軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5-5.後始末

ジュードさん達に帝国で奴隷にした4人を売ることになって、彼らは翌日朝にここを去っていった。

ラウネンさんはずっと俯いていたが、彼のせいであることはおそらく4人でも共有しているのだろう。

ピュール君は「何で! 嫌だ!」と泣きそうになって、ラウネンさんを責めていたけど、他3人は諦めた表情だった。連帯責任であり、誰か一人を残すことは出来ないし、それを理解していた。

「面倒事は去ったかぁ……」

4人を見送っていたけど、横にいたクロウがやれやれと口を開いた。

「クロウはあの人達のこと覚えてたの?」

「覚えてると思うか? あっちだって、俺らを覚えてない。ルストだけ目立っていたからだろう。異様な光景だったからな」

ルストさんが首謀者というのは、隠せないか……。

今後は帝国側の人は受けいれないことをラズ様には伝えておこう。

「止めなかったんだ?」

「1000人近くいる異邦人の中で、顔見知りな奴ってだけだからなぁ……」

クロウが彼のことを調べたのは反乱が起きてからだったらしい。それでも一緒に脱出するくらいだから、ルストさんをそれなりに気に入っていたのだろう。

彼ら4人とは関わりを持とうとせず、表面上の付き合いのまま、彼らに一切の情を向けなかった。

「ルストに王国に行くことを薦められて、こっちにきて、あんたに救われたからなぁ」

なるほど。ルストさんと別れたあと、王国に来た理由はそれか。

ルストさんがそもそも王国から帝国に渡った人だもんね。

「さて、面倒だが仕事するかぁ」

クロウが手をひらひらさせて、建築現場の方へと向かった。同じ方向からルストさんがこちらに向かってきているのが見えた。

クロウはルストさんに気付いたから、話を打ち切ったかな。

「聞いても、いいかな?」

「ルストさん。いいですよ、答えられることならですけど」

「セティコ達のこと、みんなで情報を共有することはしないの?」

彼らが出て行ったことに、困惑した表情をしている。

彼らが馴染めずに追い出される要因が自分であるのはわかっているようだ。

「あ~、えっと、そうですね……知りたかったです?」

彼らは、昨日まででとりあえずの建築の目途が立ったということで、冒険者が本業に戻るついでに彼らを連れて行った。

何か問題を起こしたとか、そういうことは一切説明していない。

ここにはまだ大工さんとか、私たち以外にも人がいる。何があったのかを説明するのが難しいという理由もあった。

ただ、ルストさんから見れば、朝起きて、彼らは去った。それについての説明は何もされていないでは不満があったのかもしれない。

「少し、外を歩きましょうか」

流石に大工さん達も通るような場所で何があったかを話すわけにはいかない。他の人が聞けない場所まで移動する。

ティガさん対策なら部屋とか遮蔽物があった方がいいけど……ルストさんが相手だし、盗み聞きしてても問題ない。

「どこから話しましょうか」

「う~ん。どうなのかな……なんで、みんな気にならないのかが、不思議でね。それとも、僕の知らないところで共有しているの?」

たぶん、ティガさんは把握している。聞こえているだろうなと思っている。今朝もこちらを困った表情で見ていたので、口に出すか悩みつつも自身の判断で止めたのだと思う。

兄さんは酔い潰れていたことでちょっと気まずいのか何も言ってこない。朝、肩を組んで何か言われていたのを見たから、多分、ジュードさんとレオニスさんから聞いているはず。

兄さんの管轄なのに、私が勝手に売り払う判断をした状態だから、文句言われる覚悟もしていたけど、何もなかった。

ルナさん達には私が視線を送ったらルナさんが首を振っていたので、聞きたくないのだと判断した。

ルナさん、彼らのことすごく苦手にしていて、近付かなかったからね。リュンヌさんはそれに頷いていたので、興味ないのかルナさんに合わせてるのか不明。

「きちんと共有はしてないですね。各自で知る機会を得ていたり、関わるつもりが無かったんだと思います。知りたかったのであれば、すみませんでした」

「ああ、ごめん。知りたいわけじゃないんだけどね」

「えっと、どうしたいんでしょう?」

知りたくて声をかけたわけではないのか。

ただ、結構面倒なんだよね。なんで、彼らを追い出した事情を知っているのかとなると、ユニークスキルの説明をしないといけないわけで……共有していないんだよね、各自の能力。

「う~ん。どうしたいか、悩んでいるんだよね、ぼくも……その、個人主義という感じでもないと思うのだけど、なんでかなって、疑問なんだよね?」

「そうですか……まず、事情を話しますね。ラウネンさんから話がありましたが、彼の提案を断ったとき、暴力に訴えようとしました」

「えっと……あなたに?」

ルストさんが、「正気かよ」みたいな顔をした。驚きつつも呆れた顔。この人でもこんな顔するんだなと思うと同時に、私をなんだと思っているのか、ちょっと気になった。

彼らより私の方が実力が上なんだけど、彼らはわからなかった。ルストさんはわかっているということなのだろう。

「まあ、見た目は弱そうなんでそのまま受け取ったんだと思います……それでですね、犯罪奴隷が主に暴力振るうのはアウトです。即刻処分をすることになります」

この処分については、手放す以外にも、殺害という最終手段も含まれる。

殺すくらいなら信頼できる人に預けられたのは悪いことじゃないと割り切ることにした。

「ぼくを追い出すことは考えなかった? あなたは……ぼくのせいで死にかけたよね?」

「……そうですね。まあ、それはそれというか……ルストさんの意思で殺そうとしたわけじゃないので」

「そっか。……ぼくは悪いことしたなって思ってるよ」

「なんか、すごく軽く聞こえますけど……わかっています。心配してくれていたということも聞いています」

主にレウスから、悪い奴じゃないという説明とかも、色々聞いている。

ティガさんがルストさんを庇いたいように、レウスも庇っていた。二人とも「本人の態度があれだけど反省している」という主張なので、ちょっと天然入ってるだけなのだろう。

「正直、私はルストさんが分からないです。でも、敵対するなら近くで見張っていた方が労力使わない。協力して欲しいこともある……どちらが大事という話になると、残す方は決まっているんです」

私は文句ばかり言う態度が悪い人を必要としない。

申し訳ないけど、ドラゴンとの話し合いのために、ルストさんは必要……多分ね。

「そうそう。セティコ達もな、不満が出た時点で置いておく気はなくなったからな」

「兄さん」

気配を消して兄さんが追いかけてきていた。少し遠くから話を聞いていたのか、内容の説明をしなくてもわかっているようだ。

「ねぇ、どうして、彼らを連れてきたの?」

「飢えて死にかけていたのが辛い気持ちは理解できた。帝国での証言も欲しかったし、どうせ死ぬくらいなら、連れてきてもいいと思った。……だが、その後、自分は何もしていないのに羨んで、和を乱すなら置いておけない」

兄さんの声が一瞬低くなった。覚悟が決まっている声がする。

「こっちが必要な証言はすでにとれている。死に物狂いで働いて信頼を勝ち取れと言ったが実践しなかったのはあっちだ」

兄さんは最初から、無理だろうと思いながらも連れてきたんだ。

そして、今……兄さんがばっさりと切り捨ててしまった。

気まずそうにしていたのは、私が引き金を引くことになってしまったからか……。

「ねぇ、ぼくはいいの?」

「君が時空の狭間を塞ぐ協力をしないなら追い出すと思うが……やる気はあるんだろう? それに、農業の方もやってくれている……不満があれば聞くが?」

「うん。特にないかな」

「妹に手を出したら追い出すからそのつもりでな」

「わかったよ」

なんだろう? 今、一瞬聞いたことないようなドスの利いた声で凄んでいたような気がする。

でも、さらっとルストさんが流しているから、気のせいだった?

その後は何事もなく、さらに二週間経過した。

だいぶ開発地が整ってきた。各自の住む家も出来たし、作業場も完成した。畑も出来て作物を育て始めているし、田んぼも水を張って、もう少ししたら田植えをする。

当初予定のあった牧場もしっかりと小屋が出来て、兎達が自由に過ごしている。ついでに、ヤギ型の魔物であるシェーベルと鶏が野生化しているヤコッコも捕まえて飼い始めた。ミルクと卵が目的。

スフィノ君が面倒を見てくれているけど、テイムするには数が多すぎるらしい。

それでもこちらに逆らったりしないし、問題は起きていない。

あとは、野生の魔物が襲ってこないようにすること。小屋から出す場合には、クロウとか私が見張りについていたりもする。もう少し自由に過ごさせたいのだけど、なかなか難しい。

シマオウが帰ってきて、縄張りにしてくれたら近づいてこないと思うのだけどね。

大工さん達は南門の外の迎賓館と宿屋をメインに建築し始めている。もっとも、この建物については時間がかかると思われる。

下手な建物にすると侮られ、煩わしいことになる。複雑にすると掃除が大変。

時間がかかってもいいから、丁寧に見栄えの良い物をということになっている。横の宿屋は大工さん達の寝泊りの場として活用されているけど、もう一棟ないと冒険者の人達が泊まれない。

ただ、そこの管理まですると手が回らないこともあって、どうしようか検討している。

「師匠。住み心地はどうですか?」

「悪くないね。町の煩わしさから解放されて、好きなことができるさね。不満はないよ」

「足りない物があったら言ってくださいね?」

「そうだねぇ……多少、野菜が足りなそうだね」

それは兄さんも言ってたな。

いや、肉体仕事だから大工さん達も肉のが良く食べるのだけどね。人数もそれなりにいるので、食料については買い込んでおく必要があるのだけど……。

「レオニスさん、肉ばかり買い込んでますよね」

「あれもいい歳をしているくせに肉ばかりと……頼んだものは買ってくるだけましだけどね」

レオニスさんは、ジュードさん達と帰ったはずなのに、何故か、毎日、この開拓地からマーレに通うようになっている。そのための専用の馬も飼い始めた。

徒歩だとマーレまで5時間以上かかるのだけど、馬での移動では1時間強くらいらしい。でも、行きと帰りで別の馬を使っているくらいなので、それなりに負担がある距離だとは思うんだけどね。

雨とかで土がぬかるんだりするともっと時間もかかるようだけど……師匠が心配でこっちに住むらしい。

レオニスさんの部屋も私達と同じ家に用意する予定だったけど、例の4人用に作っていた家が空くので、そこで暮らすことにしたという。

「クレインちゃんやパメラ様のお願いは聞いているだけで、私の頼んだものは後回しにしているのよね」

「ディアナさん……えっと……」

「ふふっ、別に気にしてないわよ? 一人で家にいるくらいなら、にぎやかな方が楽しいもの」

うん。ディアナさんもこっちに引っ越してきちゃったんだよね。

何もないところでいいのかなと思うけど、農業とか動物の世話を手伝ってくれているのですごく助かっている。

「良かったんですか?」

「ええ。引退したって言うのに、お誘いが多かったのよ。だから、パメラ様と一緒にこちらに引きこもるのも悪くないと思ってね。せっかくだから、のんびり田舎暮らしを楽しむわ」

ディアナさんは医療の心得もあるので、師匠のこととかすごく助かるので、移住してくれたのは嬉しい。レオニスさんが通勤が大変だとは思うけど……。

ちなみに私たちの移動はスフィノ君に頼んで、兎を借りている。兎での移動になれてしまったので、馬でなくていいやと思っている。ふかふかな毛で触り心地もいいからね。

乗り心地は……可もなく不可もなく。馬やシマオウに比べると揺れが上下に大きいから、人によっては嫌かもしれない。

兄さんはチリという名のライオンのような魔物に乗って出かけることが多い。帝国で捕まえたファーコレオネという魔物で、兄さんが名前をつけた。

8頭の群れのリーダーがチリ。他の仔達は名前はペッパー、チンピ、ショウガ、シソ、ケシ、小さい二頭がクロゴマ、シロゴマ。

ファーコレオネの炎の色合いが七味唐辛子に似ているという理由らしい。

ただ、モモは兄さんを取られたと思っているのか、チリを威嚇していることが多い。

チリは気にしていないし、兄さんはそんなモモを甘やかしているので、問題は起きていないけど……モモも早く大きくなりたいのか、最近は勝手に開拓地を抜け出して、一匹で狩りに抜け出したりもする。

まだまだ、モモは弱いけどね。そのうち、キノコの森に行って、家族を探すのも有りかもしれない。今のナーガ君ならテイムできるはず。

開拓地もそれなりに形になってきたところで、漸く、ライチによりナーガ君達からの帰還の手紙が届いた。