軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-13.ボス部屋の前で

結局、ダンジョンでは、他の冒険者に注意しつつ、別行動をやめて全員一緒に行動することになった。

7人+1匹だと戦闘能力に問題はなく、サクサクと階を進んでいくが、やはり何度かこちらを監視している冒険者がいることを確認した。

ただ、こちらに何かしかけてくる事はなかったのと、付け回してくるわけではなかったので気付かないふりをすることになった。

そして、そのまま10階へと到着する。

その階にいた冒険者は4組……知っているパーティーが一組いる。こちらを付け回していた冒険者達も二つ前で順番待ちしていた。

知り合いの冒険者に軽く挨拶をして話を聞くと、どうやら前のパーティーが苦戦しているらしく、中に入ってすでに三時間経過しているらしい。

被害が出ている可能性もあると聞いて、ちょっと気が滅入りそうだった。

「やれやれ……聞きたいんだが、倒せない場合どうなる?」

「……ボスの部屋は基本的には倒すまでは出てこれない。帰還石っていう貴重なアイテムを使えば部屋から脱出できるけど……」

クロウの質問に答える声は沈んでしまう。

そんな貴重アイテムを持っているなら、こんなところで苦戦はしない……。

冒険者って危険と隣り合わせだとわかっているけど、目の当りにすることになった。

「途中で助けにとか……なんとかならないの?」

「途中介入することは出来なくはないけど……ボスがパワーアップして……危険が増すって聞いてる」

クロウに続いて、レウスからも聞かれたが……難しい。

そもそも、パワーアップした状態って、ステータスも上がるし、興奮・怒り状態で回復したヒーラーにヘイトが溜まる。ヒーラーだと即死案件になる可能性もある。

ついでに、中にいる冒険者がそもそもが苦戦状態なので、入口から入っても大抵は合流前に…………だから、決していい結果にならない。

「……レウス。無駄だ」

「ナーガ……そっか」

ナーガ君が首を振るとレウスがしょぼんとしている。落ち着かない様子のアルス君も含め、少し気分を変えさせたいところだけど。兄さんをちらりと見るが、首を振って返された。ティガさんもクロウも微妙な顔をしている。

ナーバスになっている中でボス戦になるのは良くないとも思うけど……まあ、前に4組いるから時間経過でなんとかなるかもしれないけど。

そのまま、気まずい状態で時間が経過していく。

「おチビ。ちょっといいか?」

「……厄介ごとです?」

「悪いな」

ボス待ちして1時間経過。

声をかけてきたのはノトスさんだった。ノトスさんとは低層階でもあったが、先ほどこの階に到着し、前にいる私の知っている人たちに話を持ち込まれていた。

話を終えた後に私に声をかけるって、いい予感がしない。しかも、ティガさんが兄さんに合図送って止めさせている。

「ああ、悪い。妹を連れ出すのはやめてくれ」

私をかばうように兄さんが前に出るとノトスさんが苦笑した。

まあ、兄さんとノトスさんも顔見知りなので、わかっていたという様子だ。

「すまんが、おチビくらいしか可能性がないんだ。危険は承知しているが、連れていきたい」

「連れていく前にきちんと計画を話してくれ。そうでないと保護者として許可は出来ん」

「あ、ああ。……危険なんだが、それでも可能性にかけて、ボス部屋に介入しようという話があってな。ただ、ボスが強くなるから二次被害は防がないといけない」

「ボス対策も含め、強さが必要だろうな。だいたい、パーティーが入るにしてもそもそも10人までしかボス部屋には入れないんだろう? 大人数で入れず、中には傷ついた死にかけばかり……勝ち目があるのか? この子が必要な理由は?」

兄さんの言葉にノトスさんはゆっくりと頷く。

ノトスさんなりに勝算があるらしい。

「おチビはこの場にいる中だと、能力の高いヒーラーだ。ソロができるだけの逃げ足もある。回復しながらボスから逃げることも可能だろう。他はむりだ」

「だから貸し出せというなら、断る」

「兄さん……ちょっとまって」

心配してくれているのはわかる。でも、私しかいないとノトスさんが言うってことは、事情があるはず。

それに、今ボスと戦っているパーティーをそこまでしても助けたいということでもある。

「中にいる人、他の地域から来た人ですよね? なんで、こだわるんですか?」

「ああ。ただ、パーティーリーダー自体は何年か前にマーレを拠点にしていたこともあるから知り合いだ。出来ることなら、助けてやりたい」

「何人で入ってます?」

「5人パーティのはずだ。俺が知ってるのはリーダーだけだ。他の実力は知らない」

「……追加で5人で入るとして、倒せます? ノトスさんのパーティー、アタッカーが負傷中ですよね? 魔法アタッカーはこのボスには不利のはずです」

いつもとメンツが違うのに、助けに入って助けられるのか。助けに入るにしても、危険が伴う。

たぶん難しい。ノトスさん自身はタンク。レベルや装備もあるから、危険は少ない。……ノトスさんのパーティーにヒーラーいるけど、前線には余り立ちたがらないと聞いている。レベルも一人だけ低めだったはず……私とレベルは同じくらいだったけど。

「いや。俺とディーロが入る。他にも二人ほど見繕うが、あいつの攻撃力であれば、ボスの能力が上がっていても問題はない」

ディーロさんとノトスさんと私? いや、ちょっと無理がありすぎる。

臨時パーティーで連携が取れないのに、目的が救出って……。

「……無理です。ノトスさんとディーロさんの能力は疑いません。でも、あちらに戦える人がいるかもわからない状態だと危険すぎます。そこに命はかけられない」

「っ……頼む! このまま時間が過ぎていくくらいならっ!」

「まあ、まってくれ」

兄さんが興奮しそうなノトスさんを止める。

落ち着けと言って、一口飲めとお茶を渡して、落ち着かせる。

「まず、俺らが来て1時間……戦い始めて4時間経過というところだろう。中では倒せないが戦況は安定しているという読みかい?」

「ああ。少なくとも、リーダーの奴はボス戦について知識がある。立て直しが出来たのだと思う。ただ、倒しきることも出来ていない」

「そうか。そいつの実力はあんたと同等かい?」

「……他地域に移る前は同等だった。今もそう変わらないと思う……あいつはタンクだ。今も守っているはずだ」

ノトスさんの読みでは、中に入った時にボスがパワーアップして猛攻したとしても、耐えられるだけの実力があるという。

それが本当かはわからないけど……少なくとも、そう信じるという。そこで守れなかったら、先に入っていたパーティーは全滅するわけだが……。

「クレイン、ノトスともう一人の実力に問題はないのか?」

「……ボスを倒すには決定力に欠ける、かな。ノトスさんとそのリーダーが守るとしても……ディーロさん一人では削り切れないと思う」

「わかった。では、条件として、クレインを連れていくなら俺とナーガも一緒に入る。それならどうだ?」

兄さんとナーガ君。

ディーロさんと攻撃力については遜色はない。ただ、経験は足りてない。

ただ、ナーガ君はタンクもできるので、安定するまでは守ってもらって、その後戦いに転じることが可能。それに動きをある程度把握してるから、私は守ってもらうにもやりやすい。

私としても、二人がいるなら安心ではあるけど……。

そうすると、クロウ達4人をここにおいていくことになってしまう。ボスを倒せば戻ってこれるけど……。

「待ってくれ。おチビだけじゃなく、お前らもとなると話は変わる。守り切れる保証がない。人が増えるのは許容できん」

「なら、話はなかったことにしてくれ。仲間を勝手に引きはがして、単独行動を……しかも、危険が伴うとなれば、許す気はない。俺とクレインのことはナーガが守る。君が守る対象は、ディーロとやらに加え、中にいる連中だ。中で回復魔法を使えば、ヘイトはクレインに集中するはずだ。守るのは身内のタンクの方が信頼できる」

「言ってくれる……大丈夫なのか?」

心配そうに私に聞いてくるのは、ナーガ君の実力が不明だからだろう。

ぶっつけ本番での寄合パーティーを組むよりは、私としては兄さん達に任せたいところではある。でも、私ほど冒険者ギルドに顔を出しているわけじゃないし、あちらも不安だろう。

「ナーガ君はレオニスさんから教えてもらってるので、安定感抜群です。私との連携も取れます……他の人に声をかけるくらいなら二人がいいです」

「わかった。ディーロに話してくる」

一度、ノトスさんがディーロさんの元へと戻ったので、こちらも話し合いをする。

「行くのかな? 危険があるということだけど」

「……ティガさん」

「ここできみたちに何かあれば、わたし達の予定も変わってしまう。それでも、彼らに協力する必要があるのかな?」

わざわざ危険に突っ込んでいき、予定を台無しにするのか……そう聞かれると、苦しい。私にとっても、知り合いの知り合いを助けるって……ちょっと関係性としても遠いとは思う。

でも……ちらりとアルス君を見る。彼はこういう場面に慣れていない。ボス前に人が死んだところを見ると、メンタル面で崩れて、判断力の低下とかを招く可能性がありそう。

それなら、助けに入っておいた方が、まだ……崩れないと思う。

「すみません、行ってきます」

「行く理由を聞いているのだけどね」

「いいじゃん、クレインもナーガも気を付けてね。大人しく待ってるからさ」

レウスが珍しく聞き分けよく……私達を送り出す発言をしたので、ティガさんも仕方なく引いてくれた。クロウについては、やれやれといった表情をしている。

そのまま4人で並んでいて貰うことにして、私達3人はノトスさんのいる方へと向かう。

「あ~。ちょいといいか?」

「ディーロさん。はい、なんでしょう?」

「実力試しをさせてくれ。流石に、『はい、そうですか』と認めるには不安がある」

「いいぜ。そっちは4人、こっちは3人でいいかい?」

「お前たち二人でいい。おチビについては……」

兄さんが4対3を提案するが、ナーガ君と兄さんだけで、私については確認しないらしい。まあ、私の実力が不足していても、中に入るヒーラーは私しかいないわけで……疲労させたくないのだろう。

「ノトスさんとディーロさんがそちらの二人と連携が取れるのか、私も確認したいです。4対3で……お願いできます?」

「……わかった。じゃあ、こっちだ」

ボスの門から少し外れ、広い場所にて互いに武器を構える。

ノトスさんはタンク、ディーロさんは大斧使いでBランクだったはず。

他の二人もアタッカー、かな? 見たことがあるような、ないような?

実力としては……そこまで私達が劣るとは思わない。人数が不利とはいえ……。

「噂のおチビちゃんか。レオさんの秘蔵っ子だって?」

「初めまして、ですよね?」

「ああ、しばらく離れてたからな~。俺らもBランクだが、そっちは?」

「Dです。3人とも……まだ伸び盛りです」

「なるほど? まあ、手加減はしない」

「はい」

やりすぎない様に兄さんにだけ言っておいた方がいいかな。

ナーガ君はこくりと頷いて、ディーロさんに目線を送る。アタッカーは抑えるってことだよね。

うん、じゃあ、いってみようか。