軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

届いた形

北部方面。旧領主館。

領主は、静かに文を開いた。

机の上。

北部防衛計画。補給報告。国境監視。

そこへ加わった——新たな報告。

領都。

クラウスとエドワルド。

「……」

老いた指が、紙をなぞる。

「……ほう」

ぽつりと漏れる。最初は、静かだった。

だが——読み進める程に。

「……そこまで、やるか」

小さく、息を吐く。

後退戦術。それは——自らが示した。

北部は、守り難い。押され削られる。

なら——引き込む。

補給を伸ばし疲弊を待ち、折れた所を返す。

それが、骨格。

「……」

だが領都側は——違った。

道標撤去し、偽装の道標を配置。果樹植樹。

泥濘化させる為の溜池。補助水路。

大型クロスボウ再配置。投石器の投入地点。

「……」

防ぐだけではない。

「……選ばせぬ、か」

低く呟く。

敵が進む。その前提は、同じ。

だが——進む“道”そのものを、狂わせる。

迷わせ、遅らせ、誘導し、そして止める。

そして——

「……壊す」

そこまで、繋げた。

「……」

父としてではなく。

領主として——理解する。

「……悪くない」

いや。

「……良い」

その一言の方が、近い。

若い上、まだ荒い。理想論も、混じる。

だが——

「……形になっている」

そこが、大きい。机上ではない。

既に、動いている。

「……」

領主は、窓の外を見る。

北部の雪解けに泥。兵。

こちらもまた、準備中。

長年。この地を守ってきた。

守る事の難しさも地形の不利も嫌という程、知っている。

だからこそ——

「……地を変える、か」

少しだけ、口元が緩む。

普通は、守る。工夫しても、防壁。

だが——あの兄弟は。

「……弄るな」

地も道も敵の認識すらも。

「……」

静かに笑う。

「……似ていない様で、似ている」

やり方は違う。

だが——二人共。

「……主導権を、欲しがるか」

側近が、控えめに問う。

「如何なさいますか?」

「……」

領主は、紙を折る。

「そのまま、進めさせろ」

短い。

「……ですが」

「口は出さん」

一拍。

「必要時のみ、支える」

「……」

側近が、目を伏せる。

「……承知しました」

「……」

それでいい。

もう——ただ守られるだけではない。

北で防ぎ、中央で止め壊す。線になった。

「……春、か」

ぽつりと漏れる。

冬は、終わる。

なら——敵も、動く。

「……」

紙へ、最後に視線を落とす。

「……間に合え」

短い。

それだけ父として領主として今は——それが、最も正しかった。