作品タイトル不明
作るという判断
計算結果は——出た。
「……」
机の上の数字では水量も解った。必要規模も。
工兵達が弾き出した答え。
「あの一帯を泥濘化させる事自体は——可能」
エドワルドは紙を見下ろした。
必要なのは、広い範囲での溜池。
複数があるいは、大規模。
「……理屈は通る」
ぽつりと漏れる。
地形に高低差を利用した流れ。
計算上——問題はない。
だが。指先が、ある一点で止まる。
「……そもそもの水量、か」
そこだった。
当然だ。器があっても——中身が無ければ、意味がない。
雨。雪解け。流入。
結局——天候に左右される。
降らなければ単なる無駄。労力や人員それに、時間。全てが、薄くなる。
「……やらずに、降ったら」
今度は——手持ちの選択一つ、失う。
沈黙。
机を、指で叩く。トン。トン。
やるか?やらないか?考える。
やがて、小さく息を吐いた。
「……ここは」
低く落とす。
「……俺らしく、作る」
それだけだった。
完璧な答えなど、無い。
天候は読めない。敵も読めない。
なら——
「……使える形を、先に置く」
降れば、使う。降らねば、別を使う。
それだけだ。何か思い付けば、足す。
別案。補強。他策。
組み合わせればいい。
一つしか無いから、脆い。
なら——増やす。
エドワルドは立ち上がる。
「工兵へ」
「はっ」
「着工だ」
即断。
「手が足りねば——」
一拍。
「作業員を募れ」
「……!」
文官の目が動く。
「金を出せ。食を出せ。理由も作れ」
淡々と続ける。
「治水整備で構わん」
「……承知しました!」
足りないなら、集める。
それだけだ。エドワルドは地図を見る。
まだ、泥ではない。
「……形には、なる」
ぽつりと漏れる。
地は、変えられぬ。そう思っていたが。
「……多少なら、変えられるな」
小さく笑う。
戦場は、待つものではない。
必要なら——作るものだった。