軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-12.師匠の家にて

ラズ様の屋敷での夕食会が終わって、まず、師匠の家へと向かった。

もう夜もいい時間なので、ちょっとだけ顔を見せようと思ったのだけど……。

「あんた、ようやく帰ってきたのか」

「クロウ? 何でいるの? 師匠は?」

「おや、帰ったのかい。おかえり」

「師匠、ただいま戻りました。それで、なんでクロウがいるんですか?」

師匠の家で、がちゃりとドアを開けたのはクロウだった。驚きつつ、家の中に入ると、クロウが席に座る。その席には酒瓶と器が置かれていた。

師匠作のお酒ではなく、市販のお酒っぽいけど……師匠の方にもお酒が入った器があるので、さしで飲んでいたらしい。羨ましい。

「作業でわからないことがあると聞きに来たからね。教えたついでに食事に誘ったんさね」

「まあ、せっかくのお誘いだったからな。あんたの方は無事に終わったのか? ……いや、随分と疲れが溜まってるな」

「勝手に見ない! まあ、夕方前には帰ってたんだけど、ラズ様とシュトルツ様と夕食があって……精神的にきつかった」

「そういうことにしておくかぁ。グラノスはどうした? まだ、領主の館にいるのか?」

「ううん。キュアノエイデスに行ってる。ちょっと厄介ごと……クロウは嫌がりそうな」

不調が気付かれたっぽい。いや、まあ……見えてしまったとかだろう。兄さんから聞いて気付いたけど、クロウは見ようとするときにはほんの少しだけど目を細める仕草がある。その仕草がないときは無意識に見えてしまったとき。今は、たまたま見えてしまっただけ。

そういえば、女嫌いのクロウはルナさんとリュンヌさん……クロウは嫌かもしれない。

無理にパーティーを組ませる気はないけど。女性二人増えたと言ったら、嫌そうな顔はするかな。「俺は知らん」と関わらないだろうけど。

「また、拾ってきたのか」

「言い方……」

「あんたはナーガのペットを増やすのに苦言をしているが、人間拾ってくるあんたのが問題あると思うがな」

「え? ……あ、そう、見えるんだ……」

確かに。

ナーガ君が動物増やすたびに色々言っていたけど……。

最初に兄さんとナーガ君、次がレウス、それにクロウとティガさん……で、ルナさんとリュンヌさん。

事情は色々あるけど……たしかに、どんどん増やしてる。いや、そんなつもりはなかったし、拾ったから面倒を全て見るわけではないけど。

「う~ん」

「ティガと折り合いが悪くて反省したと思ったんだがなぁ? 見ていない間にさらに増やしたのか」

「……う、ごめん。でも、私と一緒に行動することは無い」

「ほぅ?」

「種族が……私と敵対していて、本人の意思と関係ないとこで、私の命を狙ってくるから……行動を見張るためにも、手元に置く…………次に命を狙ってきたら、私が対処する」

「グラノスは?」

「一緒にいたから知ってる」

「……わかった」

詳細は、兄さんが帰ってきてからと言うと、少し剣呑な光を宿していた目が普通に戻った。

兄さんが認めてるなら、という感じかな?

「仕方ないさね。薬師は人を救う仕事だ。その点で言えば、人を放置しないのは素質があるとも言えるよ。まあ、頑張んな」

「師匠」

「いやいや、婆様。自分のキャパシティーを超えて、無茶をするからな。甘やかす奴らしかいないのも問題だと思わないか?」

「あんたが苦言を言ってやるならいいんだよ。一人で生きれるわけじゃないんだ」

師匠は、「こっちに座りな」と隣の椅子を指さし、私にもお酒を注いでくれた。

そして、ちょっと微妙な雰囲気を振り払うように、乾杯をして、お酒を飲み始める。

「また、貴族の依頼を受けるなら、ティガがうるさいぞ」

「う~ん。でも、今回の報酬は絶対に必要だったんだよ」

「報酬?」

「これ……あ、クロウ、これの成分とか調べてもらっていい?」

安らぎの花蜜……小さな小瓶を取り出して、クロウに渡す。

「おや、まだ残ってたのかい」

「はい。解毒薬で失敗した場合のために予備を持ってたので、持ち帰った分はラズ様から渡されると思います。これは、クロウに成分とか調べてもらってから……その、師匠、大丈夫ですか?」

病気について、クロウがいるので詳細を聞けないので、暈したけど……師匠は「おや、知ってたのかい」と冷静に返事を返してきた。

ちらっとクロウを見るとこくりと頷かれた。

「失礼だとは思ったんだがなぁ」

「当たり前さね。人の秘密を覗くなんてするべきじゃない。まあ、わざとではないというし、あんた達がいない間も気を使ってもらったからね」

クロウは、最初から師匠が病気を隠しているのを知っていたらしい。ただ、自分が何とかできるわけでもないので黙っていたが、さすがに不在時期が長いのもあって顔を出して確認していて……師匠の病気をクロウが言ってもいないのに知っていることがバレたらしい。

「……師匠」

「そんな顔をするんじゃないよ。もう年が年だから、病気が無い方がおかしいだろう? 薬を飲んで延命しているのは、仕方ないことだよ」

「…………嫌です」

「困った子だね。あんたが持って帰ってきてくれた『安らぎの花蜜』のおかげで、また少し生き延びれるさ」

「代替素材、用意しますから……絶対に」

「その素材はダンジョンにしか出ない変異種から入手するしかない。なかなか特殊だから、わたしでも代替素材が思いつかないよ……今回手に入れたのが最後だろう」

「いいえ。何とかします。まだ、構想の段階ですけど……自然界で代替品がないなら、錬金で作れないかなと……頑張るので」

師匠の言う通り、帝国にあるダンジョンでしか出ない魔物素材ということは調べている。他のダンジョンでも出ない……。

ハニービーという蜂の魔物の変異種で、ダークビーという魔物か、その巣にいるクイーンビーから取れる素材。それと、巣を見つけた場合にはそこから採取も可能。

ハニービー自体は王国・帝国で春先から秋ごろまで、それなりに出現するし、年中出現するダンジョンもある。闇属性に変異しているのが、帝国にしかいないだけ。

「面白いことを言うさね……どうやって、作るんだい?」

「錬金は魔力を練り込みながら、全く別の物質を作り出すものなので、調合とは全く別だと思うんです。鉄とか銅を金に変える……違う物質にする、それが可能な技術です。素材を組み合わせて効能を高める調合とは全然違うものです。でも、ポーションとかを作るだけで、新たな物質を作り出すということが錬金では行われていない」

「錬金であっても、無から有は作れないはずだよ。新しい物質を作り出すために、より高価な素材を混ぜなくてはいけないのでは割に合わないさね」

「はい。だから、技術が廃れた。それは理解しています。……でも、今回みたいな場合、多少割高になっても、素材を生みだせるなら……」

「気の遠くなる話だねぇ……まあ、好きにやってみるといいよ」

全く同じではなくても、同じ効果をもつ別の素材を作り出す。

それがどれだけ大変なのか、師匠は苦笑している。間に合わないと思ってる。

「私一人だと勝算ないんですけどね。でも、出来る可能性あると思ってます。師匠も新薬を作るために、代替素材と元々の素材がもつ差異を減らしていく研究に時間がかかると教えてくれましたし……ただ、それを見極められる助手がいるんで」

「やれやれ……おれは楽をしたいんだがなぁ」

「私が作り出す素材を片っ端から鑑定・解析してくれればいいから。ちゃんとお金出すし、出来上がった時には成功報酬も、その後の収入とかも分けるから! お願い!」

もし、上手く作り出せたら……お金にもなる。

だって、もともと安らぎの花蜜って、小さな瓶……これを王国内で購入するなら5,000Gという高値で取引されていた。

今は……20,000Gとか、50,000Gとか……天井知らずな高額商品らしい。調合に使う素材としては、必須級なのに、手に入らなくなったからね。

闇属性の魔物素材とか、高いけど……流石に、1つ1,000Gは超えないので……いや、それでも多種多様に集めて、使えるものをと片っ端からやるとなると……お金が吹っ飛ぶけどね。さらに、持て余している毒にもなる闇属性素材があるのは、実は好都合と考えている。

「やれやれ、クロ坊の鑑定はそんなに便利なのかい」

「はい。一応、考えてるのは蜂蜜と草系、それに闇属性の素材を掛け合わせて……ただ、草は闇と相性悪いのが難しいんですけど。いっそ、毒を入れて、解毒素材もぶち込むとか……色々とやれると思うので、それこそ、下手な鉄砲も数撃てば当たるかなって……やるだけやってみるんで」

「鉄砲? よくわからんが、調合でも数ある中で、素材の扱いを変えて、近い効能を引き出すんだから、数を熟すのは良い考えさね」

本当なら、調合でその素材を見つけ出すべきだろうけど、そんな時間はない。錬金で生み出すことすら、師匠は間に合わないと思っているのがわかる。

「ただ……レシピなんて一切ないことをやった場合、問題になります?」

「アストリッドに確認した方がいいが、巻き込むことになってしまうさね……まあ、試している段階では黙っておくのもいいかもしれんね。クロ坊、あんたの鑑定ではどんなふうにわかるのか、教えな」

師匠が鑑定書になる紙をクロウに渡した。

クロウのユニークスキルは言ってないけど、もう、クロウも諦めてる顔している。

まあ、師匠の病気を見破った時点で、鑑定が高いと思われてるし、今更かもしれないけど。

「時間かかるぞ?」

「別に構わないさね。今日が無理なら、明日からでもいい」

「どれくらいかかる?」

「2,3時間くれ……詳細に必要なんだろう?」

「うん、ありがとう。明日の朝でも十分だから。じゃあ、私は一度冒険者ギルドに顔出してこようかな」

「そうしな。クロ坊は預かっておくよ」

師匠、楽しそう。

研究素材が増えるのは嬉しいのだろう。師匠が手伝ってくれるなら、思ったよりも早く成果もでそうな気がする。

冒険者ギルドが閉まるまであと一時間くらいあるので、マリィさんとレオニスさんには顔を出しておこう。

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

二人に声をかけて、家をでる。

クロウ……のんびりしたいと言いながらも、酒を飲むのを中断して、こんな時間からでも仕事をしてくれるらしい。ありがたいけど……私も仕事始めたらナーガ君怒りそうだしな。

あとで、もう一度顔は出すけど作業は明日からかな。