軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第43話:腐った眼

大森林での狩りを終え、都市カマーへ戻る。

途中でジョゼフが真っ赤な目で、こちらに向かって何やら叫んでいたが、知らんと伝えて帰った。

「す……すごいです! どれも素晴らしい状態ばかりです!」

採集した薬草類をコレットさんに渡すと、最初は量に驚いていたが鑑定し始めると、今度は質に驚きだした。

「魔力草をこんな良い状態で採集してくるなんて……ハッ!? このポッコの花も!! ムーン草まで!!!」

「コレットさん、落ち着いて下さい」

唾がこちらに掛かるんじゃないかって位、興奮しているコレットさんに声を掛けると、我に返ったのか顔を真っ赤にしていた。

「し、失礼致しま……たぁ………」

「家の件はどうなっているでしょうか」

「はい! 忘れてませんよ。今だと、5件の物件が紹介できます」

各物件の確認していく。さすが頭金に500万マドカと伝えただけあり、どれも十分な広さと部屋数だった。

「この家は特に大きいんですね」

「そこはある貴族が建てさせた屋敷なんですが、都市カマーの外壁の外なんで、魔物や野盗等の治安面でオススメはできませんよ。建てさせた貴族もほとんど住まずに、手放しています。

それよりこちらの物件はいかがですか? 立地も貴族や商人等が多く住む場所で、治安もいいのでオススメですよ!」

治安に関してはゴブリンキングも居るし、あと数匹を死霊魔法で使役すれば問題はないだろう。

「いえ、こちらの物件を今度見に行ってもいいですか」

「でもそこだとギルドに通うのも生活にも不便ですよ。それにそちらの物件は買取となっています」

「大丈夫です」

コレットさんが小さな声で、あんまり会えなくなると呟いていたのが、固有スキル『聴覚上昇』でしっかり聞こえていた。あんまりにも悲しそうな顔をするので。

「これからもここを拠点に活動するので、コレットさんには今後もお世話になります」

「は……はいっ! お任せ下さい♪」

次の日から、ジョゼフのおっさんが開き直って尾行してきた。もう隠蔽系の装備もせずに堂々とついて来ては、剣の握り方がダメだのあそこは突きがよかったな等、鬱陶しい。結局、キレた俺が斬り掛かる。

ジョゼフの狙いがよくわからないが、数十分斬り合うと満足して消えて行く。たまにレナが魔法で不意打ちをするが、躱すか消されている。ニーナは参戦せずにすごいね~と観ているだけだ。

ここ2週間ほどはその繰り返しが続いた。レナの結界を纏う特訓も慣れたようで、今では普通に数時間は結界を展開しながら、魔法を放つことが出来るようになっていた。

冒険者ギルドに戻りクエスト報告をすると、今回のクエストでニーナのランクがEランクからDランクに昇格した。俺が採集クエストばかりで、ニーナが討伐系のクエストだったので、仕方がないと言えば仕方がないのだが悔しい。

頼んでいた家の下見が終わり、コレットさんに紹介してもらった不動産屋と契約を結ぶ。2F建てで庭もある立派な屋敷だった。周囲は簡単な魔除けの魔道具が設置されているが、あくまで簡易なのでそれほど期待しないでくれと言われている。

「これが 私達(・・) の新しい家なんだね!」

俺の家だな。

「…… 3人(・・) で住むには広い」

3人で住むのが当たり前のように言いやがる。

今日は屋敷の掃除や家具の購入で、1日が潰れてしまった。それでも掃除の終っていない部屋が多数あるので、メイドを雇うかを真剣に悩んでしまう。

「宿屋もいいけど、やっぱり自分の家が1番落ち着くね~」

「……同感」

「お前等……部屋は余ってるんだから出て行けよ」

寝ようとしたら、ベッドにニーナとレナが入って来た。

「寂しくて死んじゃうよ!」

お前はウサギか……

「……くんくん」

無言で匂いを嗅ぐな。

言っても聞く奴等ではないのであきらめた。

死霊魔法で生き返らせたゴブリンキングだが、順調に狩りをしているようだ。スキル無しとはいえあのステータス、大森林の浅い場所でなら敵なしのようだ。今度、呼び戻してステータスをチェックしようと思う。

翌日、俺達はDランク『ゴルゴの迷宮』に向かっていた。

ニーナもレナも順調に成長していたので、そろそろボス戦をする為と地下21Fから出現する魔物ベナントスを狩る為だ。

いつものように入口には付与士のおっさんが居た。

「お~坊主、久しぶりじゃないか。付与魔法はいるか?」

「新しいの覚えた?」

「ふふ……ふはは! 聞いて驚けなんと第3位階のマジックバリアと第4位階のエナジーアブソープシュンとマジックアブソープシュンを覚えたんだぜ!」

確かマジックバリアは魔法耐性を上げる魔法で、エナジーアブソープシュンとマジックアブソーシュンは、近接攻撃時にHPを吸収とMPを吸収する魔法だったはず。

このおっさん地味に凄いな。

「んじゃ、それを俺にだけ掛けてくれ」

「ちぇっまたお前だけかよ」

「おっさんもそんだけの付与魔法が使えればCランク以上の迷宮にでも行った方が、儲かるんじゃないのか?」

「そう思うだろ? ところがC以上の迷宮になると冒険者のレベルも高くて、大体1人は付与魔法の使い手が居るんだよな。

それにDランク迷宮の方が来る人数も多いから、俺みたいな奴にはここがお似合いなのさ」

なるほど、需要と供給で高レベルの迷宮より低レベルの迷宮の方が儲かるのか。

付与魔法を掛けて貰うが、付与魔法のレベルがまだ低いので覚えることは出来ても、使うことは出来なかった。

迷宮に入ると地下7Fまで30分も掛からず到達していた。俺はニーナとレナに付与魔法を掛けたあとは、いつも通り錬金術でポーション製作しかしていない。

「今日は最下層まで行けるんじゃないかな~」

「……私達の力なら当然」

少し調子に乗っていると思ったが、2人は軽口を叩きながらでも周囲への警戒を怠っていなかった。

俺の『天網恢恢』に反応があった。魔物ではなく人間だ。数は3人で天網恢恢の反応から只者じゃないとわかる。

ニーナも『索敵』で気付き警戒を更に強めている。

「こんにちは」

そう声を掛けてきた男を見ると、人間ではなく竜人と呼ばれる亜人だった。残りの二人はドワーフとエルフだ。

「僕はゼペっていうんだ。後ろの2人はドワーフがボル、エルフがセーヤっていうんだ。よかったら僕達とパーティーを組まない? ボルは盾も使えるし、セーヤは後衛で魔法もそれなりに使える。役に立つと思うよ」

ゼペという竜人は人懐っこい笑みを浮かべながら話し掛けてくる。俺は更に警戒を強め、いつでも攻撃できる態勢を取る。

「う~ん、私はユウとしかパーティー組む気がないから。ごめんね~」

「……必要ない」

断られてもゼペという竜人は不快感を示す所か、更に気に入ったようでしつこかった。

「君の方からも説得してくれないかな? 迷宮は5~7人が適正パーティーって知っているだろ? こっちは斥候職とヒーラーが欲しい。そっちは見た所、盾と前衛が不足していると思うんだけど、どうかな?」

「なんなら儂達の戦闘を観てから、判断してくれてもいいぞ」

「それは良い提案だな」

こっちの返事も聞かずにドワーフとエルフが話を進めていく。

「悪いが俺は人見知りなんで断る。先を急ぐんで進ませてもらう」

拒絶の意思を伝える。こいつらは怪しすぎた。装備は鋼鉄の剣・鋼鉄の斧などDランク迷宮では普通の装備だったが、俺の『魔眼』で確認したこいつらのレベルは、竜人がレベル36、ドワーフがレベル33、エルフがレベル35。装備とレベルが釣り合っていない。何より――

「そっか。残念だよ気が変わったら教えてね」

残念と言いつつその表情が対照的だった。ゼペ達は嬉しそうにユウ達が進んで行く方向を姿が消えても見続けていた。

「 またね(・・・) 」

「さっきの人達、付いて来てないよね?」

ニーナの男性冒険者嫌いは未だに治っていないみたいだ。

「……あの冒険者達はおかしかった」

レナの言うとおりパーティーを募集するなら、冒険者ギルドか迷宮の入口が一般的だ。迷宮に入ってからパーティーの誘いを掛けるなんて、通常ではありえない。

「あいつらには気を付けた方がいいかもな」

「なんで?」

「俺と一緒で眼が腐ってる。あと血の匂いが強過ぎる」

あいつらの眼を見た時に感じたのは、俺と一緒でどこか壊れている。俺を殴っている時の義父があんな眼をしていた。

「おい……何してんだ?」

ニーナが俺のおでこと自分のおでこをくっつけて、眼を覗き込んでいる。

「ユウの眼は腐ってなんかないよ~? 黒色のクリクリした可愛い眼だよ~」

「……クンカクンカ、匂いも良い匂い」

レナは背中から抱きついて、尻の匂いを嗅いでいた。

俺は無言で2人の頭を叩いておいた。