軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地を読む形

数日。思っていたより——早かった。

「……終わったか」

机の上に置かれたのは、新しい紙。

計測結果。

距離。高低差。川筋。傾斜。

現地で見たものが——今度は、形になっていた。

「……」

エドワルドは、その紙を見下ろす。

平面ではない。立体。

どこが高く、どこへ流れ。

どこに溜まり、どこが抜けるか。

「……なるほど」

ぽつりと漏れる。

見える。

現地で感じた違和感。

緩やかな下り。細い川。

全てが、線で繋がる。

そして。

「工兵は」

「既に」

控えていた文官が答える。

「……通せ」

集まった工兵達。

紙を囲む。

エドワルドは、余計な前置きを省いた。

「この地域に——溜める」

指が、ある一点を示す。

「……?」

工兵達の視線が集まる。

「堰を作る」

短く続ける。

「水を貯める」

さらに。

「……貯め切った所で、切る」

「……!」

空気が、僅かに変わる。

「……洪水、ですか」

一人が低く言う。

「完全な、ではない」

エドワルドは首を振る。

「だが——」

視線が鋭くなる。

「泥濘には出来る」

進めなくする。

騎兵。荷馬車。歩兵。

全てを。

工兵達は紙を見る。

高低。川筋。広がり。

「……」

沈黙。

やがて——

「理論上は、可能です」

一人が口を開く。

「……」

「ただし」

一拍。

「必要量次第です」

「……」

「どれ程の規模で、どこまで浸すか」

エドワルドは頷く。

「計算しろ」

即答。

「必要な大きさ。堰の規模。期間」

短く、次々と落とす。

「作れるかどうか——そこだ」

「……はっ」

工兵達が動く。

紙の上に、数字が増える。

深さ、幅、水量。

エドワルドは腕を組む。

出来るか。出来ないか。

無理なら——切る。

可能なら——使う。

戦場そのものを変える。

それは、大きい。

不可能ではないなら試す価値はある。

窓の外を見る。

まだ、春は浅い。

なら——

「……時間は、あるか」

小さく呟く。

敵が本格的に動く前に。形に出来るか。

答えは、まだ出ていない。

「……悪くない」

地を守れぬなら。地ごと、変えればいい。

その発想だけは——確かに、前へ進んでいた。