軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見えぬ兵、見える限界

「……」

エドワルドは、配置予定地を見渡していた。

平原、風、草。緩やかな起伏。

一見すれば——以前と、大きくは変わらない。

だが。

「……違うな」

ぽつりと漏れる。

ここは——敵を引き込む地。

偽道標。誘導。泥濘化。

敵を、ここへ。

「……」

上手くいけば止める。更に削る。

だが——

「……上手く、いけばだ」

当然。絶対ではない。

敵の判断の速度。天候。

どれか一つでもズレれば——結果も変わる。

だからこそ。

一つだけでは足りない。

視線が、別方向へ向く。偽装布。

思っていたより——大量に。

布工房。染物。アルト。

「……よく、ここまで集めたな」

本当にこれなら——

「……全兵に、回る」

大きい。一部だけではない。全体。

「……」

なら。

「実践訓練だ」

短く命じる。

「全兵、装備確認!」

「「はっ!!」」

兵が、動く。既に——被っている。

緑。黒。茶。

「……」

並び伏せる。進む。

エドワルドは、静かに観察する。

止まる。

“分からん”いや——

「……理屈を知っているから、分かる」

そこに兵が居る。そう知っている。

だから、見つけられる。

だが——

「……知らなければ」

ぽつり。

「……見つからんな」

本当に草、土、影。境界が、曖昧。良い。

思った以上に。

「……」

「前進」

命令。兵が、動く。

その瞬間。

「……ん?」

一瞬だけ。違和感。だが——

「……薄い」

完全に消える訳ではない。

当然だ。動けば——ズレる。

布、草、輪郭。

「……」

“兵が動いた”と即断しにくい。

対歩兵相手。慎重に見れば——気付く可能性は高い。

「……」

だが。

「……騎兵なら」

速度。土煙。揺れ。突進。

「……走り抜けていれば」

一拍。

「……気付かんかもな」

十分に、ある。

「……」

特に——初見。

相手が“そこに兵がいる”と知らなければ。

悪くない。

「……かなり」

だがそこで思考を止めない。

「……一度、バレれば」

そう。一度。

「……注意される」

間違いなく。

敵も、馬鹿ではない。見えぬ。なら——見る。

警戒、観察、確認。

「……」

初見殺し。それに近い。

だからこそ——

「……頼り切るな」

ぽつり。

「……?」

レオンが、横を見る。

「……便利ですな?」

「ああ」

即答。

「……だが、万能じゃない」

「……」

泥も同じ。偽道標も同じ。

一度、理解されれば——対策される。

だから。

「……重ねる」

短い。

「……?」

「泥だけじゃない、道だけじゃない、布だけでもない」

一拍。

「全部、重ねる」

「……!」

そう。

偽道標で迷わせる。泥で止める。

布で見えにくくする。大型クロスボウで削る。

一つが破られても——次がある。

小さく笑う。

「……やっと、形か」

単独策ではない。“組み合わせ”

平原。何も無い様で——実際は。

見えぬ兵。見えぬ罠。見えぬ誤差。

良い。本当に。

春風が吹く草が揺れる。その中で——兵は、消える。完全に消えた訳ではない。

限界は、ある。だからこそ——

「……限界ごと、使う」

静かに前を見た。戦は、まだ始まっていない。

だが——“どう勝つか”は、少しずつ現実になり始めていた。