軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

消える兵

「エドワルド様」

仮宿営地。

春風の中、戻って来たレオンが一礼する。

「配置予定地——確認して参りました」

「……」

エドワルドは、視線を上げた。

「……どうだった?」

「はい」

レオンの口元が、僅かに笑う。

「……ここ同様」

一拍。

「消えておりましたな」

「……」

その返答に——

「……ふふ」

エドワルドも、小さく笑う。

「……そうか」

準備は、進んでいる。想像だけではない。

既に——形になっている。

レオンは、少し肩を竦める。

「正直、驚きました」

「……」

「近付かなければ——気付きませぬ。気付いた時には」

一拍。

「……近過ぎました」

「……」

エドワルドの目が、細くなる。

「……レオンでさえ、か」

「ええ」

偵察経験。警戒。視線。

そのレオンでも——見落とす。

「……」

なら、敵なら?初見。焦り。進軍中。悪くない。

「……中々、いい」

ぽつりと漏れる。

「絵描きの発想、侮れませんな」

「……確かに」

本当に消える宿営地。消える配置。

「……」

なら——

「……大型クロスボウも」

背は高く目立つ。本来なら——隠しにくい。

だが。

「……消えている、かもな」

「……」

レオンも、頷く。

「確認は、必要ですな」

「ああ」

早めに見る。そのつもりで——

「……」

エドワルドの思考が、止まる。

「……消える」

ぽつり。

「……?」

レオンが、首を傾げる。

「……待てよ」

「エドワルド様?」

「……レオン」

「はっ?」

「……少し、いいか」

「……?」

「座れ」

「……は?」

「クロスボウ射撃姿勢」

「……」

一瞬。沈黙するが——従う。

レオンが、その場で低く構える。

膝。姿勢。前傾。

「……」

エドワルドは——見る。

高さ。その輪郭。地面との線。

「……」

低い。思った以上に。テントは——消えた。

宿営地も。なら。

「……大隊長!」

声が、飛ぶ。

「絵描きも呼べ!」

「……!」

周囲が、一瞬ざわつく。

「エドワルド様?」

レオンも、戸惑う。

「……どうしました?」

「……ふふ」

エドワルドの口元が、僅かに上がる。

「……テントが隠せるなら」

一拍。

「……もっと小さい人も、隠せるだろ」

「……!」

レオンの目が、開く。

そして——

「……!」

「……読めましたぞ」

口元が、上がる。

「テント同様に……!」

「……そうだ」

エドワルドは、静かに頷く。

「……俺達」

ぽつり。

「……よく考えたら、目立ち過ぎじゃないか?」

「……」

確かに。偵察。暗殺。潜伏。

それは、“静かに目立たぬ”技術。

だが——

「……周囲そのものに、溶け込む」

そこまでは——違う。

風景へ消える。地へ溶ける。

「……」

なら。

「……兵も、消せる」

「……!」

レオンが、笑う。

「面白い所に、気付きますな」

「……」

エドワルドは、小さく肩を竦める。

「使えるなら——使う」

それだけ。

大隊長と絵描きの足音が、近付く。

「お呼びで!」

「……」

エドワルドは、振り返る。

「一つ、試したい」

短い。

「宿営地だけじゃない」

一拍。

「兵も、消すぞ」

「……!」

絵描きの目が——輝いた。

春の平原。泥。偽道。消える陣。

そこへ更に——“消える兵”

「……」

準備は、また一段。妙な方向へ——進み始めていた。