軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64話 冒険都市の日常

「お? なんだ? その目、やんのか?」

「ぎゃはは、いいぜ別に。リザドニアン1人に男1人。モンスター狩りの前のウォーミングアップにゃちょうどいい」

「男の方は足の腱でも切って路地裏に置いといてやるよ、スラム街で物乞いしてりゃ生きていけるさ」

「おれ、おれよ、あのそばかすの子良くね?」

「いや、それよりあの水色の髪のメスガキだろ。ああいう気の強そうなのを言いなりにさせるのがたのしいんだよ」

「男のガキは冒険奴隷だな。お、あの帽子の女のガキ可愛いな」

見るからに全員頭が悪そうだ。薄い革鎧に腰に差した剣、背中に垂らした槌。

冒険者。その顔は自信に満ち溢れている。その顔は獲物を見つけたという興奮の色に染まっている。

「お、喧嘩か?」

「冒険者同士の喧嘩だ! 冒険都市の名物が始まったぞー!」

「おい、あの冒険者達、最近3級で鳴らしてる連中じゃないか? あの女の子、大丈夫か?」

「なあ、リザドニアンと黒髪の冒険者って、聞き覚えねえか?」

争いの気配に人々は逃げるばかりか、続々と集まってくる。この都市では冒険者同士の諍いなど日常茶飯事、むしろ住民達の娯楽の1つとしても捉えられていて。

ざわざわと野次馬達が喜色めいた声をあげる。

にたりと、1人の冒険者が笑う。野次馬の安い声に押されて、その顔には嗜虐の色が浮かんでいた。

「お、俺は断然あのそばかすの女の子がいい、ぼ、母性を感じる…… ママ……」

「ひっ」

「へへ、かわいい」

冒険者の1人、連中の中で1番の巨漢。2メートルはありそうな腹の膨れたデブが怯えるニコを嬉しそうに見つめる。

ニキビヅラのデブが、べろりと自分の唇を舐めた。

ニコに、皿を投げつけたのもコイツでーー

「トオヤマ」

当たり前のように限界が来たのはストルだ。

わずかに残った理性は、己の鞘へ問いかける、

求めるのはーー

「ストル、許可」

抜剣許可。

剣の鞘(遠山鳴人) もすでにブチ切れていた。

「ディス」

剣が、抜かれた。

教会の、いや、審問官の愚かで、しかしなによりも純粋なそれ。

獣よりも疾く、化け物よりも強く。

「は? ぐぼ?!」

水色の風が、土煙を置き去りにして舞う。ひとまとめにしたポニーテールがなびいて。

びたんと、大きな水風船が割れるような音ともに、ニキビづらの冒険者が地面に叩きつけられた。

誰もストルの動きを目で追うことすら出来ない、野次馬達も、当事者である冒険者たちも何が起きたか理解できていない。

「「「「え?」」」」」

この場において第一の騎士は別格の存在で。

「汚い息をニコちゃんに向けるな、殺すぞ」

「が、ぼ」

豚が、タンを吐き出した。

身体が逆くの字に折れて、そのまま石畳に叩きつけられる。

ストルがその背中を足蹴に踏み潰す。水色の瞳は爛々と輝き、その声は対照的にどこまでも静かなものだった。

「え?」

「なん、で?」

「な、なんだ?! このガキ?!」

遅れて、ようやく冒険者たちが事態を飲み込む。認識が追いつかない。

あんな小柄な少女が、装備を固めているパーティの肉壁役を一瞬で押し倒した。

目の前で起きたことすら受け入れがたく。

彼らは、まだ知らない。中途半端な力では決して手を出していけないものに触れてしまったことに。

「てめ、ガキ!! なにもんだ!?」

リーダー格の男の注目は完全にストルに向いている。

声をかけられたストルが、水色の長いポニーテールを肩にかけて、ニイッと笑う。

飢えた、いや、狩りの悦びを知る狼の嗤いーー

「ウチのパン屋の警備部門だ」

短い声、そして躊躇いなく振るわれる拳。

「あ、ぶべら?!?」

その隙を見逃す遠山ではない。完全に相手の注目がストルに向いたのをきっかけに挨拶と同時に、拳を振り抜く。

現代の洗練されたスポーツ科学、正しいトレーニングと確かな食生活、そして、探索者としての日常は遠山鳴人の肉体をきちんと強くしている。

振り抜いた拳のクリーンヒット、冒険者のリーダー格の男が地面に倒れる。

「よいしょっと」

「ぎっ?! あ」

振り向きざま、近くにいた男に金的をかます。遠山もまたその暴力的な過去の経験から喧嘩のコツを知っている。

結局勝つのは、先に手を出す方なのだと。

「悪いな、俺も彼らに毒されてね。最近は気が短くなってるんだ」

「っぐ、あ?! うで、があああ」

「あ、ぎ」

ラザールがいつの間にか残りの2人を制圧している。倒れ伏した男に腰を下ろして、太い腕でもう1人を首ごと羽交い締め。

「ひ、な、なんだコイツら?! つ、つええ?!」

残った1人があとずさり、気づけば完全に数で優位だったはずなのに、まともに動けるのは自分だけになっていた。

ばたりと、尻餅をつく残り1人を遠山、ストル、ラザールがじっと見つめる。

3人の目に光はない。

ハイライトの消えた目は即ち示している。

3人ともそちら側の人間。呪われた、人殺しが出来る人間なのだと言うことを。

「お前、さっきニコちゃんに皿を投げつけた奴ディスね?」

「ブヒ、あ、ああ、いてえ、背中いてえ…… 離してくれええ、ゲバ」

「動くな、豚め。このまま踏み殺してもいいディスが……」

1番の巨漢を足蹴にしたまま、ストルがだらりと体を折り曲げてそいつを見下ろす。

デブがその場を離れようと力を入れるも微動だにしない。ストルの細い脚がぐいっと力を入れてさらにそいつを強く石畳に押し付ける。

「……トオヤマ、いいディスか?」

「ああ、ニコに皿投げたのはそのブタか。だな、2度と人様に物を投げれねえようにしてやりなさい」

ストルの問いかけに遠山が頷く。そこになんの躊躇いも迷いもなく。

「ウイー、フック」

大型犬が、涎を垂らした。

細い手が、豚の太くて短い指を掴んで。

「は? おい、まて、まてまて、何をするつもりだ?! おい、指! 指?! 待て、それはそっちには曲がらっ、あ?! アアアアアアアアアアアアアアアア?!?」

一気に、捻り折る。

「うるさいディスね。ほら、まだあと9本も残ってるんディスよ。ああ、良かった。9本なら数えられますね」

ストルが嗤う。

生まれや育ちも関係なく、彼女はこういうことができる側の人間だ。

「にー、さん、しー、ごー、ごー、ごー?」

ぼきり、ねじり。ぽきん、ぽろ。

ぶ、ひ、謂イイイイイイイイイイイ

去勢された豚のような悲鳴をあげる冒険者、ばたんばたんともがくもしかし、第一の騎士の膂力に逆らうことは出来ない。

活気溢れる市場の一角、男の悲鳴が響き渡る。

「真っ直ぐ折るだけではそのうち繋がりますからね。コツは捻りながら肉と骨をねじることディス」

「闇を感じるから解説しなくてヨシ。さて、お前ら、どうする? 続けるか?」

豚の全ての指を捻り折ったストルが、ふうっと、息を吐く。

遠山がすでに完全に戦意喪失している冒険者たちを眺めてつぶやいた。

「ひ、な、なんだ、お前ら。急に、いきなり、こんな…… イカレてんのか?!」

尻餅をついていた冒険者の1人が喚き出す。目は血走り、声を荒げる。震える指先を遠山に向けて。

「や。やりすぎだろうが! おれ、俺たち、まだ何もお前らにしてなかったのに! な、なんなんだよ!! くそ、教会騎士! だ、誰か、見てたろ?! 教会騎士を呼んでくれ!」

恥も外聞もないのだろう。驚くことに、冒険者は野次馬たちに助けを求めはじめた。

まるで、遠山たちに襲われたかのような態度だ。

「お、おいおい、あいつ泣きそうじゃん」

「てか、見たかよ、あの子、なんの躊躇いもなく指を折ってたぞ……」

「な、なあ、あの黒髪って、もしかして、てか、リザドニアンも……」

「水色の髪に、あの喋り方…… 教会の式典であんな騎士いなかったか?」

「で、でも、確かに少し、やり過ぎじゃないか? き、騎士を呼ぶか? 巡回してるはずだぞ、この辺を」

野次馬達の空気も変わる。

彼らが求めていた娯楽とは少し方向性が違ったのだろう。

ざわざわと、どちらと言うと冒険者達に同情的にざわめき続けて。

「ひ、ひいい、騎士だ! お、襲われたぁ!! け、怪我も負わされてる! 騎士を、誰か、騎士を呼んでくれよおおお」

喚く冒険者、野次馬たちの空気の変化を感じたのだろう。同情を誘うような情けない声だ。

「……シャァァ」

ラザールが不快そうに歯を剥き出しにする。

「ゴミ、ディスね」

ストルが苛立ちを隠さず、さらに強く冒険者を踏み潰している足に力を入れた。

「……お前らみたいな奴らっていつも同じこと言うよな」

「は?」

そして、遠山が静かな口調で言葉を紡ぐ。この時点で遠山は彼らの こ(・) の(・) 後(・) の(・) 処(・) 遇(・) を(・) 9(・) 割(・) 決(・) め(・) て(・) い(・) た(・) 。(・)

「中途半端な暴力と粗末な想像力。わかるよ、遊び半分だったんだろ? 目についた奴らが自分達より弱そうで、なんか気に入らないから絡んできたんだろ? 知ってるよ、お前らみたいな奴のことを」

「な、なんだ、なんなんだよ! が、ガチになりやがって! そ、そうだよ! こっちは遊びのつもりなんだ! す、少し脅しただけでやりすぎだろうが! フラットの指をあんな風に!」

「やっぱそんな感じか。脅しただけ、ね。ならこっちも少しボコったくらいで騒ぐなよって言いたんだけど、さて、どうしたもんかね」

どうしたもこうしたもないが、ここだと目立ちすぎる。

少し泳がせてから始めるか。

遠山がため息をつきながら、なおも喚き続けるそいつを眺めた。一体どういう脳みそをしたら、ここまで都合のいいことを口にできるのだろうか。

不思議で仕方なかったが、知りたくもなかったので割とどうでもよく。

「ふ、ぐく、このイカレ野郎どもが!」

しゃらん。気合いの入った一声。

鉄のすれる音は、つまり剣が抜かれたことを示した。

遠山に金的を入れられて悶絶していた男が、立ち上がり、腰の鞘から幅広のショートソードを引き抜いて。

「きゃっ!?」

ニコが悲鳴をあげる。

「くそ、黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって! うぜえんだよ! 黙ってそのガキども渡してりゃ良いんだ! くそ! くそくそ! 動くな! 黒髪野郎!」

「……これでいいか?」

遠山が手を挙げて、その場に立ち止まる。

眼前に突き出されたショートソード、手入れも荒く、刃も汚れている。油を塗ったりすらしてないのだろう。

「それとそこのガキ! くそ! フレッドの指をそんなふうに…… もう我慢ならねえ! くそ、くそくそ! なんでこんなことに」

「お前、状況理解してるのか? 武器抜いた時点でもうこれはただの喧嘩じゃなくなるぞ」

興奮した様子の男が遠山に剣を突き付けながら喚く。剣を構える手は震えて、声も呂律が回っていない。

剣をつけられているはずの遠山の方がよほど落ち着いていた。

「は? わかんねえ、わかんねえ! てめえがなにを言ってるかわからねえ! クソ! 動くな! ガキどももだ!」

フラつきながら男が子供たちにも剣を向ける。

遠山が小さく、子どもたちの中で最も鉄火場に強いだろう者に視線を向けた。

「ルカ」

「……うん」

帽子の少年、ルカがそっとニコや、未だにソーセージを頬張っているペロシロを庇うように移動する。

その様子に、男は目を剥いた。

ガキにすら、自分の脅しが効いていない。目の前の男は剣を突きつけても微動だにせず。

それが男のちっぽけなプライドを傷付けたのだろう。身体をぶるりと震わせ、脂汗を垂らして、その剣を振りかぶりーー

「まどろっこしい、ディス」

「え?」

だが、そんな動きすら彼女にとっては遅すぎる。

第一の騎士。これまで教会の剣として数々の"正義"を執行してきたストルにとっては本当にまどろこっしくて。

水色の風が、一瞬で剣を振り上げた男に肉薄した。

「安物」

ばきん。

ストルが腰から引き抜いたのも、また男と同じショートソード。奇しくも市場で安物売りしていた量産品。

それを振り上げて、冒険者の剣を打ち上げる。それだけでその手入れされてない冒険者の安物の剣が砕け散る。

「は?」

「遅いし、弱い、最低ディスね」

また、ばきん。何かが折れる音。

今度は剣ではなく、ストルに蹴り抜かれた男の膝が折れた音。

「っ、ア?! ギャァアアアア?! あし、脚が、ああああ……」

時間差もなくその場に男が倒れ伏す。ぷらぷらと揺れる脚はそれが肉も骨も腱もすらも蹴り折られたことを示していた。

「ひ、ひい、ば、化け物……」

「ナイス、ストル」

改めて、遠山はストル・プーラという戦力を認識する。明らかに規格外、冷静に考えるとこの冒険者共と自分の実力はおそらく大した違いはない。

自分1人なら、殺す気でいかない限り3人を相手にするとほぼ負けるだろう。

だが、ストルは違う。この程度の連中だと、100人いても打ちのめしてしまいそうなーー

遠山が、思考に沈んだその時。

「っ!? バカ! トオヤマ、よそ見!!」

ストルが目をむいて叫んだ。

しまった、と自覚した時にはもう遅い。

「この、イカレ野郎どもがあああああああ」

遠山が最初に殴り倒した冒険者、気絶したフリだったのだろう。追い詰められたソイツは、すでに剣を振り抜いていて。

「あ、やべ」

「ナルヒト!?」

ラザールの悲鳴。

やべ、もう避けれねえ。死にはしないけど、大怪我はーー

反射的に、少しでも軌道を逸らすために遠山が腕を掲げて肉を固めた。

バシッ。

「はーー」

布団を思い切り、たたき伸ばしたような。

そんな少し心地よい音だった。

「いや、これは流石にね」

軽薄な声はたのしげに。

「けぷら!?」

遠山に奇襲をしかけた冒険者が、音と同時に吹き飛ぶ。

周りのテーブルイスに突っ込んで、そこに埋もれたまま動かない。

周りの席から悲鳴が広がる、野次馬たちが蜘蛛の子を散らしたように騒ぎ立て、そこから離れてまた、別の箇所に固まる。

「これは流石に、そっちが悪いでしょ。どう考えても助けるのはこっちじゃん」

ソイツは、妙な姿をしていた。

幅広のつばのついた帽子を目深に被り、イスに背中を深く預けるソイツ。

くたびれたレザーのベストに、黒いシャツ。どこかウエスタン、遠山から見れば西部劇に出てきそうな服装の男だ。

この男が、あの冒険者に何かをしたのだ。それだけは誰の目にもはっきりしていた。

「な、なんだ、お前?!」

キンタマを抑えながら、まだ意識のある冒険者の1人が叫ぶ。

「あー、知名度低いのは悲しいわー、ほんと。はい、冒険者章。これでわかってくれる?」

テーブルからのんびりした動きで立ち上がり、西部劇のカウボーイみたいな姿の男が懐からあるものを取り出した。

真昼の太陽を受けて、金色に輝く首飾り。ドッグタグのようなそれは危険を冒す物の証。

そしてその色は、その中でも精鋭中の精鋭、その中から規格外と認定された者の証明。

帝国の軍隊、それに並ぶ有事の戦力としても数えられる冒険者の中の最上位。

「き、金色の冒険者章、ってことはまさか……」

「そ、お前らの先達、っていうのは言い過ぎかな? ま、そゆことさ。……出来ればこちらの顔を立ててくれたら助かるんだけどって」

この世界のアンタッチャブル。

"ヘレルの塔"に、己の意思で、自由に挑むことを許された、塔に挑戦する資格ある者がニカリと笑った。

明るい、しかし、有無を言わさぬ笑顔。

ただ、ただ、人好きのする笑顔はしかし、その男の持つ威圧感と合わさり得体のしれないものになっていて。

「あ、く、くそ…… 行くぞ……」

「ひ、ひ……」

冒険者達がその圧を理解したのだろう、その場を去ろうとして。

「……待ちなさいディス。なに勝手に仕切ってるのディス。ソイツらを許すか、許さないか、いえ、生かして返すかは、私達が決めることディス」

収まりそうな事態に水を差すストルの声。

その声にはわかりやすい苛立ちが滲み出ていた。

「たは、血の気が多いな。お嬢さん、そこのデブ離してやれよ。そろそろ死んじまう」

しかし、男は飄々と笑うだけ。

「……知ったことか、と言えば?」

「……たは」

男が笑う。じゃり、踏みしめた石畳から音が鳴った。

どちらが動くか、どちらが仕掛けるか。大型犬が次の獲物に視線を向けて。

「いい、よせ、ストル。離してやれ」

しかし、ここまでだ。飼い主の待て、の声にストルの殺気が凪いだ。

「っ、でも!」

「俺の、 命(・) 令(・) だ(・) 」

遠山は冒険者たちの顔を、目に焼き付けながらストルに命令する。

こ(・) の(・) 後(・) の(・) 始(・) 末(・) は(・) 、(・) 自(・) 分(・) が(・) つ(・) け(・) る(・) 。(・)

遠山はすでにそう決めていた。

「……ディス」

「ううう、指、俺の指がよお……」

冒険者達が、ぞろぞろと、しかし素直にその場を去っていく。遠山達に恨めしそうな視線を送るが、それだけだ。

そのカウボーイみたいな男の一言で、トラブルは終わりを迎えた。

「おー、満身創痍。ま、人死が出てない分あんたらは優しい方だね」

「えーと、もしかして、助けてくれた?」

フラつきながら去っていく冒険者を尻目に遠山が男に話しかける。

連中より、まずはこの目先の得体の知れない男に対処するべきだろう。

「ん? そだよ。正義のヒーロー、ってわけじゃないけど。まあ普通に常識的に考えて今のはアンタらに味方するべきっしょ」

「……おお、まじか。なんか、この街ん来てはじめてまともな冒険者に会えた気がするぜ、で、アンタ、誰だ?」

「たは! ああ、悪い悪い。自己紹介がまだだったな」

遠山の問いに、ウェスタンハットによく似た帽子をとった男、灰色の髪を持つ目鼻の通った男が軽く頭を下げた。

「" 塔(・) 級(・) 冒(・) 険(・) 者(・) "、ユト・ウエトラルだ。ユトで、いいよ」

ぱちり、男なのにウインクがムカつくくらいサマになっていて。

「よろしくな、4級冒険者、竜殺し殿」

にこり。

その笑顔はしかし、遠山を安心させるようなものとは程遠い、爽やかなのに底の見えない笑みだった。