軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

先に動く者

「……」

エドワルドは足を速めた。

もう一度。兄と、話しておくべきだ。

流れは見えた。

配置も、大枠は決まった。

だが——細部。詰め切れていない部分は、まだある。

領主館の廊下を進む。

「……グレゴール」

姿を見つけ、足を止める。

「……兄上は」

短い問い。

グレゴールは一礼し、

「既に護衛と主に、出られました」

とだけ答える。一瞬、思考が止まる。

「……何処へ」

「迎撃準備かと」

それ以上は、無い。護衛付き。

エドワルドの眉が、わずかに動く。

「……もう?」

ぽつりと漏れる。

早い。

流石に——装備確認。兵站。配置。

そういった類かと、一瞬思う。

だが——

「……違うな」

低く呟く。

護衛を連れている。ただの視察ではない。

何かを、見に行った。

あるいは——

「……」

答えは無い。

小さく息を吐く。

「……まあ、いい」

今、追っても仕方がない。

なら——自分は、自分のやるべき事。

兵。

まだ、全ては揃っていない。

集結中。移動中。これから来る者も、多い。

ならば。

「……受け入れか」

ぽつりと漏れる。

寝床に、食。配置と導線。

兵は、集まるだけでは意味が無い。

それに皆、久々の領都になるな。

混乱すれば——それだけで、遅れる。

「……先に整える」

短く言う。

出来る事を、先に。

踵を返す。

兄は、先に動いた。

なら——

「……俺は、遅れん」

低く落とす。

廊下を進む足が、止まらない。

戦は、近い。

だからこそ——今、空いている手を止める理由は無かった。