軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

選ばせぬ形

領都。領主館。

広げられたのは、一枚ではなかった。

北部方面。領都近郊。旧領境。街道。

偽装村。川。泥濘化予定地。

幾つもの地図。幾つもの線。

「……」

クラウスは腕を組み、それらを見下ろしていた。

「……揃ったな」

ぽつりと漏れる。

父から届いた防衛計画。

エドワルドの計測結果。

グレゴールの偽装村防衛。

自らが見てきた中間地点。

今までは——点。それぞれが、個別。

だが——

「……繋ぐ」

低く呟く。

その為に、集めた。

「……」

エドワルドもまた、地図を見ていた。

書庫で読んだ知識。

現地で見た平地。泥。水。

全てが、ここにある。

グレゴールは黙って控える。

既に配置済みの偽装村。罠。街道。

「……」

静寂。

最初に口を開いたのは、クラウスだった。

「父上は——防ぐ」

指が、北部方面を指す。

「後退し、敵を引き込む」

次。

「グレゴール」

二本の街道。

「ここは、足止めだ」

偽装村。罠。防衛。

「……はい」

短い返答。

そして。

「エドワルド」

視線が移る。

平地。川。泥濘地帯。

「……」

エドワルドは、小さく頷く。

「止めます」

短い。

だが——明確。

「溜池。堰。地形利用」

一拍。

「足を奪う」

クラウスの口元が、僅かに動く。

「……いい」

そして——自ら。

指が、中央をなぞる。

北部と領都の中間。

「……俺は、ここだ」

低く落ちる。

「……」

投石器。火。伏せた拠点。

「……刺す」

空気が、静かに変わる。

防ぐ。止める。刺す。

クラウスは、一本の線を引く。

敵進路予測。

北部旧領都へ直進。

「……この場合」

父が削る。補給が伸びる。

そして——

「俺とエドワルドで、脇腹を裂く」

次は、南下。線が折れる。

「……なら」

泥濘化。大型クロスボウ。

「止めて、撃つ」

さらに、低確率。二本街道。

「……来るなら」

グレゴール。

「削って終わりだ」

静寂。

やがて——エドワルドが、ぽつりと呟く。

「……敵が、選ぶ様で」

「……違う」

クラウスが被せる。

「選べる道を——減らす」

「……」

それが、全てだった。

敵に自由がある限り、厄介。

なら——

「……形を作る」

父が押し。弟が止め。自分が刺す。

点ではない。線。

「……ようやく」

クラウスが、小さく笑う。

「戦になってきたな」

誰も、否定しない。これは——防衛だ。

ただ守るだけではない。

「……選ばせぬ」

その一言だけが、静かに残った。