軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地を変える手

領都へ戻る道中。

エドワルドは、ほとんど口を開かなかった。

「……」

思っていた以上だった。

地図では、理解していたつもりだった。

開けている。遮る物が少ない。

実際に立てば、違う。

「……開け過ぎだな」

ぽつりと漏れる。

広い。想像以上に防ぐには薄い。

隠れるには足りない。

問題は——どうするか。

考える。川に丘。大型クロスボウ。

どれも、足りない。

「……直ぐには、無いか」

低く呟く。

そこで。

「エドワルド様」

レオンの声。

「領都へ到着します」

「……ああ」

顔を上げる。

考え込んでいると——早い。

視線の先。領都の兵。

その中に——最後尾と思われる、自隊の一団。

泥だらけ。歩兵。荷馬車。補給。

やはり——同じ。

「……」

泥。また、それだった。

足。車輪。気力。削る。

その瞬間に思考が、止まる。

「……泥」

ぽつりと漏れる。

削られる、進めない、止まる、遅れる。

「……そうか」

視線が鋭くなる。

「あの地域を——」

地図ではなく、現地。

開けている。緩やか。川がある。

「レオン」

声が変わる。

「はい」

「……あの地域を、細かく計測しろ」

「……?」

一瞬、間。

「人員数は問わん」

「……あそこを、ですか?」

「ああ」

即答。

「明日からでも直ぐにだ」

レオンは驚きを飲み込み——頷く。

「……承知しました」

エドワルドの視線は、既に別を見ていた。

戦記。過去に読んだ、一文。

水責め。首を振る。

違う。

「……俺がやるのは」

低く呟く。

「……泥だ」

水没ではない。

泥濘。進めなくする。速度を殺す。機動を削る。

騎兵。その足を止める。

歩兵。その列を乱す。

開けた地形なら——逆に。

「……変えられるかもしれん」

地そのものに、水を流す。溜める。

今からもし——あの地形が使えるなら。

「……誘い込める」

敵を望む場所へ。

戦場を選ぶのではない。

「……作る」

ぽつりと漏れる。

まずは、計測。高低。流れ。溜まり。

出来るか。出来ないか。

全ては——そこからだ。

エドワルドは、領都を見上げる。

答えは、まだ無い。

だが——

「……悪くない」

小さく言う。

地形が足りぬなら。地形ごと——変えればいい。