軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鳴き声の増える庭

「……今度は、こっちか」

馬車の軋む音に、エドワルドは作業の手を止めた。

柵の外に積まれた木箱から、低く太い声が漏れてくる。

――ぶぉ、ぶぉ。

「豚、だな」

今回届いたのは、雄二、雌五。

話し合いの通りの頭数だ。

商人は慣れた手つきで柵の中へ導き入れる。

豚たちは鼻を鳴らしながら、地面を嗅ぎ回り、早速土を掘り返し始めた。

「……元気だな」

「このくらいなら、問題ありませんよ」

商人はそう言って、簡単な注意点だけ伝えると帰っていった。

「さて……」

エドワルドは、豚の様子を眺めながら腕を組む。

餌。

基本は穀物のくず。

豆の選別で出た欠片。

傷んで食用に向かないじゃじゃ芋。

(雑食だし、選り好みはしないはずだが……)

試しに、いくつかの餌を分けて置いてみる。

ぶぉっ、と鼻息荒く寄ってきた豚は、迷いなく食べ始めた。

「……全部、食うな」

硬豆の煮残し。

芋の皮。

少し古くなった野菜。

どれも、問題なく平らげていく。

(扱いやすい)

セキシャク鳥とは違い、縄張り争いも少ない。

力はあるが、集団で落ち着いている。

「こっちは、数を増やすのが楽そうだな」

しかし――

問題は、音だった。

ぶぉ、ぶぉ。

ぎゃあ、ぎゃあ。

豚の低い声と、セキシャク鳥の甲高い鳴き声が、交互に響く。

「……賑やかになったな」

畑仕事をしていた農家たちが、ちらちらとこちらを見ている。

気にならないはずがない。

「坊ちゃん、また何か増えましたか?」

「ええ、豚です」

「ほう……」

興味と不安が、入り混じった視線。

(まあ、最初はそうなるよな)

数日もすると、家畜の世話は完全に日課に組み込まれた。

餌やり。

水の交換。

柵の確認。

そして――糞。

「……結構、出るな」

豚の糞は量が多い。

セキシャク鳥の糞と合わせれば、かなりの量になる。

だが、エドワルドは眉をひそめなかった。

(肥料になる)

干し、混ぜ、発酵させる。

畑に戻せば、確実に力になる。

「助かるな……本当に」

夕方。

作業を終え、柵の外から家畜たちを眺める。

豚は地面に寝そべり、鳥は小屋に戻る。

鳴き声も、昼よりは落ち着いていた。

(また、一歩進んだ)

派手ではない。

だが、確実だ。

エドワルドは、静かに息を吐いた。

「……観察だな、まずは」

育てる。

見極める。

問題があれば、直す。

その繰り返し。

鳴き声の増えた庭は、確かに騒がしい。

だがその音は――

この領地が、生きて動き始めている証でもあった。