね」

ドラゴンのところに行ったり、帝国へ行ったり、王都へ行ったり、何だかんだと1か月以上、ギルドに顔を出していなかった。

マリィさんとは、師匠の火葬の時に会っているけど、それでも3週間近く経過している。

「ありがとうございます。……クランリーダー変更の手続き、お願いしていいですか?」

「……はい、お任せください」

マリィさんはこくりと頷いて、死亡脱退届とクランのメンバー変更を手続きしてもらった。兄さんのことはすでに伝えてあったので、ある程度準備はしてくれていたらしい。

「……残念です。本当に」

「はい……すみません」

流石にマリィさんに全てを話すことも出来ない。そのまま、何も言わずに手続きをする。兄・グラノスは死んだ。グラノスをクランリーダーとしていたのを変更して、ナーガ君がリーダーになる。

「ナーガさんをリーダーにするのですね」

「あ、はい。戦闘能力はナーガ君が一番ですから。あと、私は遠出したりは中々難しいので」

これは色々と話し合いをした結果、冒険者としての活動をメインにするのが、ナーガ君とアルス君とレウス。ルストさんも参加すると言っている。

彼らのパーティーがメインパーティーということで決まった。

私は半農半士ではないけど、半薬師半冒険者……薬師の方がメインだけど、何かあるときにはしっかりと冒険者をやることは伝えている。

薬師として採取をするために冒険者として動くことはあるけれどね。

レウスがダンジョン巡りを希望していることもあって、冒険者らしい活動をするのはナーガ君のパーティーということで、話し合って決めた。

手続きは、兄さんの死亡手続きは私の方がスムーズということもあるのでやっているけどね。

「そうですね。ナーガさんがリーダーになるのも、良い判断だと思います。クランへの依頼を理由に、クレインさんに繋ぎを取ろうとすることもあり得ますからね」

貴族からの接触はラズ様経由ということにしても、抜け道を探る人はいるから仕方ない。

とりあえず、ナーガ君がリーダーだけど、私も補佐はする予定。

「マリィさん、兄さんが居なくなったことで、クランの評価下がります? もう少しで自由にキノコの森に入る許可も出るって話だったと思いますけど」

「いえ、問題はありません。正直に申し上げますと、ナーガさんアルスさんとレウスさんはA級相当の実力はあります。レベルもですけど、ステータスが高めなので問題はありません。実績が追い付いていないだけですから」

「アルス君はまだF級からの昇級も難しいですか?」

「アルスさんですが、来月の頭にD級に昇級が確定しました。ナーガさんとレウスさんも昇級を検討していますが……クレインさんはどうします?」

「えっと、私、選べるんですか?」

ナーガ君が昇級すると自由にキノコの森に入れるようになる。

今までは、私とクロウが薬素材の採取のためと申請すれば、多分、何とかしてくれそうだなとは思っていたけど、あまり特別扱いもしない方がいいと思い、行けなかった。素材がそれなりに備蓄あったのもあるけど。

しかし、私も冒険者等級を上げてくれるなら上げてほしいのだけど。何かあるのかな。

「はい。その、B級になりますと、ギルドからの指名クエストへの拒否が出来なくなるんですよ。スタンピードも強制参加です」

「えっと、構わないですけど?」

「薬師としてのお仕事で忙しくても、強制となりますよ?」

ああ、そういうことか。

薬師としてのお仕事が忙しいときに、冒険者活動は厳しいか? でも、私がやらなくてもクロウに任せられるとも思う。それに、ラズ様に事情を言っておけば、その時期に私に仕事を振らないようしてくれるだろう。

ただ、クロウに相談して、クロウは冒険者等級は上げ過ぎないようにお願いしようかな。

キノコの森に単独で行けるようにしておきたいところではあるから、B級になっておきたい。

「昇級、お願いできますか? 単独でもキノコの森に採取しに行きたいので」

「わかりました。では、手続きをしますね」

しかし、かなり早いペースでB級になっていて、いいのだろうか? まだ、漸く半年を越えたくらいなんだけどな。

「正直に言いますと、グラノスさんが帝国のA級ダンジョンを、ナーガさんが獣王国のB級ダンジョンをクリアしているので……そのお二方よりもスタンピードで戦果を挙げたクレインさんは、魔導士としては同等の評価でいいことにはなってます」

割と適当な評価らしい。魔導士としての評価なのか。

雷魔法を撃ち込んでいただけなのだけどね。

「マリィさんは何が気になっていたんでしょうか?」

「正直に言いますと、秋のスタンピードですね。まず、クレインさん、実力を隠すのが厳しくなります。また、クレインさんの派遣を希望する他の支部に行ってもらう可能性があります」

この地域、春のスタンピードが大変なだけで、秋は片手間で対処可能なため、スタンピードが厳しい地域への派遣がある。

紙の束には、私を名指しして派遣希望されていた。なんで? そんなに冒険者として名前を売ってはいないのだけど。

「えっと……なんで、こんなに要望あるんですか?」

「スタンピードでは、薬やポーションがないと厳しい地域もありますから」

春からマーレスタットの薬を私が用意していたことは、他支部にもバレているらしい。だけど、薬師ギルドから恨まれるから、そんなことできないと思うのだけど。

「全てではありませんが、もしもの場合を考慮するなら、クレインさんはどこも欲しがるんですよ」

「拒否権なしだから、どこかに派遣されるわけですね?」

「はい。そうなるかと……」

小さな村とかなら、ギルドとかも無いので、薬師とヒーラーどちらも欲しがるのか。まあ、私の派遣先については、ラズ様とギルド長が決めるだろう。多分。

「どちらにしろ、来月に入ってからとなります。その頃には、パメラ様の件も落ち着くと思いますので」

マリィさんには49日に納骨すると伝えてある。それが終わるまでは、派遣をすることはないと約束してくれた。

「お忙しい中、すみません。ありがとうございました」

「いえ、ナーガさんにもサインしてもらう書類がありますので、近いうちにお越しくださいとお伝えいただけますか」

手続きが完了したけど、ギルド内にいた先輩冒険者達にこいこいと手招きされてしまった。無視することも出来ないので、そちらに向かう。

「よお」

「すまんな」

「ジュードさん。ライさん。構わないですよ。不在の間、色々とお手数をお掛けしてますし。でも、どうしました?」

この二人がわざわざギルド内で呼び出すことに驚く。

どちらも週の半分くらいは開拓地の外の宿を利用するようになっている。ラーナちゃんが対応してくれているのだけど、本当に助かっている。

「俺じゃなくてライが用があるっていうからな、立ち合いだ」

「俺は安全な宿が近くにあって随分と楽をさせてもらっているから、あれくらいはやらせてくれ。ちょっと頼みがあってな」

ジュードさんはパーティーメンバーと一緒に、国境付近を滞在することが多くなっているため、最近は宿を利用。帝国側から入ってきた場合の密入国の取り締まり。だいぶ落ち着いたとはいえ、全くないわけでもないため、今は冒険者が担っている。

ライさんは、最近はソロとして活動を始め、等級も上がったらしいとは聞いている。パーティー壊滅後、色々とお誘いはあったけどしばらくはソロでフリーをするらしい。

今は一人と一匹で、キノコの森ダンジョンを攻略中と聞いている。

「酒飲みに行くぞ」

「いや、流石に真っ昼間からは駄目です。ほら、マリィさんも睨んでますよ」

「ちっ……少し話をしたくてな」

「マリィさん、部屋をお借りできます?」

「はい、いいですよ。ジュードさん、お気をつけくださいね?」

「……おう」

ギルドの部屋を借りて、話をすることになった。

冒険者同士が情報交換する場合、酒場で行うことが多いけど、流石に昼間からはない。

「それで、話ってなんでしょうか?」

「すまない。シュパルゲルの茎、採取できる場所を知ってたら教えてくれ」

「え? シュパルゲルの茎ですか? 西の丘で採取できる場所、レオニスさんから教えてもらいましたけど。他は開拓地でも採れますけど……採取したばかりで、新しいのを採取するにはまだ時間かかります」

「あ、西の丘は俺らも聞いてるな」

シュパルゲルの茎は、アスパラガスに近い種類の薬草。冬の寒い時期は冬眠するけれど、春から秋はずっと採取できる。ただ、同じ場所にずっと生えるので、生えている場所を探さないといけない。

話を聞くと、素材不足らしい。

1の月中旬からずっと、納品していた薬を、薬師ギルドの方に戻した。そこで、冒険者ギルドに素材の納品依頼があって、対応しているのが、ライさん。でも、量が多すぎて、対応できなくなり、ジュードさんも採取に駆り出されるようになったらしい。

「そんなに納品量が増えたんです?」

「ああ。薬師ギルドが言うには、そもそもが慣れた薬師が対応していたからミスもないため、納品量を少なくても対応できていたらしい。今の担当はどうも失敗することも多く、前の倍近い量の納品を求められて……依頼を受けたんだけど、上手くいかなくてな」

冒険者ギルドの方でも、念のため、調合記録を見せてもらったらしいが、使用量を水増ししているということも無い。

ライさんとしては、ここで薬師ギルドとの繋がりを改めて作り、前ギルド長との件を無かったことにしたかったらしい。しかし、素材がないと。

「で、この前までお前が納品してただろ? 採取できる場所を知ってると思ってな」

「ああ……そういうことですか」

「もしくは、おチビが無理な採取して採れなくしたっていう疑惑も湧いてるぞ」

「ひどいです、それ……薬師ですよ? 素材がないと作れないのに、なんで素材を潰すようなことをするんですか」

ジュードさんの話をまとめると、実際に駆り出されると採れる場所が極端に少ないため、前に採っていた冒険者は誰だという話になったのだろう。

なんだかんだで、半年は私が納品していたから、疑惑が私に来るのもわかるけど……使わないんだよね。

「ん? あ、いや、ちょっと待ってください」

私はシュパルゲルの茎を使ってない。師匠がこの土地に合った素材で作れるアレンジレシピを使っている。

「ジュードさん。その調合記録って、確認できます?」

「俺らは見せてもらってないが、ギルド長に頼めばいいんじゃないか? なんかわかるのか?」

「多分? 見てみないとわからないですけど」

私が場所を把握していない根本的な理由として、私、シュパルゲルの茎を使っての調合をしていない。師匠から受け継いだレシピでは代替素材で作れてしまうので、採取が面倒なシュパルゲルの茎は、1、2回はお試しで作ったことがあるくらい。他の薬でも、研究用にしか使ってないんだよね。

ジュードさんがギルド長を呼びに行ったので、ライさんと二人になる。

「ソロ、大変じゃないですか?」

「それを言うのはおかしいだろ。俺がソロになろうと思ったのは先にやってる後輩がいたからだ」

いや、私は結局ソロでの活動はあまりしていない。レウス達を拾って以降は、近場に一人で採取に行くことはあっても、基本的にはパーティーで行動している。

「冒険者を辞める気はなかったが、クランもパーティーもこりごりだったからな。やってみると悪くなかったし、相棒も出来たからな」

ライさんはずっと横にウルフの魔物を連れている。私もモモを連れているので、似たようなものだけど。ソロになって、相棒としてテイムをした魔物と一緒に行動しているらしい。

「こいつに新しい採取場所とかも見つけてもらったんだが、それでも数がな。採取したばかりの場所もあったり、頼まれた量が確保できなくてな」

「あれ、優秀な素材なんですよ。そうでなくても、美味しいので普通に食べたりとかもいいですよ」

「食べんのかよ!」

採れたてのシュパルゲルの茎を食べると美味しい。師匠が教えてくれた。別の素材で調合できるなら食べちゃってもいいと思ってる。

「いや、開拓地の中にも採取できる場所はあって……でも、昨夜、食べちゃったんですよ。足りなくなってるなんて知らなかったので」

「ほぉ……嬢ちゃん、儂にも説明してくれんか?」

やばい。聞かれていた。

ギルド長が笑顔だけど、怒っている。

「いや、不可抗力でして」

「おい。素材が無い理由が、おチビが食べたせいだったら、マジで問題だからな」

「ジュードさん。だから、ちゃんと解決策も用意しますよ……ギルド長、記録見せてください」

「さて、これが薬師ギルドから提出された調合記録じゃな。特に問題はないようじゃが」

「あ、はい……ちなみに、前薬師ギルド長の時には、この記録とかもらってます?」

「いや、そちらはない」

やっぱりか。成功率が下がってるのも含め、多分……今までと作っているレシピが違うので確定かな。

それでも……中級中のレシピを失敗率6割は多すぎじゃないかなと思うけど。レカルスト様、新人教育していないのかな。

「なんぞ、わかるかのう?」

「事情はわかりました。ただ、説明するにしても、こちらでも準備をしたいので、明後日以降、レカルスト様も含めて、ギルド長と話し合いの場が欲しいです」

「あ~、シュパルゲルの茎はこれ以上はいらないか?」

ライさんはわりと困っていたらしい。

色々と聞き込みして探していたんだという。昨夜、ベーコンと一緒に炒めて食べてしまい、申し訳ないことをした。

「どうでしょう? 単純な話ではあるんですけど……」

「お嬢ちゃん。大まかでいいから、説明を頼む」

「薬のレシピって、アレンジが結構ありまして……この記録を見る限り、レカルスト様は〈気付け薬〉を共通規格のレシピで作っています。シュパルゲルの茎は、わりとどこでも採取できるため、〈気付け薬〉には5本使って調合するのが一般的です。これが間違いではないんですけど……師匠のアレンジレシピは1本も使わずに調合可能だったりします。さらに言えば、クリスティーナ・ハンバードもアレンジレシピの登録してるはずなんですよね」

先代薬師ギルド長の妻であり、かつて師匠の弟子だったというクリスティーナ。現在、行方不明? 町から出ていったけど、実家も潰されてるので、何処に行ったかはわからない。

ただ、それとレシピの話は別だろう。本人がいないからレシピを取り消されるとかはない。

私はアレンジした内容を把握していないけど、師匠が持っていたはずだ。

おそらく、師匠と同様に、この地域であれば容易に手に入る素材、安いし、冬でも手に入るものを使っているだろう。

そして、多分……正規のレシピでの素材を貰い、一部は違う素材を代用して、素材額を浮かせて懐にいれていたかな。今更、あの人達が不正をしていても驚かない。

とりあえず、薬師側でわかる資料を用意して話をしたい。多分、話が通りやすいため、その準備をする時間をもらう。

「ライさん。お願いがあるんですけど、いいですか?」

「お? なんだ?」

「キノコの森で、シイマッシュ茸の採取をお願いできますか? まだ、一人で行けないので、出来れば50本くらい欲しいです。ついでに、カージェ茸もありましたら、それもお願いしたいんですけど」

どちらも、キノコの森の低層階で入手可能なキノコ。

無理なら、マーレの市場に行けば売っている。ただ、市場の物より新鮮な方がいいだろうから、お願いできるならその方がいい。

お金については、私の依頼にするのか、ギルドの依頼にするのか……ちらっとギルド長を見たら、頷いてライさんに金額を提示している。少し高めに納品依頼を出すことになった。

「おチビ、まだ、キノコの森に入れないのか?」

「いや、マリィさんが昇級手続き進めてくれるので、そのうち入れますけど……どちらにしろ、準備があるので今回はお願いできますか?」

とりあえず、もしかしたら、私が使っているレシピを使う可能性もあるので、必要となる素材だけでも用意した方がよさそう。

「お嬢ちゃん、時間はどれくらい必要かのう?」

「……できれば、2日は欲しいです」

「では、3日後じゃな。時間は追って連絡しよう」

私の方で準備するなら、詳細は後でいいらしい。

信用はしてくれているみたいだ。

「わかりました。ライさん。すみませんが、採取をお願いします」

「ああ、3日後に必要なんだよな? 採ってくるから任せとけ。しかし、キノコの森にいけばいくらでも手に入る素材だぞ?」

「はい。だからこそ、この地に根差した薬師なら、そちらを使うんです。逆に他の地域では、素材入手がそこまで安定しないので、この地限定ですね」

キノコの森ダンジョンしかないわけじゃない。ただ、他の地域で野生のキノコの中から探すのは結構大変。

だからこそ、他地域の薬師には見向きもされない素材。実は、キノコは干しておけばそれなりに日持ちするから、素材に使えば優秀なんだけどね。これは薬素材よりも食用として流通しているしね。

「マリィに用意させるから、他の素材についても共通規格とアレンジレシピの素材の差異をまとめてくれるかの」

「すぐは無理です」

「話し合いの後で構わんよ。色々と不正があるなら是正が必要じゃからな」

まあ、それならいいか。

互いの落としどころもしっかりと話し合うのだろう。

「ゆっくりできんな」

「そうですね」

王都から帰ってきて早々だからね。流石に、薬師ギルドとの関係は改善する方向で動いてるから、また依頼を奪うということはしたくない。何とかするしかないんだけど。

ただ、ちょっと面倒そうな気がするんだよね。