作品タイトル不明
置くべき場所
「……エドワルドは」
書類から目を離さぬまま、クラウスが問う。
「書庫にございます」
「……そうか」
短い返答。
「数時間ほど、籠っております」
「……」
それ以上は、不要だった。
「……なら」
一拍。
「移動は済ませたか」
「はい」
控えていた文官が頷く。
「木工場からは、全て」
「……」
「例の場所へ」
「……そうか」
小さく息を吐く。
「なら、問題ない」
「……」
「隠しておけ」
「はっ」
足音が遠ざかり扉が閉まる。静寂。
再び、一人。
「……さて」
ぽつりと漏れる。
今度は、自分だ。
地図を広げる。
領都。街道。偽装村。北部。
二本。領都へ続く街道は、変わらない。
その先の隣国。さらに奥。王都。
「……長いな」
小さく呟く。
一本ではない。
二本。
商人達の話を聞取り、流れと噂を纏める。
冬の間。南方面は、止まった。
謎の流行病。物流と人。
どちらも鈍い。
完全ではない。だが——
「……ほぼ、閉じた」
小さく言う。
一方、北方面。謎の流行病の発生無し。
だからこそ……制限か。
南から北への人的移動。
理にかなう。
恐らく、事実。
なら動くのは——
「……北だけだ」
指が、地図の北側へ落ちる。
そこだけを見ればいい。
余計な枝を切る。考えるべき場所を減らす。
防衛。
基本は——偽装村。二本の街道。そこに置いた拠点。
正面は、受ける。
問題は——その先。
指が、中央をなぞる。
自分の隊。
「……ここだ」
低く落とす。
南下。来るなら——迎え撃つ。
来ないなら。
「……時を見る」
一拍。
「脇腹だ」
正面は、要らない。流れだけ、崩せばいい。
それでいい。
父上は、防ぐ。
エドワルドは、読む。
なら——
「……俺は、刺す」
静かに言い切る。
紙の上に、線が増える。
配置と時期。最終の分岐。
まだ、叩き台。だが——
「……悪くない」
ぽつりと漏れる。
完璧ではない。それでいい。
必要なのは——
「……置くべき場所だ」
短く言う。
戦は、近い。
ならば——迷う時間を、減らすだけだ。