軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-30.領都到着とご挨拶

領都に到着したのは翌日の夕方。

ラズ様から言われて、ペットたちは離宮の厩で預かってもらった。テイマーギルドに預けるのは揉め事が起きる可能性があるらしい。

全員が離宮に泊まるかという話になったけど、明日には出発するレウスとアルス君はゆっくりしたいということで宿に行くことになり、それならと他のメンバーも宿に行ってしまった。

残ったのは私とナーガ君と師匠。メディシーアとして私は離宮に留まる必要があり、師匠も残るというので心配したナーガ君もこちらに残った形だ。

案内された部屋へ入った途端に風呂に連れていかれた。他のメイドさんに体を洗われて、ドレスに着替えさせられ、化粧までしっかりとされた。

「なに? どういうこと?」

「挨拶しておいで。あんただけなら、ラズ坊の婚約者ってことで食事に参加できる。先に話をできるだろう? 公の場ではないから多少の失敗は大丈夫だよ」

「え? ま、まって。師匠は?」

「謁見には参加するさね。まずは行っておいで。わたしはナー坊と食事してるよ」

「……はい、行ってきます」

ラズ様の部屋に行けばいいと言う師匠の指示に従って、部屋を出る。う~ん。ヒールのある靴を履かされているので、結構歩きにくい。

「あっ?」

「おい!」

部屋から出ると、ちょうどナーガ君がやってきたところだった。「ナーガ君」と声をかけようとした瞬間に、バランスを崩し、転びそうになってしまう。

まずいと思って目を瞑ると、ぐいっと引っ張られて、ナーガ君が支えてくれた。

「ありがとう。ちょっと、こんな靴を最近はいてなかったから、つい」

「……ああ。その恰好……どうした?」

ナーガ君と目線を合わせると同じだった。前までなら、靴のヒールの分だけ私の身長が高くなるのだけど。ナーガ君、成長期なのか大きくなっているんだよね、この3か月で。

私は伸びてない。多分、冒険者の中では、女性でも小柄に入ってしまう。冒険者じゃなければ普通なんだけどね。

「うん。ラズ様と食事してくる……多分、王弟殿下もいらっしゃるのだと思う」

「……無理はするな」

「うん、大丈夫。ちょっと挨拶してくるだけだから」

「ああ…………その、綺麗だ」

「え?」

「……早くいけ」

ナーガ君はぼそっとだけ呟いて、ささっと師匠の部屋に行ってしまった。緊張してるから、もう少し話をしてリラックスしたかったのだけど、仕方ない。

ラズ様の部屋へと向かおう。

「随分と、頑張ったね」

「クレイン様、とてもお綺麗です。急ぎ仕立てたドレスでしたので、サイズが合っているようで安心いたしました」

「フォルさん……えっと、これ、レンタルとかではない感じです?」

ラズ様の感想になってない感想は放置して、フォルさんの言葉に一抹の不安を感じる。仕立てたとか言ったよね? まさか、私用じゃないよね?

「当たり前でしょ。君のために仕立てたんだよ。まあ、薬師として呼ばれた時には、ローブ姿でもいいと思うけどね。一応、今回みたいな時にはドレスが必要になるからね。ナーガとグラノスにも用意しておいたよ」

「ありがとうございます?」

「ドレスは他にも2着ね。サイズは……大丈夫そうだね」

サイズはうん、ぴったりです。

若干、丈が長いかなとは思うけど。サイズを確認されたことないのにぴったりなことに驚いた。

「えっと、どうしてサイズわかったんです?」

「冒険者ギルドが防具を用意したときだよ。ある程度、測ったでしょ。そっちにお願いしたよ」

「あ、ありましたね。つまり……成長してないってことですね」

「べつにいいんじゃない? じゃあ、行こうか」

「……ちなみに、代替素材のお願いを言ってもいいんでしょうか?」

「聞かれるまでは言わないで。君がグラノスのように頑張って交渉をして、勝ち取れるというなら構わないけどね……にこにこ笑ってればいいよ」

「……無理です」

交渉なんできるわけない。というか、笑ってるのも無理。

絶対に顔が引きつりそう。お偉いさんの前でにこにことしていられる余裕はないと思う。

「まあ、君に駆け引きは期待してないからいいよ」

「はい。すみません……」

「謝ることじゃないよ。……貴族として駆け引きをする技術を覚えるより、もっと君しかできないことがあるでしょ。上手くやれると思われたら、どんどん要求が高くなるよ」

「それは、ちょっと……」

なんだかラズ様がちょっとやさしい? 出来なくてもフォローしてくれるってことかな? いや、そこまではないかな。

「じゃあ、行こうか」

ラズ様にエスコートをされて、食事の場へと向かう。

ラズ様と私以外はすでにそろっていた。

右側に王弟殿下と王弟妃殿下、左側にセレスタイト殿下とカイアナイト殿下かな?

一つずつ席が空いてるので、そこに私とラズ様が座るのだろう。私はカイアナイト殿下の横の席までラズ様がエスコートしてくれたが、席の前で止まるように言われた。

「父上、母上、それに兄上たち。僕の婚約者になったクレイン・メディシーア子爵令嬢です。フィンの娘で、グラノスの妹。パメラ・メディシーア薬師の養女です」

「クレイン・メディシーアと申します」

教わったカーテシーをして、お声がかかるのを待つ。

この体勢、結構きついなぁと思うけど、普段から運動はしているのでなんとかなる。

「うん、顔を上げてくれるかい。クレイン嬢」

「ありがとうございます」

すぐに声がかかったので、顔を上げると目が合った。優し気に見えるのに、背筋がぴんとして、顔が引きつりそうになる。直感は発動していないけど、なんか怖い。

そして、横にいる王弟妃殿下は美人。いや、でも、セレスタイト殿下って30歳くらいと聞いてたのだけど、いくつなんだろう? 美魔女。すごくきれいで、スタイルがいいのもわかるけど……うん。儚げに見えるけど……なんか、内面は違うかも。

全員と挨拶を交わして、席に座る。ラズ様は王弟妃殿下の隣、私の前の席だった。

「さあ、食事にしよう」

王弟殿下の言葉で、食事が運ばれてくる。

食事は美味しいのだろうけど、緊張して味がわからない。でも、兄さんが言ってたほど、スパイスがかかりすぎではない気がする。普通に美味しい。でも、めちゃくちゃ緊張してしまう。

「そう、緊張することはない。そなたを取って食うなどはしないからな」

真横に座るカイアナイト殿下からにっこりと笑って言われても……無理です。

しかし、美人な人だ。兄弟の中で一人だけ、母親似と言った感じかな。兄さんも男性なのに美人だけど、この人も美人だな。

セレスタイト殿下は王弟殿下似で、ラズ様はどちらにも似ている。

「兄上。急にドレスを着せられて、緊張しないはずないでしょ」

「おや、そうなのか?」

「慣れてくれば、話せるようになるよ。僕のときもそうだったし」

いや、状況が違い過ぎます。

ラズ様、最初は選択間違えれば殺してたよね? あれ、今って直感発動してないから、殺されないと思ってたけど、そういうレベルで危険だったりするの?

「別に、殺そうとしたりしないよ。一応、婚約者なんだけど」

「えっと、わかってます。ちゃんと役に立てば、殺されない、ですよね? 役に立ちます」

「むしろ、君を殺すと損害がすごいからね? 今更、君を殺そうとすることはないよ」

「そう、だね。君の命は保障されているのだけど、伝わっていなかったのかな?」

ラズ様の後をセレスタイト殿下が続けたけど……私の命だけ保障されるのでは困るのだけど。

なんて答えればいいかわからず、俯くと「謝る必要はないよ」と王弟殿下から声がかかった。

「こちらは君には感謝しているよ。だからこそ、君がやりたいことを邪魔することはしないと約束しよう」

「え?」

「君と君の兄が、この世界に馴染む努力をしていることを否定するつもりはない。君の意思に賛同するのであれば、君が保護する異邦人もね」

「……いいんですか?」

王弟殿下の言葉をそのまま受け取ると、なんだか、すごく条件が良いのだけど? どういうことだろう? 話についていけないので、ラズ様に視線を送るとこくりと頷かれた。

「えっと、本当に?」

「そうだね。君の兄君と話をしたときとは状況が変わっている。あの時と違い、こちらは君を保護するメリットが大きくなっているからね。君が開発してくれた薬、代替素材。恩恵は大きく、こちらとしても恩がある。協力できることは協力しよう」

王弟殿下の言葉に全員が頷いている。いや、ラズ様はやれやれという表情している。どうもラズ様もそこまでこちらに肩入れするとは聞いていなかったらしい。

「代替素材って、ラズ様はどこまで報告したんですか?」

「出来た物を魔鳩で運ばせたよ~。すでに使ってみたとは聞いてるかな。それだけだよ」

「そう。ラズから送られてきた素材を家の専属薬師が使ってみたが、そのままで問題がない完成度と報告を受けている」

すでに使ってみたらしい。

そのまま使えるということでホッとする。不足しているので、すぐに売り出すことも出来る。上級の薬で使われることが多いから、早めに流通させれば混乱も治まるはず。

「さて、今回のスタンピードで得た水竜の肝を全て、代替素材に使いたいとのことだったね」

「はい、王弟殿下。スペルビア・クヴェレ様より、逆鱗については、他で必要となると聞いています。また、牙や皮、角なども需要があることはわかっております」

「そうだね。貴重な素材だ。今回は大量に得ているとはいえ、価値は高いだろうね」

「はい。そして、肝については、いらない部位です。あれは毒。廃棄されるはずのそれが、裏社会にて毒の素材として使われていると聞きました。それくらいなら、全部加工して使いたいです」

薬として使われるのは主に、逆鱗以外の鱗、角であって、肝を薬で使うことはほぼないはず。全部つかっても文句はでないと思うのだけど……微妙そうな顔。

「製作できる量を考えると全てを代替素材にする必要はないのではないかな。なぜ、全ての提供を望むのかな」

「はい。今回の討伐はメディシーアが関わっているため、毒の流出はさせたくありません。師匠がやってきたことを……その名前を傷つけるような行動はしない。それに、錬金蜂蜜にしてしまえば、錬金により品質が固定化されるため素材が悪くなる心配もないです。加工しておいて、その間に次の手立てを考える時間ができます」

「ふむ。心配するのはそこではないが。なるほど、グラノスが可愛がり、心配する理由がわかった」

カイアナイト様の目の光が怪しく感じる。笑顔だけどね、目が怖い。何か変なことをいっただろうか。

「そなたに忠告だ。他の貴族の前で、口を開かぬ方が良いな。自分が考えてることを話しても意味は無い。互いにメリットがあることを提示し、共存共栄を目指すならよい。ただ、こうしたいから助けて欲しいというスタンスでは強者に貪られることになろう」

「……はい。申し訳ありません」

「努々、忘れるでないぞ」

はっきりと忠告を受けた。うん。権力のある人に守ってもらうという考えでは、兄さんに負担がかかりすぎるからだろう。

兄さんの友人としては、下手に私が口に出してしまった言葉は全部兄さんの肩にかかるから見過ごせないとかかな。

「それで、水竜の肝について、クヴェレ家はなんと言っておる?」

「……王弟殿下との取引と同じ内容であることが条件だと。共同開発として利権を貰えるなら素材である水竜の肝は無償提供してもいい。スペルビア様より、ラズ様が同席している際に言われた言葉です……兄さんがいないこともあり、少々呆れつつ提案いただいております」

「うむ。あやつは何も失わずに、利権を得ることができる立場を手に入れたわけだな」

「不用意で申し訳ありません……」

カイア様に顔を上げられずに謝罪しかできない。本当に申し訳ないとは思う。

いつも兄さんのフォローがあって、どうにかなっているのを実感してしまう。しかし、カイアナイト様とスペル様って友達同士と聞いている。それでも、こういうときには互いの利権のための小競り合いをするのか。

「カイア、その、あまり責めてやるな。薬師である以上、貴族としての振る舞いは出来ずとも問題はないだろう? グラノスもいるのだしな」

「今だから言っているのだ、兄上。グラノスがいないとき、のこのこと他貴族とのやり取りをすることの危険性を伝えねば……若い女性というだけで、危険は大きい。まして、その才は師匠譲りであればこそ、自覚を持つべきだ」

「カイ兄上。親身になってお説教してくれるのはありがたいけど、グラノスほど図太くないから、ほどほどにしてあげて。すぐにマーレに逃げ帰ろうとしちゃうから」

ラズ様。フォローになってない!

もう、さっさと帰りたい。もしくは、ナーガ君と一緒に蜂蜜採取にでも出かけてしまいたいのは事実だけど。むしろ、三兄弟での言い争いをにこやかに笑ってみている妃殿下も怖いよ。これ、どうすればいいの?

「すぐ帰るつもりだったんですけど……」

「駄目だよ。調合と錬金が出来る専用の部屋は用意してもらってる。ここで作った方がいいと伝えたよね。安全性を考える必要がある」

「……はい。代替素材を創り出せることについて、王弟派の下でやるということですよね」

「そうだね。客間を用意するから自由に使ってくれるかい?」

「いえ……可能であれば、換気ができる空き家とかがいいです。意外と匂いが……」

「ふむ……では、俺の家を使うか?」

カイアナイト様の別邸……それはそれで怖いのだけど。

ちらっとラズ様を見ると、離宮内に別宅として家があるらしい。静養するために用意してあるらしい。寝泊りも十分できるらしい。

「じゃあ、お借りしてもいいですか?」

「かまわぬ」

部屋を使ってもいい許可を貰った。でも、匂いを染みつけたりしないように、毎日、最後に浄化の魔法かけて綺麗にしよう。うん。

「今回の件もだが、君と兄・グラノスの意見は一致していると考えていいのかな? お互いの意見が異なるようなことがあるとこちらでは困るのだけど」

「一致しています。兄さんが決めたことであれば、逆らうことはありません」

セレスタイト殿下の言葉に頷いておく。多分、兄さんも私が言ってしまったなら、撤回しないようにするんだろうな。だから、心配して言っているのだろうけど。

「それは重畳。その言葉が違わぬようにな」

「兄上。本当にそこらへんにしといてくれる? これでも、貴族として使えないだけで、冒険者としても薬師としても一流なんだよ。ここに顔出すの嫌がるようになったら本末転倒だから」

「わかっておる。すまぬ。少々確認をしておかねば、今後の動きにも支障がでるのでな」

「いえ……」

今後か。

兄さんとは、爵位については継がない方向で話をしているけど、私が口に出すよりも任せた方がいいかな。

「たしかに。グラノス君に土地を用意することを伝えているが、君はどうするのかを決めているかな?」

「マーレとその土地を行き来する予定です。少なくとも、私は調合の依頼などに対応するためとラズ様への定期報告は必要だと思っているので。ただ、出来れば調合素材の一部を育てるなども試みたいので、最終的には移り住みたいとは思います。主に土地開発については、仲間に陣頭指揮を任せるつもりです」

「ふむ。定期報告とは全く色気が感じられないな」

え? そこいるの? ラズ様に視線をおくると軽く首を振られた。うん。聞き流しておこう。

兄さんはナーガ君のペットのための土地と言っているから、それなりに広い土地を貰えるはず。その土地で畑とかで食料を作るついでに、調合素材を育てるとかできないかと考えている。

あと、整地とかは魔法で手伝うことはできるから、手伝いはする。これから暖かくなるから野宿も厳しくないしね。

「いいんじゃない? たぶん、マーレだと危険人物の精査が出来ないからね。逆に身内で固めて、動物たちに囲まれてる方が襲いにくいしね。たまに顔出してくれればいいから」

「……そうですね」

あの町の治安を私が悪化させてるわけではないけど……。冒険者達の間でも動揺があったみたいだしね。でも、ここにいるくらいならマーレに帰りたい。

「ふむ。そんなところか。あとは、グラノスが来たら、俺の方に顔を出すように伝えてくれ」

「え? あ、えっと……伝えます?」

晩餐会が始まって、何だかんだで時間がそれなりに経過している。兄さん、ナーガ君と師匠と一緒にいる気がするんだけどな。伝えたら、この後、会うのだろうか?

ラズ様に視線を送ると、こちらに気付いて頷きが返ってきた。

「何か気になるなら、言っていいよ」

「いや、兄さん。多分、今、師匠の部屋にいますけど……その、食べ始めて、しばらくしてから師匠の部屋に気配が増えてるんで……伝えていいんですか? この後、会います?」

「ふむ……来ているなら、顔をみたいのでな。この距離でわかるのか?」

「師匠、少し体調が悪そうだったので、気になって……魔力探知であれば、この距離でもできるので……その、増えているので。多分ですけど」

なにか変なことを言っただろうか。

こちらを凝視されたんだけど、勝手に確認するのはまずかっただろうか。

ただ、師匠の体調が悪いというのも本当だけど、現実逃避に探っていた部分もある

「パメラ様はお加減が悪いのかしら?」

「あ、えっと……ラズ様」

「ああ、うん……先日、婆様本人から長くないと言われてる。できれば、ゆっくり養生して欲しいのだけど、今回もついてくると聞かなくてね。この子が倒れてるときに調合をしたのが最後で、もう、無理だって話だね。機材も全てクレインに譲っていたよ」

王弟妃殿下の言葉に答えるのに困ってラズ様に振って、その言葉に頷いておく。咳き込んだり、軽い微熱があったりと急に体調が悪くなっているので心配している。

「そう。パメラ様にはこの離宮で落ち着かないようであれば、すぐに代わりの家を用意するとつたえてくれるかしら?」

「はい、わかりました」

でも、師匠としては、なれ親しんだ町に帰りたいと思うのだけどね。心配し過ぎると師匠も嫌がりそうだから、難しい。私が帰らないなら帰らないとか言いそう。

さくっと用事を済ませるのが一番いいと思う。

「やはり、グラノス君に継がせるのは間に合わなそうだね」

「はい……師匠からもその話は聞いています。一度断絶させて、私に爵位を渡そうとする可能性も……」

「ふむ。君はどう考えているのかな?」

「師匠の爵位は兄さんが継ぐ。私に話がきても、それは師匠の爵位ではないので断ります。無理やり、貴族にさせられるなら逃げようかなと……ラズ様には悪いんですけど」

「別に。婆様が亡くなった時点で、君は平民。平民との婚約は無かったことになるし、平民が国を捨てるのはあり得なくもないしね。好きにしなよ」

うん。ラズ様の考えとセレスタイト殿下の考えが違うね。セレスタイト殿下が目を見開いて、なんか怒ってるようにも見える。王弟殿下はわからない。

「君の意志は確認した。だけど、それは困るね。貴族にならないだけなら構わないけど、逃がすわけにはいかないよ」

「……」

返事は出来ない。王弟殿下と視線を合わせるが、頷くことも、首をふることもなく、ただ無言で……重々しい雰囲気となってしまった。

「父上、兄上。この子はほとぼりが冷めたら帰ってくる。婆様に世界中を周って素材を学べと言われてるから、旅にでる予定だったしね。環境を整えておけば、他国に移住するとかではないから問題ないよ」

「おや、そうなのかい?」

ラズ様の助け舟。わざわざ、席を立って、私の横までやってきている。もう、食事は終わっているので、行儀が悪いとかではないけど。

視線を合わせるとこくりと頷かれたので、こちらも頷き返しておく。

「そう。そろそろ限界みたいだから、いいよね? あとは、明日」

「わかった。では、クレイン嬢。ラズと仲良くね」

「あ、はい。失礼いたします」

なんだろう。いや、余計なことを言ったのかもしれないけど……怖かった。

もう、絶対に参加したくない。ラズ様にお願いしたら、苦笑して「わかってるよ」と返ってきた。

うん。本当に、貴族って大変。近寄りたくない。