軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5ー21.西ルート(1)

翌日、各自の判断で出発することになった。最初に動いたのは兄さんだったけど、レウス達もすぐに出るみたいだった。

私とナーガ君はオリーブに乗って川を移動する。ただ、浅い川ではオリーブが元の姿になるのが難しいため、川が深くなるところまではサンフジとコウギョクに乗って移動することになった。

この二匹はシマオウよりも体格が小さく、さらに細身のため、ちょっと乗り心地が悪い。一人で乗る分には問題はないのだけど……膝に乗っているモモが動くと危ない。

「にゃ~」

「モモ、じっとしてて。バランス崩すから」

「……大丈夫か?」

「うん、ちょっとモモが飽きてきたみたいで」

移動を始めてから、4時間。一度、昼休憩をして、再出発をしたのだけど、モモが膝で遊び始めてしまった。

モモは戦力外で、開拓地に置いていくつもりだったのだけど、私から離れなかった。最近は師匠の近くで丸まっていることが多かったのだけど、出発の準備しているところで留守番と伝えたら離れなくなってしまった。

コウギョクに乗っている私がモモを抱えている状態。モモが動くたびに私も重心がずれるため、多分、コウギョクも走りにくいのか困っている様子だ。

私も結構腕が疲れてきたけど、モモに自分で走らせると遅くなる。

「はぁ……師匠が心配だから残ってほしかったんだけどね」

「な~」

「……あんたのが心配だと」

「戦闘になった場合、フードに入らなくなったから、庇うの大変になるよ?」

「……ああ」

ナーガ君が守るというのであれば、文句は言わない。十分、モモを守れる実力はある。心配なのは、ナーガ君の中にいる光焔というドラゴン。

どうも、ナーガ君が体を乗っ取られることがあるんだよね。前と違い、敵意はないし、ナーガ君も話をしたいから交代したというので、ちゃんと意思疎通できているらしいけど。

「…………こい」

「にゃあ!」

大人しくしないモモに対し、ナーガ君が手を伸ばす。モモは嬉しそうにナーガ君の膝に移動した。

少し軽くなった。モモは楽しそうにナーガ君の肩に乗ってはしゃいでいる。最近、私は重くなったから肩には乗せてないからね。ただ、落ちても困るので……大人しくするように言い聞かせる。

「猫って、水嫌いだと思うんだけどね……今からこの調子だと、川を遡る間、大人しく出来るかな?」

「……駄目なら、コウギョク達と一緒に帰すしかないだろう」

「にゃ、にゃ!」

モモは帰るつもりはないらしい。抗議の声をあげている。だけど、邪魔をするなら置いていくということを覚えさせないとだめだろう。

「オリーブに乗って落ちた場合、怪我じゃすまないよね」

「……溺れるだろうな」

モモは反省したのか、怖くなったのか……少し大人しくなった。

「ごめんね、コウギョク。もう少し頑張ってね」

「ぐる~」

この二頭は個人主義であまり姿を現してくれないのだけど、たまに嬉しそうに牧舎の屋根でくつろいでいたりする。

放し飼いのため、寝るとき以外は小屋にいる方が少ないけれどね。

3度の休憩を挟んで、外は真っ暗になった。

川の深さもそれなりに深くなってきたので、明朝からはオリーブでの移動ができそう。

「ここまで、ありがとう」

「ぐる~」

コウギョクを労い、ブラッシングをする。

普段はあまり近づいてこないのだけど、今日は大人しく受け入れてくれている。

「……順調か」

「移動は気にすることもないからね。サンフジとコウギョクの頑張りで、明日からはオリーブでいけるから。帰りがちょっと困ってるけどね」

「ぐる~」

「大丈夫だよ。帰りは歩いてくから、コウギョク達は帰っていいよ」

心配そうに喉を鳴らすコウギョクの頭を撫でる。

この場で待っててもらうには、不確定要素が大きい。そんなに攻撃力がある魔物でもないし、元々いた地形からは離れている。

「二週間近く、ここで待つのも大変だから。コウギョク達がここら辺の魔物に負けるとは思わないけど、生態系が違うから餌がない。帰ってクロウにご飯もらうんだよ」

「ぐる~」

「にゃ、にゃ~」

「ぐぅうう~」

「な~」

モモがコウギョクと話をしているが、何を言っているかわからない。

ちらりとナーガ君に視線を送るが、首をふられた。

「……俺もわからない」

「だよね。モモ、我儘言っちゃだめだよ」

「にゃん」

モモが困らせているようなので、注意するとぴょんと肩に飛び乗ってきた。

コウギョク達は話がついたのか、ゆったりと座って毛づくろいを始めてる。

「モモ、大きくなったんだから、それはやめて」

「にゅ?」

重くなったんだよ。本当に。

さらに大きくなることもわかっているので、そろそろ躾をしないとまずい。

「……駄目だ。か弱いんだ……」

「いや、それはないよ」

ナーガ君がか弱いというが、別にか弱くはない。

ただ、前の大きさのつもりで乗られると押しつぶされるだけだ。

「モモ、大きくなったから、乗ろうとしちゃだめ。他の仔達も乗ろうとしないでしょ? 膝においでと言われたときだけ。準備してないのに飛び乗るのも駄目」

「……グラノスや俺を基準にするな。俺達はびくともしないが、危ないことだ……」

モモに言い聞かせ、納得したらしい。

膝の近くに寄ってきて、頭を下げている。

「おいで」

「にゃん!」

許可をすると嬉しそうに膝に乗ってきた。

「いい子だから、明日からも大人しくしててね」

「にゃん!」

一晩野宿をして、明け方に、サンフジとコウギョクと別れて出発した。二頭にはしっかりと餌を与えた。帰ってからは、クロウが餌を与えてくれるはずだ。

二匹に別れを告げ、オリーブが本来の姿になって、その背に乗せてもらう。

簡易な鞍をオリーブに取り付けさせてもらい、座った状態で滑り落ちないようにしたけど、モモは抱えておくしかない。

モモは水が近いことに怯えているけど、ナーガ君がしっかりと膝で抱えて安定したのか、落ち着いた。

最初だけ……すぐに騒がしくなった。

「う~ん、思ったよりも水しぶきがすごい……」

「……ああ」

大河に合流するまでは川を下り、大河からは逆流して進んでいく予定だったけど……移動を開始して30分も経たずに、服はびちょびちょで濡れ鼠となってしまった。

モモが定期的に抗議の鳴き声を上げているけど、どうしようもない。

「……乾かせないか?」

「乾かせるけど……どうせ濡れるから意味ないかな」

魔法を使って乾かしても、移動してれば水しぶきで濡れる。ただ、それで体温を奪われて風邪ひいてしまっても困る。

「う~ん。私が風魔法で水を弾き飛ばす? ちょっとまって、やってみるから」

「……ああ」

火魔法では意味がないし、土では前が見えなくなってしまう。何もないとは思うけど、前方確認できないでは困ってしまうので、ここは風魔法だろう。

う~ん、風で水を近づかせないことはできるとは思うけど……ずっと、出力を出し続けることになるのはちょっと……いや、でも、危険はないかな。

「風〈ウィンド〉……うん、少しは防げるかな。これなら、壁を作る……でも、土壁とかと違って、風を留めるってイメージわかないな」

檻だと、中を攻撃しちゃうし……う~ん。

とりあえず、イメージでやってみるか。球体みたいに周囲を風魔法で覆って、循環させながら水をはじけばいい。

「風の円屋根〈ウィンドドーム〉……うん、こんな感じか」

私とナーガ君の周りを風がぐるぐると回りながら水を弾いている。

うまくいったらしい。多少、音が聞き取り辛く、ちょっと前が見え辛い。それでも、水の被害がないだけましだろう。

「乾燥〈ドライ〉」

自分とナーガ君の服を乾かす。とりあえず、このまま進んでいくしかない。

「……どれくらい消費する?」

「まあ、それなりに……大滝まで行ったら、休憩を挟んで回復してから乗り込めば平気かな」

風邪を引いたり、体調不良を起こすくらいなら、多少のMPは仕方ないと思う。

移動中MPを使い続けるので、ポーションは用意しておくけど。

「道中は戦闘にはならないから平気だよ」

「……道中か」

流石に、大滝から先は戦闘がある。それは確定している。

道中、オリーブを見かけた冒険者が攻撃を仕掛けてくる可能性はないわけではないけど……水の中を移動するオリーブについてこれるはずがないからね。多分、なんとかなるだろう。

「……戦闘になるのか?」

「なる、と思う」

相手がドラゴンかは不明。ただ、戦闘にはなる。

そんな気はしている。

「ある程度、ドラゴンに対して実力を見せる必要がある。それと……できれば、ドラゴンの血が欲しい」

「……本気か?」

「いや、無理かなぁ……でも、出来れば……師匠の薬、作ろうと思ってる」

「……そうか」

相手はドラゴンだから、危険なのは承知している。

師匠の症状が良くなる可能性が低いこともわかってる。それでも可能性があるなら……試してみたい。

「……どうしてもか?」

「師匠に……祝福をかけてるんだけど……天使の力を失えば、それも消える。今よりも悪化するかもしれない」

「……」

ナーガ君がこくりと頷く。

危険があるとしても、出来ることなら手に入れたい。

「……研究、できたのか?」

「一応……まあ、古文書みたいになってたから、正しい素材は判明してないんだけど……元となるのが、ドラゴンの血だから、その効能のうち、毒となる部分を消す。強すぎる効能を弱めて、長く効果が出るようにした」

本来の霊薬・ドラッヘンからは違う物になってる可能性は大きい。ただ、それでも効果はあると思う。

「……わかった。血を手に入れるんだな」

「危険だよ? 本当にいいの?」

「……あんたなら大丈夫だろう」

ナーガ君の信頼が厚い。ドラゴンに戦いを挑むと言っているのに、本気で大丈夫だと信じているらしい。

「……うん。無理はしない。やることをやって、無事に帰るよ」

ドラゴン相手であっても……生き残れるだけ、強くなったからね。

師匠のために、ドラゴンの血を手に入れる。